| 【発明の名称】 |
冷却用材および冷却システム |
| 【発明者】 |
【氏名】太田 昌三
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| 【要約】 |
【課題】暑熱環境下で作業する場合、従来の方法では達成し得なかった身体を冷却する衣服または、密閉形防護服の下に着用した時に衛生的で優れた冷却効果を提供する冷却用材および冷却システム。
【解決手段】少なくとも(1)水分移行層、(2)空気通過層および(3)空気遮断層が積層された3層構造からなり、湿潤した(1)の水分が(2)で熱を奪われ温度低下する冷却用材および該冷却用材の(2)に空気を送り込む機構を備えた冷却システム。また、水分移行層が抗菌機能を有し、空気通過層の厚さが2mm以上100mm以下、見掛密度が0.005cm3/g以上0.5 g/cm3以下であることを特徴とする冷却用材および冷却システム。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも(1)水分移行層、(2)空気通過層および(3)空気遮断層からなり、(1)の水分が(2)で熱を奪われ、温度低下することを特徴とする冷却用材。 【請求項2】 請求項1記載の冷却用材の空気通過層に、空気を送り込むことを特徴とする冷却システム。 【請求項3】 請求項1記載の冷却用材の空気通過層の厚さが2mm以上100mm以下、かさ高性が2cm3/g以上200cm3/g以下であることを特徴とする冷却用材。 【請求項4】 請求項3記載の冷却用材を用い、空気通過層に、空気を送り込むことを特徴とする冷却システム。 【請求項5】 水分移行層が抗菌性の繊維からなることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの冷却用材および冷却システム。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は暑熱環境下で作業する際に身体を冷却するために装着する冷却用材、より具体的には衣服または装具に関するものである。特に作業環境の熱、薬品、放射線等から身体を守る保護衣着用時に涼風を得ることができず、体温上昇と多量発汗が伴う場合に保護衣の内に着用又は装着するものに関するものである。 【0002】 【従来の技術】製鉄や精鋼現場での作業者、ガラスやその他の窯業関係の作業者等の暑熱環境で作業する作業者は輻射熱で身体温度が上昇すると共に多量発汗する。あるいは原子力施設等などの被爆危険性のある環境下で作業する作業者は放射線防護用のシール性の高い密閉型保護衣を着用するので暑く発汗量も高い。また、汗から生ずる不快な臭気などが防護衣内にこもる。 【0003】これらに対処すべく身体を冷却する方法が、いくつか提案されている。例えば以下に示すような技術が挙げられる。特開昭55-106171に示されるようなCO2等の冷却媒体を衣服内に収納する方法。特開平2-145801に示されるような携帯冷却ユニットで冷却した冷風を作業服内に送風する方法。特開平4-209807に示されるような衣服内にパイプを張り巡らしパイプ内の冷媒を循環させる方法。特開平4-209809に示されるような冷風通路を有し内側にはっ水性多孔材を配して冷風を該多孔から身体に吹き出す方法。特開平6-220705に示されるような電子冷却素子をユニット化して用いる方法などがある。 【0004】冷却媒体を衣服内に収納する方法の場合、ドライアイスの他、氷嚢や冷媒のアイスパックを冷蔵庫等で冷却した後衣服内に挿入する。この場合冷却媒体の準備保管に装置設備を要することや、気化または液化した冷却媒体の処理対応、冷却可能時間に制限があること、冷却温度の制御が困難といった問題点がある。 【0005】冷風を送気する方法は冷却システムに別途装置設備を要すること、また気密型の保護衣を着用した場合等は送風により衣服内が余圧となり衣服が膨れ上がるために作業性が低下するといった問題がある。 【0006】衣服に配備したパイプ内の冷媒を循環させる方法は上記と同様に別途冷却装置設備を要すること、冷却媒体を循環するためのポンプを要することあるいはパイプの可とう性が低い場合は動作の支障となり作業性が低下するといった問題がある。 【0007】冷風通路を経由してはっ水性多孔材から冷風を送る方法では冷却装置や作業環境外の空気を送る装置が必要となること、あるいは、はっ水性多孔材が身体から発生する汗やその他汚れにより目詰まりするといった問題がある。 【0008】電子冷却素子を用いる方法では素子の加熱側に送風等で別途冷却する機構を設ける必要があり、電源を含めた装置自体が大掛かりとなり作業性が劣ることや加熱側の産熱の処理といった問題が生じる。