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【発明の名称】 対象者によるバイオメトリックスへのコントロールされた変化のシリーズにより対象者を認証および同定するためのシステム、方法、および記録媒体
【発明者】 【氏名】ルドルフ・マーテン・ボール

【氏名】シトラ・ドーレイ

【氏名】ナーリニ・ケイ・ラーサ

【要約】 【課題】対象者によるバイオメトリックスへのコントロールされた変化のシリーズにより対象者を認証および同定するためのシステム、方法および記録媒体を提供する。

【解決手段】本発明は、結果バイオメトリックスと呼ばれる新規なバイオメトリックスを規定する。これらの結果バイオメトリックスは、従来のバイオメトリックスと、所定のコントロールが行われた変化が従来のバイオメトリックスとが結合されている。すなわち、これらの結果バイオメトリックス信号は、短時間間隔のバイオメトリック信号のシーケンスとされ、これらの信号が所定のパターンにしたがって変更される。得られる指紋または掌紋は、例えば対象者が力、トルクまたは回転またはこれら双方を、イメージ取得時間にわたり加える(コントロールされた変化)ことで、連続的な押印イメージとされる。対象者がイメージを変形させるための物理的な方法は、結果バイオメトリックスの行動的部分となり、指紋または掌紋は、結果バイオメトリックスの生理的部分となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する取得デバイスと、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと時間に対するそれぞれコントロールされた変化とを対応させて記憶する記憶手段と、を含むバイオメトリックス・システム。
【請求項2】 前記バイオメトリックスは、生理的バイオメトリックス、行動的バイオメトリックス、指紋、顔、掌紋、虹彩、網膜、足紋、歩調、署名、キー・ストローク・パターン、および声のいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】 前記コントロールされた変化は、前記対象者により実行される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】 前記コントロールされた変化は、前記対象者に対して外部メカニズムにより誘導される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】 前記メカニズムは、光の変化、光の周波数変化および光の強度変化のいずれか1以上を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】 前記コントロールされた変化は、前記バイオメトリックスの変形、力、圧力、運動、トルク、周波数変化、ジェスチャー、エネルギー変化、音量、加速度、およびパターンのいずれか1以上により誘導される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】 前記バイオメトリックスは、指紋であり、前記コントロールされた変化は、指の運動、指の回転、指の圧力、および指の力のいずれか1以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】 前記バイオメトリックスは、顔であり、前記コントロールされた変化は、顔の運動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】 前記バイオメトリックスは、顔であり、前記コントロールされた変化は、顔の変形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】 前記バイオメトリックスは、掌であり、前記コントロールされた変化は、掌の運動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】 前記バイオメトリックスは、声であり、前記コントロールされた変化は、音量、周波数、パターン、およびイントネーションのいずれか1以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】 前記バイオメトリックスは、歩調であり、前記コントロールされた変化は、立ち止まりパターン、速度、動揺、コース、姿勢、ホップ、スキップ、および歩幅のいずれか1以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】 前記バイオメトリックスは、署名であり、前記コントロールされた変化は、傾斜、ループ、ストレッチ、サイズ、および間隔のいずれか1以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】 バイオメトリックス・システムにより実行される方法であって、該方法は、1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する段階と、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する段階と、を含む方法。
【請求項15】 1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得するための取得デバイスと、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する記憶手段と、を含むコンピュータ・システム。
【請求項16】 1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する段階と、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する段階とを実行する、コンピュータ・プログラムを含むコンピュータ可読な記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バイオメトリックスの分野、すなわち対象物の同定に多かれ少なかれ固有に関連する対象者の生理的または行動的特徴付けに関する。より詳細には、本発明は、従来のバイオメトリックスに対して、コントロールされた変化のシリーズにより形成される新規なタイプのバイオメトリックスに関する。
【0002】本願は、1999年12月2日に出願された仮出願、出願番号第60/168,540号(IBMドケット番号第YO999−588)の優先権主張を伴う出願である。
【0003】
