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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】小菅 正之

【要約】 【課題】2次高調波成分を利用する超音波診断装置における画像の感度向上を図る。

【解決手段】振動子アレイ60の各チャネルから出力された受信信号をインピーダンス変換を担うプリアンプ部40に通したのち、高調波成分選択フィルタ部42に入力する。高調波成分選択フィルタ部42の2f0通過フィルタ回路64は、基本波成分を除去し、受信信号に含まれる2次高調波成分を通過させる。抽出された2次高調波成分は受信増幅部44によって、A/D変換部46及び整相加算回路48のダイナミックレンジを超えない範囲で増幅される。整相加算回路48は各チャネルの受信信号の位相を調節して互いに加算し、1つの受信信号を生成する。受信信号処理部50は整相加算回路48から出力される増幅された2次高調波成分を用いて画像を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 超音波エコーに含まれる高調波成分を診断に利用する超音波診断装置において、前記超音波エコーを受信する複数の振動子からなる振動子アレイと、前記各振動子から出力されるチャネル毎の受信信号を互いに整相加算する整相加算回路と、前記整相加算回路と前記振動子アレイとの間に設けられ、前記振動子アレイの各チャネルからの受信信号に含まれる前記高調波成分を選択的に通過させる高調波成分選択フィルタ部と、を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】 請求項1記載の超音波診断装置において、前記高調波成分選択フィルタ部と前記整相加算回路との間に前記各チャネル毎に配置される複数の増幅器を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】 請求項1記載の超音波診断装置において、前記各チャネルの受信信号に対し前記高調波成分選択フィルタ部によるフィルタリングを行うか否かを制御し、前記整相加算回路へ入力される前記受信信号の帯域を切り換える帯域切り換え手段と、前記整相加算回路と前記振動子アレイとの間に前記各チャネル毎に配置される複数の増幅器と、を有し、前記増幅器のゲインは、前記整相加算回路へ入力される前記受信信号の帯域に応じて可変に構成されること、を特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記整相加算回路の前段に設けられ、前記各振動子から出力されるチャネル毎の受信信号をアナログ形式からデジタル形式に変換するA/D変換回路を有し、前記高調波成分選択フィルタ部は、前記A/D変換回路より前段に設けられること、を特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波エコーに含まれる高調波成分を診断に利用する超音波診断装置に関し、特に高調波成分に対する感度の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】生体内部へ基本周波数の超音波を送信すると、生体組織の音響的非線形性に起因して、基本周波数の整数倍の周波数を有する高調波成分が発生する。近年、このエコー中に含まれる高調波成分を利用する超音波診断装置が開発されている。例えば、高調波成分に基づいて、Bモード画像を生成すると、音響雑音の少ない画像が得られる。
【0003】図4は、エコーから2次高調波成分を取り出して信号処理する従来の超音波診断装置の概略のブロック図である。この従来の装置では、複数個の振動子2から構成される振動子アレイ4を有し、各振動子に対応して複数チャネルの受信信号が得られる。各チャネルの受信信号はそれぞれアンプ6にてインピーダンス変換されたのち、さらにアンプ8にて増幅され、A/D変換器(ADC:analog-to-digital converter)10によってアナログ信号からデジタル信号へ変換される。
【0004】デジタル信号に変換された各チャネルの受信信号は整相加算回路12に入力される。整相加算回路12は、遅延器を用いて各チャネル間の位相を調節した後、加算器により各チャネルの受信信号を互いに加算し、受信フォーカスを実現する。
