| 【発明の名称】 |
有効塩素含有水かけ流し装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡 工
【氏名】大森 敏弘
【氏名】狗田 徹
【氏名】石郷岡 博
【氏名】荒田 洋治
|
| 【要約】 |
【課題】病害防除効果が高くかつ薬害もなく、かつ有機物による有効塩素の消費という問題も解消されるところの、塩素水による植物病害防除方法の提供。
【解決手段】殺菌消毒用塩素水かけ流し装置および該かけ流し装置を用いるところの塩素水に係る殺菌消毒方法の提供。例えば、種子消毒の場合で言えば、弱酸性pHの酸性電解水を浸種・催芽時にかけ流す装置および該かけ流し装置を用いる植物病害防除方法の提供。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】殺菌消毒用有効塩素含有水かけ流し装置。 【請求項2】殺菌槽と有効塩素含有水供給装置と槽中殺菌水中の有効塩素量のモニター装置およびこの有効塩素量が一定レベルを維持するようなフィードバック制御機構を備えた請求項1記載の有効塩素含有水かけ流し装置。 【請求項3】有効塩素含有水による殺菌処理槽における液面の高さ調節能を備えた請求項1記載の有効塩素含有水かけ流し装置。 【請求項4】請求項1ないし3記載の有効塩素含有水かけ流し装置を用いることを特徴とする、有効塩素含有水に係る殺菌消毒方法。 【請求項5】請求項1ないし3記載の有効塩素含有水かけ流し装置を用いることを特徴とする、弱酸性の有効塩素含有水に係る殺菌消毒方法。 【請求項6】請求項1ないし3記載の有効塩素含有水かけ流し装置を用いることを特徴とする、弱酸性の有効塩素含有水に係る植物病害防除方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、有効塩素含有水かけ流し装置および該装置を用いる殺菌消毒方法に関する。 【0002】 【従来の技術】有効塩素含有水(以下、塩素水と略す)とは有効塩素を含む溶液のことであり、約150年前から上水道などの殺菌用途に使われてきた。近年、食品衛生や医療方面での即効的な殺菌水として注目されている塩素水として酸性電解水がある。 【0003】希薄食塩水等を電気分解して陽極側に得られる酸性電解水が殺菌成分として次亜塩素酸等の有効塩素を含むので、カット野菜の殺菌など食品産業での利用が進むほか、農業分野へも応用されつつあり、種子消毒、作物への散布などが試みられている。酸性電解水の殺菌力を活かすことにより、農薬への過度の依存を軽減できるならば、環境への負荷低減を通じて環境保全に貢献できると期待される。 【0004】酸性電解水による植物病害の防除については、イネもみ枯細菌病苗腐敗症(以下、もみ枯細菌病と略す)防除例があり(高橋義行ら、関東東山病害虫研究会年報、第43集、41〜43頁、1996年)、pH2.3の酸性電解水を用いた時は効果が高いが、pH5.0〜5.5の酸性電解水を用いた場合は効果が劣る(本例の記載では電解酸化水あるいは単に酸化水と記載されているが、それらが酸性電解水と同義であることは当業者には周知のことである。)。 【0005】本出願人による、酸性電解水関連出願として特願平8−81916、特願平10−125227、同−125228、同−336671、同−338243および同−338244がある。 【0006】酸性電解水の農業応用において、pH2付近の強酸性電解水の場合、病害防除効果は強いものの種子の発芽阻害や葉の酸焼け等の薬害が起こることがある。pH5付近の弱酸性電解水を用いた場合には薬害の恐れはないが防除効果が弱いという傾向が認められ、防除効果が高く、かつ薬害のない酸性電解水処理が求められていた。 【0007】酸性電解水に代表される塩素水は元来即効的で強い殺菌消毒効果を持つが、塩素水が殺菌効果を発揮できなくなる要因がある。有機物による有効塩素の消費である。殺菌消毒槽中に不純物としての有機物が混入していなくとも殺菌対象物そのものが有機物として塩素水の殺菌消毒効果を減ずる。たとえば、種子やその複雑な組織中の菌塊そのものが有機物と化して殺菌効果を減ずる場合などである。有機物による有効塩素の消費は塩素殺菌における大きな課題として今も残されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】そこで、病害防除効果が高くかつ薬害もなく、かつ有機物による有効塩素の消費という問題も解消されるところの、塩素水による植物病害防除方法を鋭意探索したところ、pH5付近の弱酸性の電解水を殺菌消毒処理槽に連続供給・排出によりかけ流して常時作りたての新鮮な酸性電解水と殺菌消毒対象物が接触するようにすることにより上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させるにいたった。 【0009】すなわち本発明の第一の目的は、殺菌消毒用塩素水かけ流し装置を提供することであり、第二の目的は該かけ流し装置を用いることを特徴とする、塩素水に係る殺菌消毒方法を提供することである。 