【従来の技術】指紋は、少なくとも50年間にわたり、法律的強制力を付与する目的で半自動的に個人を同定するために使用され、かつビルディングへのアクセスやコンピュータへのログインといったアクセスを制御するための自動認証の用途において、数10年間にわたり使用されてきた。個人同定を自動的に認証するための署名認識は、主に銀行における用途のため、少なくとも15年間にわたり使用されてきている。自動指紋同定システム、または自動署名同定システムにおける第1の段階は、対象物の指紋または署名を取得する信号取得段階である。指紋を取得するためのいくつかの技術としては、インクによる指紋またはインクを使用しない指紋を、光学的、容量的、および他の半導体に基づく検出技術を使用して走査することを挙げることができる。取得された信号は、処理され、指紋の機械的な表現である記憶されたテンプレートに対してマッチングが行われる。イメージ・プロセッシング技術は、典型的には指紋の突部および谷部とを位置合わせして、指紋イメージの突パターンと、谷パターンとからテンプレートを導出する。
【0004】署名は、他方では、感圧性のライティング・パッド、または電気−磁気的な筆記記録デバイスを使用して検出される。より進歩したシステムにおいては、ペンの速度と、加速度とを算出する特殊なペンを使用する。記録された信号は、静的な署名認識の場合には単純な(x,y)座標のリストとすることができるか、または動的な署名認識においては座標は、(x(t),y(t))といった時間の関数とすることができる。署名を表すテンプレートは、指紋のテンプレートよりも、より直接的に取得された信号に関連する。例えば、署名の表現としては複数の端部の間においてそれぞれのストロークにつき加速度がコード化されたストロークのセットとして表現できる。署名認証の例としては、V.S.Nalwa、“オン−ライン自動署名証明”、プロシーディングス・オブ・IEEE、第215頁〜239頁、1997年2月を挙げることができる。
【0005】指紋、署名、顔、声といったバイオメトリックスは、最近では例えば医療書類へのアクセス、ATMへのアクセス、インターネット・サービスへのアクセス、および他の類似のアプリケーションなど、ユーザの同定を認証するためにますます使用されてきている。
【0006】インターネットの急速な進歩に伴い、多くのe−コマースおよびe−ビジネス・アプリケーションが開発され、使用されている。例えば、インターネットによるクレジット・カードを用いた小売り購買、旅行予約は、きわめて普通の商業的応用例である。今日においては、同定および認証それぞれのため、ユーザは、ユーザIDおよびパスワードにより認識されている。指紋、署名、声紋、虹彩イメージ、顔イメージといったバイオメトリックス(生物的測定指標)を含む、認証、および可能であれば同定のためのより確実な方法が、同定のための上述した単純な方法に代えられるのは、きわめて間近なことであろう。自動化されたバイオメトリックス・システムは、多かれ少なかれユーザを固有に同定する当該ユーザからの信号を取得することを含んでいる。例えば、指紋に基づく認証のためには、ユーザの指紋が走査され、いくつかの表現が計算および記憶される必要がある。認証は、その後ユーザの新たに取得された指紋イメージから抽出された表現と、登録の時点で記憶されたイメージから抽出された記憶された表現とを比較することにより行われる。話者証明システムでは、ユーザの話声信号が記録され、いくつかの表現が計算され、記録される。認証は、アクセスまたはログオンの時点で記録された話声信号と、記録された表現とを比較することにより行われる。同様に、署名証明については、テンプレートは、ディジタル化された署名から抽出され、あらかじめ算出しておいたテンプレートと比較される。
【0007】バイオメトリックスは、広く2つのグループに区別される:行動的バイオメトリックスおよび生理的バイオメトリックスである。生理的バイオメトリックスは、指紋、虹彩などのように時間に対して比較的一定のバイオメトリックスである。行動的バイオメトリックスは、他方で時間に対してゆっくり変化するか、またはより短時間で突然に変化する可能性がある。これらのバイオメトリックスとしては例えば、署名、声、顔を挙げることができる(顔は、基本的な特徴が容易に変わらないので生理的バイオメトリックスと多くの場合には考えられるが、老化、調髪、あごひげの伸び、表情は、顔の全体としての表現を変化させるためである。)。本発明の分野は、生理的バイオメトリックスおよび行動的バイオメトリックスに関し、より詳細には、本発明は、バイオメトリックスの新規な型として用いることができ、ユーザによりコントロールされた変化のシリーズである行動的変化といった、生理的または行動的バイオメトリックスに関する。
【0008】インターネットに基づくコマース/ビジネス・ソリューションは、ユーザの家といった、遠隔した管理されていない位置からアクセス可能である。このため、バイオメトリックス信号は、スーパーバイズされない遠隔的なユーザから取得される必要がある。このため、指紋または掌紋リーダ、署名ディジタイザまたは顔または虹彩を取得するためのカメラが、ユーザの家にあるコンピュータに取付けられる。このことは、当然のことながら不正、かつ認証されないシステム・アクセスの可能性を与えてしまう。悪意を持つ個人、または機関は、インターセプトすることによって、真のユーザからネットワークを通してバイオメトリックス信号を得るか、またはユーザが自己のバイオメトリックスを使用しているアプリケーションから当該信号を得ることことが可能となる。記録された信号は、その後インターネット・サービスの登録された真正のユーザとして振る舞うことで、未知で不正な目的で再利用されることになる。最も簡単なその方法は、信号を一度取得して何度か再利用することである。以前に取得されたその信号には僅かな攪乱を加えることができ、“フレッシュ”に見えるバイオメトリックス信号が生成される。完全な指紋または掌紋が侵入者に知られている場合には、より高度な方法は、例えばシリコンまたはラテックスといった材料から、人工的な(偽の)指または掌の3次元コピーを製造することである。真正なユーザの指紋または掌紋イメージがその後、多くの労力を要せずして詐称者により製造されることになる。トランザクション・サーバ、認証サーバ、または他のコンピューティング・デバイスは、かくしてクライアントから通信されたバイオメトリックス信号が、その時点の生の信号であるか、以前に取得されたのではない作られたまたは入手された信号であることを保証する役割を担うことになる。人工的な身体部分を使用すれば、これらの身体部分を製造するために正規な材料が用いられている場合には、多くの指紋および掌紋リーダは、門外漢に対してはきわめて正当なものと認められるイメージを与える。これらのイメージは、多くの場合にはまた、認証システムの構成部分である処理部に対しては真性なものと見なされる。したがって、静的な指紋または掌紋イメージが真性な指または掌により与えられたものであるか、または偽のコピーにより与えられたものであるかを判断することは、きわめて困難である。別の生理的バイオメトリックスには、同様の制限があり、真性ユーザの虹彩が撮影され、認証されていないアクセスのために用いられることになる。良好な虹彩認識システムは、虹彩直径の早い振動を検出するが、この現象でも虹彩イメージのシーケンスによりまねることができる。