| 【発明の名称】 |
胚様組織を用いた植物の生産方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】古在 豊樹
【氏名】フォージア アフリーン ゾバイド
【氏名】サイード ゾバイド
【氏名】長谷川 修
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、遺伝的に均一な植物、特に木本性植物、さらにはコーヒー属植物の小植物体を効率的に生産する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】植物の胚組織を炭素源を含まない培地に移植し、明所、二酸化炭素存在下で培養することにより、その小植物体を生産する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物組織から得た胚または胚様体を、炭素源を含まない培地に移植し、明所、二酸化炭素存在下で培養することを特徴とする、植物体の生産方法。 【請求項2】 前記植物体は木本性植物である請求項1記載の植物体の生産方法。 【請求項3】 前記胚または胚様体は不定胚である請求項1または2のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項4】 前記不定胚は子葉型胚である請求項3に記載の植物体の生産方法。 【請求項5】 前記子葉型胚は初期子葉型胚である請求項4に記載の植物体の生産方法。 【請求項6】 前記植物はコーヒー属植物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項7】 前記胚または胚様体は光合成有効光量子束密度40〜300μmol/m2/sの範囲内の光環境下で培養する前処理が施されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項8】 前記胚または胚様体を光合成有効光量子束密度40〜300μmol/m2/sの範囲内の光環境下で培養する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項9】 前記胚または胚様体を二酸化炭素濃度300〜3000μmol/molの範囲内のガス環境下で培養する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項10】 前記胚または胚様体を培養初期には相対湿度100〜95%の範囲内で維持し、培養後期には95〜70%になるように制御し培養する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項11】 前記胚または胚様体を繊維性の支持体、多孔性の支持体、およびこれらの混合物から選択される支持体を用いて培養する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項12】 前記支持体がセルロース性繊維とバーミキュライトとの混合物である請求項11記載の植物体の生産方法。 【請求項13】 前記胚または胚様体を、培養液を水位調節可能に供給する手段と、二酸化炭素を含む気体を均一に供給する手段と、複数の小植物体を保持する手段を備えた培養器で培養する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 【請求項14】 前記胚または胚様体の根発達部位に培養液を供給し、子葉発達部位は培養液と接触させない、請求項1〜13のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、植物から得られた胚または胚様体を用いた小植物体の生産方法に関し、中でも不定胚を用いた小植物体の生産方法、特に木本性植物、さらにはコーヒー属植物の不定胚を用いた小植物体の生産方法に関する。 【0002】 【従来の技術】植物を生産する方法としては、従来から、種子繁殖による有性生殖法と、挿し木や挿し穂、接ぎ木や接ぎ穂、取り木、株分けなどによる無性生殖法が用いられてきた。しかしながら、これらの方法のうち、有性生殖による方法には、他家受粉の場合には遺伝的に不均一であり、生産した苗の形質や成長にばらつきを生じて安定的に収穫を行うことができない、種子の発芽率が低く歩留まりが悪い、一度ウイルスに感染してしまうと除去するのが困難で、作物の品質が低下する、などの問題があり、特に木本性植物に関しては、成長が遅く種の雑種性が高いために苗の判定をするのに時間がかかる、苗の成長に少なくとも2年を必要とする、といった問題が存在している。また、挿し木や挿し穂などの無性生殖による方法では、採穂木や採穂苗(親株)1本から採取できる本数に限りがある、挿し木や挿し穂などによる栄養繁殖自体が困難な場合があり、特に木本性植物ではその傾向が強い、木本性植物の苗の生産では少なくとも2年を要する、といった問題点が存在する。 【0003】また、種間、属間の交雑による雑種植物においては、一般に遠縁植物間の交雑であるほど得られた胚はしばしば途中で発生を停止したり、異常が生じ、次世代の種子が得られないため、雑種の胚を適当な時期に摘出して培養することにより雑種植物を生産する試みが多くなされている。このような雑種植物では、遺伝的に親と同一な次代の植物を大量に生産するには、無性生殖法による生産に頼らざるを得ない。一方で、形成した種子が休眠するような植物では、休眠の状態に入る前に胚を培養することによって植物の生産を早めることが行われている。このように植物各種は、上述した問題点等を比較、検討し、適切な生産方法により生産されている。 