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【発明の名称】 衣類およびその繊維シートの製造方法
【発明者】 【氏名】田口 節男

【氏名】太田 隆司

【氏名】山根 和子

【要約】 【課題】特に、薄くて、軽くて、保形性と肌触りが良好であり、かつバストのシルエットを美しく表現でき、洗濯耐久性の優れた乳房カップを有する衣類および繊維シートを提供する。

【解決手段】ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料において、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2 以下であるポリエステル繊維を用いてなり、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって、その厚さ変動が30%以下であることを特徴とする衣類。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料において、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2 以下であるポリエステル繊維を用いてなり、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって、その厚さ変動が30%以下であることを特徴とする衣類。
【請求項2】ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料において、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2 以下であるポリエステル繊維と、非晶配向度が0.45以上、見掛ヤング率が2940N/mm2 以上であるポリエステル繊維を用いてなり、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって、その厚さ変動が30%以下であることを特徴とする衣類。
【請求項3】乳房カップにおいて、少なくとも一種のポリエステル繊維の単糸太さが2デシテックス以下であることを特徴とする請求項1または2記載の衣類。
【請求項4】乳房カップにおいて、少なくとも一種のポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衣類。
【請求項5】乳房カップにおいて、少なくとも非晶配向度0.35以下で見掛ヤング率が1960N/mm2 以下のポリエステル繊維と、非晶配向度0.45以上で見掛ヤング率が2940N/mm2 以上のポリエステル繊維の両方がブラジャーカップの表面に露出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衣類。
【請求項6】乳房カップが、分散染料で染色されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
【請求項7】乳房カップが、分散染料で染色され発色性が異なる2種以上のポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
【請求項8】乳房カップが、ポリエステル繊維フィラメントであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
【請求項9】乳房カップが、織物、編物、または不織布から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衣類。
【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載の衣類が、ブラジャー、ボディスーツ、ビスチェ、ブラテディ、スリーインワン、ブラキャミソール、ブラスリップ、ロングラインブラジャー、および水着から選ばれたものであることを特徴とする衣類。
【請求項11】複屈折率Δnが0.02〜0.083 のポリエチレンテレフタレート繊維を有するシートを、60〜90℃の乾式および/または湿式雰囲気下で、タテ、ヨコ方向とも、2%/秒以下の収縮速度で10〜25%収縮させた後、少なくとも染色液温55℃〜70℃において、0.5℃/分以下の速度で昇温し染色することを特徴とする繊維シートの製造方法。
