| 【発明の名称】 |
牛の繁殖障害を防止する方法および該方法に用いる飼料組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】長尾 秀則
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| 【要約】 |
【課題】牛の繁殖障害を防止する方法および該方法に用いる飼料組成物の提供。
【解決手段】分娩後の牛にアスタキサンチンを給与する。特に脂肪酸塩による被覆によりルーメンバイパス処理されたアスタキサンチンを1日量として10〜200mg給与することが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アスタキサンチンを給与することを特徴とする牛の繁殖障害を防止する方法。 【請求項2】 給与するアスタキサンチンがルーメンバイパス処理されたものである請求項1記載の方法。 【請求項3】 給与するアスタキサンチンが脂肪酸カルシウムによる被覆によりルーメンバイパス処理されたものである請求項1または2記載の方法。 【請求項4】 アスタキサンチンを1日量として5〜200mg給与する請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。 【請求項5】 アスタキサンチンおよび不飽和脂肪酸またはその塩を給与することを特徴とする牛の繁殖障害を防止する方法。 【請求項6】 不飽和脂肪酸がリノール酸である請求項5記載の方法。 【請求項7】 アスタキサンチンを1日量として15〜200mg給与する請求項5または6記載の方法。 【請求項8】 アスタキサンチンを含有することを特徴とする牛の繁殖障害防止用飼料組成物。 【請求項9】 アスタキサンチンがルーメンバイパス処理されたものである請求項8記載の牛の繁殖障害防止用飼料組成物。 【請求項10】 アスタキサンチンが脂肪酸カルシウムによる被覆によりルーメンバイパス処理されたものである請求項8または9記載の牛の繁殖障害防止用飼料組成物。 【請求項11】 アスタキサンチンおよび不飽和脂肪酸またはその塩を含有することを特徴とする牛の繁殖障害防止用飼料組成物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、牛の繁殖障害を防止する方法および該方法に用いる飼料組成物に関する。 【0002】 【発明の背景】乳牛の泌乳期間は、約9〜10か月であり、乳量は分娩後60日目くらいを最高として徐々に低下する。この時期に次の分娩のために人工授精が行われる。そして分娩から約300日経過する頃には乳量が最高時の1/3になるので、次の分娩まで搾乳を中止する。この乾乳期を短くできれば相対的に泌乳期が長くなり牛乳の生産コストは低くなる。しかし、近年、濃厚飼料を多給した高泌乳牛において、一度の人工授精で受胎することは少なくなっており、分娩から次の受胎までの期間を短縮する受胎率の向上、すなわち繁殖障害の防止が酪農経営上重要な課題となっている。 【0003】また、肉牛の場合においても、乳牛の場合と同様に受胎率が低下している。肉牛の場合、特に人工授精の費用(種付料)が高価であるので、一度の人工授精で受胎することのメリットは大きく、乳牛の場合と同様に繁殖障害の防止が経営上重要な課題となっている。 【0004】 【従来の技術】繁殖障害の原因は主に黄体機能障害、卵巣嚢種(黄体嚢種、卵胞嚢種)であり、その症状は無発情、持続性発情である。これらの症状がみられたときにはビタミン剤、ホルモン剤、アミノ酸(特開平4−21631号公報)の投与、あるいは子宮洗浄、子宮内薬液注入等が行われているが、必ずしも十分な効果が得られているわけではなく、廃用となる牛も多い。現在、乳牛の廃用原因の約25%が繁殖障害となっている。その予防法として濃厚飼料の制限、すなわち低蛋白飼料の給餌が行われているが、この方法では乳量が減少するというデメリットがある。 【0005】一方、アスタキサンチンはカロテノイド系の色素であり、自然界では、ヘマトコッカスなどの緑藻類、ファフィア酵母、エビ、オキアミなどの甲殻類、魚類、鳥類などに広く分布している。主にマダイ等の養魚の色調改善用に利用されているが、牛の病気の防止に利用したという報告はない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、牛の繁殖障害を防止する方法および該方法に用いる飼料組成物を提供するものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため、牛の繁殖障害を防止する有用物質の探索を行ったところ、マダイ等の色調改善に使用されているアスタキサンチン(以下、AXと表記することがある)を給与すると分娩から次の受胎までの期間が著しく短縮されることを見いだし、本発明を完成した。 