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【発明の名称】 スクミリンゴガイの誘引方法及び誘引駆除方法
【発明者】 【氏名】宮崎 文博

【氏名】平口 祥邦

【要約】 【課題】水田に生息するスクミリンゴガイを効果的に誘引する方法を提供する。

【解決手段】スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法。
【請求項2】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を袋内に収納した状態で水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法。
【請求項3】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を固形化した状態で水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法。
【請求項4】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を捕獲具内に収納し、該捕獲具を酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法。
【請求項5】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を袋内に詰めた状態で捕獲具内に収納し、該捕獲具を袋内の酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法。
【請求項6】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を固形化した状態で捕獲具内に収納し、該捕獲具を酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法。
【請求項7】 前記捕獲具は網カゴには捕獲したスクミリンゴガイを取り出すための開閉蓋を備えさせると共に該網カゴにおける少なくとも一側部に開口部を設け、該開口部の上部には水平軸を取り付け、該水平軸には扉の上縁を回動自在に支持させ、該扉は該扉を網カゴの外方より内方に押したときにのみ内方に回動し、該扉を網カゴの内方より外方に押したときには外方に回動しないようにしてなるものであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかのスクミリンゴガイの誘引駆除方法。
【請求項8】 スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕とスクミリンゴガイを殺貝する駆除剤とを含むスクミリンゴガイの誘引駆除剤を水田における水中に入れ、該誘引駆除剤により水田内のスクミリンゴガイを誘引すると共にスクミリンゴガイに該誘引駆除剤を摂食させることにより該スクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスクミリンゴガイの誘引方法(誘引する方法)及び誘引駆除方法(誘引して駆除する方法)に関するものである。因みに、スクミリンゴガイは軟体動物腹足類のリンゴガイ科に属する淡水性の巻貝であって、一般に「ジャンボタニシ」と呼ばれている。
【0002】
【従来の技術】スクミリンゴガイは、南米原産であるが、東南アジアより食材の一つとして1981年に日本国内に導入され、一時は養殖が開始されたものであるが、食味が良くない、寄生虫がいる等の理由により一般消費者に受け入れられなかったため、スクミリンゴガイの養殖は断念されるに至った。このような状況の下で、養殖池のスクミリンゴガイが外部に廃棄され、或いは大雨等により養殖池のスクミリンゴガイが外部に散逸した。その結果、スクミリンゴガイは水田及びその附近に生息し、稲を食害するようになった。特に湛水直播栽培における発芽直後の稲の稚苗に対する被害が深刻である。現在、日本国(農水省)はスクミリンゴガイを有害動物に指定し、巨額な予算措置のもとでスクミリンゴガイの駆逐を喫緊の研究課題としている。また、スクミリンゴガイによる稲の被害は世界の米作地帯における大問題となっている。