【0005】整相加算回路12からは加算された1つの受信信号が出力され、これが2f0通過フィルタ14に入力される。受信信号には、生体へ送信された送信波の周波数に応じた帯域を有する基本波成分(中心周波数f0)と、生体組織と基本波との非線形相互作用に起因する2次高調波成分(中心周波数2f0)とが含まれている。2f0通過フィルタ14は、受信信号中の基本波成分を除去し、2次高調波成分を通過させる帯域通過フィルタであり、当該フィルタにより取り出された2次高調波成分が受信信号処理部16に入力される。受信信号処理部16では、例えば断層画像の生成といった処理が行われ、画像が表示器18に表示される。
【0006】この回路構成において、アンプ6,8は、それらにより増幅された受信信号が後段に設けられる回路、例えば整相加算回路12のダイナミックレンジを超えないようにゲインを設定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】受信信号中における2次高調波成分の強度は基本波成分に比べて一般に−20〜−40dB程度と極めて小さい。2次高調波成分はアンプによって増幅されるが、その増幅は基本波成分を含んだ受信信号に対して行われる。そのため、増幅ゲインはもっぱら基本波成分が後段回路のダイナミックレンジを超えないという条件により制限される。よって、後段回路のダイナミックレンジを一定に保つならば、2次高調波成分を十分に増幅することができない。一方、必要な2次高調波成分が得られるように後段回路のダイナミックレンジを大きく構成する場合には、そのダイナミックレンジは、必要な2次高調波成分より遙かに大きな基本波成分に合わせる必要があり、回路構成上の無駄が大きくなる。このように従来、整相加算回路の出力に設けた2f0通過フィルタの出力端には十分な大きさの2次高調波成分を得ることが困難であり、S/N比が低いという問題や、2次高調波成分を用いて生成される画像の感度が低いという問題があった。
【0008】本発明は上記問題点を解消するためになされたもので、2次高調波成分を用いる超音波診断装置において、S/N比の改善、及び画像の感度の向上を図ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係る超音波診断装置は、超音波エコーを受信する複数の振動子からなる振動子アレイと、前記各振動子から出力されるチャネル毎の受信信号を互いに整相加算する整相加算回路と、前記整相加算回路と前記振動子アレイとの間に設けられ、前記振動子アレイの各チャネルからの受信信号に含まれる前記高調波成分を選択的に通過させる高調波成分選択フィルタ部とを有するものである。
【0010】本発明によれば、高調波成分選択フィルタ部が整相加算回路より前段に配置される。高調波成分選択フィルタ部は基本波成分を除去し、整相加算回路には高調波成分のみが入力される。すなわち、本発明では、基本波成分が整相加算回路のダイナミックレンジ内でなければならないという制約は受けず、高調波成分が整相加算回路のダイナミックレンジ内であればよい。このため、高調波成分を整相加算回路のダイナミックレンジに合わせて増幅することができ、整相加算回路の出力側に十分な大きさの高調波成分を与えることができる。
【0011】他の本発明に係る超音波診断装置は、前記高調波成分選択フィルタ部と前記整相加算回路との間に前記各チャネル毎に配置される複数の増幅器を有するものである。
【0012】本発明によれば、基本波成分が増幅器の前段で除去されるため、増幅器には比較的小さい高調波成分が入力される。よって増幅器の小型化、低消費電力化が図れる。
【0013】別の本発明に係る超音波診断装置は、前記各チャネルの受信信号に対し前記高調波成分選択フィルタ部によるフィルタリングを行うか否かを制御し、前記整相加算回路へ入力される前記受信信号の帯域を切り換える帯域切り換え手段と、前記整相加算回路と前記振動子アレイとの間に前記各チャネル毎に配置される複数の増幅器とを有し、前記増幅器のゲインが、前記整相加算回路へ入力される前記受信信号の帯域に応じて可変に構成されることを特徴とする。
【0014】本発明によれば、帯域切り換え手段により基本波成分と高調波成分とのいずれかを選択して整相加算回路から出力させることができ、基本波成分を用いる診断と高調波成分を用いる診断とのいずれにも供することができる。基本波成分を用いる診断を行う場合には、高調波成分選択フィルタ部によるフィルタリングが行われないように帯域切り換え手段が回路を制御する。この場合には増幅器のゲインは、基本波成分が整相加算回路のダイナミックレンジを超えないように比較的小さく設定される。一方、高調波成分を用いる診断を行う場合には、高調波成分選択フィルタ部によるフィルタリングを行うように帯域切り換え手段が回路を制御する。この場合には増幅器のゲインは、高調波成分が整相加算回路のダイナミックレンジを有効に利用できるように比較的大きく設定される。
