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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】小薮 一弥

【要約】 【課題】構成が簡単で、きわめてローコスト化できるものでありながら、エリアシングノイズを効果的に除去する。

【解決手段】生成したステレオ音響のフォワードおよびリバース成分のデジタルデータの列に対して、インターポレイト回路31により所定の値を挿入することによりデータ間隔を、D/Aコンバータ33の可聴周波数よりは十分に高いサンプリング周波数に合わせた後、デジタルFIRフィルタ32に通して超音波スキャンの繰り返しごとのサンプリングに伴うエリアシングノイズを除去し、D/Aコンバータ33によりアナログ信号に変換した後、このD/A変換に伴うエリアシングノイズ除去のためアナログの簡易ローパスフィルタ34に通す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体内に超音波を送波しその内部の反射波を受波する超音波スキャンを行う超音波送信・受信手段と、超音波スキャンごとに受信したエコー信号を複素検波してIおよびQ成分を得て、これらの所定深さ範囲を積分することによりIおよびQのドップラー周波数シフトデータを得るドップラー抽出手段と、該IおよびQのドップラー周波数シフトデータからステレオ音響のフォワードおよびリバース成分のデータを生成するステレオ音響生成手段と、超音波スキャンごとに得られるフォワードおよびリバース成分のデータ列に対しそれぞれ所定の値をインターポレイトすることによりデータレートを可聴周波数より十分に高いものとするサンプリング周波数変換を行う手段と、サンプリング周波数変換後のフォワードおよびリバースの各成分のデータが入力される、カットオフ周波数が超音波スキャンの周波数の2分の1とされているデジタルフィルタ手段と、該デジタルフィルタ手段から出力されるフォワードおよびリバースの各成分のデータが入力される、上記変換後のサンプリングレートに対応するサンプリング周波数でD/A変換を行うD/A変換手段と、該D/A変換手段から出力されるフォワードおよびリバースの各成分のアナログ信号が入力される、可聴周波数よりも低いカットオフ周波数を有する比較的緩やかなカットオフ特性のアナログローパスフィルタ手段と、該アナログローパスフィルタ手段を通ったフォワードおよびリバースの各成分のアナログ信号が送られる音響変換手段とを有することを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、超音波を送受して被検体内の様子を検査する超音波診断装置に関し、とくに受信したエコー信号よりステレオ音響信号を生成しスピーカからステレオ音響を発生させる機能を有する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断装置では、被検体(患者身体)内に超音波ビームを送波し、その内部で反射させ、そのエコーを受信してデータを得て、その患者の病気の診断に役立てる。受信したエコー信号のドップラー周波数シフトを求めれば、臓器の動きや速度を計測することが可能である。このドップラー周波数シフトのデータからステレオ音響データを生成し、これをアナログ信号に変換してステレオスピーカに送り、ステレオ音響を発生させ、これを聴取することによって診断することも行われている。
【0003】ステレオ音響データは、超音波ビームによるスキャンの繰り返し周期ごとに生成され、このスキャン周波数でサンプリングされたものということができる。このデジタルデータであるステレオ音響データをD/A変換器によってアナログ信号に変換するので、エリアシングノイズが生じる。ところが超音波ビームによるスキャンの繰り返し周波数は3kHz程度と一般に低い。そのため、サンプリングレートのナイキスト周波数より高い成分のエリアシングノイズの周波数は20kHzの可聴周波数域内のものとなって、人間の耳には耳障りなノイズとして聞こえることになり、これを除去する必要がある。
【0004】そこで、従来では、アナログ信号に変換した後、アナログ式のフィルタに通してエリアシングノイズを除去するようにしている。すなわち、図2に示すように、生成したステレオ音響データ(フォワード側あるいはリバース側)をD/Aコンバータ33に入力してアナログ信号に変換した後、可変カットオフ周波数のローバスフィルタ35に通してスピーカシステム24に送るようにしている。ここでローパスフィルタ35をカットオフ周波数を可変できる構成としたのは、スキャンの繰り返し周波数に対応させるためであり、スキャンの繰り返し時間は患部や診断目的等に応じて頻繁に設定変更するものであるからである。そして、このローパスフィルタ35は非常に急峻なカットオフ特性を持つものとする必要がある。そのため、この可変カットオフ周波数のローバスフィルタ35には、通常、スイッチドキャパシタフィルタなどが用いられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のような、スキャン周期ごとに作成したステレオ音響データをD/A変換した後アナログ式アンチエリアシングフィルタに通すという構成では、スキャン周波数の設定変更に応じてローパスフィルタ特性を変える必要があるため、カットオフ周波数を可変できるフィルタを用いなければならず、しかも非常に急峻なカットオフ特性が要求されるので、スイッチドキャパシタフィルタなどを用いざるを得ないが、このようなフィルタは構成が複雑で、価格が高く、ノイズが発生しやすいという欠点があり、しかも性能的にもあまり高いものは望めないため、どうしてもエリアシングノイズを十分に除去することができないということも問題である。