いずれの場合も、装置の大型化、冷却効率の低さ、更に装着した時の作業性などが劣り、暑熱環境下での作業に適するものではない。 【0009】また、いずれのものも,水分吸着後に発生する臭気については言及されておらず、再着用した時などに不愉快な匂いが発生する対策はなされていない。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の従来技術における問題を解決しようとするものである。すなわち、暑熱により多量発汗するような作業環境下に於いて、作業者の身体を冷却し、長時間作業が可能であり多くの特別な付属装置や送気ラインを具備することなく、作業性の低下が小さい冷却用材及び冷却システムを提供しようとするものである。特にJIS T 8115:1998で区分されている気密形防護服あるいは密閉形防護服のうち送気式でない防護服に適した冷却用材であり、かつ防護服内の空気あるいは、防護服外の空気を小型の送風機で循環、送入することを特徴とするものである。更に、再使用する場合についても不快感を伴わない防護衣を提供するものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討の結果本発明に至った。すなわち、本発明は、人体の肌に接する方から(1)水分移行層、(2)空気通過層および(3)空気遮断層の3層に積層された構造からなる冷却用材である。(1)の水分が(2)で蒸発し、その時気化熱として奪われ温度低下することを特徴とする。また(1)水分移行層を構成する繊維が抗菌性繊維からなり、更に該冷却用材の(2)に空気を送り込む機構を備えることにより更に冷却効率を向上させる冷却システムである。 【0012】暑熱環境下での作業とくに気密型防護服あるいは密閉型防護服等の保護衣を着用しての作業時には熱ストレスが甚だしく、体温上昇も激しい。生理学的には、深部体温が42℃以上になると長時間耐えることができず生命維持に危険が生じると言われており、体温低下のために多量の発汗作用が起こる。また最大発汗量は、諸説もあるが1000ml/時間以上に達することもあると言われている。 【0013】本発明は発汗による身体の冷却機構に着目したものである。すなわち、発汗で生じた水分を素早く蒸発させ、その蒸発潜熱を奪うことで冷却しようとするものである。水分移行層(1)とは、身体から発散した汗水分を吸収すると共にその水分が蒸発する部位である。 【0014】従って、水分移行層は汗水分を吸収移行しやすい素材が良く、例えば綿、麻等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、リオセル等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維といった元来親水性繊維から成る繊維集合体が挙げられる。また、本来疎水性であるポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維でもよいが、原糸改質や表面加工により濡れ性を高めたり、極細化や異型断面、親水性モノマーを共重合とすることで水分移行性を高めたりしたポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等やその共重合体、その他合成繊維の繊維集合体が更に好ましい。またこれらの混合品や複合化したり、混繊した糸条から成る繊維集合体等も挙げられる。繊維集合体の形状としては通常の衣料用の織物、編物、または不織布、紙およびこれらを組み合わせたものである。 【0015】更にこれらの繊維に抗菌性を付与したものである。抗菌性の付与の方法はいろいろ古くから知られている(特開昭54-86584、特開昭61-245378、特開昭4-814365)。本発明に供する抗菌繊維は特にいずれの方法で処理されたもので充分である。特に、ホスホニウム塩を主鎖および/または側鎖に結合した高分子物質と親水性物質を含むものが、耐久性もよく好ましい。抗菌性を付与することにより、使用後の菌の発生もなく、消臭効果が得られる。 【0016】空気通過層とは、水分移行層に保持された汗水分が蒸発すべき空間を意味する。ここで汗水分が蒸発すると共に蒸発潜熱が奪われて(1)の温度が低下する。水分の蒸発を促すために(2)に含まれる空気が定量的に移動することが好ましく、そのために送風機構を備えるとさらに良い。 【0017】(2)は水分移行層の表面に沿って空気が容易に移動するよう連続した空間が存在する構造が必要である。このような構造として厚さが2mm以上100mm以下、かさ高性が 2cm3/g以上200 cm3/g以下である空気通過層が本技術の目的を達成することができる。