【0004】例えば、代表的なプランテーション植物であるコーヒーにおいて、コーヒー属アラビカ種(Coffea arabica)は、自家受粉を行うことにより遺伝的に均一な種子を得ることができるため種子繁殖が可能であるが、コーヒー属アラバスタ種(Coffea arabusta)は、コーヒー属アラビカ種およびコーヒー属キャネフォーラ種(Coffea canephora)が自然交配してできた雑種であり(Willsonら、1999)、種子繁殖によっては遺伝的に均一な苗を作成することが困難であることから、挿し木による増殖方法によって苗が作成されてきている(Dublinら、1980)。しかしながら、アラバスタ種の挿し木をインビトロで生育させた場合、生育が遅く(Dublinら、1991)、多くの樹木種の挿し木増殖と同様に、発根が困難である、増殖率が低い等の問題を有している。 【0005】そこで近年、挿し木増殖に代わる生産方法として、植物の胚様体形成による生産方法が開発されてきている。この胚様体とは、植物組織培養中などに観察される胚状の形態を示す細胞の総称であり、中でも受精卵以外の細胞から誘導され、受精卵からの胚発生と極めて類似した形態発生をたどる構造物を特に不定胚と呼ぶ。この不定胚は、受精卵からの胚発生と同様に、球状胚、初期〜後期心臓型胚、初期〜後期魚雷型胚、初期〜後期子葉型胚、と各発育ステージを順に経て、植物体へ再分化する能力を有する。胚様体、中でも不定胚形成を経て植物体に再分化する増殖方法は、遺伝的変異が比較的少なく、一度に得られる不定胚の数も多く、再分化効率も高いことから優良個体の大量増殖や、細胞工学・遺伝子工学により作出された細胞からの個体再分化に適していると考えられている。 【0006】上記のような、胚様体や不定胚を活用した増殖法は、様々な条件設定により、草本性植物においては比較的多数の種において成功している。一方、木本性植物においても、その生育の遅さや発根率、増殖率の低さなど、技術的な障壁は高いものの、成功例が増え始めてきている。しかしながら、いずれにしてもこれらの成功例では有糖培地を使用し、その培地中の糖を主たる炭素源とする培養法が用いられている。現在までのところ、我々の知る限りでは、糖を炭素源とせずに大気中の二酸化炭素を主たる炭素源とする光独立栄養培養法で胚様体や不定胚を増殖させ植物体を作成する試みは成功例がなかった。有糖培地を用いた手法では雑菌の汚染によるコンタミネーションを生じやすく、滅菌操作にも万全の注意を払わなければならないため、歩留まりの点や効率の点で問題があった。胚様体や不定胚が無糖培地で光独立的に生育するのであれば、雑菌によるコンタミネーションも低減し、滅菌操作も比較的簡便に行うことができるため、本手法は実用上の観点からも非常に有利なものとなる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、植物、特に木本性植物、例えばコーヒー属植物の小植物体を、効率的に生産する方法を提供することを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、植物の胚様体における光独立栄養培養の可能性を検討し、中でも木本性植物として産業的価値が高く、種子繁殖が困難なため通常挿し木等により苗の生産が行われている、コーヒー属アラバスタ種(Coffea arabusta)を選択し、この植物の不定胚における光独立栄養培養の可能性を検討した。その結果、この植物の不定胚を糖分を含まない培地にて、明所、高濃度に維持した二酸化炭素の存在下で培養を行うことにより、優れた小植物体へと生育することを見いだした。また、培養において、不定胚の状態、湿度、二酸化炭素濃度、光照射量、支持体、培養器の適正化を図ることにより、生育を更に高めることが可能となることを見いだし、本発明を完成するに至った。 【0009】すなわち、本発明は、以下のとおりである。 (1)植物組織から得た胚または胚様体を、炭素源を含まない培地に移植し、明所、二酸化炭素存在下で培養することを特徴とする、植物体の生産方法。 (2)前記植物体は木本性植物である(1)の植物体の生産方法。 (3)前記胚または胚様体は不定胚である(1)または(2)のいずれかの植物体の生産方法。 (4)前記胚または胚様体は子葉型胚である(1)〜(3)のいずれかの植物体の生産方法。 (5)前記胚または胚様体は初期子葉型胚である(1)〜(4)のいずれかの植物体の生産方法。 (6)前記植物はコーヒー属植物である(1)〜(5)のいずれかの植物体の生産方法。 【0010】(7)前記胚または胚様体は光合成有効光量子束密度40〜300μmol/m2/sの範囲内の光環境下で培養する前処理が施されている、(1)〜(6)のいずれかの植物体の生産方法。 (8)前記胚または胚様体を光合成有効光量子束密度40〜300μmol/m2/sの範囲内の光環境下で培養する、(1)〜(7)のいずれかの植物体の生産方法。 (9)前記胚または胚様体を二酸化炭素濃度300〜3000μmol/molの範囲内のガス環境下で培養する、(1)〜(8)のいずれかの植物体の生産方法。 (10)前記胚または胚様体を培養初期には相対湿度100〜95%の範囲内で維持し、培養後期には95〜70%になるように制御し培養する、(1)〜(9)のいずれかの植物体の生産方法。 (11)前記胚または胚様体を繊維性の支持体、多孔性の支持体、およびこれらの混合物から選択される支持体を用いて培養する、(1)〜(10)のいずれか一項に記載の植物体の生産方法。 (12)前記支持体がセルロース性繊維とバーミキュライトとの混合物である(11)の植物体の生産方法。 (13)前記胚または胚様体を、培養液を水位調節可能に供給する手段と、二酸化炭素を含む気体を均一に供給する手段と、複数の小植物体を保持する手段を備えた培養器で培養する、(1)〜(12)のいずれかの植物体の生産方法。 (14)前記胚または胚様体の根発達部位に培養液を供給し、子葉発達部位は培養液と接触させない、(1)〜(13)のいずれかの植物体の生産方法。 