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【発明の名称】 竿体の嵌合構造
【発明者】 【氏名】谷川 尚太郎

【要約】 【課題】長期にわたって嵌合力の低下を抑えられる竿体の嵌合構造を提供する。

【解決手段】大径竿体1の穂先側内周面には嵌合面13が形成される。一方、穂先側外周面にはポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させてなる第2プリプレグから構成される補強部12が形成される。そして、この嵌合面13小径竿体2の竿元側の嵌合雄部22を嵌合固定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】大径竿体の内部に収納可能に小径竿体が振出形式で連結される竿体の嵌合構造であって、前記大径竿体は、炭素繊維またはガラス繊維に合成樹脂を含浸させた第1プリプレグから構成される先細り筒状の本体部と、前記本体部の穂先側外周面に積層されたポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させた第2プリプレグからなる補強部とを有し、前記小径竿体の竿元側外周面が前記大径竿体の穂先側内周面に脱着自在に嵌合する、竿体の嵌合構造。
【請求項2】前記第2プリプレグが炭素繊維にナイロン繊維の不織布を重ねて合成樹脂を含浸させたプリプレグである、請求項1に記載の竿体の嵌合構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振出形式で連結された釣竿の竿体同士を連結する嵌合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の振出形式の釣竿(以下、「振出し竿」という)は、穂先側端部内周を嵌合雌部とする大径竿体と、竿元側端部外周を嵌合雄部とし大径竿体の穂先側に連結される小径竿体とを有している。この振出し竿では、大径竿体内に穂先側から小径竿体が挿入され出し入れ自在となっている。そして、一本の釣竿として用いる場合には、小径竿体を大径竿体の穂先側に引き出して、大径竿体の嵌合雌部に小径竿体の嵌合雄部を嵌合させて連結し固定する。
【0003】この大径竿体の穂先側端部は引き出して連結される小径竿体を支える部分でありその強度を十分に高める必要がある。そこで、従来の釣竿では、大径竿体を構成するプリプレグと同様に炭素繊維やガラス繊維を引き揃え合成樹脂を含浸させたプリプレグを大径竿体の穂先側外周面にさらに部分的に巻回して肉厚化させて補強部を構成し、この補強部によって大径竿体の穂先側端部の強度を向上させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の振出し竿のように、大径竿体の穂先側端部外周面に炭素繊維等からなる強化樹脂をさらに配置して部分的に肉厚化させると確かに強度が高められる。しかし、一方で大径竿体の穂先側端部の硬化が進むため、小径竿体の竿元側外周面を嵌合させる場合に小径竿体に対して過剰な嵌合圧力を及ぼすことにもなる。この結果、嵌合毎に小径竿体竿元側外周面と大径竿体穂先側内周面との相互摩耗が過剰に発生し、長期の嵌合力保持が事実上難しくなる。
【0005】また、大径竿体の穂先側端部の硬化は竿体全体の撓り調子を大径竿体と小径竿体との連結部分で局部的に低下させることにもつながる。本発明の課題は、長期にわたって良好な大径竿体と小径竿体との嵌合程度を維持可能な竿体の嵌合構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明1にかかる嵌合構造は、大径竿体の内部に収納可能に小径竿体が振出形式で連結される竿体の嵌合構造であって、大径竿体は、炭素繊維またはガラス繊維に合成樹脂を含浸させた第1プリプレグから構成される先細り筒状の本体部と、本体部の穂先側外周面に積層されたポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させた第2プリプレグからなる補強部とを有し、小径竿体の竿元側外周面が大径竿体の穂先側内周面に脱着自在に嵌合する。