同様の方法は、当然のことながら顔バイオメトリックスについても用いることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】指紋、およびこれよりは少ない程度に掌紋は、医療書類へのアクセス、ATMアクセス、および他の類似のアプリケーションに対して、ユーザの同定を認証するためにますます用いられてきている。従来の同定方法における問題点は、3次元の偽の指紋または掌紋を製造することが可能なことにある。シリコーン、ラテックス、ウレタン、および他の材料がこれらの人工的な身体部分を製造するために使用することができ、ほとんどのイメージ取得デバイスは、真性の押印と区別することが困難な人工的な身体部分の突部の、真正と見なされる押印を簡単に与えてしまう。この原因は、与えられた指紋押印または掌紋押印が、或る瞬間における像の静止描画であることにある。指紋は、時間に依存するものではない。同様の問題は、顔および虹彩のようなバイオメトリックスについても存在する。この場合における問題は、2次元または3次元の偽のコピーが製造され、バイオメトリックス・セキュリティ・システムを欺くために使用されるということであり、この理由は、バイオメトリックスが時間に依存しないことにある。
【0010】従来技術における別の問題は、バイオメトリックス信号の取得中に、単一の静止した指紋または掌紋のみが収集されることにある。この瞬間的なイメージは、ユーザがイメージ取得デバイス(指紋リーダまたは掌紋リーダ)に対して、指で力やトルクを加えるので、指または掌の突部および谷部の変形した描画となることもある。問題は、1つ以上のイメージを収集する、すなわちセンサの機構を変更することなしにはイメージが変形なく取得されたか否かを検出できないことにある。これに加えて、従来技術には、個人の同定のために使用できるイメージは、ただ1つしか選択できないという問題がある。当然ながら、顔および虹彩といった非接触のバイオメトリックスについても、バイオメトリックス・パターンの変形は、検出できないか、または検出するのがきわめて困難である。
【0011】従来技術を記載した文献として、以下のようなものがある。
・アーレン・プおよびデメトリ・プサルティス、「指紋の連続入力によるユーザ同定」、・米国特許第5,933,515号
米国特許第5,933,515号におけるプおよびプサルティスにより開示された方法は、ユーザが記憶すると共にユーザのみが知るシーケンスで多数の指を使用するものである。指に、例えば左から右へと0から9まで準番づけをしていれば、シーケンスは、PIN以外の何者でもない。上述したシーケンスに指紋イメージを加えたものを、一つのバイオメトリックスとして考えるのであれば、シーケンスは変更でき、バイオメトリックスの非静止部分となる。しかしながら、この技術は、既存のバイオメトリックスに対してコントロールされた変化のシリーズではなく、それぞれの指のパターンは変わらず、シーケンスのパターンが変わるものである。問題は、指紋エントリはより遅いプロセスなので、PINエントリを見るよりもより容易に誰でも指紋のシーケンスを見る可能性があることにある。さらには、比較のため、対象者のそれぞれの指紋を記憶しておくことが必要とされる。
【0012】従来技術の他の問題点は、バイオメトリックス信号の認証性を確証するために、センサ(指紋リーダまたは掌紋リーダ、表情カメラ)には、身体部分認証のため、またはセンサ認証のため、コンピュテーション・リソースを組込む必要があることにある。身体部分認証は、共通して心拍および体温測定により行われる。センサ認証は、問い合わせと応答という、質疑セッションの形態として、センサと認証サーバの間における2方向通信により行われる。
【0013】従来の掌紋および指紋において大きな問題となりうるのは、ユーザが何らかの理由により指紋、または掌紋を失ったり、または失った方の手に像のテンプレート表現がある場合に、像を代えることができないため、像は、いつまでも不確実なものとされることにある。このために別の指の像を使用することができるものの、数回程度行うことができるに過ぎないものである。
【0014】静止した指紋を使用する従来のシステムの問題点は、指紋と共に用いることができ、その識別能力に付加して使用することができる情報がないことにある。すなわち、見かけ上近い指紋を有する個人は、指紋が静的で、付加的な情報をこれらの像を区別するために利用できないことから、混同されてしまうことになる。
【0015】従来の指紋データベースは、まず指紋タイプ(蹄状紋、渦紋、...など)をフィルタリングすることにより検索を行う。この従来技術の問題は、指紋イメージは、時間的に静的なスナップショットであり、指紋には付加情報が何も伴われないので、指紋クラスがわずかしか存在しないことにある。
【0016】いずれの従来技術であってもバイオメトリックスには、他のバイオメトリックスと後退比較が行われないという最終的な問題がある。つまり、認証のための顔の使用は、指紋データベースとは後退比較されることはない。
【0017】本発明の目的は、既存のバイオメトリックスのコントロールされた変化のシリーズを通して対象者により与えられる新規なタイプのバイオメトリックスにある。
【0018】本発明の別の目的は、生理的および一時的な特性の双方を有するユーザ・コントロールされた変化のシリーズを通して変更されるバイオメトリックスにある。
【0019】本発明の別の目的は、生理的、物理的(例えば、力、トルク、直線運動、回転)、または一時的な特性およびこれら双方を含むユーザ・コントロールされた変化のシリーズを通して変更されるバイオメトリックスにある。
【0020】本発明の目的は、信頼性の低下したバイオメトリックスを変更する効率的な方法にある。
【0021】本発明の目的は、従来のバイオメトリックスに、ユーザが選択する行動的なバイオメトリックスを結合させたユーザがコントロールする変化のシリーズを通して変更されるバイオメトリックスにある。
【0022】本発明のさらなる目的は、偽造された身体部分により与えることがより困難なバイオメトリックスにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した、または他の目的を、結果バイオメトリックスと呼ぶ、ユーザがコントロールした変化を通して変更されるバイオメトリックスの新規なクラスを採用することにより達成するものである。バイオメトリックスとは、個人に付随する多かれ少なかれ固有の特性をいう。バイオメトリックスとしては、生理的バイオメトリックスと、行動的バイオメトリックスとがある。生理的バイオメトリックスには、時間と共に変化しないか、またはきわめて僅かに変化する特性であるが、行動的バイオメトリックスは、個人の雰囲気、メンタルまたは物理的状態に依存するので時間と共に変化し、かつ突然に変化する場合もある特性である。生理的バイオメトリックスの例としては、指紋、虹彩、顔を挙げることができ、行動的バイオメトリックスの例としては、声および署名を挙げることができる。