【0011】なお、本発明において「木本性植物」とは、茎や根に木部を形成し、その細胞壁の多くは木化して強固になる植物をいい、木部があまり発達しない草質または多肉質の草本性植物に対する意である。 【0012】本発明によれば、小植物体を胚または胚様体から効率よく生産することができる。本発明においては、炭素源を含まない培地を用いて培養を行うので、雑菌の繁殖による小植物体の損失の危険性を減少させることができる。また、小植物体の生理的特性が向上し、小植物体の馴化が容易あるいは不要になる等の利点が期待される。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明は、植物の胚または胚様体を、光独立栄養培養により小植物体へと育成する、小植物体の生産方法に関する。本発明の生産方法としては、植物の胚または胚様体を炭素源を含まない培地において、明所、二酸化炭素存在下にて培養することを特徴とする。 【0014】本発明を適用することができる植物としては、胚または胚様体の作成が可能であって、かつ、胚または胚様体を炭素源を含まない培地で、明所、二酸化炭素存在下で培養することによって、小植物体の形成が可能であるものであれば特に制限されない。例えば、産業的価値の高いプランテーション植物、コーヒー、アカシア、ガルシニア、ユーカリ、ラジアタ松、ゴム、アブラヤシ、カサバ、カカオ、サトウキビ、バナナ、パイナップル、オレンジ、マンゴー、パパイヤ、ドリアン、ランブータンなどの植物が挙げられ、特に種子繁殖が困難な植物や、挿し木繁殖が困難な植物、また、種子からは遺伝的に均質な植物体が得られない場合において本発明の有用性は高い。具体的には、コーヒー属アラバスタ種が挙げられる。 【0015】本発明における胚または胚様体としては、球状胚、心臓型胚、魚雷型胚、子葉型胚などの分化における各発育ステージのものを挙げることができるが、比較的発育の後期ステージである魚雷型胚または子葉型胚が好ましく、中でも子葉型胚、特に初期子葉型胚が好ましい。なお、子葉型胚とは、胚の発育過程中、魚雷型胚を形成した後に胚の発育とともに現れる形状の胚のことで、子葉になる部分と根になる部分が魚雷型胚に比べ、より明白に認められるようになった状態の胚をいう。 【0016】胚様体、特に不定胚は、組織培養または細胞培養によって、外植片から生じたカルスや外植片そのものの細胞から誘導することにより形成させることができる。カルスを経由して不定胚を誘導する方法としては、例えば、外植片を植物成長調節物質(2,4−D等のオーキシンやカイネチン等のサイトカイニンなど)を含む培地で培養してカルスを誘導し、次に植物成長調節物質を含まない培地に移植することにより不定胚を誘導する方法などが挙げられる。また、カルスを経由せずに不定胚を誘導する方法としては、高濃度のスクロースを含む培地での培養、抗生物質処理、または殺菌剤処理等により、外植片にストレスを与え、直接不定胚を誘導する方法などが挙げられる。なお、上述した各方法における不定胚形成の誘導方法は画一的でなく、植物種、または選択した外植片に応じて、最適条件を決定することが好ましい。 【0017】本発明においては、胚または胚様体、特に不定胚(以降これらを総称し胚組織という)に葉緑体を誘導し、光合成能力の向上を図り、光独立栄養培養を可能にするため、前処理として光合成有効光量子束密度(以下PPFと称する)40〜300μmol/m2/sの範囲内の照度下で一定期間培養する処理を行うことが好ましい。PPFが40μmol/m2/s未満では葉緑体が良好に誘導されず、また、PPFが300μmol/m2/sを越えると、胚組織が幼弱であるため、発育阻害を引き起こすことがある。 【0018】また、本発明で用いる培地は、炭素源を含まないことを特徴とする。ここで、炭素源とは、植物が培地から吸収し資化できる炭素源(二酸化炭素を除く)であって、例えば、スクロース、グルコース、フルクトースなどの糖やでんぷん、セルロース等の炭水化物をいう。植物の胚組織は完全な植物体と異なり、光合成により自ら糖を作り出す能力が不足し、培地にエネルギー源として糖などの炭水化物を添加することが不可欠であると考えられていたが、本発明によれば、大気中の二酸化炭素を炭素源として胚組織が光合成を行うことが可能である。胚組織を、糖分等の炭素源を含まない培地で培養することにより、培地における雑菌の繁殖を抑えることができ、煩雑な滅菌操作を簡略化し、培養の効率化を図ることができる。むしろ胚組織を光混合栄養培養すると、胚組織上に新たな胚組織が形成したり、胚組織がカルス化してしまったり、水浸状になったりする場合がある。 【0019】使用する培地としては、窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム、などの多量元素や、鉄、ホウ素、亜鉛、マンガン、ヨウ素、モリブデン、銅、コバルトなどの微量元素等の無機成分を含む培地が用いられる。さらに、グリシン、ニコチン酸、ピリドキシン塩酸、チアミン塩酸、イノシトールなどのビタミン類やアミノ酸等の有機成分や、植物成長調節物質を含んでいてもよい。具体的な基本培地としては、例えば、MS培地(Murashige と Skoog、1962、Physiol.Plant, 15 : 473-487)、LS培地(Linsmaier と Skoog、1965)、B5培地(Gamborgら、1968)、R2培地(Ohiraら、1973)、N6培地(Chuら、1975)、Woody Plant培地(Lloyd と McCown、1981)、Vacin & Went培地(Vacin と Went、1949)などが挙げられ、必要に応じて濃度の変更や、各種成分を更に添加するなどの修正を行っても構わない。 【0020】また、胚組織の発根、成長を促進するために、必要に応じて、培地には支持体を用いる。