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【発明の名称】 防刃上衣
【発明者】 【氏名】金丸 昌司

【要約】 【課題】暴漢との格闘の際に、刃物による致命傷を負うことを防刃する。

【解決手段】刃物で斬りつけても容易に切れない防刃シートを、少なくとも前身頃1、後身頃の上部及び細腹11に、表からは見えない様に縫着している。防刃シートは、パラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維と硝子繊維を引き揃え、これをパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維で包む様にして巻き付けてなる糸から形成された防刃シートに、ほつれ止め布を接着によって裏打ちして構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 刃物で斬りつけても容易に切れない繊維質の防刃シートを、表からは見えない様に縫着している防刃上衣。
【請求項2】 少なくとも前身頃全面、後身頃の上部、細腹の前身頃側及び袖の肘から手首側に防刃シートを有している請求項1に記載の防刃上衣。
【請求項3】 防刃シートの側縁に該シートからはみ出す様にテープが縫い付けられ、該テープのはみ出し部が表地に縫着されている請求項1又は2に記載の防刃上衣。
【請求項4】 前身頃に重なる防刃シートの細腹側の側縁、細腹に重なる防刃シートの脇下側の側縁は表地に縫着されずにフリーとなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の防刃上衣。
【請求項5】 防刃シートは、パラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維と硝子繊維を引き揃え、これをパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維で包む様にして巻き付けてなる糸から形成された防刃シート本体に、ほつれ止め布を接着によって裏打ちして構成されている請求項1乃至4の何れかに記載の防刃上衣。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する分野】本発明は、主として刃物による斬りつけから身を守るための上衣に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】警察官が暴漢検挙の際、刃物から身を守るために、金属片を屈曲自由に繋ぎ合わせ、或いは金属メッシュで形成した防刃チョッキを着用することが考えられる。ところが、これら防刃チョッキは必要に応じて上衣とは別に着用せねばならず面倒であり、又、防刃チョッキ自体が重くて身体の動きに支障を生じる問題がある。
【0003】出願人は、パラフェニレンベンゾビスオキサゾールを主体とし、刃物で斬りつけても容易に切れない特性のある布シートを案出し(別途、特許出願)、該布シート或いは、該布シートと同様にして防刃効果を有する繊維質のシートを表からは見えない様に上衣に縫着することにより、上記問題を解決できる防刃上衣を明らかにするものである。
【0004】
【課題を解決する手段】本発明の防刃上衣は、刃物で斬りつけても容易に切れない防刃シート(5)を、表からは見えない様に取り付けている。
【0005】少なくとも前身頃(1)の全面、後身頃(12)の上部、細腹(11)の前身頃側及び袖の肘から手首側に防刃シートを配備し、防刃シートの側縁に該シートからはみ出す様にテープを縫い付け、該テープのはみ出し部を表地に縫着することによって、防刃シートを表地に直接縫い付けることを避けることができる。又、前身頃に重なる防刃シートの細腹側の側縁、細腹に重なる防刃シートの脇下側の側縁は表地に縫着せずにフリーとすることができる。
【0006】防刃シート(5)は、パラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維(53)と硝子繊維(54)を引き揃え、これを別のパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維(53)で包む様にして巻き付けた糸(52)から成る防刃シート本体(51)に、ほつれ止め布(50)を接着によって裏打ちして形成することができる。
【0007】
【作用及び効果】防刃上衣着用者へ刃物で斬りつけても、防刃シート(5)部分では刃物が身体へ食い込むことを阻止でき、致命傷になることを防刃出来る。前身頃(1)の全面、後身頃(12)の上部、細腹(11)の前身頃側及び袖の肘から手首側に防刃シートを配備しておけば、暴漢と正面から向き合って格闘する際に、胸、腹、肩口及び腕への斬りつけに対して、効果的に防御できる。
【0008】繊維質の防刃シート(5)は柔軟性があり、又、金属製の防刃チョッキに較べて、単位面積あたりの重量を大幅に軽くできるため、身体の動きにさほどの負担とはならない。又、防刃シート(5)は表地(9)に縫着して取り付けられているため、上衣と別個に着用する手間が省ける。又、防刃シート(5)は表地(9)に隠れてその存在が分からないため、ぎょうぎょうしさがなくスマートである。
