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【発明の名称】 工業用殺菌剤
【発明者】 【氏名】山口 俊幸

【要約】 【課題】製紙工程、等のアルカリ領域で使用される工業用殺菌剤に提供する。

【解決手段】一般式Iで示されるベンゾイソチアゾロン誘導体1〜100重量部と、一般式IIで示されるイソチアゾロン誘導体100〜1重量部とを有効成分として含み、pH7〜12の領域で使用されることを特徴とする工業用殺菌剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式Iで示されるベンゾイソチアゾロン誘導体1〜99重量部と、一般式IIで示されるイソチアゾロン誘導体99〜1重量部とを有効成分として含み、pH7〜12の領域で使用されることを特徴とする工業用殺菌剤。
【化1】一般式I
一般式II
一般式I中、Rは水素又は炭素数1〜8のアルキル基、Xは酸素又は硫黄を示し、一般式II中、R1,R2はそれぞれ水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R3は水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。
【請求項2】 アルカリ金属、アミン系化合物の何れか一方又は双方を含むことを特徴とする請求項1記載の工業用殺菌剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、製紙工程等のアルカリ領域で、あるいは繊維油剤、切削油剤、ラテックス類、コーティングカラー、リグニン、澱粉スラリー、澱粉糊、塗料、コーキング剤、染料液等のアルカリ性のものに使用される工業用殺菌剤に関する。
【0002】
【技術背景】イソチアゾロン誘導体を用いる工業用殺菌剤として、従来から、種々のものが提案され、実用化されている(例えば、特公昭46−21240号、同60−54281号、特公平7−37362号公報等参照)。
【0003】ところで、イソチアゾロン誘導体のうち、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「Cl−MIT」と記す)は、優れた殺菌効果を有するものの、水に対する安定性が極めて低いため、単独で使用されることはない。この安定性を高めるために、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「H−MIT」と記す)との混合物として使用したり(特公平7−37362号公報等)、金属錯体を添加して使用する等の工夫がなされている。
【0004】また、Cl−MITは、環境破壊を招く虞れのある塩素を含んでおり、殺菌剤として使用した後の廃棄処分に際して塩素の処理に多大のコストが掛かるばかりか、殺菌剤として使用中にも何らかの要因で解離した塩素による装置構成材の腐食等の懸念もある。
【0005】これに対し、H−MITは、このような環境破壊や後処理の問題、あるいは使用中の装置構成材に対する悪影響の問題はないが、Cl−MITに比べて殺菌効果が小さいため、これを単独で使用する例はなく、上記のようにCl−MITとの混合物として使用するのが一般的である。
【0006】しかも、この混合物中のH−MITの配合割合は、H−MIT:Cl−MIT=1:9〜3:9程度と、Cl−MITの量が圧倒的に多く(すなわち、H−MITは、殺菌剤としてよりは、Cl−MITの安定剤として使用されているのが現状であり)、上記のCl−MITによる問題を解消することはできない。
【0007】加えて、Cl−MITとH−MITとの混合殺菌剤は、酸性〜中性領域では優れた殺菌効果を示すが、アルカリ領域ではCl−MITの分解が生じて殺菌能力が低減する上、アルカリ領域で安定なH−MITは含有割合が少ないため、優れた殺菌効果を示すことができなくなる。
【0008】
【発明の目的】本発明は、環境破壊の原因物質(塩素)を含むCl−MITを使用することなく、しかもアルカリ領域で優れた殺菌効果を奏し得る工業用殺菌剤を提供することを目的とする。
【0009】
【発明の概要】本発明の工業用殺菌剤は、一般式Iで示されるベンゾイソチアゾロン誘導体1〜99重量部と、一般式IIで示されるイソチアゾロン誘導体99〜1重量部とを有効成分として含み、pH7〜12の領域で使用されることを特徴とする。また、この一般式Iで示されるベンゾイソチアゾロン誘導体と一般式IIで示されるイソチアゾロン誘導体とを有効成分として上記の割合で含む本発明の工業用殺菌剤は、アルカリ金属、アミン系化合物の何れか一方又は双方を含んでいてもよい。
【0010】
【化2】一般式I
一般式II
【0011】一般式I中、Rは水素又は炭素数1〜8のアルキル基、Xは酸素又は硫黄を示し、一般式II中、R1,R2はそれぞれ水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R3は水素、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。
【0012】本発明において、一般式Iのベンゾイソチアゾロン誘導体と、一般式IIのイソチアゾロン誘導体とを併用することにより、これらの誘導体の相乗作用が奏されて、水に対する安定性も高く、アルカリ領域において分解することもなく、優れた殺菌効果を奏することができる上、使用後の廃棄処分時の処理も、Cl−MIT含有殺菌剤の廃棄処分時の処理に比して、簡単に済む。