支持体としては、繊維性の支持体、多孔性の支持体、またはそれらの混合物であることが好ましい。従来から用いられている寒天などで固化した培地は、通常、胚組織の発根、成長および小植物体の馴化育成において上述した支持体ほど優れた結果をもたらさない。これは、繊維性や多孔性の支持体は、空隙率が高いため、支持体における培地中の溶存酸素濃度を高めるものと考えられ、これより発根、成長が促進されるものと考えられる。また、これらの支持体を用いた場合には、寒天などで固化した培地に比して、培養中に培養液の成分およびpH等の性質を制御あるいは培養液の交換を行うのが容易であるといった利点も有する。 【0021】具体的な支持体としては、バーミキュライト、パーライト、セルロース繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、ロックウール、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ただし、ポリエステル繊維、セラミック繊維、ロックウール等は、植物体を培養土に移植する際に支持体自体が分解せずに残存し、小植物体の根を支持体から分離する場合に根を傷めることがある。また、バーミキュライトやパーライト等を支持体として単独で用いた場合、これらが粒状であるため植物体の固定が悪いことがある。したがって、このような問題を回避するため、繊維性および多孔性の支持体の混合物、特にバーミキュライトおよびセルロース繊維の混合物であるフロリアライト(日清紡績株式会社製)が好ましい。 【0022】また、培養条件として、湿度環境は培養初期には相対湿度100〜95%の範囲内で維持し、培養後期には95〜70%になるように制御し培養するのが好ましい。ここでいう培養初期、培養後期とは、胚組織を本発明の手法にて培養開始する時点から、本発明の手法による培養を終え、植物体を移植するまでの間を2分割し、前期、後期に分けたもののことであり、培養初期、培養後期の期間は、用いる植物の種類や胚組織の状態、湿度以外の各培養条件(温度、光、培養液、支持体など)により様々である。好ましい例として、本発明の手法による培養を開始してから終了するまでの期間、徐々に湿度を下げていくことが挙げられる。具体的には相対湿度100%から培養を開始して、培養終了時には相対湿度90%になるように徐々に相対湿度を下げていくことが例示される。培養初期に相対湿度が95%未満であると、胚組織表面におけるワックス成分が十分に定着していないため、組織中の水分が蒸発し、枯れてしまうことがある。また、培養後期では、相対湿度が、95%を越えると、幼植物体において茎葉が水浸状となるビトリフィケーション(ガラス化)が生じ、移植後の生育が困難になることがある。逆に相対湿度が70%未満であると幼植物体中の水分が過蒸発してしまい、枯れてしまうことがある。ガス環境としては二酸化炭素濃度300〜3000μmol/molの範囲内、特に450〜2000μmol/molの範囲内であることが好ましい。二酸化炭素濃度が300μmol/mol未満である場合、二酸化炭素濃度が光合成における生育の限定要因となることがあり、3000μmol/molを越えると、光合成における二酸化炭素の飽和濃度を超えてしまい、二酸化炭素の利用効率が低下するだけでなく、生育に阻害的に働いてしまう可能性がある。 【0023】光環境としては、PPF40〜300μmol/m2/sの範囲内、特にPPF100〜300μmol/m2/sの範囲内であることが好ましい。PPFが40μmol/m2/s未満であると、光合成が十分に行われず、PPFが300μmol/m2/sを越えると生育障害を引き起こすことがある。また、培養する際の温度は、植物の種類にもよるが、通常20〜35℃である。その他の培養条件、例えば、光の種類、波長、光照射方向、明期・暗期の周期、培養液量、培養液濃度、培養液のpH等の培養に適する最適条件は、適宜、各々の条件を変えて培養を行うことによって、設定することができる。 【0024】また、好適な培養方法としては、規模拡大根部浸漬法(Large Vessel Root Zone Immersion System Technique、以降LVRZI法)(Zobayedら、1999)による培養方法を挙げることができる。LVRZI法は、培養液を水位調節可能に供給する手段と、二酸化炭素を含む気体を均一に供給する手段と、複数の小植物体を根部で保持し、そこに培養液を供給する手段を備えた培養器を用いて培養する方法である。同方法に用いる装置を図9に例示する。従来のテンポラリー・イマージョン(T.I.)法(Cirad Biotrop 社、フランス:Plant Biotechnology and In VitroBiology in the 21st Century, page629-632, Kluwer Academic Publishers 1999)では、小植物体全体が培養液に一時的に浸漬されるため、根部以外の葉部や茎部などにも培養液が付着し、葉の表面における円滑なガス交換が困難であるが、LVRZI法では、小植物体の根部のみに培養液を必要量供給することができる。また、前記培養器の下面には複数のガス供給部が設けられており、ここに二酸化炭素含有ガスを供給することで二酸化炭素を均一に供給することができるため、二酸化炭素濃度を植物体の近傍で一定に保つことができ、さらにはこのガスの湿度をコントロールすることで植物体近傍の湿度条件を均一にコントロールすることが可能になる。これにより培養後期に培養器内が過湿状態にならないようにコントロールすることができ、その結果、ビトリフィケーションの発生を回避することができる。このようにして健全な植物体を効率的に得ることができ、馴化工程の簡略化や省略が可能となる。 