【0015】さらに別の本発明に係る超音波診断装置は、前記整相加算回路の前段に設けられ、前記各振動子から出力されるチャネル毎の受信信号をアナログ形式からデジタル形式に変換するA/D変換回路を有し、前記高調波成分選択フィルタ部が前記A/D変換回路より前段に設けられるものである。
【0016】本発明によれば、高調波成分をA/D変換回路と整相加算回路との両者のダイナミックレンジに合わせて増幅することができ、それらのダイナミックレンジを有効に利用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態である超音波診断装置の概略のブロック図である。生体との間での超音波の送受信は、探触子30を用いて行われる。例えば、探触子30はビームフォーミング可能なように振動子アレイにて構成される。
【0018】送信系は送信パルス発生回路32、送信遅延回路34、送波ドライバ36を含んで構成される。制御回路38によるタイミング制御の下で、送信パルス発生回路32にて発生され出力された送信パルスは、送信遅延回路34にて振動子アレイの各チャネルごとに遅延される。この遅延量は、送波される超音波がビームを形成するように、制御回路38によって定められる。また制御回路38は各チャネルの遅延量を調整することにより、送波ビームの方向を変えて、生体を走査する制御を行う。
【0019】送波ドライバ36は、各チャネルごとに遅延された送信パルスを送信遅延回路34から受けて、探触子30の各チャネルの振動子へパルスを出力する。探触子30の各振動子は、そのパルスにより励振され、中心周波数f0の超音波を送信する。
【0020】一方、受信系は、プリアンプ40、高調波成分選択フィルタ部42、受信増幅部44、A/D変換部46、整相加算回路48、受信信号処理部50、表示器52を含んで構成される。図2は、本装置の受信系をより詳細に示したブロック図である。この図では探触子30に内蔵される振動子アレイ60が示され、また振動子アレイ60を構成する振動子62ごとの複数のチャネルが明示的に示されている。
【0021】振動子アレイ60から出力された各振動子62ごと(チャネルごと)の受信信号は、プリアンプ部40にて増幅された後、高調波成分選択フィルタ部42に入力される。ここでプリアンプ部40は振動子62とそれが接続される回路とのインピーダンス変換の役割を担う。
【0022】高調波成分選択フィルタ部42の動作にはフィルタモードとスルーモードとの2つがある。フィルタモードでは、プリアンプ部40から出力される各チャネルごとの受信信号から基本波成分の帯域(中心周波数f0)が除去され、2次高調波成分の帯域(中心周波数2f0)が通過される。一方、スルーモードでは、基本波成分は除去されずに2次高調波とともに透過される。これら2つのモードは制御回路38からの制御により切り換えられる。例えば、高調波成分選択フィルタ部42は、各チャネルごとに2f0通過フィルタ回路64とバイパス信号線66とを備え、さらにこれらの何れかを選択するスイッチ68を備えて構成される。スイッチ68は制御回路38により切り換えられる。具体的にはスイッチ68が2f0通過フィルタ回路64をチャネルに接続すれば、高調波成分選択フィルタ部42はフィルタモードで動作し、一方、スイッチ68がバイパス信号線66をチャネルに接続すれば、高調波成分選択フィルタ部42はスルーモードで動作する。これら2つのモードの意義については後述する。
【0023】受信増幅部44は、各チャネルごとの受信信号を増幅する。受信増幅部44の増幅ゲインは可変に構成され、制御回路38の制御を受けて変更される。具体的には、ゲインは上記高調波成分選択フィルタ部42の2つの動作モードに連動して切り換えられる。
【0024】A/D変換部46は、受信増幅部44から出力されるアナログの受信信号をデジタル信号に変換する。
【0025】整相加算回路48は、デジタル遅延器を用いて各チャネル間の位相を調節した後、加算器により各チャネルの受信信号を互いに加算し、受信フォーカスを実現する。ここで制御回路38がデジタル遅延器の遅延量を各チャネルごとに調節・制御する。整相加算回路48は加算により複数チャネルの受信信号を1つにまとめ、これを受信信号処理部50へ出力する。
