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【発明の名称】 NBR製手袋
【発明者】 【氏名】西 康隆

【氏名】岸原 英敏

【要約】 【課題】家庭用、作業用のNBR製手袋として充分に実用できるだけの皮膜強度と柔軟性を付与しながら、180°引裂強度を増大する。

【解決手段】NBRラテックス100重量部に対して酢酸ビニル単独重合物と酢酸ビニル共重合物の少なくとも一方を1重量部〜40重量部混合してなる混合ラテックスを材料として製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 NBRラテックス100重量部に対して酢酸ビニル単独重合物と酢酸ビニル共重合物の少なくとも一方を1重量部〜40重量部混合してなる混合ラテックスを材料として製造されたことを特徴とするNBR製手袋。
【請求項2】 酢酸ビニル共重合物が、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−エチレン−アクリレート共重合体、および前記各共重合体にさらにアクリル酸またはメタクリル酸が共重合してなる高分子ラテックスの内の1種または複数種であることを特徴とする請求項1記載のNBR製手袋。
【請求項3】 混合ラテックスがテルペンフェノール樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載のNBR製手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、NBRラテックスを用いて製造された家庭用及び作業用のNBR製手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム:Acryronitrile butadiene rubber)を素材とする手袋は、NR(天然ゴム:Natural rubber)やPVC(ポリ塩化ビニル:Polyvinylchloride)を素材とする手袋に比べて、耐油性、耐摩耗性等に優れ、非常に強靭であることが知られている。その反面、柔軟性に欠けて硬く、180°引裂強度が弱いため、微細な傷によっても容易に裂けやすい。この欠点を改善すべく従来より、加硫剤としての硫黄(S)及び酸化亜鉛(ZnO)の配合部数の調整、各種架橋剤の単独添加または亜鉛との併用、アジピン酸エステル系の可塑剤、鉱物油、植物油等の軟化剤、異種高分子ラテックスの添加が検討されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、180°引裂強度を満足させるには至っておらず、依然微細な傷によっても裂け易いのが現状である。これはNBR製手袋の実使用において非常に不都合であり、これを解決することは、手袋自体の寿命の延長のみならず、作業の安全上からも極めて重要な課題である。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明者らは、家庭用、作業用のNBR製手袋として充分に実用できるだけの皮膜強度と柔軟性を付与しながら、180°引裂強度を増大すべく研究を重ねた結果、NBRラテックスに酢酸ビニル(共)重合物ラテックスを一定の割合で混合することによって、皮膜の物性、特に低い100%モジュラス値、高い抗張力強度を保ちながら、通常の皮膜に比べて180°引裂強度を数倍高められることを見い出した。
【0005】手袋使用時に往々にして起こるひっかき裂傷で手袋全体が破れるのを防ぐには180°引裂強度が大きい事が必須であるが、一方で180°引裂強度が大きくなるにしたがって100%モジュラスが大きくなり、皮膜の柔軟性が損なわれるのが通常である。家庭用および作業用の手袋として充分に実用に耐える皮膜強度と柔軟性を備え、なお且つ180°引裂強度が強化されたものとするためには、JIS K 6301測定法による100%モジュラスが20kg/cm2以下、且つJIS K 6252測定法による180°引裂強度が5kg/cm以上の皮膜物性とすることが望ましい。
【0006】本発明のNBR製手袋は、NBRラテックス100重量部に対して酢酸ビニル単独重合物と酢酸ビニル共重合物の少なくとも一方を1重量部〜40重量部混合してなる混合ラテックスを材料として製造されたものであり、これにより、上記したような皮膜物性を実現することができ、柔軟性および180°引裂強度を強化できる。本明細書において重量なる語句は質量と同意義とする。
【0007】本発明に用いるNBR(ラテックス)は、低〜高ニトリルNBRと呼ばれるものであり、アクリロニトリルを20〜45モル%含有し、5モル%以下のカルボキシル変性基をもつものを使用する。
【0008】酢酸ビニル単独重合物には特に制限はないが、通常は平均分子量10万〜40万程度のものを使用する。また酢酸ビニル共重合物としては、酢酸ビニル含有量が10〜80重量%の共重合物、たとえば、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−エチレン−アクリレート共重合体(ここで、アクリレートはアルキルアクリレート(アルキル基はエチル、ブチル、2―エチルヘキシル等である))、および前記各共重合体にさらにアクリル酸またはメタクリル酸が共重合してなる高分子ラテックスのそれぞれを単独または併用にて使用できる。
【0009】さらに、混合ラテックスにテルペンフェノール樹脂を含ませることができ、NBR100重量部に対してテルペンフェノール樹脂を1〜10重量部添加することで、更に180°引裂強度、引張強度の向上が図れる。テルペンフェノール樹脂としては、α−ピネンフェノール樹脂、ジペンテンフェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂、またはこれらを水素添化したものなどが使用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例を挙げて具体的に説明する。しかしながらこれらの実施例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(1)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(1)に示すエチレン−酢酸ビニル共重合体はエチレン:90重量%−酢酸ビニル:10重量%であって、分子量が約30万である。