【0025】 【実施例】以下に、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0026】 【参考例】コーヒー属アラバスタ種の作製インビトロで生育したコーヒー属アラバスタ種(Coffea arabusta)の葉片(直径10mm)を、マジェンタ型容器内のMS寒天培地(スクロース30g/l、寒天80g/lを含む)上に載置し、同容器をPPF30μmol/m2/sの照度下、約23℃に維持された培養室内に静置することにより、培養を行った。培養開始から8〜11週内に不定胚形成が誘導された。培養を4ヶ月間行った培養物から各発育ステージの不定胚を選別し、これらを以下の実施例において用いた。また、不定胚において葉緑体を誘導するため、一定期間照度を高めて培養する前処理が施された各発育ステージの不定胚も以下の実施例で用いた。 【0027】 【実施例1】コーヒー属アラバスタ種の不定胚における光合成能力コーヒー属アラバスタ種における、初期および後期魚雷型胚、並びに初期および後期子葉型胚、計4の発育ステージの不定胚について、光合成能力を検定し、光独立栄養培養の可能性を検討した。 【0028】まず、上述した各発育ステージの不定胚の光合成による培養器内の二酸化炭素濃度の変化を測定した。測定対象とされた各発育ステージの不定胚は、PPF30μmol/m2/sの照度下で14週間培養後、続いてPPF100μmol/m2/sの照度下で14日間培養したもの(High PPF 試験区)と、PPF30μmol/m2/sの照度下でのみ16週間培養したもの(Low PPF 試験区)の2区分に分け、それぞれ以下の試験を行った。 【0029】各不定胚5個ずつを10mlのMS培地(無糖、ビタミン不添加)を含むガラス製培養器(容積40ml)に移植した。そしてこの培養器を1250μmol/molの二酸化炭素濃度を有する滅菌した空気でガス置換を行った後、シリコンゴム栓で密封した。この培養器を100μmol/m2/sの照度下、23℃に維持された培養室に置き、不定胚の培養を行った。培養開始から60分間にわたり、10分毎に培養器内から250μlのサンプルガスを取り出し、ガスクロマトグラフ(GC-12A、Shimadzu)を用いて二酸化炭素濃度の測定を行った。 【0030】次に、各不定胚におけるCO2の放出/吸収の速度を下記式により計算した。 【数1】CO2(放出/吸収)=ΔCa・V・N/(T・Vm・E) ここで、ΔCaはCO2濃度の変化が記録された時間間隔(T(sec))におけるCO2の濃度変化(mol/mol)、Vは培養器の容積(ml)、Nは培養器における時間あたりの換気回数(h-1)(Kozaiらの方法(1986)により概算)、Vmは培養室の温度におけるCO2のモル体積(ml/mol)、Eは培養器中の不定胚の数、を示すものとする。不定胚がCO2を吸収するより放出する方が多ければ正の値となり、逆に吸収する方が放出する方より多ければ負の値となる。 【0031】結果を図1,2および3に示す。この結果から、初期魚雷型胚(High PPF試験区および Low PPF試験区)、およびLow PPF試験区の後期魚雷型胚は、二酸化炭素の吸収が低く、二酸化炭素の放出が吸収よりも上回っていた。一方、High PPF試験区の後期魚雷型胚、並びに初期および後期子葉型胚(HighPPF試験区および Low PPF試験区)は、二酸化炭素の吸収が高く、特に、初期および後期子葉型不定胚(High PPF試験区および Low PPF試験区)は二酸化炭素の吸収が放出よりも著しく上回っていた。このことから、これらの不定胚は光合成可能であることがわかった。また、High PPF試験区の初期および後期子葉型不定胚は、Low PPF試験区と比較して、二酸化炭素の吸収速度が高く、光合成能力が高いことが明らかとなった。 【0032】さらに、各不定胚についてクロロフィルの蛍光測定およびクロロフィル含有量の測定を行った。測定対象とされる各発育ステージの不定胚はPPF30μmol/m2/sの照度下で16週間培養したもの(未処理区)と、PPF30μmol/m2/sの照度下で14週間培養した後にPPF100μmol/m2/sの照度下で2週間培養したもの(処理区)の2区分に分け、それぞれについて以下の試験を行った。 【0033】クロロフィルの蛍光測定は、クロロフィル蛍光測定器(Hansatech、UK)を用いて、不定胚の光化学的活性を分析することにより行った。まず、暗順応したサンプルについてPSII(Photo System II:光合成における光化学系II)の最大量子収率(ΦpMAX)を以下の式から求めた。(Kitajimaと Butler、Biochem. Biophys. Acta, 376(1975) 105-115)ここでFoは初期蛍光レベル、FMは最大蛍光レベルである。 【数2】ΦpMAX = (FM - Fo)/FM次に、光順応したサンプルについてPSIIの実質量子収率(Φp)を以下の式から求めた。(Havauxら、Photosynth. Res., 27(1991) 41-55)ここでFsは定常状態蛍光レベル、FMは最大蛍光レベルである。 【数3】Φp = (FM - Fs)/FM以上の式から算出されたPSIIの最大量子収率(ΦpMAX)と実質量子収率(Φp)を表1に示す。 【0034】 【表1】