【0024】本発明において導入されるバイオメトリックスは、行動的バイオメトリックスまたは物理的要素またはこれら双方を使用して、生理的または行動的なバイオメトリックスの見かけを変更(時間に対する変化をコントロールすることによる)することにより、対象者により与えられる生理的または行動的バイオメトリックス信号の結合とされる。好適な態様においては、得られる指紋および掌紋は、像の走査に伴って像の見かけを力、トルク、回転を変化させることにより変えられる。このことにより、指紋または掌紋像イメージが指または掌、すなわちこれらの像の押印が、連続的、かつ、力、トルク、回転、すなわち物理的要素、または行動的バイオメトリックス(例えば、署名またはジェスチャー)、またはこれら双方にしたがって弾性的に変形されたシーケンスとされる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明は、結果バイオメトリックスと呼ぶ新規なバイオメトリックスを導入するものである。結果バイオメトリックスとは、生理的または行動的なバイオメトリックスを所定の時間間隔にわたって変換する方法である、所定のサンプル・レートで記録した第1のバイオメトリックス信号に第2の行動的バイオメトリックスを加えて結果として得られる、生理的または行動的なバイオメトリックス信号の連続したシーケンスをいう。この変換は、第1のバイオメトリックスに対して、ユーザ・コントロールされた変化のシリーズとして得られるものである。
【0026】従来の指紋といったバイオメトリックスは、数10年間にわたり(自動的)認証および同定の目的で使用されてきている。署名は、同一性の法律的拘束力を有する証拠として認識されており、自動署名認証/証明方法は、少なくとも20年にわたり利用可能とされている。図1は、これらのバイオメトリックスを例示した図である。左上には、署名110が示され、右上には指紋押印130が示されている。左下には声(声紋)が示されており、右下は虹彩パターンである。
【0027】バイオメトリックスは、対象者(人間)の自動化認証または同定のために用いることができる。典型的には対象者は、銀行口座を開設する、インターネット・サービスに登録をするなどの際に、サンプル・バイオメトリックスを提供することにより記憶されている。このサンプル・バイオメトリックスから、ユーザが口座またはサービスにアクセスを希望する時点におけるマッチング目的のため記憶され、かつ使用されるテンプレートが得られる。説明する好適な態様においては、結果バイオメトリックスのためのテンプレートは、バイオメトリックスの従来のテンプレートと、時間に対してそのバイオメトリックスの見かけの変化を記録したテンプレートとを、結合したものである。
【0028】得られる指紋および掌紋についてはより詳細に後述する。指紋テンプレートまたは掌紋テンプレートは、力を加えない状態、トルクまたは回転が加えられた状態のシーケンスにおいて、選択された押印から導出される。軌跡のテンプレートは、得られる指紋の時間に対する運動軌跡を定量的に記述する。2つのテンプレートをマッチングさせることは逆に、従来の指紋テンプレートと署名マッチングに類似する軌跡の動的なストリング・マッチングを結合させたものとなる。このストリング・マッチングは、従来技術においては良く知られたものである。ユーザがトルクを加えながら検出されることで得られた指紋について、さらに詳細に説明する。
【0029】バイオメトリックスは、多かれ少なかれ個人を同定し、所定のバイオメトリックス信号は、当該バイオメトリックスを唯一の個人が保有するか、または当該バイオメトリックスを保有する人々のリストを著しく狭めるものである。指紋は、歴史的に同一の指紋を保有する2の個人がこれまで見出されていないので、優れたバイオメトリックスである。他方で、靴のサイズ、体重といったバイオメトリックス信号は、これらの信号が僅かな選別価値しか持たないことが明らかなので、バイオメトリック信号として充分なものではない。バイオメトリックスは、行動的バイオメトリックスと、生理的バイオメトリックスとに、区別することができる。行動的バイオメトリックスは、個人の物理およびメンタル状態に依存し、時間に対して急激に変化する可能性のある変化するものである。行動的バイオメトリックスとしては、署名110および声紋120を挙げることができる(図1参照)。生理的バイオメトリックスは、他方で変化が少ないものである。指紋については、図1の指紋130に示される突部および谷部の基本的な流れ構造は、本質的に個人の人生といったスパンにわたって変化しない。他のバイオメトリックスの例としては、図1に示す対象者の虹彩140の円形テクスチャを挙げることができ、これについても対象者の人生といったスパンにわたり変動が少ないと考えられている。したがって、例えば110および120といった既存の行動的バイオメトリックスについては、ある程度対象者により制御することができ、かつその見かけが影響を受けない既存の生理的バイオメトリックス(虹彩140)、または僅かにしか影響を受けない(指紋130)生理的バイオメトリックスが存在する。左側の署名と声紋とは、行動的バイオメトリックスであり;右側の指紋と虹彩イメージとは、生理的バイオメトリックスである。
【0030】ここで、図2を参照する。典型的な従来の流れを汲んだ自動指紋認証システムは、バイオメトリックス・マッチング・システムへの入力210として指紋イメージ(バイオメトリックス信号)を使用する。このシステムは、他の3つの段階215、220、225から構成されており、これらの段階は、特徴を抽出するための信号処理段階215と、特徴からテンプレートを抽出する段階220と、テンプレートをマッチングする段階225とを含む。バイオメトリックス信号210とともに、対象者の識別部212がマッチング・システムへと入力される。テンプレート・マッチング・段階225の間に、この特定の識別部に伴われたテンプレートが、同一性(識別部)によりインデックスされたテンプレートの所定のデータベース230からリトリーブされる。抽出されたテンプレート220と、データベース230からリトリーブされたテンプレートとの間においてマッチ/ノーマッチを行う場合には、“Yes/No”の応答240が、マッチング・システムの出力とされる。マッチングは、典型的には類似性の尺度により行われ、この尺度が著しく高い場合には、応答は“Yes”とされ、そうでなければ応答は“No”とされる。下記の引用文献は、従来技術を記載した例である。N.K.ラーサ、S.チェン、A.K.ジェイン、指紋イメージの特徴抽出に基づく適応可能なフロー・オリエンテーション、パターン認識、第28巻、第11号、第1657〜1672頁、1995年11月【0031】システム200は、指紋認証に限定されず、このシステムのアーキテクチャは、いずれのバイオメトリックスについても適正である。システムに入力されたバイオメトリック信号210は、クライアントのアプリケーションに対して局在化されたものであるか、または所定のサーバにおいてマッチング・アプリケーションを動作させる、遠隔的なもののいずれかである。このため、アーキテクチャ200は、すべてのバイオメトリックスおよびネットワークされた、またはネットワーク化されていないアプリケーションに適用することができる。