【0009】刃物の斬りつけを寄せ付けない防刃シート(5)は、ミシン掛けが難しく、防刃シート(5)を直接に表地(9)に縫着すれば、縫い目が振れて商品価値を損なうが、防刃シート(5)に縁からはみ出す様に接着テープ(6)を縫い付け、該接着テープのはみ出し部を表地(9)に縫着することによって、表地に表出する縫い目が振れることを防刃でき、商品価値を損なうことはない。
【0010】前身頃に重なる防刃シートの細腹側の側縁、細腹に重なる防刃シートの脇下側の側縁を表地に止め付けずにフリーとすることによって、表地の自由度が損なわれず、身体を動かしたとき、引っ張り感を感じることなく、着心地を損なわない。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、警察官の制服上衣に本発明を実施した状態を示す正面図、図2はその背面図である。図1、図2において、斜線部分が防刃シート(5)によって形成した芯体(2)(3)(4)を示し、図12、図13に示す如く、芯体(2)(3)(4)は、上衣の表地(9)と裏地(91)の間に介装されており、外側からは見えない。芯体は、前身頃(1)全面から後身頃(12)の上部に少し掛かる部分の前身芯体(2)と、細腹(11)の前身頃(1)側部分の細腹芯体(2)と、袖(13)の肘から手先側の袖部芯体(4)である。
【0012】右上がり斜線部分と左上がり斜線部分が重なっている前身芯体(2)の上半分及び袖部芯体(4)は、後記の如く、2枚の防刃シート(5a)(5b)、(5d)(5e)が重なっていることを示している。右上がり斜線だけの部分である前身芯体(2)の下部と細腹芯体(3)は1枚シートであることを示している。
【0013】図14は、防刃シートを形成するための糸(52)を示しており、パラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維の束(53)(具体的には、繊維は東洋紡績株式会社製、商品名 ザイロン)と硝子繊維束(54)を引き揃え、これをパラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる別個の繊維の束(53a)で包む様にして巻き付けて形成されている。パラフェニレンベンゾビスオキサゾールからなる繊維は、耐熱性を有し、接着が利くことが知られている。
【0014】図15に示す如く、上記糸(52)を編成或いは織成して防刃シート主体(51)を形成し、この防刃シート主体(51)にほつれ止め布(50)を接着剤を用いて裏打ちして防刃シート(5)を形成する。実施例のほつれ止め布(50)は、ポリエステル100%であり伸縮性を有している。防刃シート主体(51)だけでは、後記の形状に裁断した際、縁から糸(52)がほつれてしまうが、ほつれ止め布(50)を接着剤で裏打ちしているので、糸(52)がほつれることはない。
【0015】図6は、左右の前身芯体(2)(2)の正面図であり、図7は左側前身芯体の分解部である。図3、図7に示す如く、前身芯体(2)は、前身頃(1)全面より上側へ後身頃(12)に約2cm掛かる長さの第1防刃シート(5a)に、上衣の衿(16)の返り線(7)の下端から約3cm上位置から第1防刃シート(5a)の上端までの長さの第2防刃シート(5b)を重ね、外周縁に沿って両防刃シート(5a)(5b)を縫着し、片面に接着剤層を有する幅約4cmの接着テープ(6a)(6b)を、第1防刃シート(5a)の返り線(7)から前身線(71)に延びる側縁及び裾部分に約2cmの幅ではみ出す様に接着してから、接着テープ(6a)(6b)(6c)と防刃シート(5a)(5b)を縫着して形成されている。防刃シートの型どり裁断は、ジェット水流による水切断で行うことができる。
【0016】第1防刃シート(5a)と第2防刃シート(5b)をミシンによって縫着する際、防刃シート(5a)(5b)にスムースに針が通らないため、縫い目が振れてしまうが、表地(9)に隠れてしまうので問題はない。
【0017】第1防刃シート(5a)のボタン穴(19)との対応部分及び胸の階級章取付け位置との対応部分は、予め防刃シート(5a)にカット部(51)(52)が設けられている。第2防刃シート(5b)にも、階級章取付け位置との対応部分にカット部(52)が設けられている図6の左側に示す右側前身芯体(2)も上記とほぼ対称的に形成されるが、階級章取付け位置のカット部(52)は存在せず、左側前身芯体(2)のボタン穴用カット部(51)は、右側前身芯体ではボタン縫い付け用のカット部となる。
【0018】図8は左側細腹芯体(3)の正面図であり、図9はその分解部である。細腹芯体(3)は、上衣の細腹部分より少し幅狭にカットした防刃シート(5c)の、前身頃との合わせ側の縁部び裾部分に、前記同様の接着テープ(6d)(6e)を約2cmの幅ではみ出す様に接着してから、接着テープ(6d)(6e)と防刃シート(5c)を縫着して形成されている。
【0019】図10は袖部芯体(4)の展開図であり、図11はその分解図である。袖部芯体(4)は、上袖(外袖)と同じ幅で、長さ約20cmの第1防刃シート(5d)と該第1防刃シートよりも左右に約2cmづつ幅狭の第2防刃シート(5c)を重ね、上縁、左右縁を縫い合わせ、袖口側に前記同様の接着テープ(6g)を約2cmの幅ではみ出す様に合わせて縫い付けて形成する。