【0013】一般式Iのベンゾイソチアゾロン誘導体(以下、一般式Iと略す)は、具体的には、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−チオン、2−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−チオン、2−エチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−チオン、2−プロピル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3オン等が挙げられる。
【0014】一般式IIのイソチアゾロン誘導体(以下、一般式IIと略す)は、具体的には、2−ブチル−5−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メトキシ−4−イソチアゾリン−3−オン、5−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−エトキシ−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジメトキシ−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
【0015】一般式Iと一般式IIとの併用割合は、重量比で、一般式I:一般式II=1〜99:99〜1、好ましくは10〜90:90〜10とする。一般式Iが1重量部未満で、一般式IIが99重量部を超えると、一般式Iが相対的に少なくなりすぎて、一般式Iと一般式IIとを併用する場合の相乗作用が発現ぜず、所望の殺菌効果を得ることができない。逆に、一般式Iが99重量部を超え、一般式IIが1重量部未満でも、一般式Iが相対的に多くなりすぎて、やはり一般式Iと一般式IIとを併用する場合の相乗作用が発現せず、所望の殺菌効果を得ることができない。
【0016】一般式Iと一般式IIとは、上記の併用割合で溶剤に溶解され、本発明の殺菌剤となる。この溶剤は、アルカリ領域で使用した場合に所望の殺菌効果を得るに際して弊害がなく、しかも廃棄処分時の処理が簡単なものが好ましく、具体的には、次のようなものが使用できる。
【0017】水;プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシルグリコール等のグリコール類;ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールジアセテート等のグリコールジエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステルエーテル類;メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、プロピレンカーボネート、グルタル酸ジメチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;イソホロン等のケトン類;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類;等であり、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、適宜の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】中でも、グリコールエーテル類;グリコールジエステル類;グリコールエステルエーテル類;エステル類;アミド類;ケトン類;ピロリドン類をそれぞれ単独で用いるか、これらの中から選択した2種以上を組み合わせて用いるか、あるいはこれらを主成分(具体的には50容量%以上)とし、副成分(具体的には50容量%未満)としてグリコール類を組み合わせたものであってもよい。
【0019】これらの溶剤中の一般式Iと一般式IIとからなる有効成分の濃度は、一般式Iと一般式IIの合計濃度(すなわち、有効成分としての濃度)で、1〜80重量%程度、好ましくは3〜60重量%程度である。濃度が低すぎると、本発明の殺菌剤の使用量を多くする必要が生じ、使用対象工程や使用対象物の品質を低下させる虞れがあり、高すぎると、有効成分の分離や沈殿等の不都合が生じる場合がある。
【0020】また、本発明の殺菌剤には、一般式Iの0℃以下での保存安定性を高め、一般式Iのより高濃度での安定性等を得るために、あるいは本発明の殺菌剤を特に水系のものに使用する際の溶解性や分散性を高めるために、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モルホリン、ジエチルアミン等のアミン系化合物を含有させてもよい。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせる場合は、アルカリ金属とアミン系化合物とを組み合わせてもよい。なお、アミン系化合物は、上記のような目的(各種の安定性を得、水系のものへの溶解性や分散性を高める)を達成する上では、特にHN(CHCHNH)Hを使用することが好ましい。