【0032】図2に示したシステム200は、認証システムであるが、図3に示されるシステム250は、同定システムである。典型的には、従来の流れを汲む自動バイオメトリックス信号同定システムでは、入力210(図2を参照のこと)のみを用いる。再度、システムは、3つの段階215、220、225から構成され、これらの段階は、特徴抽出のための信号処理段階215と、特徴からテンプレートを抽出する段階220と、テンプレート・マッチング段階225とを含んでいる。しかしながら、同定システム250においては、バイオメトリック信号210がシステムへと入力される。テンプレート・マッチング段階225の間には、抽出されたテンプレートは、すべてのテンプレートとデータベース230内に記録された識別子の対とマッチングされる。抽出されたテンプレート220とデータベースにおいて同一性を含むテンプレートとの間にマッチングがあれば、その同一性が同定システム250の出力225とされる。データベース230においてマッチングしなければ、出力される同一性225は、NILと設定される。再度、バイオメトリック信号210は、クライアントのアプリケーションにおいて局在化したものであるか、または所定のサーバ上で遠隔的にマッチングされるアプリケーションのいずれかとされる。したがって、アーキテクチャ250は、ネットワーク化された、またはネットワーク化されていないアプリケーションに対して適用することができる。
【0033】バイオメトリック信号は、システム・レベルおよび対象者レベルにおいて結合(一体化)される。対象者レベルでの一体化が本発明の目的である。システムを、異なった方法との比較のため、および一体化された対象者レベルでのバイオメトリックス(結果バイオメトリックス)についての判定方法を示すため、図4〜図7にまとめる。2つのバイオメトリックスを結合(一体化)させるための4つの可能性が図4〜図7に示されている。それぞれ、AND210を行うこと(図4)、OR220により結合を行うこと(図5)、ADD230により結合を行うこと(図6)、およびシーケンシャル240に結合を行うこと(図7)である。対象者Zの2つのバイオメトリックスB(250)およびB(260)は、図4に示すように、認証のために使用される。しかしながら、対象者の2つ以上のバイオメトリックスは、直接的な方法により結合することができる。これらのバイオメトリックスは、例えば2つの指紋というように同一でも良く、また例えば指紋と署名というように異なったバイオメトリックスとすることができる。バイオメトリックスBおよびBについての対応するマッチング手段は、それぞれ図4のマッチング手段A202およびマッチング手段B204である。これらのマッチング手段は、入力されたバイオメトリックス250およびバイオメトリックス260のテンプレートを、記憶されたテンプレートと比較して、“Yes/No”214応答をシステム210およびシステム220において与えるか、またはシステム230およびシステム240におけるように、スコア値S(231)およびS(233)を与える。
【0034】システム210は、ANDを行うことでマッチング手段A202およびマッチング手段B204の2つの“Yes/No”応答を結合させ、これらの結果をANDゲート212を通して結合させる。したがって、双方のマッチング手段202および204が一致する場合にのみ、システム210の“Yes/No”応答216は、“Yes”となり(バイオメトリックスは双方とも一致し、対象者Zは、認証される)、それ以外は、出力216は、“No”となる(バイオメトリックスの一方または双方が一致せず、対象者Zは排除される)。システム220は、ORを通じて結合を行うものであり、マッチング手段A202と、マッチング手段B204の2つの“Yes/No”応答を用いて、ORゲート222により結果を結合させる。したがって、マッチング手段A202とマッチング手段B204との一方の“Yes/No”出力214が“Yes”である場合に、システム220の“Yes/No”出力216は、“Yes”となる(バイオメトリックスの一方または双方が一致し、対象者Zは、認証される)。マッチング手段202およびマッチング手段204の“Yes/No”出力214が双方とも“No”である場合にだけ、システム220の“Yes/No”出力216は、“No”とされる(双方のバイオメトリックスは一致せず、対象者Zは、排除される)。
【0035】システム230については、ADDによりマッチング手段A202とマッチング手段B204とが結合されて、マッチング・スコアS(231)およびS(233)がそれぞれ生成されている。スコアSは、バイオメトリックスB(250)から抽出されたテンプレートが、どの程度マッチング手段A202に記憶されたテンプレートに対して類似しているかを表し、スコアSは、バイオメトリックスB(260)から抽出されたテンプレートが、どの程度マッチング手段B204に記憶されたテンプレートに対して類似しているかを表すものである。加算手段ADDer232は、スコア231と233との和、S+Sを出力する。234でこの和は、判定しきい値Tと比較され、S+S>T(236)である場合には“Yes”とされて、バイオメトリックスBおよびBを有する対象者Zが認証され、それ以外には出力は、“No”(238)となり、対象者は排除される。
【0036】図7のシステム240は、対象者Zのバイオメトリックス(250)とB(260)とを連続して結合する。まず、バイオメトリックスB(250)をマッチング手段A(202)に記憶されたテンプレートとマッチングさせてマッチング・スコアS(231)を得る。得られたマッチング・スコアは、しきい値T(244)と比較され、テスト244を通過しなければ、出力が“No”(238)とされて対象者Zが排除される。そうでなければ、バイオメトリックスB(260)は、再度マッチング手段B(204)に記憶されたテンプレートとマッチングされる。このマッチング手段の出力スコアS(233)は、しきい値T(246)と比較される。出力が“Yes”、すなわち>Tであれば、対象者Zが認証される。それ以外には出力が“No”(238)であれば、対象者Zは排除される。
