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【発明の名称】 電磁波遮蔽着衣
【発明者】 【氏名】倉田 周一

【要約】 【課題】優れた電磁波遮蔽性能を有し、かつ自由な動きが可能な着衣の提供。

【解決手段】身頃部が複数の金属含有織物からなり、且つ該金属含有織物同士が弾性繊維構造物を介して接合されていることを特徴とする電磁波遮蔽着衣。特に、上記の複数の金属含有織物は、弾性繊維構造物を介して互いに一方の織物の端部と他の織物の非端部とで接合されていることが好ましく、さらに上記金属含有織物の端部Aから、弾性繊維構造物が接合された非端部A’までの距離A−A’が、二枚の織物間に配設された弾性繊維構造物の最大伸長時長さ以上であれば、より好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 身頃部が、複数の金属含有織物からなり、且つ該金属含有織物同士が弾性繊維構造物を介して接合されていることを特徴とする電磁波遮蔽着衣。
【請求項2】 複数の金属含有織物が、弾性繊維構造物を介して互いに一方の織物の端部と他の金属含有織物の非端部とで接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽着衣。
【請求項3】 上記金属含有織物の端部Aから、弾性繊維構造物が接合された非端部A'までの距離A−A'が、二枚の織物間に配設された上記弾性繊維構造物の最大伸長時長さ以上であることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽着衣。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁波遮蔽性能を有する着衣に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話,PHS,ポケットベル(登録商標)等移動体通信手段が広範囲に普及しており、スーツの胸ポケット等に収納して携行されている。一方、人体内部に配設された心臓ペースメーカーの誤作動を防ぐには、携帯電話の様な電磁波の発生源を心臓から22cm以上離して用いることが求められている。しかしながら、満員電車等での密着時や携行者自身は、携帯電話と心臓との距離が22cm未満の至近距離となることがあるため、電話の着信時等に心臓ペースメーカーの動作に障害を与えることが懸念されている。
【0003】そして、この様な電磁波対策としては金属製の筐体を備えた心臓ペースメーカーが好適であると言われているが、金属製筐体のものであっても、その構造上筐体内部に配設された電子部品を完全に被覆することは不可能であるため、携帯電話の着信時等に発生する電磁波が筐体のわずかな隙間から侵入し、機器の誤作動を招くおそれがあった。
【0004】そのため、電磁波遮蔽性能を備えた着衣が求められており、近年種々開発されている。この様な着衣用の素材の一例としては、金属でメッキされたステープルファイバーを一定量用い、綿や羊毛等の繊維と上記金属メッキ繊維とを混紡して得られるもの(以下、「金属メッキ繊維含有混紡糸」と称する)等が知られている。
【0005】オフィス等では、上記の金属メッキ繊維含有混紡糸等からなるエプロンが広く使用されているが、エプロンの様に身体の正面のみを覆う前掛け状の形態の場合、側面や背面からの電磁波の回り込みが懸念される。特に、心臓ペースメーカー使用者向け着衣としては、特に胴体部分、いわゆる身頃部を最大限に電磁波から守ることが望まれている。
【0006】但し、着衣が胴体全体を覆うような構造になっていても、着衣の首まわりや脇まわり等の開口部に空隙がある場合、そこから電磁波が侵入してしまうため、心臓ペースメーカー等への影響を効果的に低減せしめるには、身体に密着し、空隙のない形状であることが重要となるため、当該着衣は伸縮性を有していることが要求される。
【0007】伸縮性を備えた布帛としては、アンダーウェアやジャージの様に編み物(ニット生地)が一般的であるが、上述の様な金属メッキ繊維含有混紡糸を使って、編み物を製造する場合、様々な問題を有している。具体的には、一般的に編み物は織物と比べて単位面積当たりの重量(目付)が重くなるばかりでなく、織物に比べて糸同士の交絡が強固ではないため、織物と同等の性能を有する電磁波遮蔽編み物を製造しようとすると、織物の5〜10倍の金属を使用せねばならず、その結果製品が極めて高価になってしまうという問題がある。さらに、金属メッキ繊維を用いた編み物に高い電磁波遮蔽性能を持たせようとすると密な編み方にしなければならないため、高度な製造技術が要求されるようになり、その結果生産性向上が困難になるという問題がある。この様な問題を鑑みた場合、電磁波遮蔽布帛としては織物の形態が好ましいが、織物の場合、生地自体の柔軟性・伸縮性が編み物に比べて劣るため、着用時の動き易さの点で問題を有していた。
【0008】胴体全体を覆う電磁波遮蔽繊維の例としては、特開平11−54976号公報に、ドットボタンやファスナー等の接合手段を用いて、導電性素材からなるサイズ調整部材を身頃生地に接合することを特徴とする着衣が開示されているが、この様な着衣の場合、明細書第24段落に記載の如くサイズ調整部材も導電性素材からなるものが採用されているため、段階的に胴囲の調整は可能であるものの、運動に伴う素材の伸縮が殆どなく「動き易さ」という課題は解決し得ないものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点に鑑みなされたものであって、優れた電磁波遮蔽性能を有し、かつ自由な動きが可能な着衣の提供を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、身頃部が、複数の金属含有織物からなり、且つ該金属含有織物同士が弾性繊維構造物を介して接合されていることを特徴とする電磁波遮蔽着衣により、達成される。特に、上記の複数の金属含有織物は、弾性繊維構造物を介して互いに一方の織物の端部と他の織物の非端部とで接合されていることが好ましく、さらに上記金属含有織物の端部Aから、弾性繊維構造物が接合された非端部A'までの距離A−A'が、二枚の織物間に配設された弾性繊維構造物の最大伸長時長さ以上であれば、より好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】本発明の着衣の身頃部に用いる金属含有織物を構成する糸としては、1)上述の様な、金属でメッキされたステープルファイバー(金属メッキ繊維)を一定量用い、綿や羊毛等の繊維と上記金属メッキ繊維とを混紡して得られる糸(金属メッキ繊維含有混紡糸)や、2)上記金属メッキ繊維100%からなる紡績糸、3)あるいは金属メッキフィラメント等を使用することが出来るが、製造コストや最終製品の風合い等の点において、上記の「金属メッキ繊維含有混紡糸」が最適である。
