トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 徐放性農薬組成物
【発明者】 【氏名】柴崎 都子

【氏名】宮本 貴志

【氏名】伊藤 武

【氏名】示野 勝也

【氏名】堀田 泰業

【要約】 【課題】溶剤を環境中に大量に放出することなく、かつ被覆工程におけるポリマーの劣化を防ぐことを特徴とする徐放性農薬組成物を提供する。

【解決手段】生分解性ポリマーの水分散体によって農薬活性成分を被覆してなる徐放性農薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生分解性ポリマーの水分散体によって農薬活性成分を被覆して得られた徐放性農薬組成物。
【請求項2】 請求項1記載のポリマーが、式(I)で表される構造単位を90モル%以上含む生分解性ポリマーであることを特徴とする徐放性農薬組成物。
【化1】

(R1は炭素数1〜3のアルキル基、nは0〜4の整数)
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解性樹脂と農薬活性成分からなるものであり、生分解性ポリマーを水分散体として被覆剤に用いることによって、溶剤を環境中に大量に放出することなく、かつ被覆工程におけるポリマーの劣化を防ぐことを特徴とする徐放性農薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、農薬組成物は作物増産のために多く用いられているが、作物に対する毒性を抑え、且つ安定した農薬活性を発現するには、農薬活性成分が広範囲にわたり必要最低限の濃度で供給される必要がある。また作業性においては、短期間で効力を失うものは塗布または噴霧の回数が多くなるため、長期間効力を保つものが望ましい。必要最低濃度の溶出を長期間保つために、原体を適当な樹脂で被覆し、マイクロカプセル化することは、農薬活性成分の供給濃度制御に効果的であり、従来種々の被覆農薬が考案されている。被覆の形態としては、用いる被覆剤の種類として、熱可塑性樹脂(特開平9−216802号公報)、耐水性脂肪族ポリマーとして化学変性澱粉(同10−101501号公報)、脂肪族ポリエステル(同10−008031号公報)、難水溶性の脂肪族高分子とオレフィン重合体(又は共重合体)(同9−315904号公報)等が提案されている。しかし従来の方法で脂肪族ポリマーを用いた場合、単独での使用では農薬活性成分の徐放に必要である十分な加水分解速度が得られないか、又は被膜保持に必要である十分な耐水性が得られないため、2種以上のポリマーの混合物とする、化学変性を施す等の手法が必要であり、簡単かつ高精度に加水分解速度の制御をすることができない。また生分解性ポリマーのみを用いる場合にも、被覆工程において、例えばポリマーを溶融して農薬減退に噴霧したり、有機溶剤の溶液として噴霧する、といった方法があるが、有機溶剤は周知の通り環境に放出することは好ましくなく、また溶融状態で被覆する方法では、ポリマーの種類によっては溶融粘度が高いために農薬原体に対して高温で噴霧する必要があり、ポリマーの熱劣化による被膜性能低下を招く可能性がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】生分解性ポリマーを農薬被覆剤として用いる場合、環境に負荷を与える物質を排出せず、かつ製造工程におけるポリマー劣化によって性能が低下することのない被覆方法をとることが必要である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、生分解性ポリマーで農薬活性成分を被覆する際、これを水分散体として噴霧その他の方法で被覆することにより、有機溶剤のような環境に負荷を与える物質を極力排出せず、また溶融法で見られるような被覆時のポリマーの熱劣化によるバースト(被覆剤の一部のみが劣化し、農薬活性成分がその部分から大量に放出される現象)を防ぐことが可能であることを見出した。本発明における被覆剤は全て生分解性ポリマーであり、施用中は適正な速度の加水分解により目的に応じた任意の濃度、期間で農薬活性成分を徐放することができ、施用後は加水分解または生分解によって土壌中又は水中に消失するため、環境に負荷を与える物質を土壌中に残留させることがない。すなわち、本発明は、生分解性ポリマーの水分散体によって農薬活性成分を被覆して得られた徐放性農薬組成物である。また、上記ポリマーが、式(I)で表される構造単位を90モル%以上含む生分解性ポリマーであることができる。
【化2】