【0003】スクミリンゴガイによる稲の被害を防ぐためには、水田においてスクミリンゴガイを誘引し、これを駆除することが望まれる。しかしながら、スクミリンゴガイの効果的な誘引方法ないし誘引駆除方法は、本出願人の知る限り、従来存在しない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況に鑑み、本発明はスクミリンゴガイの効果的な誘引方法及び誘引駆除方法を提供しようとしてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために種々検討した結果、本発明者は酒粕がスクミリンゴガイに対する優れた誘引力を有することを見出し、酒粕をスクミリンゴガイの誘引物質として使用することに想到した。即ち、本発明は下記の如きスクミリンゴガイの誘引方法及び誘引駆除方法を提供するものである。
【0006】(1)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法(請求項1)。
【0007】(2)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を袋内に収納した状態で水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法(請求項2)。
【0008】(3)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を固形化した状態で水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを誘引するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引方法(請求項3)。
【0009】(4)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を捕獲具内に収納し、該捕獲具を酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法(請求項4)。
【0010】(5)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を袋内に詰めた状態で捕獲具内に収納し、該捕獲具を袋内の酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法(請求項5)。
【0011】(6)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を固形化した状態で捕獲具内に収納し、該捕獲具を酒粕が水中に位置するように水田に配設し、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法(請求項6)。
【0012】(7)前記捕獲具は網カゴには捕獲したスクミリンゴガイを取り出すための開閉蓋を備えさせると共に該網カゴにおける少なくとも一側部に開口部を設け、該開口部の上部には水平軸を取り付け、該水平軸には扉の上縁を回動自在に支持させ、該扉は該扉を網カゴの外方より内方に押したときにのみ内方に回動し、該扉を網カゴの内方より外方に押したときには外方に回動しないようにしてなるものである(請求項7)。
【0013】(8)スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕とスクミリンゴガイを殺貝する駆除剤とを含むスクミリンゴガイの誘引駆除剤を水田における水中に入れ、該誘引駆除剤により水田内のスクミリンゴガイを誘引すると共にスクミリンゴガイに該誘引駆除剤を摂食させることにより該スクミリンゴガイを殺貝するようにしたことを特徴とするスクミリンゴガイの誘引駆除方法(請求項8)。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明においては、スクミリンゴガイ1の誘引物質として酒粕3が用いられる。酒粕は日本酒の醸造において米、麹及び酵母が仕込と発酵とを完了した後、圧搾濾過されて残る未消化固形分である。即ち、酒粕には米からの澱粉、デキストリン等、麹の残骸、酒分等が含まれる。酒分を主とする液体中には麹及び酵母の自己消化に伴う内容物も含まれる。
【0015】酒粕の一般的な組成は下記の通りである。
(1)蛋白質:15%[核酸系物質(9種)、アミノ酸(19種)]
(2)炭水化物:20%[澱粉、デキストリン、直糖]
(3)アルコール:9%[アルコール:エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール等エチルエステル:パルミチン酸エチルエステル、オレイン酸エチルエステル、リノール酸エチルエステル、カプロン酸エチルエステル、ステアリン酸エチルエステル等]
(4)繊維:3%(5)脂肪:2%(6)灰分:1%(7)水分:35%(8)ビタミン[B1、B2、B6、パントテン酸、ニコチン酸、葉酸、ビオチン、イノシトール等]
(9)酵母:15%[固形分6%]