配合(1)
基準NBRラテックス(*) 101.5 重量部 エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス 40 重量部 酸化亜鉛 1.2 重量部*基準NBRラテックスの配合 カルボキシル変成NBRラテックス1) 100 重量部 NH4 OH 0.5 重量部 KOH 0.2 重量部 デモールN2) 0.2 重量部 CoagulantWS3) 0.15重量部 PSM52724) 0.3 重量部 SM55125) 0.01重量部 A−70706) 0.14重量部 計101.5 重量部 1)ニッポールLx−550,日本ゼオン(株)
2)界面活性剤,花王(株)
3)感熱剤,Bayer(株)
4)顔料,御国色素(株)
5)消泡剤,東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)
6)増粘剤,東亞合成化学工業(株)
この基準NBRラテックスは以下の各実施例、比較例でも同一配合にて使用する。
(実施例2)
陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(2)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(2)に示す酢酸ビニル−エチレン共重合体ラテックスは酢酸ビニル:40重量%−エチレン:60重量%であって、分子量が約30万である。
配合(2)
基準NBRラテックス 101.5重量部 エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(実施例3)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(3)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(3)に示す酢酸ビニル−エチレン共重合体ラテックスは酢酸ビニル:40重量%−エチレン:60重量%であって、分子量が約30万である。テルペンフェノール樹脂はヤスハラケミカル(株)のTH−130を使用した。
配合(3)
基準NBRラテックス 101.5重量部 エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部 TH−130 10 重量部(実施例4)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(4)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(4)に示す酢酸ビニル−エチレン共重合体ラテックスは酢酸ビニル:80重量%−エチレン:20重量%であって、分子量が約10万である。
配合(4)
基準NBRラテックス 101.5重量部 エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(実施例5)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(5)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(5)に示す酢酸ビニル重合体は酢酸ビニル:100重量%であって、分子量が約10万である。
配合(5)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酢酸ビニル重合体 1 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(実施例6)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(6)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(6)に示す酢酸ビニル−エチレン−2EHA共重合体は酢酸ビニル:70重量%−エチレン:20重量%−2エチルヘキシルアクリレート:10重量%であって、分子量が約10万である。
配合(6)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酢酸ビニル−エチレン−2EHA共重合体 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(実施例7)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(7)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(7)に示す酢酸ビニル−エチレン−2EHA−AA共重合体は酢酸ビニル:70重量%−エチレン:20重量%−2エチルヘキシルアクリレート:8重量%−アクリル酸:2重量%であって、分子量が約10万である。
配合(7)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酢酸ビニル−エチレン−2EHA−AA共重合体ラテックス 10 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(実施例8)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、下記配合(8)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR製手袋を製造した。配合(8)に示す酢酸ビニル−エチレン−MAA共重合体は酢酸ビニル:90重量%−エチレン:8重量%−メタクリル酸:2重量%であって、分子量が約10万である。
配合(8)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酢酸ビニル−エチレン−MAA共重合体ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(比較例1)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(10)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。
