| 【発明の名称】 |
免疫寛容動物の作製方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 利一
【氏名】上田 正次
|
| 【要約】 |
【課題】非自己蛋白質に対して免疫寛容である動物の作製方法及びそれにより得られる動物。
【解決手段】乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の制御下で、特定の非自己蛋白質の遺伝子を発現する融合遺伝子を前核期受精卵に導入し、これを用いて該蛋白質に対する免疫寛容動物を作製する方法、及びこの方法によって得られた免疫寛容動物。該動物は非自己蛋白質に免疫寛容であるので、この蛋白質に対して中和抗体を産生せず、薬物の薬理効果や毒性の評価に用いることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の制御下で、所望する特定の非自己蛋白質を発現する融合遺伝子を前核期受精卵に導入し、これを用いることを特徴とする、該特定蛋白質に対する免疫寛容動物の作製方法。 【請求項2】 乳蛋白質遺伝子の発現制御領域が、ウシαS1カゼイン遺伝子の発現制御領域である、請求項1記載の免疫寛容動物の作製方法。 【請求項3】 非自己蛋白質がヒト成長ホルモンである、請求項1又は2記載の免疫寛容動物の作製方法。 【請求項4】 免疫寛容動物がラットである請求項1〜3のいずれかに記載の免疫寛容動物の作製方法。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られた免疫寛容動物。 【請求項6】 動物がラットである、請求項5記載の免疫寛容動物。 【請求項7】 乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の制御下で、所望する特定の非自己蛋白質を発現する融合遺伝子を前核期受精卵に導入することを特徴とする、動物を特定蛋白質に対して免疫寛容にする方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示す動物の作製方法及びそれにより得られた免疫寛容動物に関する。本発明方法により作製される動物は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示すため、該蛋白質を投与しても免疫応答せず、該蛋白質に対する中和抗体を産生しない。よって、薬物を反復して投与しても、投与した薬物の薬理効果や毒性を正確に評価することができる動物として、極めて有用である。 【0002】 【従来の技術】従来、ヒトへの適応を目的とするヒト由来の蛋白質やバイオ技術により生産された遺伝子組換え型ヒト蛋白質からなる医薬品(以下、これらを総称してヒト蛋白質医薬品と略す)の安全性や有効性を精査する試験においては、ヒト蛋白質医薬品をラット等の実験動物に投与し、投与した医薬品の効果や副作用を正確にとらえ、ヒトに対して投与した場合の医薬品の安全性や有効性を予測することが求められている。しかし、ヒト蛋白質医薬品は、動物にとっては異種の蛋白質であるため、多くの場合、これらの医薬品は動物に対して免疫原性質を示す。従って、動物は投与された薬物(ヒト蛋白質医薬品)で感作を受けて中和抗体を生産する。特に、長期に繰返して投与を行う反復投与試験においては、中和抗体の産生が顕著に認められる。このため、このようなヒト蛋白質医薬品の薬効や毒性を調べる反復投与試験を行う際には、投与に応答して抗体が生産されることで起こる薬理学的変化や毒性学的変化を予測し、薬物であるヒト蛋白質医薬品に基づく本来の薬理学的変化や毒性学的変化との関連性を十分に考慮した試験を行うことが求められている。即ち、中和抗体の産生による薬効の低下又は消失、薬物の動態や薬動力学的特性の変化、副作用の発生率や重症度並びに補体の活性化に伴なう新しい毒性の発現等を十分に考慮する必要がある。さらに、免疫複合体の形成や沈着に関連して起こりうる病理学的変化についても注意を払う必要がある。 【0003】一方、抗体が検出された場合でも、投与されたヒト蛋白質医薬品の薬理作用或いは毒性が免疫応答によって中和されず、これらの試験を中止したり、試験期間を変更する必要がない場合もある。しかし、感作を受けて動物が生産する中和抗体の度合は様々で、その中和活性の強さを前もって予想することが難しいため、反復投与試験の続行の可否は容易に判断できない。このため、ヒト蛋白質医薬品を長期に反復投与しても中和抗体が生産されることのない免疫寛容を示す動物の作製が切望されていた。 【0004】この様な免疫寛容を示す動物の作製方法として、胎児期ないし新生期に抗原を反復投与して免疫寛容を惹起する方法、免疫抑制剤と共に投与する方法、離乳後の特定の時期に少量の抗原を繰返し投与して小量域寛容を惹起、または、比較的大量の抗原を繰返し投与して大量域寛容を誘導する方法等がある。しかし、抗原を繰返し投与する操作は非常に煩雑で、特に胎児や新生児への抗原の反復投与は技術的にも難しい。また、免疫抑制剤の投与は動物の持つ本来の免疫系を変化させる欠点がある。さらに、この様な獲得寛容では誘導される免疫寛容の度合いが個体により様々で均一に制御することが難しかった。 