【0037】図8は、ユーザの動作を結合する、すなわち対象者レベルでのバイオメトリックスの結合ための一般的なフロー図である。ユーザの動作は、署名を行う場合のペンの運動とまさに同様に、第2の行動的バイオメトリックスである。ユーザ410は、従来のバイオメトリックス420を認証または同定の目的のために提供する。このようなバイオメトリックスとしては、指紋、虹彩、または顔を挙げることができる。しかしながら、そのバイオメトリックスを指紋または顔の場合のように静止したままで保持するのではなく、または虹彩認識の場合のように目を開いておくのではなく、ユーザは、バイオメトリックスに対して所定の特定の動作430、α(t)を実行する。この動作は、時間0(434)〜所定の時間T(436)までの時間432にわたって実行される。したがって、動作α(t)は、時間430に対する所定の一方向関数であり、従来のバイオメトリックス420として作用する。このバイオメトリックスは、ユーザ410の実際のバイオメトリックスであり、機械読み取り可能な信号ではない(すなわち、指紋の場合においては、指の上に模様のある3次元の指である)。動作430に対する制約は規定されるものの、この制約の範囲内においてユーザ410は、動作を規定することができる(例えば、署名を行う際の制約は、ユーザがペンを紙上においてx、y方向へと移動させるが、z方向にはペンを移動させることができないことである)。すなわち、所定の動作430は、ユーザのバイオメトリックを時間に対して変換する。バイオメトリック信号読み取りデバイス460への入力が、この変換されたバイオメトリックス450となる。このデバイスの出力470は、時間0(434)〜時間T(436)までの間の、個別的に変換されたバイオメトリックス信号B(t)480のシーケンス(シリーズ)となる。指紋の場合には、複数の指紋イメージとなり、顔の場合には複数の顔のイメージとなる。この出力シーケンス470は、所定の抽出アルゴリズム490への入力485とされる。抽出アルゴリズムは、それ自体がバイオメトリックスである変換されたバイオメトリックスの対(α′(t),B)495のシーケンスから計算を実行する。関数α′(t)は、バイオメトリックスBの時間間隔[0,T]にわたる所定の行動様式であり、ユーザにより選択された関数α(t)に関連する(ユーザが署名を選択するのにきわめて類似する)。バイオメトリックスBは、対(α′(t),B)から算出され、α(t)430は、ゼロがユーザが全く行動を起こしていないときであり、出力470は、変形されていないディジタル化バイオメトリックス420となる。概ね、信号480においてバイオメトリックス420は変形を受けていない状態で算出することができる。
【0038】ここで、図9を参照する。図9は、ユーザが指紋リーダ510上で指を回転させることができるようにされた状態における、指紋の結果バイオメトリックスを例示した図である(ガラス・プレートに対してスライドさせることなく)。このような回転は、ユーザが規定した所定の角度αで、時間の関数α(t)にしたがって実行される。結果として得られる指紋の例を図9に示す。ユーザは、手の位置520において、指540を指紋リーダ510上に載せる。その後時間0(434)から時間T(436)まで、ユーザは、指540を時間の関数α(t)で所定の角度αにしたがってガラス・プレート上で回転させる。この回転は、水平面内で行われ、この平面は、指紋リーダのガラス・プレートに対して平行とされる。この場合の回転の関数は、得られる指紋の行動的部分となり、ユーザにより規定される(結果バイオメトリックスのこの部分が不確実である場合には、ユーザは得られる指紋の、この行動的部分を再度規定することができる)。まず、ユーザは、角度550だけ手の位置525まで左へと回転を行う。その後、ユーザは角度555だけ最終的な手の位置530まで右へと回転を行なう。時間間隔[0,T]にわたるこの操作の間、指紋リーダは、変換された(変形された)指紋イメージのシリーズとしての出力470行う。この出力470は、図8に示すように変換されたバイオメトリックス480(指紋)のシーケンスとなり、これらの変換されたバイオメトリックス480が抽出アルゴリズム490へと入力される(図8)。このアルゴリズムは、与えられた出力470を、時間の関数α(t)として角度αを、時間0(434)から時間T(436)にわたり算出する。得られた指紋は、この場合には(α(t),F)であり、Fは、変形を受けていない指紋イメージである。変形を受けていない指紋イメージは、回転角度αが0である、時間434,570,436において見出される。変形された指紋イメージから回転角度を抽出するために好適な方法については、図13〜図15に示す。
【0039】図10は、スキャナ上で指を運動させるため図9で示した1自由度ではなく、ユーザが4つの自由度を有する状態で得られる指紋バイオメトリックスの例を示した図である。再度、図9のようにユーザは、z−軸(この軸は、指紋リーダ510のガラス・プレートに対して垂直な軸である)を中心として指540を回転させることができるようにされている。これがまず、550に沿って左へと、その後55に沿って右へという回転αで示されている。これは、手を520、525から最終的な手の位置530へと運ぶことにより行われる。また、いかなる所定の角度αにおいても、ユーザは、回転β610を指の軸620を中心として実行することができる。最後にユーザは、力f630を指紋リーダ510のガラス・プレートに平行に加える。この力は、指632の方向にのみ集中するか、または634のように集中させないことができる。指632の方向に集中する前者の場合には、指を運動させるための自由度(ガラス・プレートをスライドさせることなく)は、3であり、力を集中させることがない後者の場合には、自由度は4となる。角度α、βに力fを加えることが結合され、これを運動mとして参照する。ユーザの時間間隔[0,T]にわたる操作の間に、指紋リーダは、変換(変形)された指紋イメージのシーケンスを、出力470する。この出力470は、図8に示されるように変換されたバイオメトリックス(指紋)のシーケンス480であり、これらの変換されたバイオメトリックスが抽出アルゴリズム490へと入力される(図8)。このアルゴリズムは、与えられた出力470と、角度αと、角度βとを、間隔0(434)〜時間Tにわたる時間の関数として算出する。例えば、角度αの関数であるα(t)は、図9の関数560である。さらには、アルゴリズムは、力630を算出する。指の方向632に沿って力が集中している場合には、f(t)は、一方向関数となる。力がいずれの方向でもリーダ510のガラス・プレートに沿って加えられている場合には、f(t)は、2方向関数となる。力は、したがってx方向の成分とy方向の成分とを有する。この場合に得られる指紋は、(α(t),β(t),f(t),F)または(m(t),F)となり、Fは、変形を受けていない指紋イメージである。変形を受けていない指紋イメージは、再構成された運動m(690)がゼロの状態である時間434,570,436において見出される。