【0007】この嵌合構造を採用する釣竿では、竿体を連結して一本の釣竿として用いる場合には、小径竿体を大径竿体内から穂先側に引き出して、小径竿体の竿元側外周面を大径竿体の穂先側内周面の嵌合面に嵌合させて連結し固定する。ここで、大径竿体の穂先側端部外周面には、ポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させた第2プリプレグから形成される補強部が配置されている。この補強部を構成する第2プリプレグは大径竿体自体を構成する第1プリプレグに比べて比較的柔らかい。このため、この大径竿体では、大径竿体の穂先側端部の適度な補強を行いつつ、一方で穂先側端部の過剰な硬化を抑えることができる。そして、小径竿体の竿元側外周面を嵌合させる場合に小径竿体に対して過剰な嵌合圧力を及ぼすことなく、嵌合時の小径竿体竿元側外周面と大径竿体穂先側内周面との相互摩耗を抑えることができる(いわば、小径竿体の嵌合時に大径竿体の穂先側端部が微妙に拡径して小径竿体を強固に締め付けないかのごとくである)。さらにまた、大径竿体と小径竿体との連結部分での局部的な撓り程度の低下を抑えることも可能である。
【0008】発明2にかかる嵌合構造は、発明1の構造であって、第2プリプレグが炭素繊維にナイロン繊維の不織布を重ねて合成樹脂を含浸させたプリプレグである。この場合も、大径竿体の外周面がポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させた第2プリプレグから形成されており、長期にわたり繰り返し嵌合・嵌合解除を繰り返しても、嵌合力の低下を十分に抑えることが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明の一実施形態を採用した釣竿は、図1に示すように、大径竿体1と、大径竿体1の穂先側に大径竿体1内に収納可能なように連結された小径竿体2とを有している。大径竿体1は、竿尻側端部に設けられたグリップ3と、グリップ3よりやや穂先側の外周面に設けられリール5が装着可能なリールシート4と、リールシート4の穂先側の外周面に設けられリール5からの釣糸Lを竿体内部に挿入する釣糸導入孔6とを有している。小径竿体2は、複数の竿体が順次挿入して収納可能になっており、穂先側先端にはトップガイド7が設けられている。そして、リール5から導かれた釣糸Lは、釣糸導入孔6から外部竿体1及び内部竿体2内に導入され、トップガイド7から外部へ導かれる。
【0010】大径竿体1は、図2に示すように、穂先側ほど小径にテーパーが形成された筒状の部材であって、内部は小径竿体2を収納可能な竿収納部100となっている。この大径竿体1は、本体部11と、本体部11の穂先側端部外周面に配置された補強部12と、本体部11の穂先側端部内周面に他の部分よりやや小径化して形成された嵌合面13とを有している。この本体部11と嵌合面13とは、後述のように、炭素繊維またはガラス繊維等の強化繊維を一方向に引き揃えて熱硬化性合成樹脂を含浸させた第1プリプレグを焼成して構成されている。また、補強部12は、本体部11を第1プリプレグから焼成する際に、ポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させてなる第2プリプレグを第1プリプレグ上に部分的に積層して本体部11と共に焼成し一体化させることで形成される。この第2プリプレグは、ポリエステル繊維(重量を16g/m2,繊維の引っ張り強度は2.5kg/5cm)からなる不織布にエポキシ樹脂を含浸させたものである。
【0011】一方、小径竿体2は、図2に示すように、穂先側ほど小径にテーパーが形成された筒状の部材である。内部竿体2は、本体部21と、本体部21の竿元側端部に設けられ本体部21に比べてやや大径に形成される嵌合雄部22とを有し、さらにその竿元側端部には軸方向に貫通する貫通孔を有する尻栓23がはめ込まれている。
【0012】この大径竿体1は、以下のようにして製造される。図3に示すように、まず、所定のテーパが形成されたマンドレルMの外周にワックス等の離型剤を必要に応じて塗布する。続いて、炭素繊維またはガラス繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させたシート状の第1プリプレグ31を加圧しながら必要回数乃至必要枚数順次巻回する。ここで、最も内側の第1プリプレグ31は、テープの長さ方向に強化繊維が配向されたものを用いるのが好ましい。また、その外周に必要に応じて積層される他の第1プリプレグ31はマンドレルMの幅方向に強化繊維が配向されたものを用いて形成するのが好ましい。また、嵌合面13を部分的に形成するため等にマンドレルMの竿元側に補助用の第1プリプレグ31を部分的に配置してもよい。