【0016】酒粕は独特の香味を有する。酒粕の香味における「香」を形成する成分はアルコール及びエステルであり、香味における「味」を形成する成分は糖分、アミノ酸、核酸等である。但し、「香」と「味」とは明確に二分されるものではない。
【0017】酒粕3は水田中のスクミリンゴガイ1を好ましく誘引するものであることが判明した。酒粕3における如何なる成分がスクミリンゴガイ1を誘引するものであるかを明確に特定することは極めて困難であるが、酒粕3における香味、特にアルコール及びエステルにより形成される「香」がスクミリンゴガイ1を誘引するものと思われる。
【0018】本発明においては、スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3を水田における水中に入れ、該酒粕3により水田内のスクミリンゴガイ1を誘引する。このようにして誘引したスクミリンゴガイ1は例えばタモ、カゴ等の適宜の手段により捕獲して水田より取り出し、押し潰す等の適宜の手法により殺貝する。
【0019】スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3は、図3に示すように、袋5内に収納した状態で水田における水中に入れるようにしてもよい。袋5は袋5内に収納した酒粕3の成分が水中に染み出すようにしたものであれば如何なるものであってもよいが、一例として布製又は紙製のティーバッグ状の袋体とする。酒粕3を袋5内に収納することにより、酒粕3が水田の水中に散乱して水田を汚すことが防止される。
【0020】スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3は固形化した状態で水田における水中に入れるようにしてもよい。酒粕3を固形化する際には、例えば酒粕に米ぬか又は米粉等を加え、接着材により固める。酒粕3を固形化したしたときには、酒粕の取り扱い、保存、保管等が極めて容易になる。
【0021】スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3をトラップ等の捕獲具7内に収納し、該捕獲具7を酒粕が水中に位置するように水田に配設するようにしてもよい。図1、図2参照。この場合には、捕獲具7内の酒粕3により水田内のスクミリンゴガイ1を該捕獲具7内に誘引した後、該捕獲具7を水田から取り出して該捕獲具7内のスクミリンゴガイ1を殺貝する。捕獲具7内のスクミリンゴガイ1を殺貝する際には、例えばスクミリンゴガイ1を捕獲具7から取り出し、畦畔、路上等にてこれを踏み潰す。
【0022】スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3は袋5内に詰めた状態で捕獲具7内に収納し、該捕獲具7を袋内の酒粕3が水中に位置するように水田に配設してもよい。酒粕3を袋5内に収納することにより、酒粕3が水田の水中に散乱して水田を汚すことが防止される。
【0023】また、スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕3は固形化した状態で捕獲具7内に収納し、該捕獲具7を酒粕3が水中に位置するように水田に配設してもよい。酒粕3を固形化したしたときには、酒粕の取り扱い、保存、保管等が極めて容易になる。
【0024】捕獲具7は、一例として図1、図2に示すように、網カゴ11には捕獲したスクミリンゴガイ1を取り出すための開閉蓋13を備えさせると共に該網カゴ11における少なくとも一側部に開口部15を設け、該開口部15の上部には水平軸17を取り付け、該水平軸17には扉19の上縁19aを回動自在に支持させ、該扉19は該扉19を網カゴ11の外方より内方に押したときにのみ内方に回動し、該扉19を網カゴ11の内方より外方に押したときには外方に回動しないようにしてなるものである。即ち、例えば扉1は常時下縁19bが上縁19aよりも網カゴ11の内方に位置するように傾斜した状態で網カゴ11の底部11bに接触しているようになす。図示の事例においては、網カゴ11の相対向する側部にそれぞれ開口部15を設け、各開口部15に扉19を取り付けている。符号21示すものは開閉蓋13に備えさせた取っ手である。なお、符号23に示すものは稲の稚苗である。
【0025】更に、本発明においては、スクミリンゴガイ1の誘引物質としての酒粕とスクミリンゴガイを殺貝する駆除剤とを含むスクミリンゴガイの誘引駆除剤を水田における水中に入れ、該誘引駆除剤により水田内のスクミリンゴガイを誘引すると共にスクミリンゴガイに該誘引駆除剤を摂食させることにより該スクミリンゴガイを殺貝するようにしてもよい。この事例においては、スクミリンゴガイは水中の誘引駆除剤における誘引物質としての酒粕により誘引され、該誘引駆除剤を摂食することにより該誘引駆除剤における駆除剤により殺貝される。即ち、スクミリンゴガイは水田内において殺貝される。誘引駆除剤における駆除剤は一例としてメタアルデヒド等の農薬とする。