【請求項12】複屈折率Δnが0.02〜0.083 のポリエチレンテレフタレート繊維を有するシートを、60〜90℃の乾式および/または湿式雰囲気下で、タテ、ヨコ方向とも、2%/秒以下の収縮速度で10〜25%収縮させた後、少なくとも室温〜50℃において0.3℃/分以上の速度で昇温し、55℃〜70℃において0.5℃/分以下の速度で昇温し、および75〜120℃において0.3℃/分以上の速度で昇温することを特徴とする繊維シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブラジャー、ボディスーツなど乳房カップを有する衣類および成形用繊維シートの製造方法に関する。特に、薄くて、軽くて、通気性、透湿性、保形性と肌触りが良好であり、かつバストのシルエットを美しく表現でき、洗濯耐久性の優れた乳房カップを有する衣類および成形用繊維シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、乳房カップを有する女性用衣料類、例えば、ブラジャー、ロングラインブラジャー、ビスチェ、ボディスーツ、スリーインワン、ブラテディ、ブラキャミソールあるいはブラスリップなどがある。乳房カップを有する衣類は、着用者の乳房にあてがわれるため、柔らかい感触と膨らみのある立体形状が要求され、女性の衣服として広く普及している。
【0003】その素材は、従来より、不織布、発泡ポリウレタンシート、ポリエステル繊維編物などが用いられている。
【0004】これらは、乳房の形を美しく表現するために、乳房の形に近い立体曲面を有するカップの形が要求され、ダーツを入れた縫製品、各種布帛を多層に積層したもの、熱成形したものなどがある。
【0005】かかる従来技術では、乳房形状を美しく表現するためには、その形状保持のため硬く、厚く、しかも多種の縫い合わせたものとならざるを得なかった。また、繰り返し洗濯により形が保持できないこと、風合いが変化することなどの問題があった。特に、乳房カップに求められる特性を有しかつダーツを有しない一枚使いのものはこれまでなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来の欠点や問題点を解消することを目的とするものである。特に、薄くて、軽くて、保形性と肌触りが良好であり、かつバストのシルエットを美しく表現でき、洗濯耐久性の優れた乳房カップを有する衣類および成形用繊維シートを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、次のとおりの構成をとるものである。
【0008】(1)ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料において、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2以下であるポリエステル繊維を用いてなり、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって、その厚さ変動が30%以下であることを特徴とする衣類。
【0009】(2)ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料において、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2以下であるポリエステル繊維と、非晶配向度が0.45以上、見掛ヤング率が2940N/mm2 以上であるポリエステル繊維を用いてなり、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって、その厚さ変動が30%以下であることを特徴とする衣類。
【0010】(3)乳房カップにおいて、少なくとも一種のポリエステル繊維の単糸太さが2デシテックス以下であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の衣類。
【0011】(4)乳房カップにおいて、少なくとも一種のポリエステル繊維がポリエチレンテレフタレート繊維であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の衣類。
【0012】(5)乳房カップにおいて、少なくとも非晶配向度0.35以下で見掛ヤング率が1960N/mm2 以下のポリエステル繊維と、非晶配向度0.45以上で見掛ヤング率が2940N/mm2 以上のポリエステル繊維の両方がブラジャーカップの表面に露出していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の衣類。
【0013】(6)乳房カップが、分散染料で染色されたことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の衣類。
【0014】(7)乳房カップが、分散染料で染色され発色性が異なる2種以上のポリエステル繊維からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の衣類。
【0015】(8)乳房カップが、ポリエステル繊維フィラメントであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の衣類。
【0016】(9)乳房カップが、織物、編物、または不織布から構成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の衣類。