【0010】該かけ流し装置は、十分な殺菌消毒効果を保証するためには十分な有効塩素濃度レベルを保つべく、殺菌槽と塩素水供給装置と槽中殺菌水中の有効塩素量のモニター装置およびこの有効塩素量が一定レベルを維持するようなフィードバック制御機構を備えたかけ流し装置であることが好ましい。 【0011】また、殺菌消毒の対象物の量は処理ごとに大きく変動するので過剰な塩素水を使用しなくてすむように、殺菌処理槽における液面の高さ調節能を備えた塩素水かけ流し装置であることが好ましい。また、該殺菌方法は弱酸性の塩素水に係る殺菌方法であることが好ましく、更に好ましくは弱酸性の塩素水に係る植物病害防除方法である。 【0012】 【課題を解決するための手段】塩素水の定義は上記の通りであり、有効塩素を含む溶液全てを意味する。水溶液である必要は必ずしもなく、必要に応じて有機溶媒を含む水溶液であってもよい。塩素水の例として、次亜塩素酸塩の水溶液、同水溶液に酸を添加してpH調製したもの、酸性電解水などを挙げることができる。酸性電解水とは塩素を含む水溶液を電気分解して陽極側に生成する水溶液のことであり、電解質の種類や電解条件を適宜選択することによりpH1.5ぐらいからpH7.0未満の範囲の酸性電解水を調製することができるが、強酸性下では塩素臭がするのでpH3以上7未満の弱酸性の酸性電解水が作業性の点で好ましい。 【0013】塩素水中の有効塩素濃度(以下、単に塩素濃度と略す)は特に規定されるべきものではないが、好適には10ppm以上、更に好適には25ppm以上、特に好適には100ppm以上が望ましい。 【0014】本発明の殺菌消毒の対象は特に規定されない。内視鏡などの医療関連の対象物、食品容器やカット野菜などの食品産業関連の対象物、種子などの農業関連の対象物等あらゆる殺菌消毒対象物を含むものである。農業関連で病害防除の対象となる植物は特に規定されるものではないが、好適にはイネ科植物である。 【0015】本発明の防除方法の対象となる植物病害は特に規定されるものではないが、有効塩素の殺菌特性を鑑みるならば、好適には糸状菌性病害よりはむしろ細菌性病害である。塩素水処理の適性という点では、好適には種子伝染性の植物病害である。本発明の防除方法は、農業用殺菌剤に感受性の病原菌のみならず、同耐性な病原菌による病害をも対象とするものである。 【0016】ここで細菌性植物害としては、イネのもみ枯細菌病、内穎褐変病、苗立枯細菌病、褐条病、葉しょう褐変病、白葉枯病、株腐病、タバコの空胴病および立枯病、ハクサイ、キャベツ、タマネギ、ジャガイモ、花卉類の軟腐病、ジャガイモそうか病、サツマイモ立枯病、コンニャクおよびレタスの腐敗病、キュウリ斑点細菌病、ナス科野菜の青枯病、トマトかいよう病、花卉類の根頭がんしゅ病、カンキツかいよう病などが挙げられる。 【0017】糸状菌性病害としては、イネのいもち病、ばか苗病、花卉類の苗立枯病などが挙げられる。ここで、いもち病は、糸状菌の一種で、不完全菌類に属する Pyricularia 属菌の寄生により苗や葉、穂などに褐色紡錘型の病班を形成する病害であり、イネいもち病、トウモロコシいもち病、シコクビエいもち病などが知られる。ばか苗病は、糸状菌の一種で、子嚢菌類に属する Gibberella 属の寄生によりイネ等が黄化・徒長する病害である。 【0018】本発明の防除方法が使用される局面としては種子消毒、土壌消毒、散布消毒のいずれでもよいが、好適には種子消毒が挙げられる。特に好適な例としては、イネの育苗過程における浸種あるいは催芽過程において塩素水に浸漬することにより種もみを消毒する例が挙げられる。 【0019】かけ流しとは殺菌消毒槽に塩素水を連続的に供給し、かつ連続的に排出する処理のことであり、槽中の塩素水が一定の頻度で入れ替わり、殺菌消毒対象物が常に新鮮な塩素水と接触するようにすることである。この入替頻度は殺菌消毒対象物および処理ごとに調整すればよいことで全く規定されるものではないが、塩素水の殺菌効果の持続性を鑑みると一日一回以上、殺菌消毒槽の全液量が入れ替る頻度であることが好ましい。 【0020】殺菌槽中の殺菌水中有効塩素量のモニタリング方法としては、該殺菌水中の次亜塩素酸濃度を測定することにより殺菌消毒活性の評価・管理を行う。該次亜塩素酸濃度の第一の測定では、該殺菌水をアルカリ性とすることによって該殺菌水中の次亜塩素酸を次亜塩素酸イオンに変え、この次亜塩素酸イオン濃度を吸光度により測定する。 【0021】第二の測定では次亜塩素酸濃度の測定を水素イオン活性度に対応した吸収極大を示す複数の波長で吸光度を測定することによって、より信頼性の高い測定を行う。例えば、該殺菌水の236nm付近における吸光度とアルカリ化した該殺菌水の292nm付近における吸光度とを測定し、両吸光度からそれぞれ次亜塩素酸濃度を求め両者の次亜塩素酸濃度の値から信頼性の高い測定を行なう。また、次亜塩素酸濃度の測定を該殺菌水に発色剤を添加して比色法により測定することもできる。 