【0026】
【実施例】次に、本発明者が行なったスクミリンゴガイの誘引試験とその結果について説明する。
【0027】[誘引試験1]スクミリンゴガイに対する酒粕とレタスの誘引性について室内にて比較試験を行なった。
【0028】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った後、該容器を若干傾けて容器内の泥を一部水面上に露出させることにより容器内の一部に陸部を形成した。大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)20匹を容器内に放つと共に酒粕の小片1個(2g)とレタスの小片1個(20g)を容器内の陸部に置き、続いてこれらの小片を容器内の水中に移した。
【0029】試験結果:■酒粕の小片とレタスの小片とをそれぞれ容器内の陸部に置いたときには、レタスの小片にはスクミリンゴガイが2匹集まったが、酒粕の小片にはスクミリンゴガイは集まらなかった。
■そこで、酒粕の小片を容器内の水中に移動させた。酒粕の小片を水中に入れると同時にスクミリンゴガイが興奮し始め、次々と酒粕の小片に誘引され、酒粕の小片を摂食し始めた。酒粕の小片を水中に移動させてから1時間後、10匹のスクミリンゴガイが酒粕の周囲で観察されたが、レタスを摂食しているスクミリンゴガイは1匹のみであった。
【0030】[誘引試験2]スクミリンゴガイに対する酒粕とレタスの誘引性について室内にて捕獲具を用いて比較試験を行なった。
【0031】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った。大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)19匹を容器内に放った。酒粕の小片1個(2g)を収納した小型の捕獲具1個とレタスの小片1個(20g)とを収納した小型の捕獲具1個とを酒粕の小片とレタスの小片とがそれぞれ水中に位置するように容器内に配設した。各捕獲具は一側部に開口部と扉とを備えたものであり、その寸法は75x200x75mmであった。
【0032】試験結果:各捕獲具を平成11年9月12日午後1時25分に容器内に配設し、翌日の午前9時に各捕獲具におけるスクミリンゴガイの捕獲状況を調査した。酒粕の小片を収納した捕獲具内にはスクミリンゴガイが9匹捕獲されていた。これに対し、レタスの小片を収納した捕獲具内にはスクミリンゴガイが2匹捕獲されていた。
【0033】[捕獲具の機能試験]スクミリンゴガイに対する酒粕、レタス等の誘引性について野外における比較試験を行なうに先立って、捕獲具の機能を調べた。この捕獲具は図1、図2に示す如きものでって、その寸法は210x270x100mmであった。
【0034】試験方法:酒粕10gを食器洗い用スポンジ片に塗り付け、該スポンジ片を捕獲具内に吊下げた。上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った。大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)20匹を容器内に放ち、該捕獲具を該スポンジ片が水中に位置するように容器内に配設した。
【0035】試験結果:平成11年9月23日午前9時に試験を開始した。同日の午後6時までにスクミリンゴガイ10匹が捕獲具内に入り、翌日の午前9時までに更にスクミリンゴガイ3匹が捕獲具内に入った。各スクミリンゴガイは比較的スムーズに捕獲具内に入った。一旦捕獲具内に入ったスクミリンゴガイが捕獲具から脱出することはなかった。
【0036】[誘引試験3]スクミリンゴガイに対する酒粕とレタスの誘引性について野外にて捕獲具(前記210x270x100mmの寸法を有する捕獲具)を用いて比較試験を行なった。
【0037】試験方法:酒粕10gを食器洗い用スポンジ片に塗り付け、該スポンジ片を捕獲具内に吊下げた。別の同様の捕獲具にはレタス片20gを吊下げた。これら2個の捕獲具を静岡県焼津市郊外の水田脇の水路に3mの間隔を置いて配設した。配設時における各捕獲具の周辺(1平方メートル)におけるスクミリンゴガイの数は15〜20匹、水深は約1cmであった。因みに、静岡県焼津市郊外はスクミリンゴガイが最も多く生息している地区の一つである。
【0038】試験結果:平成11年10月4日午前9時〜同月6日午前9時までの2日間に各捕獲具にはスクミリンゴガイが下記の通り捕獲されていた。