その材料の例としては特開平7−68061に示される熱可塑性樹脂の三次元ランダム接合した網状構造体、あるいは20dtex以上200dtex以下程度のエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維モノフィラメントを用いたダブルラッセル編物等が挙げられる。 【0018】空気通過層の厚さが2mm未満の場合は充分な空間を得られず、空気の流通が妨げられて、水分移行層に含まれる水を蒸発させることができない。また、100mmを超える場合は水分移行層表面での空気の流速が低くなると共に、衣服として着用することを考慮すると大きくなりすぎ作業性が低下する。 【0019】空気通過層のかさ高性が2cm3/g未満の場合は繊維等の充填率が上がり、空気の流れの抵抗となるために冷却効果が劣る。また200cm3/gを超える場合は充分な空間が得られるものの、衣服として着用した際に作業動作によって変形が生じ空気の流通を妨げることとなる。 【0020】空気処断層とは、(1)より(2)に移動した空気が、この(2)の層を流れやすくするために設けた層である。(3)は一般のフィルムまたは、高密度織物、織編物・不織布へ樹脂などをラミネートまたはコーティングしたもので、特に指定はされない。 【0021】3層の積層体は、水分移行層に空気通過層の材を貼り合わせて、縫い糸でとめるか、部分的に接着剤を塗布して固定してもよい。また、この貼り合わせたものの空気通過層側にフィルムまたは高密度織物、織編物・不織布へ樹脂などをコーティングしたものを合わせて、糸で縫いとめるか接着剤にて固定して構成される。 【0022】この冷却用材は人体にそのまま着用してもよいが、暑熱環境下などで作業する時の密閉型防護服を着用する際には、更にその冷却効果を発揮する。 【0023】ここで図面で本発明を説明する。第1図は本発明による冷却用材の構成図であり、(1)は水分移行層、(2)は空気通過層、(3)は空気遮断層をそれぞれ示し、(4)は(1)〜(3)を積層してなる冷却用材を示す。第2図は本発明における冷却システムであり、(23)の送風機より発生した気流を(22)の送風管を通じて、(4)の冷却用材に配置した送風ノズルより送り込む機構であることを示す。 【0024】本発明による冷却用材は必要に応じた形状として、例えばチョッキ、腹巻き、襟巻き、全身または半身を覆う衣服等の任意の形状で身体の冷却に供することができる。本発明による冷却用材を装着した上に保護衣を着用する場合、防護服内に存在する空気を送風機によって循環させて冷却用材の空気通過層に送り込むことが可能である。また、防護服外の空気を送り込む場合には外気の汚染物質が侵入しないよう送風機の空気取り入れ口に粒子ろ過フィルターやガス吸着フィルターを併用しても構わない。 【0025】 【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例はこの発明を制限するものではなく、前・後記の主旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術範囲に包含される。 【0026】以下の実施例で評価した各項目の測定法は下記の通りである。 厚さ:7gf/cm3の荷重を掛けた際の厚さを測定した。 かさ高性:試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4か所の高さを測定し、体積を求め、試料の体積を重さで除した値で示す。(n=4の平均値) 【0027】冷却性:以下に本発明の目的とする冷却性の測定方法について詳細に説明する。尚、試験環境は25℃±1℃で行った。 (1)ホットプレート(井内盛栄堂;ECホットプレート、EC−1200)の上に湿潤紙(20cm×20cmのろ紙に300g/m2で水を含ませる)を置く。これを身体の産熱と発汗のモデルとする。 (2)湿潤紙の上に熱伝対温度計の温度検出端を置く。 (3)その上に試料(15cm×15cm)を重ねて置く。 (4)ホットプレートを40℃に設定し加熱する。 (5)約40℃で安定したらホットプレートの電源を切る。 (6)経時時間毎の温度を計測し、電源を切った時点での表示温度t0と各時間における表示温度tの差を低下温度Tとする。20分後の低下温度をT20(℃)とする(7)ホットプレートのみ単独で40℃に加温した後に電源を切り、(6)と同様に温度計測し、20分後の低下温度をT0(℃)とする。 (8)冷却性を次の式で求める。冷却性(℃/20分)=T0−T20【0028】抗菌性:JIS L 1902-1998で制定の繊維製品の抗菌性試験法(統一法)マニュアルに準じた。