| 【発明の名称】 |
細胞核移植方法およびそれを用いるクローン哺乳動物の生産方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】角田 幸雄
【氏名】加藤 容子
【氏名】谷 哲弥
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| 【要約】 |
【課題】培養細胞をドナー細胞として用いる、より融合率を向上させることのできる核移植方法を開発し、家畜等のクローン哺乳動物の生産に役立たせる。
【解決手段】分裂期(M期)に同調したドナー細胞をレシピエント細胞に移植することを特徴とする哺乳動物の細胞核移植方法および細胞核移植によりクローン哺乳動物を生産するに際し、分裂期(M期)に同調させたドナー細胞をレシピエント細胞に移植し、発育させることを特徴とするヒト以外のクローン哺乳動物の生産方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 分裂期(M期)に同調したドナー細胞をレシピエント細胞に移植することを特徴とする哺乳動物の細胞核移植方法。 【請求項2】 ドナー細胞が、哺乳動物の成体から採取した体細胞の増殖細胞である請求項1記載の細胞核移植方法。 【請求項3】 ドナー細胞が卵丘細胞の培養細胞である請求項2記載の細胞核移植方法。 【請求項4】 ドナー細胞が哺乳動物の胚性幹細胞である請求項1記載の細胞核移植方法。 【請求項5】 レシピエント細胞が除核未受精卵である請求項1〜4いずれか1項記載の細胞核移植方法。 【請求項6】 哺乳動物がウシである請求項1〜5いずれか1項記載の細胞核移植方法。 【請求項7】 細胞核移植によりクローン哺乳動物を生産するに際し、分裂期(M期)に同調させたドナー細胞をレシピエント細胞に移植し、発育させることを特徴とするヒト以外のクローン哺乳動物の生産方法。 【請求項8】 ドナー細胞が哺乳動物の成体から採取した体細胞の増殖細胞である請求項7記載のクローン哺乳動物の生産方法。 【請求項9】 ドナー細胞が卵丘細胞の培養細胞である請求項8記載のクローン哺乳動物の生産方法。 【請求項10】 ドナー細胞が哺乳動物の胚性幹細胞である請求項7記載のクローン哺乳動物の生産方法。 【請求項11】 レシピエント細胞が除核未受精卵である請求項7〜10いずれか1項記載のクローン哺乳動物の生産方法。 【請求項12】 哺乳動物がウシである請求項7〜11いずれか1項記載のクローン哺乳動物の生産方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、新規な細胞核移植方法およびそれを用いるヒト以外のクローン哺乳動物の生産方法に関する。 【0002】 【従来の技術】核移植技術は、動物における発生や分化の仕組みを解明するために開発された技術で、この技術を哺乳動物、特に家畜の育種や改良に応用する研究が行われており、培養細胞が核のドナー細胞として使用されている。このようなドナー細胞としては、初期胚の細胞、胎子の体細胞および成体より採取した培養細胞が用いられている(日経サイエンス1999年3月号、44〜47頁)。最近、成体より採取した培養細胞を用いる核移植技術でクローンヒツジの生産に成功している(I. Wilmut et al., Nature, 385,810-813, 1997)。また、本発明者らも、同様な技術でクローンウシの生産に成功している(Y.Kato et al., Science, 282, 2095-2098, 1998)。このような核移植として、血清飢餓培養あるいは接触阻止培養によって細胞周期を休止期(G0/1期)に同調したドナー細胞を用い、染色体を除去した未受精卵に、融合促進剤や、センダイウイルスなどの不活化ウイルスを用い、あるいは電気刺激により融合したり、あるいは注入する方法によって実施する方法が採用されている。しかしながら、休止期の細胞は卵子と比較して小さいので、電気刺激による融合操作に熟練を必要とし、核移植技術の実用化の観点から問題がある。例えば、ウシにおける細胞核移植では、ドナー細胞を、レシピエント細胞である染色体を除去した未受精卵の囲卵腔に注入後、融合液をみたした2本の平行電極間に入れて、卵子とドナー細胞との接着面が電極に対して平行となるように移動させた後、直流電流を通電して両方の細胞膜に小穴をあけて膜融合をおこさせているが、比較的小さい休止期の細胞と、大きい卵子との接着面を電極に対して平行に移動させるのには熟練を要し、初心者が容易に実施することが困難で、実用化上問題である。