【0017】(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載の衣類が、ブラジャー、ボディスーツ、ビスチェ、ブラテディ、スリーインワン、ブラキャミソール、ブラスリップ、ロングラインブラジャー、および水着から選ばれたものであることを特徴とする衣類。
【0018】(11)複屈折率Δnが0.02〜0.083 のポリエチレンテレフタレート繊維を有するシートを、60〜90℃の乾式および/または湿式雰囲気下で、タテ、ヨコ方向とも、2%/秒以下の収縮速度で10〜25%収縮させた後、少なくとも染色液温55℃〜70℃において、0.5℃/分以下の速度で昇温し染色することを特徴とする繊維シートの製造方法。
【0019】(12)複屈折率Δnが0〜0.083 のポリエチレンテレフタレート繊維を有するシートを、60〜90℃の乾式および/または湿式雰囲気下で、タテ、ヨコ方向とも、2%/秒以下の収縮速度で10〜25%収縮させた後、少なくとも室温〜50℃において0.3℃/分以上の速度で昇温し、55℃〜70℃において0.5℃/分以下の速度で昇温し、および75〜120℃において0.3℃/分以上の速度で昇温することを特徴とする繊維シートの製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、さらに詳しく本発明について説明をする。
【0021】本発明は、ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣類であり、特に、乳房カップ(乳房形状をした芯材)が一枚使いである。それを実現する繊維シートは、深絞りの成形が可能であり、薄くて、軽くて、身体の動きによく順応できるものである。さらに、好みの色に自在に染色が可能であり、長期間の着用や繰り返し洗濯により、型くずれがし難いという特徴を有するものである。
【0022】かかる本発明の構成は、乳房カップに用いる繊維は少なくともポリエステル繊維であって、非晶配向度が0.35以下、好ましくは0.30以下、見掛ヤング率が1960N/mm2 以下、好ましくは980N/mm2 以下である。いずれもこの値を上回ると成形における追随性が不十分であり、均一な深絞り加工はできない。
【0023】また、カップの高さが40mm以上、好ましくは50mm以上、幅が80mm以上、好ましくは90mm以上の乳房形状の立体曲面を有するものである。これは、従来技術では達成できない均一な深絞りが可能であることを示すものであり、乳房カップにおいて、そのカップの形を保つための芯材が他の布帛と併用しない一枚使いであっても、乳房のサイズに広く対応でき、また、乳房の形を美しく表現できる乳房カップとすることが可能である。
【0024】本発明でいうポリエステル繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルが好ましく適用でき、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく適用できる。また、ポリエチレンテレフタレートにポリアルキレングリコールが共重合された共重合体や、ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸が共重合された共重合体も好ましく適用できる。
【0025】さらに、カップの厚さが0.5〜2.0mm好ましくは0.8〜1.5mmであって厚さ変動が30%以下、好ましくは20%以下と薄い繊維シートであっても極めて厚さの差が小さいものである。
【0026】ここで、ポリエステル繊維の非晶配向度とは次の方法にて測定された値である。
【0027】測定法:偏光蛍光法装 置:日本分光工業製FOM−1光学系:透過法(励起光波長:365nm、蛍光波長:420nm)
測定系:偏光子‖検光子、および偏光子〓検光子で回転して、面内の偏光蛍光強度(I‖、I〓)の角度分布を得た。
ここで、‖は平行を示し、〓は垂直を示す。
非晶配向度は下記式からの一軸配向係数f2 で求めた。
【0028】f2 =3/2[{I‖(0)+2I〓(0)}/K−1/3]
但し、K={I‖(0)+4I〓(0)+8/3I‖(90)}
I‖(0) :‖測定での軸方向の相対偏光蛍光強度I‖(90):‖測定での上記と直交方向の相対偏光蛍光強度I〓(0) :〓測定での軸方向の相対偏光蛍光強度また、見掛ヤング率は、JIS−L−1013、7.10に準じて測定された値である。
【0029】本発明でいう乳房カップの高さは、成形加工を行った繊維シートからカップ部のみを裁断あるいはくり抜き、図1に示すように、底部からトップまでの長さ(H)である。また、乳房カップの幅は同様にカップ底部間における最短内径(W)である。