【0039】酒粕の捕獲具スクミリンゴガイ(大):2匹スクミリンゴガイ(中):1匹スクミリンゴガイ(小):18匹【0040】レタスの捕獲具:スクミリンゴガイ(大):0匹スクミリンゴガイ(中):0匹スクミリンゴガイ(小):11匹【0041】捕獲具の回収時における捕獲具周辺(1平方メートル)におけるスクミリンゴガイの数は下記の通りであった。
酒粕の捕獲具:約50匹レタスの捕獲具:約20匹このように、酒粕の捕獲具の周辺にはレタスの捕獲具の周辺よりも多くのスクミリンゴガイが集まっているのが観察された。
【0042】なお、スクミリンゴガイの大きさは目視により下記の如く分類した。
大:殻高約2cm中:殻高約1〜2cm小:殻高約1cm未満【0043】[誘引試験4]スクミリンゴガイに対する酒粕とレタスの誘引性について野外にて捕獲具(前記210x270x100mmの寸法を有する捕獲具)を用いて比較試験を行なった。
【0044】試験方法:酒粕を幅約1cm、重さ約5gの短冊状となし、これを煮出し用バッグ(フタバ株式会社製、材質:ポリプロピレン50%、ポリエチレン50%)に入れ、ヒートシールしてなる酒粕バッグを2個作成した。捕獲具を2個用意し、一方の捕獲具内には酒粕バッグを2個吊下げ、他方の捕獲具内にはレタス片20gを吊下げた。これら2個の捕獲具を静岡県焼津市郊外の水田脇の水路に3mの間隔を置いて配設した。
【0045】試験結果:平成11年10月9日午前9時に上記2個の捕獲具を上述の如く配設した後、1時間経過時における各捕獲具にはスクミリンゴガイが下記の通り捕獲されていた。
【0046】酒粕バッグの捕獲具スクミリンゴガイ(大):3匹スクミリンゴガイ(中):6匹スクミリンゴガイ(小):22匹【0047】レタスの捕獲具:スクミリンゴガイ(大):0匹スクミリンゴガイ(中):2匹スクミリンゴガイ(小):4匹【0048】3日後の平成11年10月12日午前9時に上記2個の捕獲具を回収したが、この回収時おける各捕獲具にはスクミリンゴガイが下記の通り捕獲されていた。
【0049】酒粕バッグの捕獲具スクミリンゴガイ(大):6匹スクミリンゴガイ(中):3匹スクミリンゴガイ(小):13匹【0050】レタスの捕獲具:スクミリンゴガイ(大):0匹スクミリンゴガイ(中):6匹スクミリンゴガイ(小):6匹捕獲具の回収時には酒粕バッグの酒粕とレタスは共に食い尽くされていた。また、酒粕のバッグは食い破られていた。なお、スクミリンゴガイの大きさ(大、中、小)は前記誘引試験3におけるものと同じである。
【0051】[誘引試験5]メロンの果肉(以下単に「メロン」という。)もスクミリンゴガイを誘引するものと思われる。そこで、スクミリンゴガイに対する酒粕とメロンの誘引性について室内にて比較試験を行なった。
【0052】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った後、大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)10匹を容器内に放った。翌日、メロンの小片と酒粕の小片とを容器内の水中に投入し、スクミリンゴガイの状態を観察した。
【0053】試験結果:■試験開始前はスクミリンゴガイは殻を閉ざして不動であった。
■まず、メロンの小片(約2cm角)1個を水中に投入し、更に別のメロンの小片(約2cm角)1個を水中に投入した。
すると、スクミリンゴガイ2匹が動き出したが、30分経過してもメロンの小片には到達しなかった。
■メロン投入から30分経過後、酒粕の小片(直径3cm)1個を水中に投入した。すべてのスクミリンゴガイは直ちに反応し、酒粕の小片又はメロンの小片に到達した。
■酒粕投入から3時間経過後、酒粕を摂食しているスクミリンゴガイ4匹、酒粕を摂食しているスクミリンゴガイ4匹の背後に別のスクミリンゴガイ1匹、更にメロンを摂食しているスクミリンゴガイ2匹が観察された。このように、酒粕を摂食していたスクミリンゴガイの数とメロンを摂食していたスクミリンゴガイの数との間に著しい差はないものの、酒粕投入時におけるスクミリンゴガイの反応はメロン投入時におけるスクミリンゴガイの反応よりもはるかに大きかった。また、スクミリンゴガイは酒粕による刺激をきっかけとしてメロンを摂食し始めたものと思われる。なお、試験の翌日の朝までに、酒粕とメロンはすべてスクミリンゴガイにより食い尽くされていた。
【0054】[誘引試験6]スクミリンゴガイはバナナの果肉(以下単に「バナナ」という。)に対しても反応を示すものと思われる。そこで、スクミリンゴガイに対する酒粕とバナナの誘引性について室内にて比較試験を行なった。