【0022】本発明のかけ流し装置の好適例として、殺菌槽と塩素水供給装置と上記の次亜塩素酸濃度測定方法に基づく槽中殺菌水中の有効塩素量のモニター装置およびこの有効塩素量が一定レベルを維持するようなフィードバック制御機構を備えたかけ流し装置および殺菌処理槽における液面の高さ調節能を備えた塩素水かけ流し装置を挙げることができる。 【0023】液面の高さ調節能を備えた塩素水かけ流し殺菌処理槽の一例として図1を示す。図1の殺菌消毒処理槽では酸性電解水等の塩素水がプラスチックチューブにより槽底部に送り込まれる。液面が上昇して、殺菌処理槽にクリップで固定された不織布に触れると塩素水は不織布を伝わって槽外にしみ出る。液体をしみださせる性質のものならば不織布に限らず、ろ紙でも何でもよい。液面の高さは不織布の位置により調整する。塩素水をオーバーフローさせるしくみは何でもよく、例えば槽の高さが自在に調節できるものでもよい。 【0024】 【作用】塩素水は、有効塩素が殺菌作用を発揮する上で無数の作用点を有するので、殺菌力が強く、また、塩素に対する耐性菌は出現しにくい。塩素はガスとして蒸散しやすく残留性がないので環境汚染の恐れがない。この点は殺菌効果の持続期間が短いという欠点につながるが、かけ流し処理を行うことにより塩素水のこの欠点は克服される。 【0025】 【発明の実施の形態】pH5.0、塩素濃度200ppmの酸性電解水を浸種・催芽時にかけ流すことにより優れたイネもみ枯細菌病苗腐敗症に対する防除効果を示した。発芽阻害等の薬害もみられなかった。 【0026】実施例 イネもみ枯細菌病苗腐敗症防除試験供試したもみはコシヒカリで、平成10年開花期にイネもみ枯細菌病菌を噴霧接種したものである。水選した後、用いた。もみ枯細菌病苗腐敗症は、苗が淡褐色ないし褐色になり腐敗・枯死する病害である。1処理区あたり7g乾重量のもみを用いて3連で行った。 【0027】「浸種(20℃、5日)→催芽(32℃、1日)→播種→出芽→緑化→硬化」からなる育苗過程のうちの浸種および催芽過程において、pH5.0、塩素濃度200ppmの酸性電解水を図1の装置を用いて10時間に一回の頻度で液が入れ替るようにかけ流した。浴比は1:2である。 【0028】酸性電解水は、0.1%塩化カリウム溶液を電解原水として15V/40Aの電解条件によりバッチ式の電解水製造装置を用いてpH2.0、塩素濃度200ppmのものを調製し、pH5.0の酸性電解水はこれのpHを水酸化ナトリウム溶液により調整して得た。水としてはミリQ水レベルの純水を用いた。 【0029】対照区においては、もみを純水30mlに漬けて浸種・催芽を行った。農薬処理区においては、浸種前にオキソリニック酸・プロクロラズ水和剤の20倍希釈液15mlに10分間室温でもみを浸漬した後、十分に風乾させた。浸種以降の処理は対照区と同じである。 【0030】播種16日後に苗立数、発病苗数、発病度の調査を行った、発芽率(%)は「(苗立数/播種粒数)×100」で算出し、発病度は調査苗に下記指数を与え、下記計算式により算出し、発病度に基づいて防除価を算出した。 0:健全苗、1:軽症苗、3:重傷苗、5:枯死苗軽症苗:病状が肉眼で確認され、草丈が無処理区で良好な生育を示した苗の1/2以上の苗。 重症苗:病状が肉眼で確認され、草丈が無処理区で良好な生育を示した苗の1/2以下の苗。 【0031】 発病度={(1N1+3N3+5N5)/5N}×100N:調査総苗数、N1:軽症苗数、N3:重傷苗数、N5:枯死苗数防除価={1−(処理区の発病度)/(無処理区の発病度)}×100【0032】 【表1】表1に示すように対照区においては発病度96のところ、酸性電解水をかけ流し処理した区においては同22となり、防除価77を示した。かけ流さない場合には防除価26と防除効果が低かった。 【0033】 【発明の効果】本発明により、防除効果が実用的に問題がないほどに高くかつ発芽阻害等の薬害の恐れが全くない、酸性電解水を用いる病害防除方法が確立された。本発明の病害防除方法を採用することにより、無農薬の環境保全型持続的農業が可能となる。 【0034】
|
| 【出願人】 |
【識別番号】395010303 【氏名又は名称】株式会社機能水研究所
|
| 【出願日】 |
平成12年3月21日(2000.3.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082304 【弁理士】 【氏名又は名称】竹本 松司 (外4名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−261511(P2001−261511A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月26日(2001.9.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−78628(P2000−78628) |
|