【0008】すなわち、本発明は、アスタキサンチンを給与することを特徴とする牛の繁殖障害を防止する方法を提供するものである。また本発明は、前記方法に使用する、アスタキサンチンを含有する牛の繁殖障害防止用飼料組成物を提供するものである。なお、本明細書において、牛の繁殖障害防止とは、分娩から次の受胎までの期間を短縮することを意味する。 【0009】本発明に使用されるアスタキサンチンは、天然物あるいは合成品いずれも使用可能である。アスタキサンチンを含む天然物であるエビ殻、カニ殻、オキアミ、アミエビ、ファフィア酵母、ヘマトコッカス等は天然物そのものでも使用できるが、予めこれらを粉砕処理または油、有機溶媒等で抽出処理してアスタキサンチンの利用率を向上させたものが好ましい。例えば、ファフィア酵母では、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等を用いて酵母の細胞壁を予め粉砕処理したものが好適に使用できる。(特開平6−319531号公報、特開平8−182号公報)。 【0010】さらにこれらのアスタキサンチン含有物をルーメンバイパス処理して使用すれば、より少量の投与で目的を達成できるので経済的にも好適である。一般に牛等の反芻動物に生物学的活性物質を経口投与する際には、反芻動物の第一胃中に存在する微生物による分解を防ぐため、第一胃の胃液に安定で第四胃以降の消化管で崩壊する物質により活性物質を被覆するルーメンバイパス処理が行われている。本発明においては、公知のルーメンバイパス処理のいずれもが使用可能であるが、牛のエネルギー源にもなるステアリン酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪酸の2価金属塩(たとえば、マグネシウム塩、カルシウム塩)を用いて被覆することが好ましい。また、これらの脂肪酸塩のうち、リノール酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩は、アスタキサンチンを被覆せずに単に併用してもアスタキサンチンの繁殖障害防止作用を高める効果があるので、最も好適である。 【0011】本発明は、ホルスタイン種、ジャージー種等の乳牛、黒毛和種等の肉牛、いずれにも適用可能である。アスタキサンチンの牛への給与は、少なくとも発情周期に合わせて発情の20日前から、好ましくは分娩直後から経口投与の形で行い受胎が確認されるまで継続する。牛への給与は、上記のアスタキサンチン含有物を水等に懸濁させ強制投与することもできるが、嗜好性は悪くないので配合飼料に混合して自由摂取させることが作業効率上、好適である。 【0012】アスタキサンチンの給与量は、ルーメンバイパス処理されている場合、1日量として5mg以上であれば牛の受胎率が向上し、優れた繁殖障害の防止効果がある。その上限は特にないが経済的な観点から1日量として5〜200mgの給与量が好適である。またルーメンバイパス処理されていないアスタキサンチンを単独で給与する場合、1日量として100mg以上給与すれば同様の効果が見られる。 【0013】アスタキサンチンがルーメンバイパス処理されていない場合、不飽和脂肪酸またはそれらの塩を1日量として25g〜500g、好ましくは50g〜200g併用すれば、より少ないアスタキサンチン量、すなわち1日量として15mg以上のアスタキサンチンを給与することにより同様の繁殖障害の防止効果を得ることができる。使用できる不飽和脂肪酸またはそれらの塩として、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸またはこれら2種以上の混合物、あるいはそれらの2価金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)を挙げることができるが、ルーメンバイパスするので2価金属塩が好ましい。また不飽和脂肪酸塩の給与量が上記の範囲内であれば、ステアリン酸塩などの飽和脂肪酸塩が混在していても差し支えない。 【0014】本発明の方法は、天然にも存在し安全性が確認されているアスタキサンチンを給与するだけで効果的に牛の繁殖障害を防止することができる。また乳牛への適用においても乳量が減少するというデメリットがなく、牛の飼育農家にとり本発明は経営上大きく貢献するものである。 【0015】 【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。 【0016】実施例1予めジェット気流粉砕機(ジェットミル)にて粉砕したファフィア酵母(AX含量 5000ppm)750gに、リノール酸600mlを混合し、2軸ニーダーでニーリングした後、消石灰150gを徐々に入れて混合した。これを高速ハンマーミル(ホソカワミクロン株式会社製)を用い、9600rpmの条件で粉砕・分粒し、ルーメンバイパス化したAX含有飼料組成物(AX含量3,000ppm、粒度9メッシュ)1kgを製造した。 