配合(10)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(比較例2)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(11)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。
配合(11)
基準NBRラテックス 101.5重量部 酸化亜鉛 0.5重量部(比較例3)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(12)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。テルペンフェノール樹脂はヤスハラケミカル(株)のTH−130を使用した。
配合(12)
基準NBRラテックス 101.5重量部 テルペンフェノール樹脂 10 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(比較例4)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(13)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。アジピン酸エステル系可塑剤はTP−95L(Morton International)を使用した。
配合(13)
基準NBRラテックス 101.5重量部 アジピン酸エステル系可塑剤 6 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(比較例5)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(14)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。配合(14)に示すエチレン−ブテン共重合ラテックスはエチレン:80重量%−ブテン:20重量%であって、分子量が約30万である。
配合(14)
基準NBRラテックス 101.5重量部 エチレン−ブテン共重合ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(比較例6)陶磁器製手袋型を30%硝酸カルシウムのメタノール溶液に浸漬したのち、配合(15)のNBRラテックスコンパウンドに30秒間漬け、引き上げて80℃×30min.90℃×10min.130℃×20min.加熱処理し、この手袋型より反転離型してNBR手袋を製造した。配合(15)に示すエチレン−プロピレン共重合ラテックスはエチレン:80重量%−プロピレン:20重量%であって、分子量が約30万である。
配合(15)
基準NBRラテックス 101.5重量部 エチレン−プロピレン共重合ラテックス 20 重量部 酸化亜鉛 1.2重量部(試験および評価)上記したようにして製造した実施例1〜8、及び比較例1〜6の各手袋の平滑部から試験片を切り取り、100%モジュラス、引張強度及び180°引裂強度をJIS K 6301に準拠して測定した。結果を以下の表1に示す。評価に際しては、100%モジュラスが低いほど柔軟であるとした。
【0011】
【表1】

表1において、比較例1はNBR素材自体の皮膜物性を示し、引張強度が390kg/cm2と高く、強靭な皮膜である一方で、100%モジュラスが23kg/cm2と柔軟性に欠け、しかも180°引裂強度が3.3kg/cmと低く、引っ掻き裂傷に非常に弱いことがわかる。
【0012】実施例1、実施例2、実施例4はそれぞれ比較例1の配合に対して酢酸ビニル−エチレン共重合体を、実施例5は酢酸ビニル重合体を、実施例6、実施例7、実施例8はそれぞれ、酢酸ビニル−エチレン−アルキルアクリレート共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、及びこれら共重合体とアクリル酸またはメタクリル酸とを含んでなる高分子ラテックスを混合した手袋の皮膜物性を示し、比較例1の100%モジュラスと比較すると、各実施例で柔軟性が17〜30%も改良され、180°引裂強度が200〜273%まで強化されている。
【0013】また実施例3は実施例2の配合に更にテルペンフェノール樹脂を添加した手袋の皮膜物性を示し、実施例2よりも180°引裂強度値が更に28%増大している。
【0014】これに対して、比較例3は比較例1の配合に単にテルペンフェノール樹脂を添加した手袋の皮膜物性を示し、比較例1に比べて、すなわちNBR素材に比べて、180°引裂強度の強化はなされていない。
【0015】また架橋剤量を調整した比較例2、可塑剤を添加した比較例4の手袋ではそれぞれ、比較例1に比べて柔軟性は付与されているものの、180°引裂強度は増大されていない。
【0016】エチレン−酢酸ビニルの代わりにエチレン−ブテンをNBRに混合した比較例5、エチレン−プロピレンをNBRに混合した比較例6の手袋においても、180°引裂強度は比較例1と大差なく、改良はなされていない。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、NBRラテックスに対して酢酸ビニル重合物や酢酸ビニル共重合物を一定の割合で混合使用することによって、家庭用または作業用の手袋として供するに優れた柔軟性と強靭性を併せ持ち、なお且つ本来のNBR皮膜の欠点である180°引裂強度が大きく改善されたNBR製手袋を実現することができ、作業上の安全性がより向上する。
【出願人】 【識別番号】591161900
【氏名又は名称】ショーワ株式会社
【出願日】 平成12年4月20日(2000.4.20)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2001−303329(P2001−303329A)
【公開日】 平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願番号】 特願2000−118797(P2000−118797)