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【発明の名称】 無臭性防蟻剤
【発明者】 【氏名】高麗 寛紀

【氏名】前田 拓也

【氏名】吉田 宗弘

【氏名】国方 健靖

【氏名】和田 耕治

【要約】 【課題】安全性が高く、遅効性の無臭性防蟻剤を提供すること。

【解決手段】本発明の防蟻剤は下記一般式で示されるビス第四アンモニウム塩化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式【化1】

[式中、2つのR1は同一もしくは異なり、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18のアルケニル基を表し;2つのR2は同一もしくは異なり、それぞれ水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し;R3は炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数4〜18のアルケニレン基又は場合により炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基もしくは炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基で置換されていてもよいフェニレンもしくはキシリレン基を表し;Y1は−NHCO−、−CONH−、−NHCS−、−COO−、−COS−、−O−又は−S−を表し;Y2は−CONH−、−NHCO−、−CSNH−、−OOC−、−SOC−、−O−又は−S−を表し;X-はアニオンを表す]で示されるビス第四アンモニウム塩化合物を有効成分として含有することを特徴とする防蟻剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材等に使用される木質材料をシロアリ等の害虫による食害から保護するのに用いられる防蟻剤に関する。
【0002】
【従来の技術】木質材料は、我が国の伝統的な建築材料としてその利用は極めて広く、住宅や構築物等の建材、家具、その他の一般工業用材料あるいは一般土木用材料として多用されている。しかし、シロアリやキクイムシ等の害虫による食害などのために、家屋、樹木の被害は近年増加の一途をたどっている。そこで、木質材料をシロアリ等の食害から保護するために、木質材料に対して防蟻剤を塗布又は含浸させるなどの方法、或いは木質材料と接触する他の部材などに防蟻剤を塗布するか又は周囲の土壌などに防蟻剤を散布する方法などが行われており、そのための薬剤が種々提案されている。
【0003】シロアリ用の防蟻剤としては、有機塩素系薬剤のクロルデンが長年に渡り使用されてきたが、施行時の作業者に対する薬害や土壌・地下水等の著しい汚染のため、環境汚染防止の観点から1986年に事実上その使用が禁止された。このような有機塩素系薬剤に代わるものとして、現在では、有機リン系薬剤のクロルピリホス、ホキシム、ピリダフェンチオン等が単剤または他剤と配合されて使用されている。しかしながら、これらの薬剤は、特有の残留性のある臭気を有するうえ、効力の持続性や安全性の点で多々問題があるため、これらの欠点が改良された防蟻剤の開発が強く要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、薬剤の人体に対する毒性の問題についての関心が高まっており、人や自然環境に対して安全であることが求められているのが現状である。しかし、シロアリなどの蟻類に対し、強力な殺虫剤でも必ずしも効果が高いとはいえず、また、多量に用いると衛生上の問題が発生するという欠点があり、上記の如き要望に応えることができなかった。
【0005】本発明の目的は、人や自然環境に対して安全で、しかも遅効性であり、シロアリの巣から遠いところで使用した場合においてもシロアリが防蟻剤を巣に持ち帰り、巣の中にいるシロアリも駆除することができる無臭性の防蟻剤を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討をおこなった結果、今回、下記一般式で示されるビス第四アンモニウム塩化合物が、無臭で安全性が高く且つシロアリの腸内細菌を殺す、すなわち消化不良を引き起こすことにより遅効性を示し防蟻剤として極めて適していることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
【化2】