【0017】実施例2試験には、ホルスタイン種の経産牛(2産)10頭を用いた。そのうち5頭については、分娩直後から実施例1のAX含有飼料組成物を、AXとして15mg/頭/日、配合飼料に混合して毎日給与し、人工授精を行った(AX給与区)。残りの5頭についてはAX含有飼料組成物を給与せず人工授精を行った(AX無給与区)。人工授精は、分娩後50日経過した後、発情があったときに行い、受胎するまで繰り返した。結果を表1に示す。なお、表1における受胎までの日数は、分娩日から、獣医が受胎を確認するに至った人工受精実施日までの日数を示す。表1から明らかなようにAXを給与した場合には受胎までの期間が短縮されており、繁殖障害が防止されている。また、泌乳量については、AX給与区とAX無給与区との間に明らかな差はなかった。 【0018】 【表1】 ――――――――――――――――――――――――――― 試験区 試験牛 受胎までの日数――――――――――――――――――――――――――― AX給与区 No.1 105日 No.2 92日 No.3 85日 No.4 102日 No.5 62日――――――――――――――――――――――――――― No.1〜 No.5の平均 89.2日――――――――――――――――――――――――――― AX無給与区 No.6 165日 No.7 138日 No.8 101日 No.9 145日 No.10 126日――――――――――――――――――――――――――― No.6〜 No.10の平均 135.0日―――――――――――――――――――――――――――【0019】実施例3試験には、ホルスタイン種の経産牛(2産〜3産)14頭を用いた。そのうち10頭については、2頭ずつ5群に分け、分娩直後から実施例1のAX含有飼料組成物を、AXとしてそれぞれ10、20、50、100、200mg/頭/日、配合飼料に混合して毎日給与し、人工授精を行った(AX給与区)。残りの4頭についてはAX含有飼料組成物を給与せず人工授精を行った(AX無給与区)。人工授精は、実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。なお、表2における受胎の判定は、分娩日から人工授精実施日までが120日以内のもので受胎を確認したものを○、確認できなかったものを×とした。表2から明らかなようにAXを10〜200mg/頭/日の範囲で給与した場合にはいずれも早期に受胎が確認されており、繁殖障害が防止されている。また、泌乳量については、AX給与区とAX無給与区との間に明らかな差はなかった。 【0020】 【表2】 ――――――――――――――――――――――――――― 試験区 AX投与量 試験牛 受胎――――――――――――――――――――――――――― AX給与区 10mg/頭/日 No.11 ○ No.12 ○ 20mg/頭/日 No.13 ○ No.14 ○ 50mg/頭/日 No.15 ○ No.16 ○ 100mg/頭/日 No.17 ○ No.18 ○ 200mg/頭/日 No.19 ○ No.20 ○――――――――――――――――――――――――――― AX無給与区 0mg/頭/日 No.21 × No.22 ○ No.23 × No.24 ×―――――――――――――――――――――――――――【0021】実施例4約1年半もの間、人工授精しても受胎しなかった黒毛和種の経産牛(2産、体重約400kg)に、発情周期に合わせて発情の20日前より実施例1のAX含有飼料組成物を、AXとして15mg/頭/日、配合飼料に混合して毎日給与し、人工授精を行った。その結果、AX含有飼料組成物を給与後の1回目の人工授精で受胎した。 【0022】実施例5約半年、人工授精しても受胎しなかった黒毛和種の初産牛(体重約400kg)に、発情周期に合わせて発情の20日前より実施例1のAX含有飼料組成物を、AXとして15mg/頭/日、配合飼料に混合して毎日給与し、人工授精を行った。その結果、AX含有飼料組成物を給与後の1回目の人工授精で受胎した。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001915 【氏名又は名称】メルシャン株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年2月1日(2000.2.1) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−211781(P2001−211781A) |
| 【公開日】 |
平成13年8月7日(2001.8.7) |
| 【出願番号】 |
特願2000−28948(P2000−28948) |
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