【0026】受信信号処理部50は、整相加算回路48からの受信信号を用いて、例えば、Bモード断層像等を生成し、表示器52に表示させるといった信号処理を行う。
【0027】次に本装置のフィルタモード、スルーモードについて説明する。本装置は、基本波成分を用いた診断を行う場合にはスルーモードで動作される。スルーモードでは、高調波成分選択フィルタ部42においてスイッチ68がバイパス信号線66側に切り換えられ、基本波成分が高調波成分とともに受信増幅部44に入力される。
【0028】受信信号に含まれる基本波成分と高調波成分とは大きく強度を異にし、例えば高調波成分は基本波成分に対し−20〜−40dBといった信号レベルしか有さない。よって、スルーモードでは受信増幅部44に入力される受信信号のレベルは、もっぱら基本波成分によって定まる。制御回路38は、A/D変換部46より後段の各回路のダイナミックレンジをできるだけ有効に利用するように受信増幅部44のゲインを制御する。具体的にはスルーモードでのゲインGTは、増幅後の基本波成分がA/D変換部46及び整相加算回路48のダイナミックレンジを超えないように設定されることが必要であり、かつ基本波成分ができるだけ大きく増幅されるように設定されることが好ましい。
【0029】一方、本装置は、高調波成分を用いた診断を行う場合にはフィルタモードで動作される。フィルタモードでは、高調波成分選択フィルタ部42においてスイッチ68が2f0通過フィルタ回路64側に切り換えられ、基本波成分が除去され高調波成分のみを含む受信信号が受信増幅部44に入力される。制御回路38はフィルタモードにおいてもスルーモードの場合と同じく、A/D変換部46より後段の各回路のダイナミックレンジをできるだけ有効に利用するように受信増幅部44のゲインを制御する。具体的にはフィルタモードでのゲインGFは、増幅後の高調波成分がA/D変換部46及び整相加算回路48のダイナミックレンジを超えないように設定されることが必要であり、かつ基本波成分ができるだけ大きく増幅されるように設定されることが好ましい。
【0030】上述したように高調波成分は基本波成分に比べて小さいため、それに応じてゲインGFはゲインGTより大きく設定される。これにより受信信号処理部50に十分に大きい高調波成分を供給することができる。また2f0通過フィルタ回路64によって帯域が制限されることに起因して、受信増幅部44における入力換算ノイズ値がスルーモードに比べて低減される。よって、本装置ではフィルタモードの動作によって、高調波成分からなる受信信号のS/N比を確保することができる。受信信号処理部50は良好なS/N比を有する受信信号を入力され、これにより受信信号処理部50にて生成される画像の感度が向上する。
【0031】図3は2f0通過フィルタ回路64の構成例を示す回路図である。図3(a)はプリアンプ部40の出力が低インピーダンスである場合の構成例であり、プリアンプ80の出力にLCR直列共振回路とトランジスタのベース接地回路とからなるフィルタが設けられる。また図3(b)はプリアンプ部40の出力が高インピーダンスである場合の構成例である。
【0032】なお、上述の構成では、A/D変換部46にて受信信号がデジタル信号に変換される場合を示したが、本発明はデジタル信号に変換しない場合にも有効である。具体的には、その場合には整相加算回路48は遅延線と加算器とを用いたアナログ回路として構成され、受信増幅部44のゲインはこの整相加算回路48のダイナミックレンジを有効に利用するように、フィルタモード、スルーモードに対し別個に設定される。
【0033】
【発明の効果】本発明の超音波診断装置によれば、高調波成分選択フィルタ部を整相加算回路、A/D変換回路等よりも前段に配置することにより、後段での信号処理の対象とされる微小な高調波成分を整相加算回路、A/D変換回路等のダイナミックレンジを超えることなく十分に増幅することが可能となり、S/N比の改善、画像の感度向上が図られる。
【出願人】 【識別番号】390029791
【氏名又は名称】アロカ株式会社
【出願日】 平成12年4月7日(2000.4.7)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開2001−286466(P2001−286466A)
【公開日】 平成13年10月16日(2001.10.16)
【出願番号】 特願2000−106277(P2000−106277)