【0030】乳房カップの厚さは、厚さ計(尾崎製作所製商品名「PEACOCK」)を用いて、カップ部の10箇所の厚さを偏りなく測定し、下記式により厚さ平均値と、厚さ変動の最高値を算出したものである。
【0031】厚さ平均値(mm)= 厚さの合計(mm)/測定数(n)
厚さ変動率= (各部位の厚さ / 厚さ平均値 )×100本発明がダーツを有しない乳房カップとする理由をブラジャーに例をとって説明する。図2に示すように、カップ部に縫い目が存在しないものであり、縫い目部の凹凸による肌こすれが少なく、乳房とよくフィットし感触が良好である。また、スポーツなどのによる発汗を伴う場合、通気性と透湿性が良好であり、抜群の快適性を有する。強度面でも有利であり、着用時の大きく激しい動きに対しても、繰り返し洗濯に対しても好ましい耐久性を有する。
【0032】もちろん、ダーツを有しない一枚使いである本発明の構成は、縫製工程での手間が省け、省人化と低コスト化に貢献できることは言うまでもない。
【0033】本乳房カップを構成するポリエステル繊維は、ステープル形態であってもよく、また、フィラメント形態であってもよいが、好ましくは繰り返し洗濯に対する耐久性や染色加工のしやすさからフィラメント形態が望ましい。
【0034】また、本発明の好ましい態様の一つとしては、ダーツを有しない一枚使い乳房カップを有する衣料であって、乳房カップが少なくとも非晶配向度が0.35以下、見掛ヤング率が1960N/mm2 以下であるポリエステル繊維と、非晶配向度が0.4以上であり、かつ見掛ヤング率が2960以上であるポリエステル繊維(高非晶配向度・高見掛ヤング率側ポリエステル繊維)、との混繊糸(引揃糸、エア交絡糸、交撚糸、合撚糸など)として用い、高さが40mm以上、幅が80mm以上であり、厚さが0.5〜2.0mmであって厚さ変化率が30%以下である乳房カップを有する衣類である。
【0035】ここで、前述と異なる点は、一方のポリエステル繊維が、非晶配向度0.45以上、好ましくは0.55以上、特に好ましくは0.60以上であって、見掛ヤング率が2940N/mm2以上、好ましくは3430N/mm2以上、特に好ましくは3920N/mm2 以上のポリエステル繊維を併用した混繊糸を用いることである。
【0036】かかる理由は、非晶配向度および見掛ヤング率が異なる二種以上のポリエステル繊維を用いることにより、乳房カップの表面に両方のポリエステル繊維が露出し、その発色性が異なるため、テカテカとした光沢が抑えられ自然観を有する高級感の色相が得られること、また繊維シートの内部構造に膨らみを発現させ柔軟で感触のよい乳房カップとすることができるためである。
【0037】ポリエステル繊維の太さは、全てあるいはいずれかが2デシテックス以下、好ましくは1デシテックス以下の極細繊維であることが好ましい。特に、高非晶配向度・高見掛ヤング率側のポリエステル繊維は細いことが、肌との感触の点で特に好ましい。
【0038】また、本発明の乳房カップは、ポリエステル繊維から構成されることから、分散染料でフルカラーに染色できかつ高い染色堅牢度が得られ好ましい。しかも、二種以上の異なるポリエステル繊維を用いることから、その発色性が異なり、ポリエステル繊維独特のテカテカした光沢や深みのない色相の欠点を改善することができる。
【0039】乳房カップを構成する布帛は、織物、編物あるいは不織布など従来公知の繊維シートが用いられ特に限定されない。特に、乳房カップ材は良好な保形性を得るためには、織物、編物とも嵩の高い多重組織が好ましく適用される。その具体的な例としては、織物では、タテ二重織物、ヨコ二重織物、タテヨコ二重織物など、編物では、ジャージ生地特にダブルジャージ生地、ダブルラッセル生地、モケット生地あるいはダンボールニット生地などが好ましく適用される。ここでダンボールニットとは、表地と裏地を中糸(繋ぎ糸、ジョイント糸あるいは連結糸と呼ばれるもの)で連結した多重編物あるいは立体編物のことである。
【0040】本発明の乳房カップを有する衣類としては、前記乳房カップを有するブラジャ、ボディスーツ、ビスチェ、ブラテディ、スリーインワン、ブラキャミソール、ブラスリップ、ロングラインブラ、水着(図2〜図11参照)などであり、一枚使いで薄くて、軽くて、良好な保形性を活かしたエレガントで機能性を有し、従来技術では得難い衣類を提供することができる。
【0041】次に、本発明の乳房カップを有する衣類を製造する好ましい方法を以下述べる。
【0042】ポリエステル繊維として、複屈折率Δnが0.02〜0.08 好ましくはΔnが0.03〜0.06の高配向未延伸糸と、単糸繊度が2デシテックス以下のポリエチレンテレフタレート極細繊維フィラメント延伸糸の混繊糸とし、これを多重編物を編成し生機を作製する。
【0043】ここで複屈折率ΔnはNa電球によりD線色光を用い、セルナモン法およびコンペンセータ法で測定された値である。