【0005】また、近年技術確立がなされたトランスジェニック動物技術を活用して、抗原となるヒト蛋白質の遺伝子をあらかじめ動物に導入して体内で発現させることで、非自己蛋白質を自己蛋白質と認識させて免疫寛容を先天的に獲得させる方法が考案されている。しかし、免疫寛容を誘導するために、生体内で継続的に生産されるヒト蛋白質医薬品の不必要な作用が、該医薬品の本来の薬効や毒性の正確な評価の妨げとなる。これに対して、薬剤による誘導制御ができる遺伝子の発現制御系を活用した融合遺伝子の使用が考案されているが、誘導に使用する薬剤の影響が生じる。このようなことから、煩雑な作業を必要とせず、均一な免疫寛容を示し、発現誘導に用いる薬物の不必要な作用を受けない免疫寛容を先天的に示す動物の作製技術の開発が望まれている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述の状況に鑑み所望する特定の蛋白質に対して免疫寛容を示す動物の作製方法について鋭意研究を行った。すなわち、トランスジェニック動物技術を活用して先天的に免疫寛容を示す動物を作製する方法を検討した。この場合に、導入した遺伝子の発現を生理的条件により誘導するシステムが有効であると考えた。しかし、免疫担当細胞が教育される度合いは時期および組織により異なることが知られていることから、生理的条件による誘導をいつ、どのような組織で、どのように行うことが有効であるかが重要であると考えた。ヒトやヤギでは出生直後の新生児では、雌雄いずれにおいても乳腺から初乳に類似した奇乳と呼ばれる分泌物を出すことが報告されている。この奇乳は生理的なもので、一過性ではあるが母乳の分泌と同様のホルモン作用によると考えられいる。また、その組成が初乳に類似していることから、奇乳の分泌に際しては乳蛋白質遺伝子が発現することを予測された。そこで乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下で発現する融合遺伝子を作製し、該融合遺伝子を導入したトランスジェニックラットを作製して精査した。その結果、該トランスジェニックラットは、奇乳を分泌する新生児期に導入した融合遺伝子を乳腺で一過性に発現することを見出した(Hirabayashi M. et al., Mol. Reprod. Dev., 43, 145-149 (1996))。 【0007】そして、この導入した遺伝子の発現時期が免疫担当細胞の自己蛋白質に対する教育時期に一致することから、乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下で所望する蛋白質の遺伝子を発現させることは、抗原提示細胞等の免疫感作にかかわる免疫担当細胞の教育を効果的に行うことができる可能性が高いと考えた。 【0008】しかも、該遺伝子の発現は乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下にあるため、これらの動物が妊娠・出産の過程を経て泌乳しない限り、内因的に該蛋白質を生産することはない。即ち、これらの動物の雄あるいは妊娠・出産の過程を含まない雌を用いる通常の反復投与試験においては、該遺伝子の発現により生産される薬物の作用を受けることがなく、このような動物を試験に供することは望ましいと考えられた。そこで、乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下で所望する蛋白質の遺伝子が発現するように設計した融合遺伝子を導入することで、本発明を完成するに至った。 【0009】従って、本発明の課題は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示す動物の作製方法及びそれにより得られた免疫寛容動物を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示す動物の作製方法に関する。又、該方法により得られた免疫寛容動物に関する。すなわち、本発明は、乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の制御下で、所望する特定の非自己蛋白質を発現する融合遺伝子を前核期受精卵に導入し、これを用いて該蛋白質に対する免疫寛容動物を作製する方法である。本発明における乳蛋白質遺伝子の発現制御領域としてはウシαS1カゼイン遺伝子の発現制御領域を例示することができる。また、所望する特定の非自己蛋白質の遺伝子としては、ヒト成長ホルモンを挙げることができる。また、本発明は、このような方法により得られた免疫寛容動物に関する。 【0011】さらに本発明は、乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の制御下で、所望する特定の非自己蛋白質を発現する融合遺伝子を導入することよりなる、動物を特定蛋白質に対して免疫寛容にする方法に関する。本発明方法により作製される動物は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示すため、該蛋白質を投与しても免疫応答せず、該蛋白質に対する中和抗体を産生しない。よって、薬物を反復して投与しても、投与した薬物の薬理効果や毒性を正確に評価することができる動物として、極めて有用である。