【0035】PSIIの実質量子収率(Φp)は光合成電子伝達系の量子収率のよい推定値となることが知られている。(Gentryら、Biochem. Biophys. Acta 990(1989) 87-92、Research in Photosynthesis IV, page603-610(1992) Kluwer Academic Publishers)初期魚雷型胚、後期魚雷型胚ともにΦpの値は低いが、初期子葉型胚、後期子葉型胚と発育ステージが進行するにしたがってΦpの値が大きくなっており、光合成能力の発現が認められる。特にPPF100μmol/m2/sの照度下で2週間培養した初期子葉型胚(処理区)と後期子葉型胚(処理区、未処理区どちらも)のΦpの値が大きいことから、これらのステージの胚では光合成能力が高いことが示唆される。 【0036】次にクロロフィル含有量の測定を、分光計を用いた定量分析により行った。各ステージの不定胚の適当量を80%の冷アセトン溶液に3日間浸漬し、300rpmで10分間遠心分離した後に上清を測定用サンプルとした。このサンプルを分光測定器(日立製)を用いて、400〜700nmにおける光の吸収を測定した。この吸収曲線から、LichtenthalerとWellburnの式(Biochemical Society Transactions, 11(1983), 591-592)によってクロロフィルa、クロロフィルbの含量を算出した。 【数4】Ca = 12.21A663 - 2.81A646【数5】Cb = 20.13A646 - 5.03A663ここでCa、Cbはクロロフィルa、クロロフィルbの含量(μg/ml抽出液)、A663、A646は、663nm、646nmにおける吸収を示す。また、コントロールとしてインビトロで生育させたコーヒー属アラバスタ種の葉についても測定を行った。以上のようにして測定されたクロロフィルaおよびクロロフィルbの含有量を表2に示す。 【0037】 【表2】
【0038】初期魚雷型胚、後期魚雷型胚ともにクロロフィル含量は低いが、初期子葉型胚、後期子葉型胚と発育ステージが進行するにしたがってクロロフィル含量が大きくなっており、光合成能力の発現が認められる。インビトロの葉のクロロフィル含量には届かないものの、特にPPF100μmol/m2/sの照度下で2週間培養した初期子葉型胚(処理区)と後期子葉型胚(処理区、未処理区どちらも)のクロロフィル含量が大きいことから、これらのステージの胚では光合成能力が高いことが示唆される。 【0039】また、各不定胚に形成された気孔について顕微鏡観察を行った。不定胚はPPF30μmol/m2/sの照度下で16週間培養したもの(未処理区)と、PPF30μmol/m2/sの照度下で14週間培養した後にPPF100μmol/m2/sの照度下で2週間培養したもの(処理区)の2区分に分け観察に供した。顕微鏡観察の対象とする組織として、初期魚雷型胚においては、極領域における表皮を、後期魚雷型胚、初期子葉型胚および後期子葉型胚においては、子葉の背軸表面の表皮を選択した。顕微鏡としてはデジタル顕微鏡(キーエンス社製)を用いた。この顕微鏡を用い、気孔の密度(個/1 mm2)気孔の長さと幅(孔辺細胞を含む)を直接測定した。ここで気孔の長さとは、孔辺細胞の端間の距離で、気孔の幅とはこれと直角に交わる方向の長さである。結果を表3に示す。 【0040】 【表3】
【0041】その結果、初期魚雷型胚、後期魚雷型胚では処理区、未処理区共に、気孔は観察されなかった。一方、初期子葉型胚および後期子葉型胚においては、処理区、未処理区共に気孔を観察する事ができた。中でも、処理区の方が初期子葉型胚、後期子葉型胚共に気孔密度が高くなっていることがわかる。このことから、初期子葉型胚、後期子葉型胚においてはガス交換能力が存在し、光合成能力を有することが示唆される。 【0042】以上のことから、コーヒー属アラバスタ種の不定胚は、光合成能力を有しており、特に初期および後期子葉型胚において高い光合成能力を有することが確認された。よってこれら不定胚において光独立栄養培養が可能であることが示された。 【0043】 【実施例2】コーヒー属アラバスタ種の不定胚における光独立栄養培養および光混合栄養培養コーヒー属アラバスタ種における、初期および後期魚雷型胚、並びに初期および後期子葉型胚、計4の発育ステージの不定胚について光独立栄養培養または光混合栄養培養を行った。使用された各発育ステージの不定胚は、PPF30μmol/m2/sで培養し、続いてPPF100μmol/m2/sの照度下で2週間培養する前処理を施した。 【0044】培養器にはプラスチックのシャーレ(内容積30ml)を用い、これに培養液を5ml加えたものを使用して45日間培養を行った。光独立栄養培養においては、シャーレの蓋に直径10mmの穴を開け、そこに通気膜(ミリポア社製、フィルター孔径0.5μm)を1枚装着した。MS寒天培地はスクロースを含まず、周囲の二酸化炭素濃度は1000μmol/mol、換気回数は5.0/h、PPFは150μmol/m2/sの条件下で培養を行った。光混合栄養培養においては、MS寒天培地はスクロースを20g/lの濃度で含み、周囲の二酸化炭素濃度は400μmol/mol、換気回数は0.7/h、PPFは50μmol/m2/sの条件下で培養を行った。 【0045】以上の各条件下で培養した場合の生体重量および乾燥重量を図4に示す。また、各培養方法による乾燥重量の増加率を図5および図6に示す。光独立栄養培養において、初期および後期魚雷型胚の乾燥重量は、培養開始時の乾燥重量よりも、少なくとも20〜25%減少したが、初期および後期子葉型胚の乾燥重量は、培養開始時の乾燥重量よりも、10〜50%増加した。この結果から、初期および後期魚雷型胚は光合成能力が低いために、光独立栄養培養条件下では胚組織自身の持つ栄養源に依存するしかなく、そのために重量減少していることが示唆される。また、初期および後期子葉型胚では、胚組織の光合成活動により大気中の二酸化炭素を利用して生育し、重量増加していることが示唆される。 【0046】また、それぞれの条件下で培養した植物体の形態観察を行った。魚雷型胚においては、光混合栄養培養および光独立栄養培養下で共に、根の発達が見られなかったが、光混合栄養培養下では、初期子葉型胚の33%、および後期子葉型胚の58%において、光独立栄養培養下では、初期子葉型胚の15%、後期子葉型胚の25%において、根の発達が見られた。 