【0044】次いで、この生機を60〜95℃の乾式および/または湿式雰囲気下で熱処理し2%/秒以下、好ましくは1%/秒以下、特に好ましくは0.5%/秒の極めて緩やかに収縮せしめタテ、ヨコとも10〜25%収縮させる。このように、繊維シートが抵抗を受けつつ収縮させるように、制限収縮させることが好ましい。いきなり高温の雰囲気下に曝すことや急激に収縮させることは、乳房カップの特性およびスムース表面や柔軟な繊維シートとするに好ましくない。この特殊な加工条件が、後の工程である成形において、厚さムラの少ない深絞り加工を可能し、本発明の乳房カップを作製するのに重要である。この点も従来技術とは全く異なる点である。
【0045】次いで、染色機を用いて、分散染料浴中で、少なくとも55℃〜70℃において、0.5℃/分以下、好ましくは0.3℃/分以下、特に好ましくは0.2℃/分という極めて緩やかに速度で昇温させる。本発明の乳房カップを作製する繊維シートとするには、この染色昇温条件が重要であり本発明の特異な特性を発現する要件である。つまり、この条件も後の工程である成形において厚さムラの少ない深絞りを可能とする一つの要件である。また、さらにこの染色においては少なくとも室温〜50℃では0.3℃/分以上好ましくは0.5℃/以上の速度で昇温し、少なくとも55℃〜70℃では0.5℃/分以下、好ましくは0.3℃/分以下、特に好ましくは0.2℃/分以下という極めて緩やかにな速度で昇温し、少なくとも75〜120℃では0.3℃/分以上好ましくは0.5℃/以上の速度で昇温する方法が好ましく適用される。昇温が完了したら110〜130℃にて10〜60分染色を行う。もちろん、必要に応じて余剰染料を除去するために従来公知の還元洗浄を行ってもよい。
【0046】また、帯電防止剤、柔軟剤、抗菌剤などの機能性剤を付与し従来公知の仕上げセットを施してもよい。
【0047】得られた加工済み繊維シートは、乳房カップ形状の金型にセットし130〜230℃、クリアランス0〜3.0mm、10〜180秒プレス処理される。それをカップ形状に裁断し衣類に応じた部材を用いて縫製することにより作られる。
【0048】もちろん、本発明の乳房カップを芯材として表面にレースを配したり、プリントを行って装飾や柄を付与したものであってもよい。
【0049】
【実施例】実施例1、実施例2139デシテックス、36フィラメントのポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸(Δnが0.03)と83デシテックス、72フィラメントのポリエチレンテレフタレート延伸糸(Δnが0.15)をエア交絡して複合糸Aを作製した。266デシテックス、48フィラメントのポリエチレンテレフタレート高配向未延伸糸(Δnが0.03)と83デシテックス、72フィラメントのポリエチレンテレフタレートフィラメント延伸糸(Δnが0.15)をエア交絡して複合糸Bを作製した。A糸を表地および裏地に用い、B糸を中糸に用いてダンボールニット組織に編成し生機を作製した。
【0050】かかる生機をテンターにて80℃で45秒処理し、タテ、ヨコそれぞれ15%収縮させた。その後ネットコンベアを有する熱風乾燥機内を通過させて130℃、60秒間熱処理した。
【0051】次いで、液流染色機内で分散染料を用いて染色した。そのときの昇温条件は、40℃から55℃まで3℃/分、55℃から60℃まで0.2℃/分、60℃から70℃まで0.15℃/分、70℃から110℃まで1.0℃/分であり、110℃にて30分間とし染色した。
【0052】その染色シートを制電防止剤と柔軟剤を有する液浴中に浸せきした後、マングルで絞液し130℃で3分間乾燥した。その表面を顕微鏡で拡大して観察したところ、二種のポリエステル繊維の発色性が異なり、二種のポリエステル繊維間および高配向未延伸ポリエステル繊維の単糸間が密着することなく間隙を有するものであった。
【0053】かかる生地を乳房カップ形状を有する金型を用いて、クリアランス1.0mm、温度180℃、60秒間プレスする成形加工を行った。その成形品は、高さが56mm、幅97mmであり、10箇所を測定した厚さは、最低厚さが0.93mm、最高厚さが1.24mm、平均値が1.09mmであり厚さ変動は最高で14.7%であった。表面品位は、スムースであり、光沢の抑えられた色相を有するものであった。また、柔軟でありながらしっかりとしたカップ形状を有するものであった。
【0054】カップ状を有する成形品から2種の糸を抜き出して、非晶配向度と見掛けヤング率を測定したところ次のとおりであった。
【0055】
高配向未延伸糸部 延伸糸部 非晶配向度 0.26 0.52 見掛ヤング率(N/mm2 ) 882 4508得られた成形加工品を乳房カップ状に裁断し、カップを一枚使いとして、ストラップ、土台布、ワイヤーなど用いてダーツのないブラジャーに縫製した(実施例1)。
【0056】さらに、このカップの表面にレースを積層して縫製した。レースを積層しても嵩張り感がなく、エレガントな外観を有するものであった(実施例2)。