また、胚性幹細胞のように血清に依存せずに増殖を継続する未分化細胞は休止期に同調させることが困難である。一方、分裂期(M期)の細胞の大きさは、分裂後のG1期あるいは休止期のG0期に比べて大きく、初心者でも容易に移植操作を実施でき、そのため融合率の向上が期待でき、また、胚性幹細胞をM期に同調させることは比較的容易である。したがって、培養細胞をM期に同調させて核移植を行うことは、移植技術の実用化から望ましいと考えられる。これまで、M期の核移植に関しては、マウス4細胞期胚の核移植について、M期に同調させた4細胞期胚のカリオプラストを、除核未受精卵へセンダイウイルスによって核移植して、一卵性6つ子を得たことが報告されている(KwonおよびKono, Proc. Natl. Acad, Sci. USA 93, 13010-13013, 1996)。ブタ胎子体細胞の核移植についても、25〜26日齢胎子の繊維芽細胞を継代培養して、培養皿を振盪することによって浮遊してくる細胞は大部分がM期であることが確認されており、ついで、この細胞を除核未受精卵へ核移植して染色体の動きを観察した例が報告されているが、極体を放出しないため、全て4倍体であって、発生は観察されていない(Ouhibi et al., Reprod. Nutr. Dev., 36, 661-666, 1996)。また、ごく最近、マウス胚性幹細胞をM期に同調後、核移植を行ってマウスが得られたことが報告されてる(Wakayama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,96, 14984-14989, 1999)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、培養細胞を使用する、より融合率の向上できる実用的な核移植技術およびそれを用いるクローン哺乳動物の生産方法を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】発明者らは、新しい体細胞クローン作出技術の開発をめざして鋭意検討した結果、培養細胞をM期に同調して使用することにより、体細胞のみならず、未分化の胚幹性細胞にも適用でき、より融合率の向上した実用的な核移植技術の確立に成功し、本発明を完成するに至った。 【0005】すなわち、本発明は、分裂期(M期)に同調したドナー細胞をレシピエント細胞に移植することを特徴とする哺乳動物の細胞核移植方法を提供するものである。本発明の細胞核移植方法におけるドナー細胞は、哺乳動物の成体から採取した体細胞の増殖細胞が好ましい。また、本発明は、細胞核移植によりクローン哺乳動物を生産するに際し、分裂期(M期)に同調させたドナー細胞をレシピエント細胞に移植し、発育させることを特徴とするヒト以外のクローン哺乳動物、好ましくはクローン家畜、特にクローンウシの生産方法も提供する。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の細胞核移植法は、ドナー細胞の細胞周期を分裂期(M期)に同調させ、これをレシピエント細胞に融合して極体を放出させ、正常な染色体構成を持つ核移植胚を作出する新しい哺乳動物の細胞核移植法である。対象とする哺乳動物としては、ヒト以外の動物であれば特に限定するものではなく、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ等が挙げられる。経済的には、ウシ、ブタのような家畜を対象とすることが好ましく、特に、ウシに適用するのに好適である。以下、特にウシを対象哺乳動物として具体的に説明するが、当業者に明らかなごとく、公知の技術に基づいて適宜修飾することにより、他の哺乳動物についても同様に適用できる。 【0007】ドナー細胞は、特定の種類の細胞に限定するものではなく、通常使用されるいずれの細胞いずもよく、未分化のもの分化したものいずれでもよく、例えば、初期胚より樹立する胚性幹細胞、胎子線維芽細胞等のような胎子の体細胞、卵丘細胞、卵管上皮細胞や耳や皮膚の細胞等の成体から採取された体細胞が挙げられ、入手の容易さや、融合率の高さから、卵丘細胞や耳の細胞を用いることが好ましい。ドナー細胞の培養は、個々のドナー細胞に適した自体公知の方法で行うことができ、例えば、採取したドナー細胞を生理食塩水で洗浄後、適宜の細胞培養培地を入れた培養ディシュで39℃で5〜7日間培養し、細胞浮遊液を回収し、同様な培地で継代する培養操作を2〜10回繰り返すことにより行うことができる。 