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【発明の名称】 調味料及びその製造方法
【発明者】 【氏名】山本 和夫

【要約】 【課題】ゴマ類と大麦を主原料とし、製造工程を複雑化することなく、しかも通常の醤油に劣らない旨味を備えた調味料及びその製造方法を提供する。

【解決手段】蛋白質原料としてゴマ類を、澱粉原料として大麦を用いて麹をつくり、これに調整した食塩水を加えて仕込みを行い、これを発酵熟成させて熟成もろみとし、その後圧搾し、火入れまたはろ過を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 蛋白質原料としてゴマ類を、澱粉原料として大麦を用い、醤油醸造法によって製造されたことを特徴とする、調味料。
【請求項2】 ゴマ類と大麦の重量配合比(ゴマ類/大麦)は、7/3〜4/6であることを特徴とする、請求項1記載の調味料。
【請求項3】 蛋白質原料としてゴマ類を、澱粉原料として大麦を用いて麹をつくり、これに調整した食塩水を加えて仕込みを行い、これを発酵熟成させて熟成もろみとし、その後圧搾し、火入れまたはろ過を行うことを特徴とする、調味料の製造方法。
【請求項4】 ゴマ類と大麦の重量配合比(ゴマ類/大麦)は、7/3〜4/6であることを特徴とする、請求項3記載の調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は主にアレルギー患者用として開発された調味料及びその製造方法に関する。更に詳しくは、ゴマ類と大麦を主原料とし、製造工程を複雑化することなく、しかも通常の醤油に劣らない旨味を備えた調味料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来より、アトピー性皮膚炎や気管支喘息のような食物アレルギー反応をひき起こしやすい食品として、牛乳、卵、大豆、小麦、米(一般にこれらを「5大アレルゲン」という)が知られている。この食物アレルギーの治療法としては、アレルゲンとなる食物を患者の食事から取り除いて体質改善を図る、いわゆる除去食療法が一般的である。
【0003】この除去食療法によると、大豆や小麦に対してアレルギー反応を起こす患者の場合、それらを主原料とする醤油までも、食卓から排除しなければならないということになる。しかしながら、醤油は日本人にとって最も重要な調味料であり、食卓から醤油を排除することは、調理の上でも、また味覚の上でも、患者に大きな苦痛を与えることになる。
【0004】そこで、大豆や小麦を用いない醤油の代替品となる調味料が特公平1-17666号公報で提案されている。この調味料は、大豆と小麦の代わりに、米原料から得られた米蛋白質濃縮物を主原料としている。米蛋白質濃縮物とは、米、各種米糖またはそれらの混合物のような米原料を加熱処理し、水の混在存在下、澱粉分解酵素で40〜90℃で12〜18時間かけて消化分解を行い、その後、液体部分を除去したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したような調味料には次のような課題があった。即ち、主原料の米蛋白質濃縮物を得るためには、米原料を澱粉分解酵素を用いて消化分解処理する必要があり、単に大豆と小麦を原料とする通常の醤油醸造法に比べ、非常に手間のかかるものであった。また、上記調味料は、蛋白質の含有量が20〜30%と低い米蛋白質濃縮物のみを主原料としているため、旨味やコク味といった醤油が具備すべき品質が不足しており、醤油の代替品としては充分に満足できるものではなかった。
【0006】そこで、本発明者は、上記課題を解決するべく、醤油代替品の原料として使用でき、且つ、アレルギーの原因物質として指定されていない穀物について検討を重ねた。その結果、主要成分である蛋白質、糖質などの含有量が大豆と小麦に類似しているゴマと大麦に着目した(表1参照)。
【0007】
【表1】