【0013】なお、上記の金属メッキ繊維に用いる金属としては、銀や胴が適用可能であり、ポリアミドやポリエステルからなる長繊維に、銀や胴等の金属を無電解メッキ法,スパッタリング法,金属蒸着法等の方法でメッキを施し、得られた金属メッキフィラメントを一定長に切断して金属メッキ繊維とするのである。なお、メッキに使用する金属は、延展性や経皮吸収等の安全性を考慮した場合、銅よりも銀が適している。
【0014】上述の様に、「金属メッキ繊維含有混紡糸」は、金属メッキ繊維と、他種の短繊維とを混紡して製造するものであるが、その際、上記金属メッキ繊維と短繊維の平均繊維長をほぼ同等の長さにしておくことが可紡性の点で好ましい。例えば、短繊維として綿を用いる場合、平均繊維長38mm程度のものが一般的であるので、上記の金属メッキフィラメントを38mm程度に切断して、混紡するとよい。
【0015】上記の金属メッキ繊維含有混紡糸を製織して「金属含有織物」の形態にするにあたっては、上記混紡糸を100%用いても良いが、綿糸,梳毛糸,紡毛糸の様な通常の紡績糸と交織したものであっても構わない。但し、交織する場合において、十分な電磁波遮蔽性能を発揮せしめるためには、それぞれの金属メッキ繊維含有混紡糸同士の間隔が0.5mmを越えない程度の密度で均一に配分されていることが肝要である。
【0016】そして、この様な金属含有織物を複数用い、それぞれを接合せしめて身頃部を形成するが、身頃部を形成する織物をそれぞれ接合するには、二枚の織物を直接的に接合するのではなく、図1に記載の如く、二枚の金属含有織物(1),(1')の間に弾性繊維構造物(2),(2')を介在せしめる。
【0017】なお、上記の「弾性繊維構造物」は弾性を有する繊維構造物であれば、布帛状物であっても糸状物であっても、その形態は特に問われるものではなく、編み地やゴム紐の様なものや、ポリウレタンの様なエラストマーを用いた弾性不織布の様なものであっても良い。
【0018】このときの各部材は、図2に具体的に示される様に、弾性繊維構造物(2)の一方の端部は、金属含有織物(1)の端部(3)に接合されると共に、他方の端部は金属含有織物(1')の非端部(4')に接合され、同時に金属含有織物(1')の端部(3')に一方の端部が接合された弾性繊維構造物(2')は、他方の端部が金属含有織物(1)の非端部(4)に接合され、その結果、弾性繊維構造物(2),(2')を介して、上記織物(1),(1')が間接的に接合されるようになっているのである。
【0019】なお、ここで「端部」とは金属含有織物や弾性繊維構造物において、実質的に端(はし)といえる部分であればよく、縫合したとき等に外観を損ねるような遊びが生じない程度に外縁の部分であれば良い。
【0020】また、「非端部」とは上記端部より布帛の中央側の位置であるものと定義することができるが、図3に記載の如く、上記金属含有織物の端部A(3),(3')から、弾性繊維構造物が接合された非端部A'(4),(4')までの距離A−A'(3−4),(3'−4')が、二枚の金属含有織物(1),(1')の間に配設された弾性繊維構造物(2),(2')の最大伸長時長さB以上であることが好ましい。
【0021】このとき、端部から非端部までの距離A−A'がB未満であると、図4の様に弾性繊維構造物が最も伸長した場合に、金属含有織物(1)と(1')との間に隙間(導電性繊維が存在しない部分)が生じるようになり、ここから電磁波の侵入を招いてしまうため、不適切である。
【0022】なお、上記の「接合」とは、縫合が一般的であるが、ファスナー,接着剤,鋲,ボタン等の様な、一般的に服飾で用いられる接合手段であれば、特に限定されるものではない。
【0023】以上が、本発明の着衣を製造するにあたっての、金属含有織物と弾性繊維構造物との接合状態の説明である。なお、本発明における身頃部は、前身頃・後身頃の二枚の金属含有織物からなるものであっても、右前身頃・左前身頃・後身頃の三枚の織物からなるものであっても、あるいは右前身頃・左前身頃・右後身頃・左後身頃の四枚の織物からなるものであってもよく、求められる用途やデザイン、又は機能によって適宜決定することが可能である。そして、上述の様にして着衣の身頃部を形成した後、最後に必要に応じて袖、衿、ポケット、裏地等の縫合を行い、着衣の形態にするのである。
【0024】
【発明の効果】以上詳述の様に、本発明によれば、身頃部を構成する金属含有織物の電磁波遮蔽性能を損なうことなく、動き易い着衣を製造することが可能になるので、利用者にとっては着用感が向上し、また供給者にとっては適用範囲が拡大するという効果を奏するのである。
【出願人】 【識別番号】000000952
【氏名又は名称】カネボウ株式会社
【識別番号】597064517
【氏名又は名称】カネボウ繊維株式会社
【出願日】 平成12年5月8日(2000.5.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−316916(P2001−316916A)
【公開日】 平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願番号】 特願2000−134480(P2000−134480)