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明により得られる免疫寛容動物は、導入した遺伝子が乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下で発現するように設計されているため、導入した遺伝子の発現が雌の泌乳期に限られることから、通常の医薬品の薬効や毒性を調べる試験では該遺伝子が発現することがない。従って、このような動物では、該遺伝子は発現されず、実施すべき試験に対して何ら影響しないため非常に有利である。さらに、乳腺での発現が非常に低いレベルでも有効であったことから、一般に個体に導入した場合に高発現させることが難しいcDNAの場合でも特別の強力な発現ベクタ−を使用することなく実施できる。また、該遺伝子の導入部位で低発現の場合でも免疫寛容が成立することから、その影響を受ける危惧がなく有利であると考えられる。 【0013】本発明で用いる乳蛋白質遺伝子の発現制御領域としては、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ラット、マウス等の哺乳動物の各種カゼイン遺伝子や、β- ラクトグロブリン、α- ラクトアルブミン、ホエー酸性蛋白質(WAP)などの乳清蛋白質遺伝子の発現制御領域を用いることができる。この乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下に、目的とする蛋白質、即ち免疫寛容としたい蛋白質の遺伝子を導入した融合遺伝子を作製する。この時、目的とする蛋白質の遺伝子については、目的である免疫寛容にしたい蛋白質の遺伝子を用いればよく、特に限定されるものではない。このように作製された融合遺伝子を、マイクロインジェクション等の常法により前核期受精卵に注入を行う。融合遺伝子を注入した受精卵を、常法によりレシピエント (代理母) に移植し、産子を得る。次いで、得られた産子に目的とする遺伝子が導入されているかを検定する。例えば、組織の一部を用いて、目的とする蛋白質遺伝子に対する適当なプライマーを用いてPCR法により検定する方法等があげられる。目的遺伝子の導入が確認された動物個体を繁殖することにより、安定した目的蛋白質に対する免疫寛容動物を樹立することができる。本発明の免疫寛容を示す動物の作製方法は、哺乳動物全般、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル等に広く応用することができる。 【0014】 【実施例】以下の実施例をもって本発明を詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。 【0015】 【実施例1】乳蛋白質遺伝子の発現制御領域の支配下でヒト成長ホルモン遺伝子を発現するラットの作製方法(1) 注入遺伝子の調製方法ウシαS1カゼイン遺伝子の発現制御領域の支配下でヒト成長ホルモン遺伝子が発現するように設計した注入用の融合遺伝子( bαS1CN/hGH:図1)は、二宮らの方法(T. Ninomiya et al., Mol. Reprod. Dev. 37, 276-283 (1994))に従って調製した。この注入遺伝子は、ウシαS1カゼイン遺伝子の発現制御領域約0.7kb と、構造遺伝子、イントロン及びポリA領域を含むヒト成長ホルモン遺伝子約2.1kb より構成される。注入遺伝子は GENECLEAN II(BIO 101 INC.社製)を用いて精製し、注入遺伝子が 5μg/mLとなるように注入用バッファー(0.1mMEDTAを含む10mMTris-HCl, pH7.5)で調製した。尚、調製した注入遺伝子溶液は、注入操作するまでは−20℃で保存した。 【0016】(2) トランスジェニックラットの作製方法上記(1) で調製した注入用DNA溶液のラット前核期受精卵へのマイクロインジェクションは、常法に従い下記の要領で行った。即ち、性成熟した8週齢のウイスター(Wistar)ラットを明暗サイクル12時間(4:00〜16:00 を明時間)、温度23±2℃、湿度55±5%で飼育した。膣スメア法により雌の性周期を観察して、ホルモン処理日を選択した。先ず、雌ラットに150IU/kgの妊馬血清性性腺刺激ホルモン(日本ゼンヤク社製:PMS全薬(pregnant mare serum gonadotropin; PMSG))を腹腔内投与して過剰排卵を誘発し、その48時間後に75IU/kg のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(三共臓器社製:プべローゲン(human chorionic gonadotropin; hCG)) を投与後、雄との同居により交配を行った。hCG 投与32時間後に卵管灌流により前核期受精卵を採取した。卵管灌流および卵の培養にはmKRB液(Toyoda Y. and Chang M.C., J. Reprod. Fertil., 36, 9-22 (1974))を使用した。