(R1は炭素数1〜3のアルキル基、nは0〜4の整数)
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の農薬組成物物に用いられる、好ましい生分解性ポリマーの成分としては、乳酸残基が60モル%以上のポリエステルである。乳酸モノマーのL /Dモル比は、施用に耐えうる被膜強度とコスト面を満足させるため1以上、またトルエン、キシレン等の汎用溶剤への溶解性という点で9以下が好ましい。なお乳酸残基量はNMR、L乳酸とD乳酸のモル比L/Dは旋光光度計で測定される。
【0006】本発明で使用される脂肪族ポリエステルは、土壌中または水中で使用に耐えうる被膜を形成するために還元粘度が0.2dl/g以上であることが望ましく、十分な加水分解性又は生分解性を与えるために、1.0dl/g以下であることが望ましい。ここでいう還元粘度とはポリマー0.125gをクロロホルム25mlに溶解し、25℃においてウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0007】本発明で使用される生分解性ポリマーの酸価は、目的に応じて適度な加水分解速度を維持するため、20〜1000eq/106gであることが望ましい。
【0008】本発明における生分解性ポリマーとして特に好ましくは、グリコール酸、乳酸、カプロラクトン等のオキシ酸等が挙げられる。農薬活性成分の種類・農薬原体の形状等の要求に応じて適正な徐放速度を保つために、例えば乳酸とカプロラクトン・バレロラクトン・ブチロラクトンなどのラクトン類、コハク酸・アジピン酸・セバシン酸・アゼライン酸などの脂肪族二塩基酸、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類などの共重合とし、物性を制御することができるが、これらの共重合成分は限定されるものではない。
【0009】本発明における生分解性ポリマーを得るには、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン等の環状モノマーを、開環重合触媒を使用して重合させる方法や、直接脱水重縮合により重合させる方法などが挙げられ、製造法に限定はない。
【0010】本発明における生分解ポリマーは農薬組成物に用いる際、水分散体として用いる。水分散体の好ましい製造法は、沸点が100℃以下の親水性溶剤に溶解し、界面活性剤と水を加えてから親水性溶剤を留去することによって得る方法であるが、特に限定はなく、ポリマーの種類によって適宜方法および溶剤種、界面活性剤種等の条件を選択することができる。
【0011】本発明に使用されうる界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤、長鎖アルキルアミノ酸等の両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を用いることができ、特に限定はない。
【0012】本発明における親水性溶剤としては、テトラヒドロフラン、イソプロパノール等を用いることができ、特に限定はない。
【0013】本発明で使用されうる農薬活性成分には特に限定はなく、除草剤・殺虫剤・殺菌剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。例えば除草剤としてはピラゾスルフロンエチル、ハロスルフロンメチル(共に一般名)などのスルホニルウレア系除草剤、またエスプロカルブ、エトベンザミド、ベントキサゾンピラゾレート(全て一般名)、殺虫剤としては、フィプロニル、カルタップ、エトフェンプロックス、殺菌剤としては、トリシクラゾール、ピロキシン、チフルザミド(全て一般名)などが挙げられる。
【0014】被覆農薬の形態としては種々考えられ、特に限定はないが、徐放速度制御の容易さという点で粒状の被覆農薬であることが特に好ましい。しかし農薬活性成分の徐放濃度、徐放期間等の要求性能に応じるために組成物中に含有させるべき農薬活性成分の量、また施用作業時の利便性を考慮し、粒状の他に、例えば球状、柱状、円盤状等を選択することができる。またその大きさ、粒径等に関して制限はない。
【0015】農薬原体の製造方法としては、例えば農薬活性成分、水膨潤性物質、必要に応じて鉱物質担体、植物性担体等の造粒助剤を加水混練した後、押し出し造粒機で造粒、さらに整粒、乾燥、篩い分けを行う方法等が挙げられるが、特に限定はない。また水膨潤性物質、担体に限定はなく、水膨潤性物質としてはベントナイト、でんぷん等、また担体としては鉱物質担体、植物性担体等の既知の物質を用いることができる。この農薬原体に、水分散させた生分解性ポリマーを混合して造粒しこれを農薬として用いても良いが、好ましくは、この農薬原体を前記生分解性ポリマーで被覆する。
【0016】生分解性ポリエステルの農薬原体への被覆方法については、例えば噴流層内において、転動又は流動状態にある農薬活性成分粒剤に生分解性ポリマーからなる被覆剤水分散液を噴霧し、同時に熱風を高速で吹き付けることによって水およびを速やかに蒸発乾燥する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0017】
【実施例】実施例1DL−ラクチド200g、乳酸カルシウム2.4g、開環重合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート0.1gを4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃で開環重合させ、生分解性ポリマー(1)を得た。得られたポリマーの物性測定値を表1に示す。
【0018】得られた生分解性ポリマー(1)に、ステアリン酸ナトリウム3部、テトラヒドロフラン10部を加えて十分に混合し、これを混合しながら、水100部を60℃で少量ずつ加えた後、加熱してテトラヒドロフランを除去することにより、生分解性ポリマー水分散体(1)を得た。
【0019】粒状担体としてクレー60部、ベントナイト30部、タルク9部、ポリビニルアルコール1部、農薬活性成分としてピラゾスルフロンエチル15部をニーダーで均一に混合し、加水混練した。混合物をスクリュー押し出し機(スクリーン径8mmφ)で押し出し造粒した後、球形整粒機で整粒し、熱風乾燥機,で100℃において乾燥し、篩分けした。
【0020】生分解性ポリマー水分散体(1)を農薬原体に噴流被覆装置を用いて噴霧被覆、高温の熱風により溶剤を蒸発乾燥して被覆粒状農薬(1)を作製した。
【0021】実施例2DL−ラクチド200g、グリコール酸1.521g、開環重合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート0.1gのトルエン溶液を4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、190℃に加熱して開環重合させて生分解性ポリマー(2)を得た。得られたポリマーの物性測定値を表1に示す。
【0022】得られた生分解性ポリマー(2)より生分解性ポリマー(1)と同様の手法によって生分解性ポリマー水分散体(2)を得た。
【0023】生分解性ポリマー水分散体(2)より生分解性ポリマー(1)と同様の手法で被覆粒状農薬(2)を作製した。
【0024】作製した被覆粒状農薬を、水200g中に0.06g施用し、農薬活性成分の純水中への溶出率を測定した。結果を表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【発明の効果】本発明の具体的な効果として、農薬用被覆剤を水分散体とすることで、被覆時のポリマー温度を比較的低温にすることが可能であり、被覆剤の熱劣化によるバーストを防止できること、また環境に負荷を与える有機溶剤の排出を抑制できること、等が挙げられる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【出願日】 平成12年5月18日(2000.5.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−328903(P2001−328903A)
【公開日】 平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願番号】 特願2000−146634(P2000−146634)