即ち、密閉容器の底部に予めサンプルを2gを置き、このサンプルの上に予め培養した1/50ブロースで希釈した黄色ブドウ球菌をの菌液0.2mlを蒔きね37℃のインキュベーター内に18時間静置した後、20mlのSCDLP培地を添加して充分振とうして菌を洗い落とす。これを普通寒天培地に置き24時間後に菌数を計測し、同時に実施した無加工試料布による菌数と比較して抗菌性を判断し、同時に臭気を嗅いで判断した。 【0029】実施例1水分移行層(1)としてキュプラフィラメントタフタ織物(A)(繊度;66dtex×82.5d、織密度;278本/5cm×176本/5cm、質量;65g/m2)を用いた。このタフタにニッカノンRB 20g/l(第四級アンモニウム塩系抗菌、日華化学株式会社製)を付与させた。空気遮断層(2)として0.03mm厚さのポリエチレンフィルム(C)を用いた。空気通過層としてポリエステル系エラストマーの連続線条ランダムループを有する網状弾性体を15cm×15cm切り出して試験片(B)とした。その厚さは32.3mm、かさ高性は22.7cm3/gである。(A)と(C)を各々両面に配した袋状として(B)を挟み込んで端部を糸で布つけて固定し、冷却用材−1を作成した。この冷却用材−1の一方の端部に内径8mmのポリエチレンチューブをスリットして作成した溝空きタイプの送風ノズルを取り付けた。このノズルにポリエチレンチューブを介して送風ポンプと接続した。上記に基づいて冷却性を測定した。その際、試料の配置は下方からホットプレート、湿潤紙、温度検出端、冷却用材−1とし、冷却用材−1は下方湿潤紙側に(A)が配置されるよう置いた。さらに、この測定系全体を0.04mm厚さのポリエチレンフィルム(D)で覆った。これは、防護服を最外層に着用することを想定してそのモデルとして使用した。温度検出端の温度が40℃で安定した後ホットプレートの電源を停止すると共に、送風機より6Lt/分で空気を送った。温度変化を第5図に示すと共に、冷却性を第1表に示した。 【0030】実施例2空気通過層として地糸としてポリエステルフィラメント糸(55dtex、24フィラメント:5-スルホイソフタル酸ジメチルエステルのトリ-n-ブチルヘキサデシルホスホニウム塩3mol%を共重合したもの)をパイル糸としてナイロンフィラメント糸(66dtexモノフィラメント)から成るダブルラッセル編物(B2)を用いた以外は実施例1と同様の構成とした。ここでB2の厚さは3.4mm、かさ高性は10.3g/cm3である。実施例1と同様に冷却性を測定し、その結果を第5図に示すと共に、冷却性を第1表に示した。 【0031】ホットプレートのみで40℃に安定し、電源停止20分後の表面温度を測定した。この時の温度をT0とした。 比較例1ホットプレートに湿潤紙を重ね、更に実施例1と同様に測定系を0.04mm厚さのポリエチレンフィルム(D)で覆った場合を比較例1とした。 比較例2空気を送り込まないこと以外は実施例1と同じとした。 比較例3空気を送り込まないこと、水分移行層には抗菌処理なし以外は実施例2と同じとした。 【0032】 【表1】
【0033】 【発明の効果】以上の説明より本発明に係る冷却用材および冷却システムにあたっては、(1)抗菌機能を付与した水分移行層、(2)空気通過層、(3)空気遮断層が積層された3層構造からなることにより、(1)の水分が(2)で熱を奪われて温度低下することから、またさらに該冷却用材の(2)に空気を送り込む機構を備えた冷却システムであることからより一層冷却効果が上がる。従って長時間の暑熱環境下で作業するにあたり、密閉形防護服の下に着用する場合は、特に優れた冷却効果とともに、作業性にも優れて安全性、衛生的かつ効率性に寄与するものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003160 【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年5月29日(2000.5.29) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−288605(P2001−288605A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月19日(2001.10.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−158850(P2000−158850) |
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