【0006】この発明は、上記に鑑み、簡単な構成でかつローコストでありながら、エリアシングノイズの除去特性が従来に比べてはるかに優れている、受信したエコー信号よりステレオ音響信号を生成してスピーカからステレオ音響を発生させるタイプの超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、この発明による超音波診断装置においては、被検体内に超音波を送波しその内部の反射波を受波する超音波スキャンを行う超音波送信・受信手段と、超音波スキャンごとに受信したエコー信号を複素検波してIおよびQ成分を得て、これらの所定深さ範囲を積分することによりIおよびQのドップラー周波数シフトデータを得るドップラー抽出手段と、該IおよびQのドップラー周波数シフトデータからステレオ音響のフォワードおよびリバース成分のデータを生成するステレオ音響生成手段と、超音波スキャンごとに得られるフォワードおよびリバース成分のデータ列に対しそれぞれ所定の値をインターポレイトすることによりデータレートを可聴周波数より十分に高いものとするサンプリング周波数変換を行う手段と、サンプリング周波数変換後のフォワードおよびリバースの各成分のデータが入力される、カットオフ周波数が超音波スキャンの周波数の2分の1とされているデジタルフィルタ手段と、該デジタルフィルタ手段から出力されるフォワードおよびリバースの各成分のデータが入力される、上記変換後のサンプリングレートに対応するサンプリング周波数でD/A変換を行うD/A変換手段と、該D/A変換手段から出力されるフォワードおよびリバースの各成分のアナログ信号が入力される、可聴周波数よりも低いカットオフ周波数を有する比較的緩やかなカットオフ特性のアナログローパスフィルタ手段と、該アナログローパスフィルタ手段を通ったフォワードおよびリバースの各成分のアナログ信号が送られる音響変換手段とが備えられることが特徴となっている。
【0008】生成されたステレオ音響のフォワードおよびリバース成分のデータは、超音波スキャンの繰り返しごとに1点ずつ得られることになるので、比較的低いサンプリング周波数となる。これらのデータ列に対して所定値(たとえば0)をインターポレイトすることにより、より高いレートのデータに変換する。このデータのより高いサンプリング周波数というのは、後に送られるD/A変換手段のサンプリング周波数に対応しており、可聴周波数よりも十分に高いものとされる。サンプリング周波数変換後のフォワードおよびリバースの各成分のデータは、カットオフ周波数が超音波スキャンの周波数の2分の1とされているデジタルフィルタ手段に通され、超音波スキャンに対応するサンプリングによって生じるエリアシングが除去される。このフィルタ手段はデジタル処理であり、非常に急峻なカットオフ特性のものを容易に得ることができるとともに、超音波スキャンの周波数設定に合わせてカットオフ周波数を変化させることも容易である。そのため、エリアシングによって生じる高域のノイズ成分をほぼ完全に除去することができる。
【0009】この後、フォワードおよびリバースの各成分のデータがそれぞれD/A変換され、さらにアナログのローパスフィルタ手段に通される。このD/A変換はサンプリング周波数が可聴周波数よりも十分に高いものとして行われるため、そのエリアシングも高い周波数域で生じるに過ぎず、そのため、アナログのローパスフィルタ手段は、可聴周波数よりも低いカットオフ周波数とすればよく、しかもカットオフ特性は比較的緩やかなものでよい。つまり、このアナログローパスフィルタは簡易型のもので十分である。このアナログローパスフィルタをそれぞれ経たフォワードおよびリバースの各成分のアナログ信号が音響変換手段に送られて音響に変換されるので、エリアシングノイズを十分に抑制した音響を聴取することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置において、プローブ11は多数の超音波振動子エレメントを備える。これらエレメントの各々がビームフォーマー12によってパルス駆動され、またこれらエレメントの各々からの超音波受信信号がビームフォーマー12に入力されて増幅される。プローブ11から超音波ビームを発射するときは、各エレメントをいっせいにパルス駆動し、かつそのタイミング(位相)をエレメントごとに少しずつずらす。これによって各エレメントから発生する超音波ビームの合成波ビームの方向と焦点とを定める。受信時には、各エレメントからの受信信号の各々に所定の遅延時間(位相差)を与えて合成することにより、合成受波超音波ビームの方向と焦点とを定める。このようなタイミング(遅延、位相)の制御により、送信時および受信時の合成超音波ビームの電子的なフォーミングを行う。
【0011】ビームフォーマー12から得られた受信エコー信号は複素検波回路13に入力され、周波数0を中心とした複素信号(I成分およびQ成分)に変換される。これらI成分およびQ成分の信号は積分器14、15にそれぞれ入力されて超音波ビームの所定深さ範囲での積分がなされる。これにより、超音波ビームのその深さ位置でのドップラー周波数シフト信号を得ることができる。ここまでをアナログ処理で行うシステムでは、この積分の後、図示しないA/D変換器によるA/D変換がなされる。あるいは、プローブ11の各振動子エレメントからのアナログ受信信号をそれぞれ図示しないA/D変換器によって高速A/D変換し、ビームフォーマー12、複素検波回路13および積分器14、15をデジタル処理により構成するようにしてもよい。