【0021】アルカリ金属やアミン系化合物の含有量(アルカリ金属とアミン系化合物とを併用する場合は、これらの合計量)は、少なすぎると、これらを含有させる技術的意義が生ぜず、多すぎても、含有効果が飽和してしまうばかりか、一般式IIの安定性を却って低下させる虞れがあるため、一般式Iに対して等モル(1.0倍)〜2倍モル程度、好ましくは等モル〜1.5倍モル程度となるような量が適している。
【0022】本発明の殺菌剤は、上記の一般式Iと一般式IIとからなる有効成分を上記の溶剤に加え、溶解して調製される。アルカリ金属やアミン系化合物を含有させる場合は、アルカリ金属やアミン系化合物を上記の溶剤に予め加えて溶解させておき、ここに上記の有効成分を加えて溶解してもよいし、有効成分と共に上記の溶剤に加えて溶解させてもよい。
【0023】本発明の殺菌剤は、使用対象工程や使用対象物へ所定量を予め加えて使用したり、所定時間毎に所定量を加えて使用する等、様々な態様で使用されてよい。このとき、これらの使用対象工程や使用対象物は、酸性〜中性のpH領域であってもよいが、本発明の殺菌剤は、pH7〜12、好ましくはpH7.5〜12の弱アルカリ〜強アルカリ領域において、より効果的に使用できる。
【0024】以上の本発明の殺菌剤は、アルカリ領域で繁殖し易いBacillus、Pseudomonas、Micrococcus、Flabobacterium等の微生物に対して有効に作用する。本発明の殺菌剤の使用量は、使用対象工程や使用対象物、あるいは使用地域や使用季節等によって種々異なり、一概には決められないが、一般には、一般式Iと一般式IIとからなる有効成分が、使用対象工程や使用対象物中に、0.00001〜3%、好ましくは0.000025〜0.025%含まれる程度であってよい。
【0025】
【実施例】実施例1先ず、表1に示す配合割合(部は重量部を示す)で、本発明の殺菌剤1〜6と比較の殺菌剤7を製造した。
【0026】
【表1】

【0027】次いで、表1に示す各殺菌剤1〜7を滅菌水で希釈し1、5、10、20、30、40、50、60、70、100、330、660、1000ppmとなるように各シャーレに入れ、これらのシャーレにpH5、7、9、10、12に調整しておいたブイヨン寒天培地を混合して個々に平板培地を調整した。これらの平板培地に、予め培養しておいた微生物(Pseudomonasaerginosa)を接種し、33℃で48時間静置した後、微生物に対する最小発育阻止濃度を測定し、結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】表2から明らかなように、本発明の殺菌剤1〜6は、pH9〜12のアルカリ領域において優れた殺菌効果を示すことが判る。
【0030】実施例2金属切削油(大同化学工業社製)を煮沸水道水で20倍に希釈したものの99重量部に、供試菌源として腐敗した金属切削油を1重量部加えた。このもののpHは10であった。これに実施例1の表1に示す各殺菌剤1〜7をそれぞれ500ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、3日、7日、21日後に生菌数を測定し、結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】表3から明らかなように、本発明の殺菌剤1〜6は、pH10の強アルカリ性を示す金属切削油に対して優れた殺菌効果を示し、しかもこの殺菌効果が長期間に渡って持続することが判る。
【0033】実施例3pH10.2の製紙用デンプン系塗工液99重量部に、供試菌源として腐敗した製紙用デンプン系塗工液を1重量部加えた。これに実施例1の表1に示す各殺菌剤1〜7をそれぞれ350ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、3日、7日、21日後に生菌数を測定し、結果を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】表4から明らかなように、本発明の殺菌剤1〜6は、pH10.2の強アルカリ性を示す製紙用デンプン系塗工液に対して優れた殺菌効果を示し、しかもこの殺菌効果が比較的長期間に渡って持続することが判る。
【0036】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の工業用殺菌剤によれば、pH7〜12の弱アルカリ〜強アルカリ領域で優れた殺菌効果を奏することができ、しかもこの優れた殺菌効果を長期間に渡って持続することができる。また、本発明の工業用殺菌剤は、環境に優しく、従って使用後の廃棄処分時の処理が比較的容易である等の効果を奏することができる。
【出願人】 【識別番号】000135760
【氏名又は名称】株式会社パーマケム・アジア
【出願日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【代理人】 【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
【公開番号】 特開2001−302418(P2001−302418A)
【公開日】 平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願番号】 特願2000−129202(P2000−129202)