【0020】図3は、前身芯体(2)及び細腹芯体(3)の上衣への縫い付け説明図である。前身表地の衿(16)の返り線(7)で上記前身芯体(2)の接着テープ(6a)と表地(9)をまつり縫いし、該前身芯体(2)の前身線(71)側の接着テープ(6b)及び裾の接着テープ(6c)を表地(9)の裏面に貼り付け、身返し合わせで縫い付け、裾も裾合わせで縫い付け、ステッチ(8)でもう一度とじ付ける。
【0021】前身芯体(2)の袖側側縁は、肩パッド付の際に一緒に表地にとじ付ける。前身芯体(2)の細腹(11)側の側縁は、表地に止め付けずにフリー状態(所謂フラシ)とする。又、前身芯体(2)の上部は、肩章(17)下の部分で、肩線に平行に衿付けの部分から肩章(17)の縫い止め部(17a)までの直線部分(81)と、マイク止め片(90)(警察官が携帯するマイクロフォンを肩部に止めるための布片)の左右線部分(82)(83)及び肩章止め縫い部(17a)の内側たて線部分(84)にて、表地と前身芯体(2)をとじ付ける。とじ付けの縫い目は、肩章(17)に隠れてしまう。
【0022】胸ポケット(15)は、前身頃の表地に予め縫着しておく。
【0023】細腹芯体(3)は、その接着テープ(6d)(6e)を細腹表地に貼り付けてから、該細腹表地と該接着テープ(6d)(6e)とを縫い付け、該縫い付け部分を前身頃表地と縫い合わせ、更にステッチ(8)にてもう一度とじ付ける。又、細腹芯体(3)の上部に、接着テープ(6f)を縫いつけ、該接着テープ(6f)を袖付けの際に一緒にとじ付ける。細腹芯体(3)の脇下側の側縁は、表地に止め付けずにフリー状態(フラシ)とする。
【0024】図5は、袖部芯体(4)の袖(13)への縫いつけ状態を示している。袖部芯体(4)の袖口側からはみ出た接着テープ(6g)を表地に貼り付け、外袖(13a)と内袖(13b)を縫い合わせる際に、袖部芯体(4)を一緒にとじつけ、袖口側はカフス(14)を取り付ける際に、接着テープ(6g)とカフスを一緒に縫いつけ、ステッチにてもう一度縫いつける。袖部芯体(4)の肘側の側縁は、表地に止め付けずにフリー状態(フラシ)とする。
【0025】上衣全体に裏地(91)を縫い付けてから、前身芯体(2)のカット部(52)に、表地(9)と裏地(91)を貫通して階級章取付け用のハトメを施す。右側前身にボタン(18)を取り付け、左側前身にボタン穴(19)を設ける。
【0026】然して、上衣の前身頃全体、後身頃の上部、細腹及び袖部に、防刃シート(5)で形成した芯体(2)(3)(4)を設けているため、着用者の胸、腹、肩口及び腕へ刃物で斬りつけても、刃物が身体へ食い込むことを阻止でき、致命傷になることを防刃出来る。
【0027】胸から肩に掛かる部分は、格闘の際に刃物で斬りつけられ易い部分であり、又、防御の姿勢をとったときに、腕部も斬りつけられ易いが、これらの部分は、防刃シートを二重にして、防刃効果を高めているため問題はない。
【0028】繊維質の防刃芯体は柔軟性があり、又、金属製の防刃チョッキに較べて軽いため、身体の動きにさほどの負担とはならない。又、防刃芯体(2)(3)(4)は上衣に縫着されているため、上衣と別個に着用する手間は省ける。又、防刃芯体は上衣の表地に隠れてその存在が分からないため、ぎょうぎょうしさがなくスマートである。
【0029】刃物の斬りつけを寄せ付けない防刃芯体(2)(3)(4)は、ミシン掛けが難しく、防刃芯体(2)(3)(4)を直接に上衣の表地に縫着すれば、縫い目が振れて美観を損なうが、上記の如く、防刃芯体(2)(3)(4)の縁からはみ出す様に接着テープを縫い付け、該接着テープのはみ出し部を表地に縫着することによって、上衣に表出する縫い目の振れを防刃できる。
【0030】尚、接着テープを用いると、防刃芯体にも表地にも接着剤層によって仮止めができ、ミシン掛けが楽になるが、接着テープに限らず接着剤層の存在しない布テープでも実施可能である。
【0031】前身頃に重なる前身芯体(2)の細腹側の側縁、細腹に重なる細腹芯体(3)の脇下側の側縁を表地に止め付けずにフリーとすることによって、表地の自由度が損なわれず、身体を動かしたとき、引っ張り感を感じることなく、着心地を損なわない。
【0032】本発明の防刃上衣は、上記実施例の構成に限定されることはなく、例えば、上衣の後身頃全体、肩章内部、袖の肘から上部にも防刃シート(5)を縫着することが出来るのは勿論であって、防刃シートの取付け部位は問わない。又、防刃シートに用いる繊維は、上記に限らず防刃効果があれば可い。又、防刃シートは、編成、織成に限ることはなく、フェルト状のシートに形成したり、防刃効果のある繊維層と硝子繊維層をシート状に積層する等、防刃シートの組成も問わない等、特許請求の範囲に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【出願人】 【識別番号】397017799
【氏名又は名称】株式会社三友繊維
【出願日】 平成12年4月17日(2000.4.17)
【代理人】 【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之 (外2名)
【公開番号】 特開2001−303313(P2001−303313A)
【公開日】 平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願番号】 特願2000−114673(P2000−114673)