【0055】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った後、大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)10匹を容器内に放った。バナナの小片1個(16g)と酒粕の小片1個(5g)とを容器内の水中に投入し、スクミリンゴガイの状態を観察した。
【0056】試験結果:時間の経過に伴って観察されたスクミリンゴガイの状態の変化を下記に示す。
午後1時45分:バナナを投入した。
午後1時48分:スクミリンゴガイ1匹が殻から頭を出す反応を示した。
午後2時15分:バナナを投入してから30分が経過したが、その間、スクミリンゴガイの移動は観察されなかった。酒粕を投入した。
午後2時18分:スクミリンゴガイ1匹が頭を動かし始めた。
午後2時25分スクミリンゴガイ1匹が移動を開始した。
午後2時55分スクミリンゴガイ1匹がバナナに到達した。
午後3時0分スクミリンゴガイ2匹がバナナを摂食し、スクミリンゴガイ1匹が酒粕を摂食した。
午後3時5分スクミリンゴガイ2匹がバナナを摂食し、スクミリンゴガイ2匹が酒粕を摂食した。
午後4時0分スクミリンゴガイ4匹がバナナを摂食し、スクミリンゴガイ2匹が酒粕を摂食した。
午後6時0分スクミリンゴガイ1匹がバナナを摂食し、スクミリンゴガイ4匹が酒粕を摂食した。
翌日酒粕は全体が摂食され、崩壊していた。バナナはほぼ投入時の形状を保持しており、摂食量は少なかった。
【0057】[誘引試験7]増量し、固形化した酒粕製剤■の誘引性とレタスの誘引性とを2個の小型の捕獲具を用いて室内で比較試験を行なった。各捕獲具は一側部に開口部と扉とを備えたものであり、その寸法は75x200x75mmであった。
【0058】酒粕製剤■の作成方法:酒粕20gと米糠30gとを乳鉢で混合し、粉粒化した。この粉粒20gに接着材(酢酸ビニール41%)6gを加えて練り、プレート状に形成し、これを室内で乾燥させ、固めることにより酒粕製剤■を作成した。
【0059】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った。プラスチック容器内に大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)を20匹放ち、酒粕製剤■の小片6.5gを収納した捕獲具1個とレタス20gを収納した捕獲具1個とをプラスチック容器内に配設した。
【0060】プラスチック容器は25〜26℃に加温した水を循環させる装置を備えている。蓋し、スクミリンゴガイを入れたプラスチック容器内の水温が低下すると、スクミリンゴガイの活動が鈍り、移動や摂食行動が活発に行われず、誘引試験に支障をきたすと思われるからである。そこで、プラスチック容器内の水を加温すると共に水流を作ることにより、スクミリンゴガイが生息している自然の水路等に近い環境を形成した。
【0061】次に、加温した水を循環させる装置について図4を参照して説明する。符号31に示すものはプラスチック容器である。プラスチック容器31の外側上方には第二の容器33を配設する。プラスチック容器31内の水を水中ポンプ35により管37を介して第二の容器33内に汲み上げ、第二の容器33内の水を管39を介してプラスチック容器31に戻すようになす。符号41は活性炭、符号43は水中ヒーター、符号45はエアレータ、符号47は温度センサーである。
【0062】試験結果:酒粕製剤■を収納した捕獲具とレタスを収納した捕獲具とにより捕獲されたスクミリンゴガイの数は下記の通りであった。
平成11年10月25日午後2時0分:試験開始午後2時40分:酒粕製剤■の捕獲具:1匹レタスの捕獲具:0匹午後5時0分:酒粕製剤■の捕獲具:2匹レタスの捕獲具:0匹平成11年10月26日午前10時30分酒粕製剤■の捕獲具:7匹(他に1匹が捕獲具の開口部附近にいた。)
レタスの捕獲具:3匹(他に1匹が捕獲具の開口部附近にいた。)
この時点では酒粕製剤■はスクミリンゴガイの摂食及び酒粕の膨潤により分散していた。また、スクミリンゴガイが酒粕を摂食したことを示すものと思われる白色の糞が多数観察された。
【0063】[誘引試験8]増量し、固形化した酒粕製剤■の誘引性とレタスの誘引性とを2個の小型の捕獲具を用いて室内で比較試験を行なった。各捕獲具は一側部に開口部と扉とを備えたものであり、その寸法は75x200x75mmであった。
【0064】酒粕製剤■の作成方法:酒粕20gと米粉20gとを乳鉢で混合し、粉粒化した。この粉粒20gに接着材(酢酸ビニール41%)5gを加えて練り、プレート状に形成し、これを室内で乾燥させ、固めることにより酒粕製剤■を作成した。