【0013】その後、さらに第1プリプレグ31の穂先側に、ポリエステル繊維不織布にエポキシ樹脂を含浸させてなる第2プリプレグ32を配置しこれをさらに圧をかけながら巻回する。そして、これらの外周にポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンからなる保護用テープを巻回して竿素材を得る。得られた竿素材を焼成し、マンドレルMを抜き取り保護用テープを剥離する。そして、両端部を切り落とし、表面を研磨処理等して、大径竿体1を製造する。
【0014】この釣竿では、小径竿体2を大径竿体1の穂先側に連結して一本の釣竿として用いる場合には、小径竿体2を大径竿体1内から穂先側に引き出して、小径竿体2の嵌合雄部22を大径竿体1の穂先側内周面の嵌合面13に嵌合させて連結し固定する。ここで、大径竿体1の穂先側端部外周面には、ポリエステル繊維に合成樹脂を含浸させた第2プリプレグ32から形成される補強部12が配置されている。この補強部12を構成する第2プリプレグ32は本体部11を構成する第1プリプレグ31に比べて比較的柔らかい。このため、大径竿体1の穂先側端部の適度な補強を行いつつ、一方で穂先側端部の過剰な硬化を抑えることができる。そして、小径竿体2の嵌合雄部22を大径竿体1の嵌合面13に嵌合させる場合に、小径竿体2に対して嵌合面13が過剰な嵌合圧力を及ぼすことなく、嵌合時の嵌合雄部22と嵌合面13との相互摩耗を抑えることができる。さらにまた、大径竿体1と小径竿体2との連結部分での局部的な撓り程度の低下を抑えることも可能である。
【0015】[他の実施形態]
(a)上記実施形態では大径竿体1と小径竿体2との2本継ぎにおいて説明したが、竿体の継数は任意であり、それぞれの竿体に同様の嵌合構造を設けることができる。
(b)第2プリプレグとしては、炭素繊維にナイロン繊維を積層してこれに合成樹脂を含浸させたものを用いてもよい。また、この際ナイロン繊維は不織布でもネット状に加工されたものでもよい。
【0016】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
[実施例1]穂先側外周面に穂先側端面より80mmの範囲に、炭素繊維を引き揃えた上にナイロン繊維をネット状に加工したものを配置しこれにエポキシ樹脂を含浸させた第2プリプレグ(品名6125A-05(株)日精製)を配置して補強部を構成し、他の部分は炭素繊維樹脂にエポキシ樹脂を含浸させた第1プリプレグによって、大径竿体を製造した。
【0017】この大径竿体の嵌合面に小径竿体を繰り返し5000回嵌合させ、当初の嵌合力を1として試行後の嵌合力の比を測定した。なお、この嵌合力とは大径竿体に嵌合させた小径竿体を再度収納させる際に必要となる力の大きさである。結果を表1に示す。
[実施例2]穂先側外周面に穂先側端面より80mmの範囲に、ポリエステル繊維にエポキシ樹脂を含浸させた第2プリプレグ(品名OL310:(株)日本バイリーン社繊維)を配置して補強部を構成し、他の部分は炭素繊維樹脂にエポキシ樹脂を含浸させた第1プリプレグによって、大径竿体を製造した。
【0018】そして、実施例1と同様に、この大径竿体の嵌合面に小径竿体を繰り返し5000回嵌合させ、当初の嵌合力を1として試行後の嵌合力の比を測定した。結果を表1に示す。
[比較例]穂先側外周面に穂先側端面より80mmの範囲に、周方向に炭素繊維を引き揃えてエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ(引っ張り弾性率24 t/mm2)を配置して補強部を構成し、他の部分は炭素繊維樹脂にエポキシ樹脂を含浸させた第1プリプレグによって、大径竿体を製造した。
【0019】そして、実施例1と同様に、この大径竿体の嵌合面に小径竿体を繰り返し5000回嵌合させ、当初の嵌合力を1として試行後の嵌合力の比を測定した。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】このように、第2プリプレグを用いて補強部を形成した場合には、これを用いない場合に比べて5000回の繰り返し嵌合後も嵌合力の低下の程度は小さく、嵌合力の維持が十分に図られていることが解る。
【0022】
【発明の効果】本発明にかかる嵌合構造によれば、長期間使用しても嵌合力の低下を抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【出願日】 平成12年5月10日(2000.5.10)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−314142(P2001−314142A)
【公開日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願番号】 特願2000−136750(P2000−136750)