【0008】培養細胞の細胞周期をM期へ同調させるには、細胞培養中の培地に、ノコダゾールのような微小管阻害剤を適宜の量、例えば、1〜5μg/ml添加し、2〜24時間培養することにより行える。細胞周期がM期になると、細胞の形態が丸くなるので、培養細胞は、培養ディシュより剥がれる。 【0009】レシピエント細胞も、特に限定するものではなく、通常使用されるものいずれでもよいが、好ましくは、物理的または紫外線照射等の公知の手段により除核した未受精卵を用いる。 【0010】本発明の細胞核移植方法における融合操作は、自体公知の方法で行うことができるが、電気刺激が実用的であり、好ましい。例えば、ドナー細胞を、染色体を除去した未受精卵の囲卵腔に注入後、融合液をみたした2本の平行電極間に入れて、卵子とドナー細胞との接着面が電極に対して平行となるように移動させた後、直流電流を通電して両方の細胞膜に小穴をあけて膜融合を起こさせる。これにより、核移植が起こる。 【0011】融合した卵子を、発生培地で培養し、極体を放出している卵子を選別し、さらに低酸素条件下で培養して体外発生をさせ、正常な染色体構成を有する核移植胚を作出する。作出した核移植胚を、いわゆる仮親たる受胚ウシに移植して発育させ、クローンウシを誕生させる。 【0012】 【実施例】つぎに実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例卵丘細胞の採取および培養ウシ卵巣を、屠畜場で採取し、30〜35℃に保温した生理的食塩水に入れて持ち帰り、卵巣表面にある直径1〜5mmの小卵胞から21ゲージ針を用いて、3mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)加TCM−199(Gibco)中に卵胞液を吸引して採取した。採取した卵胞液を実体顕微鏡下で検査して、卵胞卵を採取した。緊密に卵丘細胞が付着した卵胞卵を選抜して、10%非働化ウシ胎児血清(FBS;Gibco)を含むTCM−199(Gibco)で3回洗浄した。ついで、10%FBS添加修正D−MEMで2回洗浄後、1%ゼラチン溶液で表面処理した4穴マルチディシュ(Nunc)に1穴あたり5〜10個の卵胞卵を移し、7日間培養した。培養ディシュの底面を70〜80%占める程度まで増殖した細胞は、0.1%トリプシン、0.05%EDTAを含み、カルシウムとマグネシウムを含まないPBS(−)(トリプシン溶液)を培養ディシュに加えて、培養ディシュ表面から浮遊させた。細胞浮遊液は、15ml遠心管(Falcon)に回収して、1200rpmで5分間遠心後、上澄を捨て、少量の培養液を加えて細胞数を計測した。ついで、細胞数が7.5×104〜3.6×105個/mlになるように培養液を加えて、これを4穴マルチディシュにまいた(これを継代回数1とした)。この方法で、培養細胞が培養ディシュ底面の70〜80%を占めるまで増殖した時点で継代を繰り返した。核移植実験には、継代回数が3〜5回目の細胞を用いて、39℃、5%CO2、95%空気の気相条件下で細胞培養を行った。 【0013】M期細胞の採取細胞培養中の培地に最終濃度が3μg/mlとなるように、ノコダゾール(Aldrich)を添加して20〜24時間培養した。細胞周期がM期になると細胞の形態が丸くなるという特性を利用して、ノコダゾール処理によって培養ディシュ底面より剥がれてきた細胞をピペッティングにより回収した。回収された細胞は、直ちにレシピエント卵細胞質の囲卵腔に注入し核移植に用いた。 【0014】レシピエント卵細胞質レシピエント卵細胞質には、屠畜場由来卵巣の小卵胞から吸引採取した緊密に卵丘細胞の付着した卵胞卵を、10%FBSを含むTCM−199で3回洗浄後、750μl当り約50個の割合で4穴ディッシュに移して39℃、5%CO2、95%空気の気相条件下で22〜24時間成熟培養したものを用いた。成熟培養後、ヒアルロニダーゼ(300IU/ml、Sigma)を用いてピペッティング操作により卵丘細胞を除去し、第一極体を放出している卵子を成熟の指標として選抜した。そして、それらの卵子から第2減数分裂中期の染色体を除去し、残りの卵細胞質をレシピエント卵細胞質として用いた。すなわち、第一極体を放出した卵子を7.5μg/mlのサイトカラシンB(Sigma)を含む胚操作培地(20%FBSを含むTCM−199)に移し、倒立顕微鏡下でマイクロマニプレーターに取り付けたガラス針を用いて極体付近の透明帯を10〜20%切開し、切開部分が上部になるようにマイクロマニプレーターに取り付けたホールディングピペットに卵子を固定し、そのままガラス針を用いて上から押さえつけることによって、切り口部分から卵細胞質の一部(10〜20%)を第一極体と共に押し出した。