【0057】このブラジャーを着用したところ、身体に良くフィットし、肌触りがよく、軽くて、動きやすく、通気性、透湿性が良好であり、スポーツをするのに極めて快適であった。さらに、家庭用洗濯機を用いて30回分水洗濯(水流:強、洗濯:5分間、濯ぎ:5分間、洗剤:(株)花王ザブ)したところ、カップ形状が崩れることなく洗濯前の形状がよく保持されていた。また、寸法変化もほとんど認められなかった。
【0058】また、強制の圧縮試験(荷重:100g/cm2 、時間:60分間)においても、徐重後変形が認められず、カップ形状を維持していた。
比較例1、比較例2乳房カップに、発泡ポリウレタンシートの熱成形したもの(比較例1)、繊維の一成分に熱接着性を有するいわゆるサーマルボンド不織布を用いて熱成形したもの(比較例2)を用いて、実施例1と同じ部材構成にてブラジャーを縫製した。これを実施例1と同様の繰り返し洗濯を行ったところ、比較例1は型くずれが著しく当初の形を留めていなかった。また、通気性および透湿性が不良であり、むれ感のあるものであった。比較例2はカップ部が破れてカップの形状を留めていなかった。
比較例320ゲージの2列の針床を有するダブルラッセル編機を用い、表地および裏地糸に138デシテックス、24フィラメントポリエチレンテレフタレート延伸糸の双糸を用い、中糸(連結糸)に165デシテックス、36フィラメントポリエチレンテレフタレート延伸糸の双糸を用いてダンボールニットを作製した。得られた編地を90℃で5分熱水リラックスの後、180℃で30秒熱処理し、その後、分散染料を用いて130℃で30分染色した。
【0059】この染色布を用いて実施例1と同様の成形加工を行い、乳房カップ形状に成形した。この成形品は、風合いがくたくた状であり、乳房カップとしての形状を維持するものではなかった。また、色相はポリエステル繊維特有のテカテカとした光沢を有するものであり、色に深みのないものであった。表面を顕微鏡で観察したところ、単一の発色性からなるものであった。
比較例4実施例1の生機を用いて、テンターにて130℃で20秒処理し、タテ、ヨコそれぞれ25%収縮させた。次いで、液流染色機内で分散染料を用いて染色した。そのときの昇温条件は、40℃から55℃まで3℃/分、55℃から60℃まで0.2℃/分、60℃から70℃まで0.15℃/分、70℃から110℃まで1.0℃/分であり、110℃にて30分間とし染色した。
【0060】その染色シートを制電防止剤と柔軟剤を有する液浴中に浸せきした後、マングルで絞液し130℃で3分間乾燥した。得られた繊維シートは硬くまた収縮ムラと思われるシワが全面に発生した。
【0061】かかる生地を乳房カップ形状を有する金型を用いて、クリアランス1.0mm、温度180℃、60秒間プレスする成形加工を行った。その成形品は、高さが56mm、幅97mmであり、10箇所を測定した厚さは、最低厚さが0.50mm、最高厚さが1.76mm、平均値が1.11mmであり厚さ変動は最高で58.6%であった。比較例4は厚さ変動が高く、しかも全面にシワが発生しておりブラジャカップに供しえるものではなかった。
比較例5実施例1の生機を用いて、テンターにて100℃で20秒処理し、タテ、ヨコそれぞれ20%収縮させた。次いで、液流染色機内で分散染料を用いて染色した。そのときの昇温条件は、40℃から110℃まで3℃/分とし、110℃にて30分間とし染色した。この染色中65〜75℃において染色機内で繊維シートが3度停止した。
【0062】その染色シートを制電防止剤と柔軟剤を有する液浴中に浸せきした後、マングルで絞液し130℃で3分間乾燥した。得られた繊維シートは硬くまた収縮ムラと思われるシワが全面に発生した。
【0063】かかる生地を乳房カップ形状を有する金型を用いて、クリアランス1.0mm、温度180℃、60秒間プレスする成形加工を行った。その成形品は、高さが50mm、幅93mmであり、10箇所を測定した厚さは、最低厚さが0.65mm、最高厚さが1.55mm、平均値が1.07mmであり厚さ変動は最高で46.2%であった。比較例5は厚さ変動が高く、シワが目立ちブラジャカップに供しえる品位ではなかった。
【0064】
【発明の効果】本発明の乳房カップを有する衣類は、軽くて薄く、肌触り、通気性、透湿性が良好であり、かつバストのシルエットを美しく表現でき、フルカラーに染色が可能で、繰り返し洗濯による型くずれがし難い乳房カップを有する衣類を提供するものである。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年3月15日(2000.3.15)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−262407(P2001−262407A)
【公開日】 平成13年9月26日(2001.9.26)
【出願番号】 特願2000−71962(P2000−71962)