採取した受精卵を 0.1%ヒアルロニダーゼ(シグマ社製:Hyaluronidase TypeI-S)を含むmKRB液中で37℃、5分間の酵素処理を行い卵丘細胞を除去した後、mKRB液で3回洗浄して酵素を除去し、DNA注入操作まで炭酸ガス培養器内(5%CO2-95%Air, 37℃, 飽和湿度)に保存した。 【0017】この様にして準備したラット受精卵の雄性前核にDNA溶液を注入した。注入操作した 277個卵を12匹のレシピエントに移植して93匹の産仔を得た。注入したDNAのラットへの導入は、離乳直後に断尾して得た尾より調製したDNAをPCR法により検定を行った。即ち、プライマーセットBAC003(配列表配列番号1)及び BAC102 (配列表配列番号2)を使用した。PCR反応(パーキン・エルマ社製 480型DNAサーマルサイクラーを使用して酵素反応 (DNA 2 μg/mL, Taq DNA polymerase 16U/mL,プライマー各 200 nM, 10mM Tris-HCl buffer, 50mMKCl, 2.5mM MgCl2, 0.02% ゼラチン, dNTP 0.2 mM)で 95 ℃(0.5分間)-55℃(1分間)-72℃(1分間) を30サイクル)後、電気泳動(Advance 社製 MupidIIを使用して4%アガロースゲル, 40mM Tris-acetate/1mM EDTA, pH8])した。増幅したDNA断片は、エチジウムブロマイド染色により検出した。その結果、8匹のトランスジェニックラットを得た。得られたラットを常法により繁殖し、導入遺伝子が発現して乳中で生産するヒト成長ホルモン量が異なる3ラインのトランスジェニックラットを樹立した。尚、乳中のヒト成長ホルモン量はヒト成長ホルモン ELISAキット (ベーリンガー・マンハイム社製;製品番号 1 585 878) を使用して測定した。 【0018】(3)トランスジェニックラットの特性上記(2)で作製した3ラインのトランスジェニックの泌乳期の乳中に生産されるヒト成長ホルモン量、及び泌乳期と非泌乳期時の血清中のヒト成長ホルモン量を測定した。結果を表1に示す。この結果、ラインhGH-Hは乳中に約3mg/mLのヒト成長ホルモンを生産する高生産ラインで、その血清中のヒト成長ホルモン量は泌乳時には約2400ng/mLであるが、非泌乳期時は雌で0.75ng/mL、雄で0.29ng/mLで、内因性の生理的濃度の雌の 93ng/mL、雄の 75ng/mL、(A.Ikeda et al., Endocrine J., 41, 523-529(1994)) のそれぞれ 1/120および1/260 であった。このトランスジェニックラットは巨大化や生殖異常を示さないことから、導入した遺伝子の影響はないものと判断された。ラインhGH-Lは乳中に約0.3mg/mLのヒト成長ホルモンを生産する低発現ラインで、その血清中のヒト成長ホルモン量は、泌乳時に約700ng/mLであるが、非泌乳期時には、雌雄共に検出限界(50pg/mL)以下であった。一方、ラインhGH-Fは乳中に約0.01μg/mLのヒト成長ホルモンを生産する微発現ラインで、その血清中のヒト成長ホルモン量は、泌乳時、非泌乳時のいずれにおいても、また雄においても、全て検出限界以下であった。ラインhGH-L、hGH-Fはいずれも巨大化や生殖異常を示さず、これらラインにおいても導入した遺伝子の影響はないものと判断された。 【0019】 【表1】
【0020】 【実施例2】免疫寛容試験実施例1で得られたトランスジェニックラットを繁殖させた。尚、哺育にあたっては経口的な免疫応答の影響を排除する目的で野性種の乳母を使用した。8週齢の各ラインの雄と野生種のWistarラットの雄を試験に供した。トランスジェニックラットは一群2〜4匹、野生種は一群5〜8匹を使用した。抗原のヒト成長ホルモンは遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤 (ヒューマトロープ;日本イーライリリー社製) を使用した。なお、抗原感作前の各ラット血清中のヒト成長ホルモン量は、hGH-H(高発現ライン)で8匹の平均値が 0.29ng/ml (0.13〜 0.59 ng/ml)であった以外はすべて検出限界(50pg/ml) 以下であった。 【0021】抗原のラットへの投与は下記の要領で行った。即ち、PBS液で50μg/ 250μl に調製したヒト成長ホルモン溶液に等量のフロイントの完全アジュバンド(DIFCO 社製)を加え、常法に従いエマルジョンを作製した。得られたエマルジョン液 500μl をラットの皮下に数カ所に分けて投与した。一方、抗原非投与群では、PBS液と等量のフロイントの完全アジュバンドで同様にエマルジョンを作製して皮下に 500μl づつ投与した。1週間間隔で第2回目および第3回目の投与をフロイントの不完全アジュバンドを使用して第1回目と同じ要領で投与した。最終免疫の1週間後の第4週目に血液を採取して産生された抗ヒト成長ホルモン抗体の量を下記の要領で測定した。コーティング液(0.02% NaN3を含む 50mM Sodium carbonate pH9.6) で 1μg/mlに調製したヒト成長ホルモン溶液を96穴 ELISAプレート(Nunc 社製)の各穴に 100μl づつ加え、室温で2時間静置して抗原をプレートに吸着させた。