[式中、2つのR1は同一もしくは異なり、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18のアルケニル基を表し;2つのR2は同一もしくは異なり、それぞれ水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し;R3は炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数4〜18のアルケニレン基又は場合により炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基もしくは炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基で置換されていてもよいフェニレンもしくはキシリレン基を表し;Y1は−NHCO−、−CONH−、−NHCS−、−COO−、−COS−、−O−又は−S−を表し;Y2は−CONH−、−NHCO−、−CSNH−、−OOC−、−SOC−、−O−又は−S−を表し;X-はアニオンを表す]以下、本発明の防蟻剤について、さらに詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】本明細書において、「アルキル基」は、直鎖状又は文枝鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどが挙げられる。
【0009】「アルケニル基」は、直鎖状又は分枝鎖状であり、例えば、アリル、メタリル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプチニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニルなどが挙げられる。
【0010】「アルコキシ基」は、アルキル部分が上記の意味を有するアルキルオキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso−プロポキシ、ブトキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0011】「アルキレン基」としては、−(CH2)n−で示されるタイプのものが好適であり、ここでnは2〜18、特に3〜8の範囲内にあることが好ましい。
【0012】「アルケニレン基」としては、例えば、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−CH2−等が挙げられる。
【0013】「アルコキシカルボニル基」は、アルキル部分が前記の意味を有するアルキルオキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0014】「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含する。
【0015】「アニオン」としては、例えば、ハロゲンイオン(Cl-、Br-、I-など)、硝酸根(NO3-)などの無機アニオンや、酢酸イオン(CH3COO-)、プロピオン酸イオン(C25COO-)などの有機酸アニオンが包含される。
【0016】しかして、本発明において防蟻剤として好適に使用される前記式(1)の化合物の具体例を挙げれば次のとおりである。
【0017】N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)(イヌイ(株)製、「ダイマー38」)、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムアセテート)(イヌイ(株)製、「ダイマー38A」)、4,4′−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウム ブロマイド)(イヌイ(株)製、「ダイマー136」)、4,4′−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウム アセテート)(イヌイ(株)製、「ダイマー136A」)、1,4−テトラメチレンビス(4−カルバモイル−1−ヘキサデシルピリジニウム ブロマイド)、1,6−ヘキサメチレンビス(3−カルバモイル−1−ドデシルピリジニウムブロマイド)、1,8−オクタメチレンビス(3−カルバモイル−1−テトラデシルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(1,3−トリメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウム ブロマイド)、4,4′−(p−キシリルジチオ)ビス(1−オクチルピリジニウム アイオダイド)、3,3′−(m−キシリルジチオ)ビス(1−テトラデシルピリジニウム ブロマイド)、N,N′−(p−フェニレン)ビス(4−カルバモイル−1−オクチルピリジニウム ブロマイド)、N,N′−(m−フェニレン)ビス(3−カルバモイル−1−ドデシルピリジニウム ブロマイド)、4,4′−(p−フタルアミド)ビス(1−オクチルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(m−フタルアミド)ビス(1−オクタデシルピリジニウム アイオダイド)、4,4′−(1,8−オクタメチレンジオキシ)ビス(1−ドデシルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(1,6−ヘキサメチレンジオキシ)ビス(1−ヘキサドデシルピリジニウム ブロマイド)、4,4′−(1,6−ヘキサメチレンジオキシジカルボニル)ビス(1−オクチルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(1,4−テトラメチレンジオキシジカルボニル)ビス(1−ドデシルピリジニウム ブロマイド)、4,4′−(1,4−テトラメチレンジカルボニルジオキシ)ビス(1−オクチルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(p−フタロイルジオキシ)ビス(1−デシルピリジニウム クロライド)、4,4′−(1,8−オクタメチレンジカルボニルジチオキシ)ビス(1−オクタデシルピリジニウム ブロマイド)、3,3′−(m−フタロイルジオキシ)ビス(1−デシルピリジニウム アイオダイド)など。
【0018】前記式(1)の化合物は、例えば、本出願人会社の出願に係る特開平9−110692号公報、特開平10−95773号公報、特開平10−287566号公報、特願平10−282071号明細書、特願平10−321347号明細書等に開示されており、或いは、これらの公報又は明細書に記載の方法に準じて製造することができる。
【0019】前記式(1)の化合物は、無臭であり、しかも毒性が低く、皮膚刺激性が少なく、極めて安全である。
【0020】前記式(1)の化合物はそれぞれ単独で使用することができ、また、2種もしくはそれ以上を組み合わせて使用してもよく、或いはまた、他の殺虫剤などの薬剤と併用することもできる。
【0021】前記式(1)の化合物は、防蟻剤として実際に使用する場合には、適当な溶剤、界面活性剤、希釈剤、担体などとともに製剤化することができ、その製剤形態としては、例えば、油剤、乳剤、粉剤、粒剤、水和剤、可溶化剤、塗料などの種々の形態をとることができる。また、前記式(1)の化合物の施用量は、製剤の形態や施用方法等に応じて適宜選択することができるが、一般には、0.01〜100g/m2の範囲内が適当である。
【0022】前記式(1)の化合物は、シロアリの発生箇所や巣、土台、柱などの建築部材、建造物、周辺の土壌等に対して、例えば、塗布、吹きつけ、浸漬、注入、散布、練り込み等することによって施用することができる。
【0023】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0024】実施例14,4′−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウム ブロマイド)(イヌイ(株)製、「ダイマー136」)の防蟻効力を評価した。すなわち、薬剤濃度2.5%に調製したエタノール溶液を含浸させた円形濾紙(直径6cm)2枚を乾燥した後、乾熱殺菌したペトリ皿(直径15cm)に入れ、ヤマトシロアリの職蟻50頭を投入し、温度28±2℃の暗所に14日間放置した。その間、毎日、シロアリの生存数を記録した。なお、対照として、エタノールのみを含浸し、乾燥させた後の円形濾紙を用いた。結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】