【0047】また、光混合栄養培養下では、一部の魚雷型胚および子葉型胚において、その基底部から新たな胚組織の形成が観察された。これは健全な植物体生育には好ましくない現象である。さらに、光独立栄養培養下では、正常な葉が形成されたが、光混合栄養培養下では、ビトリフィケーションが発生していた。これも健全な植物体生育には好ましくない現象である。 【0048】以上のことから、コーヒー属アラバスタ種の不定胚は、光独立栄養培養を行うことができ、さらにその不定胚が子葉型胚である場合、その培養がさらに促進されることが確認された。また、初期子葉型胚はそのサイズが後期子葉型胚に比べ小さいため、ハンドリングの点で優れており、また、初期子葉型胚の段階で本培養法を適応した方が早く苗の育成段階に進むことができるので有利である。 【0049】 【実施例3】コーヒー属アラバスタ種の不定胚の光独立栄養培養における、支持体、照度、および二酸化炭素濃度の影響(1)支持体による影響不定胚として、コーヒー属アラバスタ種の初期子葉型胚を選択し、この不定胚の光独立栄養培養における、支持体による影響を検討した。PPF100μmol/m2/sの照度下で14日間培養する前処理を施した初期子葉型胚について、寒天(8g/l、関東化学株式会社製)、バーミキュライト、またはフロリアライト(日清紡製)を支持体として用いて、光独立栄養培養を行った。培地にはスクロースやビタミンを含まないMS培地を使用し、周囲の二酸化炭素濃度は1000μmol/mol、換気回数は1.6/h、PPFは150μmol/m2/sの条件下で6週間培養を行った。容器にはマゼンタ・ボックスを用い、1つの容器に2つの胚を入れた。 【0050】各支持体で培養した場合の、6週間後の生体重量、乾燥重量、胚の発根率を図7に示す。生体重量と乾燥重量についてはフロリアライトおよびバーミキュライトが寒天の約1.7〜2.0倍の値となり、胚の発根率についてはフロリアライトおよびバーミキュライトが寒天の約6〜9倍の値となった。中でもフロリアライトが3項目全てにおいて最もよい結果となっている。これらの結果より、生体重量、乾燥重量、胚の発根率ともに、フロリアライトおよびバーミキュライトを支持体として得た植物体は、寒天を支持体として得た植物体よりも生育において優れていることが明らかとなった。以上より、フロリアライトおよびバーミキュライトを支持体として使用した場合、光独立栄養条件下での不定胚の培養がより促進されることが確認された。 【0051】(2)照度による影響また、初期子葉型不定胚の光独立栄養培養における照度の影響を検討した。前記と同様の前処理が施された初期子葉型胚を、PPF30μmol/m2/s、100μmol/m2/s、150μmol/m2/s、300μmol/m2/s、または400μmol/m2/sの各照度下で培養した。支持体にはフロリアライト(日清紡製)を用い、培地にはスクロースやビタミンを含まないMS培地を使用し、周囲の二酸化炭素濃度は1000μmol/mol、換気回数は1.6/hの条件下で光独立栄養培養を6週間行った。容器にはマゼンタ・ボックスを用い、1つの容器に2つの胚を入れた。 【0052】各照度で培養した場合、PPF100μmol/m2/s、150μmol/m2/sおよび300μmol/m2/sの照度下で培養した植物体は、PPF30μmol/m2/sおよびPPF400μmol/m2/sの照度下で培養した植物体と比較して、植物体の発達において優れていることが明らかとなった。以上の結果より、上記条件の下でPPF50〜300μmol/m2/sの照度下で光独立栄養培養した場合、不定胚の生育がより促進されることが確認された。また、この範囲を外れた照度(PPF30μmol/m2/s以下、PPF400μmol/m2/s以上)で培養した場合、生育が思わしくない場合があることが示唆される。 【0053】(3)照度および周囲の二酸化炭素濃度による影響さらに、初期子葉型胚の光独立栄養培養における、照度および二酸化炭素濃度の影響を検討した。前記と同様の前処理が施された初期子葉型胚を、下記の二酸化炭素濃度および照度の組み合わせで培養した。支持体にはフロリアライト(日清紡製)を用い、培地にはスクロースやビタミンを含まないMS培地を使用し、換気回数は1.6/hの条件下で光独立栄養培養を6週間行った。容器にはマゼンタ・ボックスを用い、1つの容器に2つの胚を入れた。 【0054】検討された二酸化炭素濃度および照度の組み合わせは、以下の6パターンである。 a)二酸化炭素濃度; 400μmol/mol + PPF;100μmol/m2/sb)二酸化炭素濃度;1000μmol/mol + PPF;100μmol/m2/sc)二酸化炭素濃度;1500μmol/mol + PPF;100μmol/m2/sd)二酸化炭素濃度; 400μmol/mol + PPF;150μmol/m2/se)二酸化炭素濃度;1000μmol/mol + PPF;150μmol/m2/sf)二酸化炭素濃度;1500μmol/mol + PPF;150μmol/m2/s【0055】各照度下で培養した場合の、6週間後の乾燥重量と二酸化炭素濃度との関係を図8に示す。ここで、各照度において、二酸化炭素濃度の上昇に伴って乾燥重量は増加し、二酸化炭素濃度が1000μmol/molを越えると、乾燥重量がほぼ一定となり飽和状態となることが明らかとなった。以上より、上記条件下では周囲の二酸化炭素濃度が約1000μmol/molである場合、初期子葉型胚の成長が最も促進されることが確認された。また、二酸化炭素濃度が400μmol/molである場合、各照度において乾燥重量はほぼ同一であることが明らかとなった。よって、上記条件下では二酸化炭素濃度が400μmol/mol付近である場合、二酸化炭素濃度が初期子葉型不定胚の生育の限定要因となっていることが示唆される。 