押し出した細胞質は1μg/mlのヘキスト33342(Calbiochem)液で2〜3分間染色後、蛍光顕微鏡下で染色体の有無を検査した。染色体が確認できた場合のみ、残りの卵細胞質をレシピエント卵細胞質として用いた。 【0015】核移植および核移植卵の体外発生能核移植は、あらかじめ準備したドナー細胞とレシピエント卵細胞質はそれぞれ注入用培地の小滴へ移し、インジェクションピペットにドナー細胞を1個吸引し、レシピエント卵細胞質の囲卵腔に注入した。注入卵は、直ちにZimmerman液に移して電気融合処理を施した。すなわち、1mm幅で2本のワイヤー型電極を貼り付けたスライドガラスを10cmシャーレに入れて、融合液を満たし、電極間へ注入卵子を移した。ついで、倒立顕微鏡下でマニプレータに取り付けたガラス針を用いてドナー細胞とレシピエント卵細胞質の接着面が電極と平行となるように動かした後、電気融合装置(BEX)を用いて150v/mm、25μsecの直流電流を2回与えて膜融合を誘起した。さらに、20v/mm、20μsecの電気刺激を15分間隔で2回与えて活性化処理を施した。融合がみられた卵子は、10μg/mlシクロヘキシミドを添加した発生培地(CR1aa液)で6時間培養後、極体を放出している核移植卵のみ2倍体とし選別し、5%O2、5%CO2、90%N2の低酸素条件下のBSAを含むCR1aa液で3日間培養した。ついで、マイトマイシン処理したマウス胎子線維芽細胞と共に10%FBSを添加したCR1aa液でさらに3日間、10%FBSを添加した修正D−MEMで2日間共培養して体外発生能を検討した。その結果、核移植卵の28%が極体を放出して30%が胚盤胞まで発生した。また、得られた胚盤胞の染色体構成は、正常であった。 【0016】結果を以下に示す。 1.核移植成績核移植卵数 131融合卵数 99(76%) 極体放出卵数 23極体非放出卵数 58培養卵数 23分割卵数 23(100%) 8細胞数 15(65%) 胚盤胞数 7(30%) 2.受胚ウシへの移植結果移植頭数 4移植胚数 4妊娠頭数 1(25%) 子ウシ数 1(25%) 【0017】 【発明の効果】以上記載したごとく、本発明によれば、まず、核移植における融合率が向上する。すなわち、分裂直前であるM期の細胞の大きさは、分裂後のG1期あるいは休止期のG0期に比べて大きい。ウシにおける体細胞核移植では、ドナー細胞を染色体を除去した未受精卵の囲卵腔に注入後、融合液をみたした2本の平行電極間に入れて、卵子とドナー細胞との接着面が電極に対して平行となるように移動させた後、直流電流を通電して両方の細胞膜に小穴をあけて膜融合をおこさせる。大きい卵子と小さな細胞との接着面を電極に対して平行に移動させるのには熟練を要するが、大きさの大きいM期の細胞の場合は初心者でも容易に実施でき、そのため融合率が向上する。また、核の細胞周期をG0/G1期へ同調することが困難な細胞でもM期に同調させることができる。すなわち、G0/G1期への同調は、培地中の血清濃度を低下させる血清飢餓培養法と通常の血清濃度では培養を継続する接触阻止法によって実施されている。体細胞由来の培養細胞では、両法によってG0/G1期への同調が容易であるが、血清に依存せずに増殖を継続する未分化細胞である胚性幹細胞ではG0/G1期への同調は困難である。これに対して、培養液にノコダゾールのような微小管阻害剤を添加して短時間培養後、M期である浮遊してくる細胞を集める本発明の方法は、体細由来の培養細胞だけでなく胚性幹細胞にも応用可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000125347 【氏名又は名称】学校法人近畿大学
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| 【出願日】 |
平成12年1月4日(2000.1.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100062144 【弁理士】 【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−186827(P2001−186827A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月10日(2001.7.10) |
| 【出願番号】 |
特願2000−82(P2000−82) |
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