上記表1から明らかなように、ダイマー136を含浸させた濾紙では日数が経つにつれシロアリの生存数は減少し、14日後には、全滅した。このことからダイマー136はシロアリに対し遅効性を示すことがわかる。
【0026】実施例2「(社)日本木材保存協会規格 第11号1992塗布・吹付け・浸せき処理用木材防蟻剤の防蟻効力試験方法(1)室内試験方法の総合試験方法」に基づいて、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウム ブロマイド)(イヌイ(株)製、「ダイマー38」)及び4,4′−(テトラメチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウム ブロマイド)(イヌイ(株)製、「ダイマー136」)の木材の防蟻防腐効果を評価した。すなわち、1×1×2cmの供試木材片(アカマツ辺材)の刷毛を用いて所定濃度の薬剤試料を100g/m2の割合で塗布し、室温で20日間放置後、60℃で48時間乾燥した。得られた木材片を、規定のアクリル製容器(容器底部を石膏で固めたもので、予め水を含ませた脱脂綿の上に静置してあるもの)の底部中心部にこれを1個ずつ(合計5個)入れ、さらにイエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入し、28℃の暗所に21日間静置し、シロアリ職蟻の死虫率と木材片の重量減少率を求めた。得られた結果を下記表2に示す。
【0027】
【表2】

上記の表2から明らかなように、ダイマー38またはダイマー136を木材に含浸させることによりシロアリを死滅させ、木材防蟻・防腐効果を示すことがわかる。
【0028】
【発明の効果】本発明の無臭性防蟻剤であるビス第四アンモニウム塩化合物は、人畜に対する安全性が高く、且つシロアリに対して遅効性を示す。従って、施用時の作業者らが安全に取り扱うことができ、該薬剤をシロアリの巣から遠いところで使用した場合にも、シロアリが防蟻剤を巣に持ち帰ることが可能であり、巣の中にいるシロアリも駆除することができる。また、木材に本発明の防蟻剤を含浸させることにより予防効果を示し、且つ仮にシロアリが木材を食べた場合にも、殺蟻効果を有する本発明の防蟻剤がシロアリの腸内細菌を殺し、その結果、シロアリが消化不良を引き起こし死滅するので、木材防蟻・防腐効果を期待することができる。
【出願人】 【識別番号】000102016
【氏名又は名称】イヌイ株式会社
【出願日】 平成11年8月20日(1999.8.20)
【代理人】 【識別番号】100060782
【弁理士】
【氏名又は名称】小田島 平吉 (外2名)
【公開番号】 特開2001−58903(P2001−58903A)
【公開日】 平成13年3月6日(2001.3.6)
【出願番号】 特願平11−233918