【0008】そうして、ゴマと大麦を主原料とした調味料の醸造法の開発に取り組み、製造工程を複雑化することなく、しかも通常の醤油に劣らない旨味を備えた調味料の開発について鋭意研究を行った結果、かかる目的にかなう調味料の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。第1の発明にあっては、蛋白質原料としてゴマ類を、澱粉原料として大麦を用い、醤油醸造法によって製造されたことを特徴とする、調味料である。
【0010】第2の発明にあっては、ゴマ類と大麦の重量配合比(ゴマ類/大麦)は、7/3〜4/6であることを特徴とする、第1の発明に係る調味料である。
【0011】第3の発明にあっては、蛋白質原料としてゴマ類を、澱粉原料として大麦を用いて麹をつくり、これに調整した食塩水を加えて仕込みを行い、これを発酵熟成させて熟成もろみとし、その後圧搾し、火入れまたはろ過を行うことを特徴とする、調味料の製造方法である。
【0012】第4の発明にあっては、ゴマ類と大麦の重量配合比(ゴマ類/大麦)は、7/3〜4/6であることを特徴とする、第4の発明に係る調味料の製造方法である。
【0013】本発明で用いるゴマ類とは、「脱脂ゴマ」または「ゴマ(脱脂処理せず)」、もしくは「脱脂ゴマとゴマを混合したもの」を指す意味で使用している。使用する「脱脂ゴマ」としては、例えば粉砕機にかけて粉砕した粉状のものが挙げられるが、特にこれに限定するものではない。使用する「ゴマ」としては、例えば、すりごま等が挙げられるが、特にこれに限定するものではない。使用する「ゴマ」としては、種子の色によって、例えば白ゴマ、黒ゴマ、黄ゴマ、及び金ゴマなどが挙げられる。
【0014】原料であるゴマ類は、適度に吸水させた後、高圧の蒸気で蒸煮処理したものを使用することができるが、特にこれに限定するものではない。ゴマ類の蒸煮条件は、通常の醤油の原料である大豆の蒸煮条件(一般的に0.2MPaの高圧蒸気で5分間)と相違して、例えば0.1MPaの高圧蒸気で5分間行えば十分であるが、特にこれに限定されない。
【0015】一方、原料である大麦は選別後、例えば砂浴式麦炒り機等で炒り、常温まで冷した後、例えばハンマーミル式割砕機等で割砕したものを使用することができるが、特にこれに限定するものではない。大麦の麦炒り条件は、例えば砂浴式麦炒り機を使用した場合、通常の醤油の原料である小麦の麦炒り条件(160℃で2分間)と相違して、130℃で2分間行えば十分であるが、特にこれに限定されない。
【0016】また、大麦の粒度は、通常の醤油の原料である小麦の粒度(粉歩合30%)と相違して、粉歩合20%程度のものが好ましいが、特にこれに限定するものではない。大麦の粉歩合20%とは、30メッシュの金網を通過できる大麦の量が全体の20%であることを示し、大麦1粒を3〜4つに分割した大きさに相当する。また、小麦の粉歩合30%とは、同じく30メッシュの金網を通過できる小麦の量が全体の30%であることを示し、小麦1粒を5〜6つに分割した大きさに相当する。
【0017】原料となるゴマ類と大麦の配合は重量配合比(ゴマ類/大麦)で、7/3〜4/6、好ましくは7/3〜5/5である。大麦の配合比が下限値3より少ない場合は、麹がうまく生成されず調味料ができにくい傾向にあり、反対に上限値60り多い場合は、蛋白質原料であるゴマ類の量が少なすぎて旨味に富んだ調味料ができにくい傾向にある。
【0018】本発明の調味料の製造は、醤油醸造法で行われる。即ち、上記のようにして処理したゴマ類と大麦を合わせて混合し、製麹する。これに調整した食塩水を加えて仕込みを行い、発酵・熟成する。発酵・熟成後、圧搾して清澄な液体部分を採取し、火入れまたはろ過、おり引き等を行う。「火入れ」の代わりに「ろ過」を行う場合は、生タイプの調味料を得ることができる。
【0019】
【実施例】次に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)表2に示す重量配合比で、原料となる脱脂ゴマと大麦をそれぞれ用意した。なお、脱脂ゴマと大麦の重量配合比は、脱脂ゴマと大麦を足した全体量を100として表している。脱脂ゴマに表2に示す量の熱湯(85℃)をまんべんなく散水してよく混ぜ、均一に吸水させた。吸水後、0.1MPaの高圧蒸気で5分間蒸煮処理し、蒸煮後、常温まで冷した。蒸煮後の各ゴマ類の水分量は61%であった。
【0020】一方、大麦は選別後、高温度に加熱した砂浴式麦炒り機で麦炒りした。麦炒り条件は大麦品温130℃で2分間である。麦炒り後、常温まで冷却し、ハンマーミル式割砕機で3分割〜4分割程度の大きさに割砕した。
【0021】
【表2】