【0065】試験方法:上面を開口したプラスチック容器(550x850x180mm)にスクミリンゴガイが生息していた水路の泥を厚さ10〜20mmに敷き、水を深さ20mmに張った。プラスチック容器内に大型のスクミリンゴガイ(殻高約2cm)を20匹放ち、酒粕製剤■の小片7gを収納した捕獲具1個とレタス20gを収納した捕獲具1個とをプラスチック容器内に配設した。酒粕製剤■は合成繊維製のティーバッグ用フィルター(山中産業製、商標:「テーロード2045」)により形成したバッグに入れ、ヒートシールしたものを使用した。なお、プラスチック容器は25〜26℃に加温した水を循環させる前記装置を備えていた。
【0066】試験結果:酒粕製剤■を収納した捕獲具とレタスを収納した捕獲具とにより捕獲されたスクミリンゴガイの数は下記の通りであった。
平成11年10月27日午前11時15分試験開始午後1時15分酒粕製剤■の捕獲具:10匹(他に2匹が捕獲具の開口部附近にいた。)
レタスの捕獲具:4匹午後1時30分酒粕製剤■の捕獲具:13匹レタスの捕獲具:4匹午後2時0分酒粕製剤■の捕獲具:14匹レタスの捕獲具:4匹【0067】試験方法:2個の捕獲具により捕獲されたすべてのスクミリンゴガイをプラスチック容器内に再び放ち、これらの捕獲具の配設場所を相互に入れ替えて再び同じ試験を行なった。
【0068】試験結果:酒粕製剤■を収納した捕獲具とレタスを収納した捕獲具とにより捕獲されたスクミリンゴガイの数は下記の通りであった。
平成11年10月27日午後2時30分試験開始午後3時0分酒粕製剤■の捕獲具:1匹レタスの捕獲具:1匹午後4時0分酒粕製剤■の捕獲具:8匹レタスの捕獲具:5匹平成11年10月28日午前9時0分酒粕製剤■の捕獲具:13匹レタスの捕獲具:6匹【0069】上記2回の試験期間中、酒粕製剤■はスクミリンゴガイに摂食されず、バッグの破袋や酒粕製剤■が膨潤して分散する状態は観察されなかった。なお、上記2回の試験期間中におけるスクミリンゴガイによるレタスの摂食量は19gであった。
【0070】
【発明の効果】[請求項1のスクミリンゴガイの誘引方法]スクミリンゴガイの誘引物質としての酒粕を水田における水中に入れ、該酒粕により水田内のスクミリンゴガイを効果的に誘引することができる。酒粕は安価に且つ容易に入手することができる。しかも、酒粕は水田に無害である。
【0071】[請求項2のスクミリンゴガイの誘引方法]請求項1と同様の効果が発揮される他、酒粕を袋内に収納するようにしたため、酒粕が水田の水中に散乱して水田を汚すことが防止される。また、酒粕の取り扱いが容易となる。
【0072】[請求項3のスクミリンゴガイの誘引方法]請求項1と同様の効果が発揮される他、酒粕を固形化したしたため、酒粕の取り扱い、保存、保管等が極めて容易になる。
【0073】[請求項4のスクミリンゴガイの誘引駆除方法]請求項1と同様の効果が発揮される他、捕獲具内の酒粕により水田内のスクミリンゴガイを該捕獲具内に誘引した後、該捕獲具を水田から取り出して該捕獲具内のスクミリンゴガイを殺貝するようにしたため、スクミリンゴガイの駆除作業は極めて容易である。
【0074】[請求項5のスクミリンゴガイの誘引駆除方法]請求項4と同様の効果が発揮される他、酒粕を袋内に収納することにより、酒粕が水田の水中に散乱して水田を汚すことが防止される。また、酒粕の取り扱いが容易となる。
【0075】[請求項6のスクミリンゴガイの誘引駆除方法]請求項4と同様の効果が発揮される他、酒粕を固形化したしたため、酒粕の取り扱い、保存、保管等が極めて容易になる。
【0076】[請求項7のスクミリンゴガイの誘引駆除方法]請求項4〜6と同様の効果が発揮される他、捕獲具は、スクミリンゴガイを確実に捕獲し且つ一旦捕獲したスクミリンゴガイの脱出を防止する。
【0077】[請求項7のスクミリンゴガイの誘引駆除方法]請求項1と同様の効果が発揮される他、誘引駆除剤により水田内のスクミリンゴガイを誘引すると共にスクミリンゴガイに該誘引駆除剤を摂食させることにより該スクミリンゴガイを殺貝するようにしたため、スクミリンゴガイの駆除作業は極めて容易である。
【出願人】 【識別番号】596111472
【氏名又は名称】株式会社トモグリーン・ケミカル
【出願日】 平成11年12月2日(1999.12.2)
【代理人】 【識別番号】100082913
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 光宏
【公開番号】 特開2001−157544(P2001−157544A)
【公開日】 平成13年6月12日(2001.6.12)
【出願番号】 特願平11−342807