抗原溶液を除去した後、各穴を洗浄液 (0.5% Tween 20 と 0.02% NaN3 を含むPBS) で3回洗浄した。 【0022】次に、200 μl のブロッキング溶液(PBSで4倍希釈したブロックエース(大日本製薬社製;カタログ番号 UK-B25 ))を加え室温で2時間静置した後、ブロッキング液を除去し、洗浄液で3回洗浄して抗原をコートした ELISAプレートを作製した。得られたELISA プレートの各穴に、PBSで10倍、100 倍、1,000 倍に希釈した血液サンプルを 100μl づつ加え、室温で2時間静置して抗原抗体反応を行わせた後、血液サンプルを除去し、洗浄液で3回洗浄した。次にPBSで2000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識した抗ラット抗体(IgM + IgG)ヤギ IgG溶液(コスモバイオ社製;カタログ番号 SBA 3010-04) を 100μl づつ加え、2時間反応後、洗浄液で5回洗浄した。アルカリフォスファターゼ基質溶液(Sigma 104 phosphatase substrate を 2 mg/mLになるように基質溶解液 (0.5 mM MgCl2, 0.02% NaN3を含む 1M diethanolamine, pH9.8)で溶解)100μl を加えて、室温で20〜90分間反応をさせて黄色の発色を行い、50μl の反応停止液 (3M NaOH)を加えて反応を停止した。イムノリーダー(バイオ・ラッド社製 Model3550-UV) を用いて405nm の吸光度を測定した。抗体の産生量を吸光度で評価した。結果を表2に示す。 【0023】 【表2】
【0024】この結果、対照群のWistarラットの感作群では、10倍希釈のすべてと100 倍希釈の8個体中の6個体の血液サンプルで非常に強い抗原抗体反応(+++) を認めた.また、100 倍希釈の8個体中の1個体(No.3)と1000倍希釈の8個体の2個体(No1 と No3) の血液サンプルで強い抗原抗体反応(++)、また、100 倍希釈の8個体中1個体(No4) と1000倍希釈の8個体中3個体(No5,No6, No8) の血液サンプルで明らかな抗原抗体反応(+) を認めた。また、非感作用群では全例に全希釈血液サンプルで抗原抗体反応を認めなかった。一方、トランスジェニックラットでは感作群と非感作群にいづれにおいても抗原抗体反応を認めることはできなかった。この結果より、すべてのトランスジェニックラットにおいてヒト成長ホルモンに対する免疫寛容が成立していることを確認した。そして導入した該遺伝子により乳中で生産されるヒト成長ホルモンが非常に低いライン(hGH-F) においても、高い生産ライン(hGH-H) や低いライン(hGH-L) と同様に免疫寛容が成立していることから、本発明により提供される免疫寛容動物の作製方法が非常に優れた方法であることが確認された。特に、ライン hGH-Fは、雄および雌の泌乳・非泌乳にかかわらず、血清中にヒト成長ホルモンを認めないことから、最もすぐれたラインであると判断された。 【0025】 【発明の効果】本発明により、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示す動物の作製方法、及び該方法により得られた免疫寛容動物が提供される。本発明方法により作製される動物は、所望する特定の非自己蛋白質に対して免疫寛容を示すため、該蛋白質を投与しても免疫応答せず、該蛋白質に対する中和抗体を産生しない。よって、薬物を反復して投与しても、投与した薬物の薬理効果や毒性を正確に評価することができる動物として、極めて有用である。 【0026】 【配列表】 SEQUENCE LISTING<110> YS NEW TECHNOLOGY INST. INC.<120> Animal with immunological tolerance <130> SNMFP00411<160> 2 <210> 1 <211> 25<212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthesized DNA <400> 1 agaacaatgc cattccattt cctgt 25<210> 2 <211> 25<212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthesized DNA <400> 2 gtggtttcag tttaaccaac caggt 25 |
| 【出願人】 |
【識別番号】395007255 【氏名又は名称】株式会社ワイエスニューテクノロジー研究所
|
| 【出願日】 |
平成12年1月18日(2000.1.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090941 【弁理士】 【氏名又は名称】藤野 清也
|
| 【公開番号】 |
特開2001−197846(P2001−197846A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月24日(2001.7.24) |
| 【出願番号】 |
特願2000−9441(P2000−9441) |
|