【0022】次いで、蒸煮処理した脱脂ゴマと割砕した大麦を混合し、これに種麹0.34gをまんべんなく散布した。そして、製麹室で25〜30℃の下、42時間製麹を行い、麹を得た。この原料配合比が異なる6種類の製麹の状態を表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】表3に示すように、脱脂ゴマの使用量が80%以上、即ち、澱粉原料である大麦の使用量が20%以下になると、麹の出来が悪くなる傾向にある。これは、醤油醸造において一般的に言われている、「一定量の澱粉原料が必要である」ことと一致している。
【0025】表3の結果から、出麹の状態が良好な試作例3〜6の麹を用いて、仕込みを行った。得られた麹2.1kgに濃度22.5%の食塩水を3.6リットル加え、もろみとした。このもろみをFRP製の発酵タンクに入れ、発酵・熟成し、熟成もろみとした。発酵は、仕込み直後の品温15℃を加温して1ヶ月後に30℃とし、4ヶ月間保持した。次いで、6ヶ月間で28℃まで加温して発酵を終えた。
【0026】発酵終了後、圧搾して粕を除去し、生揚げを得た。生揚げは、その後、通常の方法によって、火入れ、おり引きを行い、製品とした。なお、発酵期間中は、温度コントロールと共に、好気性酵母菌の増殖を促すためエアレーションを適宜行った。
【0027】上記のようにして得られた試作例の生揚げについて、財団法人 日本醤油研究所の「しょうゆ試験法」により成分分析を行った。その結果を表4に示す。なお、表4中の寸評の欄には、火入れ、おり引き後の製品の官能評価を示した。なお、色度は、同じく、財団法人 日本醤油研究所の標準色度計を用いて測定したもので、数値が低い程、濃い色となる。
【0028】
【表4】

【0029】表4に示すように、脱脂ゴマと大麦の原料重量配合比が70/30〜50/50である試作例3〜5において、全窒素1.35%以上のものが得られた。日本農林規格では、上級の濃口醤油の全窒素は1.35%以上、特級の全窒素は1.50%以上と規定されていることから、試作例3〜5は旨味に富んだ調味料として十分な品質を備えており、特に試作例4は特級に相当する高品質なものであることが分かった。また、試作例6についても、日本農林規格で規定された標準の醤油(全窒素量1.20%以上)に相当し、製品として十分な品質を具備していることが分かった。
【0030】なお、ゴマの蒸煮条件、大麦の麦炒り条件、大麦の割砕後の粒度、もろみの発酵条件、及び発酵期間中のエアレーションについては、実施例2についても同じである。
【0031】(実施例2)表5に示す重量配合比で、原料となるゴマ、脱脂ゴマ、及び大麦をそれぞれ用意した。なお、ゴマについては、すりごまを使用した。
【0032】
【表5】

【0033】ゴマ60kgと脱脂ゴマ540kgを混合したゴマ類600kgに、85℃の熱湯720リットルをまんべんなく散水してよく混ぜ、均一に吸水させた。吸水させたゴマ類は蒸煮処理し、蒸煮後、常温まで冷した。蒸煮後のゴマ類の水分量は62%であった。一方、大麦400kgは選別後、高温度に加熱した砂浴式麦炒り機で麦炒りした。麦炒り後、常温まで冷却し、ハンマーミル式割砕機で割砕した。
【0034】蒸煮処理したゴマ類と割砕した大麦を混合し、これに種麹200gをまんべんなく散布した。そして、製麹室で25〜30℃の下、42時間製麹を行い、麹を得た。
【0035】得られた麹1050kgに濃度22.2%の食塩水を1800リットル加え、もろみとした。このもろみをFRP製の発酵タンクに入れ、発酵・熟成し、熟成もろみとした。
【0036】発酵終了後、圧搾して粕を除去し、生揚げ2290リットルを得た。また、対照例として、大豆と小麦(重量配合比で50/50)を主原料とした生揚げを通常の醤油醸造法により製造した。この各生揚げの成分分析を行った。更に、上記各生揚げの火入れ、おり引きを通常の方法によって行った後、官能検査を行った。この成分分析と官能検査の結果を表6に示す。なお、官能検査については識別能力を有する3名のパネラ−により行ない、非常に良いを「5」、良いを「4」、普通を「3」、悪いを「2」、非常に悪いを「1」と評価し、その平均値を示した。
【0037】
【表6】

【0038】表6に示すように、ゴマ類と大麦を主原料とした実施例2の調味料は、通常の醤油(対照例)に比べて幾分劣るものの、通常の醤油と比べて遜色ないものであることが確認できた。つまり、味においては旨味が強く感じられ、香りにおいても仕込み当初のゴマの風味がほとんどしない、醤油特有の風味が感じられた。また、実施例2の調味料の全窒素は1.65%となっており、日本農林規格で規定された特級の醤油に相当する高品質なものであることが分かった。
【0039】なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0040】
【発明の効果】本発明に係る調味料はゴマ類と大麦を主原料としているので、大豆や小麦に対してアレルギー反応を起こす患者でも問題なく食すことができる。また、本発明によれば、製造工程を複雑化することなく醤油醸造法によって製造でき、しかも通常の醤油に劣らない旨味を備えた調味料を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】500201082
【氏名又は名称】三池食品工業株式会社
【出願日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【代理人】 【識別番号】100085327
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 克彦
【公開番号】 特開2001−299268(P2001−299268A)
【公開日】 平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願番号】 特願2000−130523(P2000−130523)