【0040】図11は、指紋と同一の原理を掌紋に適用した実施例を示した図である。掌紋リーダ710は、ガラス・プレート720を含んでおり、このガラス・プレート720は、例えばドアの隣にマウントすることができる。掌紋テンプレートとマッチングしたユーザのみが認証され、アクセスが許可されることになる。ユーザは、自分の手730を掌紋リーダのプレート720へと置く。図9および図10に示した結果として得られる指紋のように、ユーザは、掌バイオメトリックスを静止させておく必要はなく、掌を運動させる。図11に示した場合には、ガラス・プレートに垂直な軸に対する軸を中心とした掌の回転は、得られる掌紋バイオメトリックスの行動的部分である。ユーザは、例えば手を右側740へと回転させ、その後手を左744へと回転させ、さらにその後手を再度右748へと回転させる。図9に示すように、所定の時間間隔[0,T]にわたるこれらの操作の間、掌紋リーダは、変換(変形)された掌紋像イメージのシーケンスを出力する。この出力は、図8に示すように変換されたバイオメトリックス(掌紋)のシーケンスであり、これらのバイオメトリックスが図8のように抽出アルゴリズム490へと入力される。アルゴリズムは、時間間隔0(434)から時間T(436)にわたり、与えられた掌紋リーダ710の出力と、時間の関数α(t)として掌の回転角度αとを算出する。得られる掌紋プリントは、(α(t),P)であり、Pは、変形を受けていない掌紋像イメージである。変形を受けていない掌紋イメージは、回転角度がゼロの時間である、434,570,436において見出される。
【0041】図12は、顔を用いて得られるバイオメトリックスを示した図である。対象者800は、生理的な顔のバイオメトリックスに行動的部分を加えた双方の認識する同定または認証のため、カメラの前面でポーズを取っている。この行動的部分は、対象者の頭部の運動により導入される。この運動は、時間の関数Face−image(t)として顔のイメージのシーケンスを発生させる。対象者の顔がカノニカル・ポジションにある場合には、頭部は、Y軸810が頭部の長さ方向に沿った座標系805に埋め込まれる。X軸820は、耳を結ぶラインに平行とされ、Z軸830は、顔の前に置かれる面に垂直とされている。この場合、対象者は、得られるバイオメトリックスFace−Image(t)を、Y軸を中心として顔を左右させることによって発生させて、時間の関数であるPan(t)としてpan840を得る。対象者は、さらにY軸および左右の方向に広がる面860内で顔を曲げることにより顔を傾ける(850)こともできる。
【0042】この傾き850は、別の時間の関数Tilt(t)を与える。したがって、この場合に得られるバイオメトリックスは、それぞれ所定の時間tにおける顔イメージFace−Image(t)と、顔の前面像と、左右、傾斜Pan(t)およびTilt(t)となる。シーケンスにおける顔イメージは、顔のイメージの数学的な変換である。本発明においては、別の手段を通じた顔イメージの別の変形も用いることができる。
【0043】図13には、得られたバイオメトリックスから行動部分を抽出するための一般的なプロセスのブロック図900を示す。入力910は、バイオメトリック信号のB(t)のシーケンスである。ブロック920では、これに続くバイオメトリックス信号B(t+1)と、B(t)とが、信号間解析を通して処理される。ブロック930においては、行動部分における変化α(t+1)−α(t)を抽出するために、この解析を使用する。また、これは、出力a(t)を時間940の関数として与え、a(t)は、得られるバイオメトリックスB(t)の行動部分となる。図13には、特徴的なステップ(イメージ間フロー解析およびアフィン運動パラメータ推定)が、図9において生成された変形した指紋イメージのシーケンスから指の運動を推定するために加えられている。これらについては、さらに図14および図15において詳細に説明する。
【0044】一つの指紋イメージから次への回転は、図14に説明するステップを使用して推定することができる。イメージB(t)およびB(t+1)1010,1015は、16×16のブロック1020,1022,1024,...1028へと、MPEG圧縮基準として与えられるように分割される。図14に示す2つのイメージ(1010および1015)である指紋イメージ・シーケンスB(t)が与えられると、イメージ内に存在するそれぞれのブロック(サイズは、16×16である)1030についてイメージ間フロー(u,v)1040が計算される。これは、いずれのイメージB(t)1010においても、シーケンス中でその直後のイメージB(t+1)1015につき表現される運動を表したものである。フロー特徴付け[u(x,y),v(x,y)]1050は、(x,y)1060およびイメージ・シーケンスのt1070の関数であり、したがって矛盾のない解釈を行うため一定の運動の表現とされる。この運動表現1050は、MPEG−1またはMPEG−2イメージ・シーケンスにおいてコード化された粗運動ベクトルから算出することができる。入力が圧縮されていない場合には、フロー・フィールドは、従来知られている運動推定技術を用いて推定することができる。
【0045】下記の引用文献は、それぞれMPEG圧縮の現在の技術と、イメージ・シーケンス内における光学的なフロー推定例と、MPEG圧縮されたイメージ・シーケンスからフローを直接抽出する従来の例を開示するものである。B.G.ハスケル、A.プーリ、A.N.ネトラービ、ディジタル・ビデオ:MPEG−2へのイントロダクション、チャップマン・アンド・ヒル、1997年、J.ベルゲン、P.アナンダン、K.ハンナ、R.ヒンゴラーニ、階層的モデル・ベースの運動推定、セカンド・ヨーロピアン・コンファレンス・オン・コンピュータ・ビジョン、第237頁〜第252頁、1992年、シトラ・ドーレイおよびビクラント・コブラ、HDTVコンテンツ・マネージメント・アプリケーションのためのMPEG−2圧縮されたビデオからモーション・アノテーションの抽出、IEEE・インターナショナル・コンファレンス・オン・マルチメディア・コンピューティング・アンド・システムズ、第673頁〜第678頁、1999年。
【0046】ここで、図15を参照する。ブロック1020,1022,1024,...,1028におけるフロー[u(x,y),v(x,y)]1050を試験することにより、図15においてピボット領域として示されているゼロ−モーション・ブロックの最も大きな連結部分が決定される。さらにこの領域においてフローを解析する。所定のイメージ・シーケンスにおいて各イメージについて算出されたフローを用いて、指紋領域からのモーション・パラメータがイメージ−イメージ・フローのアフィン運動モデルをインポーズし、領域1110の境界ボックス1120を中心として半径方向の非ゼロ運動ブロックをサンプリングすることにより、算出することができる。アフィン運動A1130は、形状1140から図16に示す形状1145へと変換でき、イメージのフローのため、並進1150,回転1152、ずれ1154を定量化できる。6つのパラメータa,...,aは、このプロセスにより見積もることができ、aとaとが、並進に対応し、aとaとが、回転に対応し、aと、aとが、ずれに対応する。これらのパラメータは、境界ボックス1120を中心としたそれぞれのサンプリングについて見積もることができる。それぞれのフレームtについて平均のカール(curl)は、C(t)=−a+aとして計算される。それぞれのフレームにおけるこのカールは、定量的にピボット領域を中心とする指の皮膚の回転、またはスピンの程度を定量的に与える。すなわち、フロー・ベクトル[u(x,y),v(x,y)]1050から算出される、得られた指紋の行動的部分の表現C(t)が得られる。また、フレームの平均並進ベクトルT=(a,a)が、計算される。