【0056】 【実施例4】コーヒー属アラバスタ種の不定胚の光独立栄養培養によるコーヒー小植物体の大量増殖不定胚としてコーヒー属アラバスタ種の初期子葉型胚を選択し、この不定胚の光独立栄養培養によるコーヒー小植物体の大量増殖を行った。PPF100μmol/m2/sの高照度下で15日間培養する前処理が施された初期子葉型胚を規模拡大根部浸漬法(Large Vessel Root Zone Immersion SystemTechnique、以降LVRZI法)(Zobayedら、特願2000-12721、1999)により図9に示される培養器、または従来のテンポラリー・イマージョン(T.I.)法(CiradBiotrop 社、フランス:Plant Biotechnology and In Vitro Biology in the 21st Century, page629-632, Kluwer Academic Publishers 1999)による培養器において培養を行った。 【0057】LVRZI法による培養は、換気回数;1.6〜5.8回/h、浸漬回数;1回/12h(水切り15分)、支持体;フロリアライト(日清紡製)、換気;強制換気、の培養条件で行った。従来のT.I.法による培養は、換気回数;1.4回/h、浸漬回数;1回/12h(水切り45〜60分)、換気;自然換気、の培養条件で行った。また、以下の培養条件、すなわち二酸化炭素濃度;1000μmol/mol、PPF;100μmol/m2/s、培地;スクロースやビタミンを含まないMS培地、培養期間;32日間、は各方法による培養において共通している。尚、各培養器内の相対湿度は、LVRZI法においては、最初の16日間は99〜96%、後半の16日間は95〜85%になるよう維持した。従来のT.I.法においては培養期間を通じ99〜97%であった。 【0058】培養から32日後に観察したところ、LVRZI法による小植物体が、従来のT.I.法による小植物体と比較して、生育が明らかに優れていた。加えて、従来のT.I.法による小植物体には、ビトリフィケーションが発生したが、LVRZI法による小植物体にはそのような兆候は見られなかった。 【0059】従来のT.I.法によれば、培養器内の相対湿度が培養期間を通じて99〜97%と高いために、小植物体表皮へのワックスの沈着が十分でなく、さらに、小植物体全体が培養液に浸漬されるため、子葉部分の表面にも培養液が覆ってしまい、ガス交換(呼吸、光呼吸)の効率が悪くなり、小植物体の生育が阻害されてしまうばかりか、ビトリフィケーションが起きやすくなってしまう。一方、LVRZI法においては、培養器内の相対湿度を、培養初期には99〜96%、培養後期には95〜85%というようにコントロールすることができ、また、小植物体が、液体通気培養条件下、根の部分のみが培養液に浸漬されるため、子葉部分の発達も阻害されず、ビトリフィケーションの発生も回避することができた。LVRZI法では葉部は培養液に浸漬されないので、ガス交換(呼吸、光呼吸)がスムーズに行われ、良好な生育が達成されると考えられる。 【0060】また、各方法により培養された小植物体の表皮組織について顕微鏡観察を行ったところ、従来のT.I.法よりもLVRZI法により培養された小植物体において気孔が多数形成されており、潜在的なガス交換能力が高いことが示唆される。また、各方法により培養された小植物体について、葉の枚数、葉面積、葉、茎および根の生体重量および乾燥重量を測定した。その結果を表4に示す。表4中、それぞれの値は、20サンプルの平均±標準偏差である。 【0061】 【表4】
【0062】表4に示されるように、全ての測定結果において、LVRZI法による小植物体は、従来のT.I.法による小植物体と比較して優れていることが明らかにされた。 【0063】さらに、上記各方法によりインビトロ培養した小植物体を移植し、エクスビトロで育成を行った。移植7日後、移植20日後に生育状況の観察を行ったところ、いずれも、LVRZI法による植物体が、従来のT.I.法による植物体と比較して優れており、小植物体の生育が早いことが明らかとなった。従来のT.I.法による植物体では育成途中で枯死するものもあったが、LVRZI法による植物体は全て健全に成長していた。 【0064】以上のことより、LVRZI法による培養によれば、従来のT.I.法による培養と比較して、不定胚の健全な生育が促進され、育成期間を短縮することができ、コーヒー小植物体の大量増殖が可能であることが確認された。 【0065】 【発明の効果】本発明により、植物、特に木本性植物、さらにはコーヒー属植物において、胚または胚様体、なかでも不定胚の光独立栄養培養による小植物体の生産方法が提供された。本発明の方法によれば、遺伝的に均一な小植物体を効率よく生産することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004374 【氏名又は名称】日清紡績株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月12日(2000.6.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089244 【弁理士】 【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−352849(P2001−352849A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月25日(2001.12.25) |
| 【出願番号】 |
特願2000−176055(P2000−176055) |
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