【0012】ドップラー周波数シフトのI成分およびQ成分のデジタルデータは、まずデジタル前処理回路16に通されて、ゆっくりした動きの成分を除くようなハイパスフィルタ処理などを受ける。その後、I成分はヒルベルト変換回路18によりヒルベルト変換され、Q成分は遅延回路19に入力されて所定の遅延が与えられる。これらヒルベルト変換回路18および遅延回路19を通ったI成分およびQ成分のデジタルデータは、加算器20および減算器21に入力されて、和と差が算出され、ステレオ音響のフォワード成分とリバース成分が生成される。
【0013】これらフォワード成分およびリバース成分のデジタルデータは、それぞれD/A変換部22、23に通されてアナログ信号に変換された後、スピーカシステム24に送られる。これらのD/A変換部22、23は同一構成であり、それぞれインターポレイト回路31、デジタルFIRフィルタ32、D/Aコンバータ33および簡易ローパスフィルタ34を含む。
【0014】ここで、D/Aコンバータ33は、サンプリング周波数がたとえば50kHzのように可聴周波数よりも十分に高い周波数に固定してある。これに対して、フォワード成分およびリバース成分のデジタルデータは、超音波スキャンの1回ごとに1点しか得られないから、そのサンプリング周波数は超音波スキャンの周波数に対応したものとなっており、一般には3kHz程度と低いものである。そのため、インターポレイト回路31により所定の値(たとえば0、あるいは直前と同じ値、または直前と直後のデータの中間の値など)を、フォワード成分およびリバース成分のデジタルデータの列に対して挿入(インターポレイト)し、データの各点の間隔を変換して、フォワード成分およびリバース成分のデジタルデータの間隔をD/Aコンバータ33のサンプリング周波数に合わせる。たとえば、超音波スキャンの繰返し周期を300マイクロ秒とした場合、50kHzのサンプリングレートにするには14個の「0」を挿入する。
【0015】その後、デジタルFIRフィルタ32に通してエリアシング成分を除去する。このデジタルFIRフィルタ32は、超音波スキャンの繰り返し周波数の2分の1の周波数をカットオフ周波数とするもので、これにより超音波スキャンごとのサンプリングによるエリアシングノイズを除去する。ここでは次数384点のFIRフィルタを用いており、超音波スキャンの繰り返し時間が300マイクロ秒(3.33kHz)の場合、サンプリングレート50kHzに対して0.1332の正規化周波数をカットオフに持つデジタルフィルタ係数を使用する。このデジタルFIRフィルタ32は簡単な構成ながら非常に急峻なカットオフ特性を有するため、エリアシング成分をほぼ完全に除去することができる。しかも、フィルタ係数を変更すればカットオフ周波数を変えることができるため、超音波スキャンの繰り返し周波数の設定に応じることも容易である。
【0016】このインターポレイトおよびフィルタのデジタル処理は、すべてリアルタイムの演算で行う必要があるため、非常に高速な演算回路を用いる必要がある。専用のフィルタデバイスを使用してもよいし、演算速度が十分速いならDSPを使用することもできる。この例ではDSPにより構成している。この例で使用したDSPでは、フォワードおよびリバースの2チャンネルのフィルタ演算を含めたインターポレイト処理を15マイクロ秒で終了させることができたので、50kHzのサンプリングレートに十分間に合うものとすることができた。
【0017】これらの処理の終わったフォワード成分およびリバース成分のデジタルデータは、それぞれD/Aコンバータ33によりアナログ信号に変換され、その後、簡易ローパスフィルタ34に通される。このローパスフィルタ34は、D/A変換に伴うエリアシングノイズを除去するものであるが、D/Aコンバータ33のサンプリング周波数が可聴周波数(20kHz)よりは十分に高い固定のものであるため、可聴周波数より低い15kHz程度にカットオフ周波数を固定した、比較的ゆるやかなカットオフ特性のもので十分である。そこで、このフィルタ34として、OPアンプ1個、抵抗・コンデンサ各3個ずつで構成された、3次のチェビシェフ型フィルタなどの簡易型のアナログローパスフィルタを用いることができる。
【0018】なお、上記はこの発明の一つの実施形態についての説明であり、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変更できることはもちろんである。具体的な回路構成などは別の構成を採用することができる。D/Aコンバータ33の前のデジタル処理に、リバーブや残響処理を入れることも可能であり、こうすることにより音色の制御も可能となって、より聞き易い音響を得ることができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の超音波診断装置によれば、D/A変換後のアナログ信号が通されるアナログローパスフィルタは簡易なものでよい。さらにD/A変換する前にフォワードおよびリバースの各成分のデータをそれぞれ通すためのローパスフィルタが必要であるが、このローパスフィルタはデジタル処理によるものであるから非常に急峻なカットオフ特性のものとすることが容易で、しかも超音波スキャンの周波数設定に合わせてカットオフ周波数を変化させることも容易である。そのため、構成が簡単で、きわめてローコスト化できるものでありながら、エリアシングノイズを従来よりも格段に抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100075122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 祐介
【公開番号】 特開2001−137244(P2001−137244A)
【公開日】 平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願番号】 特願平11−327530