【0047】説明した考えられる結果バイオメトリックスのすべてにつき、本発明者らは、従来の行動的または生理的バイオメトリックスを用いることができるものと考える。得られたバイオメトリックスの部分の表現(テンプレート)の目的およびマッチングの目的に対し、これらの従来のバイオメトリックスは、従来技術において良く理解されている(上述したラーサ、チェン、ジェインによる指紋について参照のこと)。得られたバイオメトリックスの他の部分、すなわち行動的部分については、本発明者らは、ユーザの動作としていくつかの一方向またはより高次の時間の関数α(t)として残しておいた。この部分のマッチングは、記憶されたテンプレートα′(t)と、関数α(t)とのマッチングに相当する。このようなマッチングは、再度従来技術により良く理解されており、ルーチン的に署名識別の分野において行われているものである。下記の引用文献は、マッチングのアプローチの例を示すものである。V.S.ナルワ、“自動化オン−ライン署名識別”、プロシーディングス・オブ・IEEE、第215頁〜第239頁、1997年2月上記の引用文献は、完全に本発明に含まれる。
【0048】ここで、得られたバイオメトリックスは、記憶されたテンプレートとマッチングされた後、2つの“Yes/No”(図4および図5の214)応答、または2つのスコアSおよびS(図5および図7の231および233)のいずれかを有している。図4〜図7で説明した2つのバイオメトリックスの結合のための方法はいずれも、マッチング判断を行うために使用することができる得られたバイオメトリックスの従来で、かつユーザが規定するバイオメトリックスとして使用することができる。以下に本発明をまとめる。
【0049】(1)1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する取得デバイスと、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと時間に対するそれぞれコントロールされた変化とを対応させて記憶する記憶手段と、を含むバイオメトリックス・システム。
【0050】(2)前記バイオメトリックスは、生理的バイオメトリックス、行動的バイオメトリックス、指紋、顔、掌紋、虹彩、網膜、足紋、歩調、署名、キー・ストローク・パターン、および声のいずれか1つ以上を含む、(1)に記載のシステム。
【0051】(3) 前記コントロールされた変化は、前記対象者により実行される、(1)に記載のシステム。
【0052】(4) 前記コントロールされた変化は、前記対象者に対して外部メカニズムにより誘導される、(1)に記載のシステム。
【0053】(5)前記メカニズムは、光の変化、光の周波数変化および光の強度変化のいずれか1以上を含む、(4)に記載のシステム。
【0054】(6)前記コントロールされた変化は、前記バイオメトリックスの変形、力、圧力、運動、トルク、周波数変化、ジェスチャー、エネルギー変化、音量、加速度、およびパターンのいずれか1以上により誘導される、(1)に記載のシステム。
【0055】(7) 前記バイオメトリックスは、指紋であり、前記コントロールされた変化は、指の運動、指の回転、指の圧力、および指の力のいずれか1以上を含む、(1)に記載のシステム。
【0056】(8)前記バイオメトリックスは、顔であり、前記コントロールされた変化は、顔の運動である、(1)に記載のシステム。
【0057】(9)前記バイオメトリックスは、顔であり、前記コントロールされた変化は、顔の変形である、(1)に記載のシステム。
【0058】(10)前記バイオメトリックスは、掌であり、前記コントロールされた変化は、掌の運動である、(1)に記載のシステム。
【0059】(11)前記バイオメトリックスは、声であり、前記コントロールされた変化は、音量、周波数、パターン、およびイントネーションのいずれか1以上を含む、(1)に記載のシステム。
【0060】(12)前記バイオメトリックスは、歩調であり、前記コントロールされた変化は、立ち止まりパターン、速度、動揺、コース、姿勢、ホップ、スキップ、および歩幅のいずれか1以上を含む、(1)に記載のシステム。
【0061】(13)前記バイオメトリックスは、署名であり、前記コントロールされた変化は、傾斜、ループ、ストレッチ、サイズ、および間隔のいずれか1以上を含む、(1)に記載のシステム。
【0062】(14)バイオメトリックス・システムにより実行される方法であって、該方法は、1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する段階と、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する段階と、を含む方法。
【0063】(15)1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得するための取得デバイスと、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する記憶手段と、を含むコンピュータ・システム。
【0064】(16)1つ以上のバイオメトリックスそれぞれのコントロールされた変化にともなう時間間隔にわたり、対象者から1つ以上の前記バイオメトリックスのセットを取得する段階と、前記バイオメトリックスおよび前記コントロールされたそれぞれの変化および結果バイオメトリックスである結合されたバイオメトリックスと前記結合されたバイオメトリックスとぞれぞれのコントロールされた変化とを対応させて記憶する段階とを実行する、コンピュータ・プログラムを含むコンピュータ可読な記録媒体。
【出願人】 【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレ−ション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願日】 平成12年12月1日(2000.12.1)
【代理人】 【識別番号】100086243
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 博 (外2名)
【公開番号】 特開2001−212112(P2001−212112A)
【公開日】 平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願番号】 特願2000−367391(P2000−367391)