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【発明の名称】 育苗キット
【発明者】 【氏名】南部 哲男

【氏名】寺沢 秀和

【要約】 【課題】育苗後の移植の際に鉢体同士の根絡みが解消され、個々の鉢体を容易に分離・分割できる育苗キットを提供する。

【解決手段】植物を育苗する複数の鉢体1と、該鉢体1を収容することができる容積を有する育苗箱3と、並びに該鉢体1と該育苗箱3との間に介在して該鉢体1の底部と接する根切断部材2であって、育苗中に該鉢体1から延びる苗の根を通過させる複数の空隙部と、該空隙部同士を隔て分けそして移植時に該根を切断する空隙周縁部とを含む根切断部材2からなることを特徴とする育苗キット
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物を育苗する複数の鉢体と、該鉢体を収容することができる容積を有する育苗箱と、並びに該鉢体と該育苗箱との間に介在し該鉢体の底部と接する根切断部材であって、育苗中に該鉢体から延びる苗の根を通過させる複数の空隙部と、該空隙部同士を隔て分けそして移植時に該根を切断する空隙周縁部とを含む根切断部材からなることを特徴とする育苗キット。
【請求項2】 さらに根切断部材の下側に根不透過性シートを敷設することを特徴とする、請求項1記載の育苗キット。
【請求項3】 鉢体は、個々の鉢体が連結部材によって連結されて列状に引き出すことが可能な集合鉢体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の育苗キット。
【請求項4】 根切断部材は育苗期間中に腐敗しない材料より製造されることを特徴とする、請求項1または2に記載の育苗キット。
【請求項5】 根切断部材の空隙部は、少なくとも1mm2の面積を有し、そして該根切断部材の全面積に基づいて少なくとも10%の面積を占めることを特徴とする、請求項1または2に記載の育苗キット。
【請求項6】 根切断部材の空隙周縁部は鋭利な縁部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の育苗キット。
【請求項7】 請求項1ないし6のうちのいずれか一項に記載の根切断部材。
【請求項8】 請求項1ないし6のうちのいずれか一項に記載の育苗キットを使用して行う育苗方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水稲、野菜、花卉等の植物の育苗に使用する育苗キットであって、育苗後、複数の鉢体を個々に容易に分離・分割できる育苗キットに関する。
【0002】
【従来の技術】水稲、野菜、花卉等の栽培においては、鉢体中に播種し、該鉢体中で一定の期間苗を育成して、そしてその後該鉢体を人手、移植機等により田畑、庭等に移植することが広く行われている。育苗後の鉢体は、移植の作業性、使用する移植機への適合性等の観点から、移植の際に一株ずつ容易に分離・分割できるべきである。特に該鉢体が集合鉢体である場合、個々の容器へと容易に分割でき、また該鉢体が列状に引き出すことが可能な連続型の集合鉢体である場合には、大きな力を必要とせずに容易に引き出し得ることが要求される。
【0003】ところが育苗期間中には、隣接する苗の根が鉢体外で絡み合う所謂根絡みが発生することがある。根絡みが発生すると隣接する鉢体同士は絡み合う根によって互いに結合されて容易に分離することができなくなり、その結果、移植の作業性は低下し、また移植機への適合性についても問題が生じる。
【0004】根絡みを防止する方法の一つとして、エアープルーニング育苗法が知られている。エアープルーニング育苗法においては、地面から離れた棚の上で育苗することにより、苗の根を空気に接触させ、鉢体外への根の伸長を抑止して根絡みを防止する。しかしながらこの育苗法は、根の伸長力が比較的弱いキャベツ、レタス、ハクサイ等の葉菜類には効果があるけれども、タマネギ、エダマメ、バレイショ等のように根の伸長を抑止することができない植物も多数存在する。またエアープルーニング育苗法では、苗の根が鉢体中で過度に伸長して所謂根巻きを起こし易く、根巻きを起こした苗は移植後に根が土中へと伸長し難い傾向にある。
【0005】根絡みを防止する他の方法は、特許第2561207号公報に開示される根域制限シートを使用する方法である。この方法では、植物に対する伸長阻害作用を有する水酸化第二銅を含有させたシートを植物育成容器の内面に貼りつけることによって、根域を該育成容器内のみに制限して根絡みを防止する。けれどもこの方法では、根の伸長の抑制効果が植物の種類により異なり、また長期の育苗においては薬剤が失効したりシートの腐敗が生じることもあるので、全ての種類の植物において安定した根絡みの防止を得ることはできない。さらにこの方法においては、薬剤が土中に放出されて環境的な問題を引き起こす恐れもある。
【0006】育苗後に根絡みを解消して鉢体を個々に分割可能とする他の育苗方法としては、底部に穴を有する鉢体を地面の上に直接設置して育苗を行い、育苗期間中に該穴を通して苗の根を土中に伸長させ、育苗終了後、鉢体の底部と地面との間にカッターを通過させることにより土中に伸長した根を切断して根絡みを解消する方法がある。しかしながらこの育苗方法では、鉢体底部の穴が小さい等の理由のために根が土中へと十分に伸長しない場合、鉢体中で根巻きが生じ、また鉢体と地面との間に例え僅かでも空間が存在する場合にも、該空間内において根絡みが生じる。この種の根絡みは鉢体の底部と地面との間にカッターを通過させることでは解消不可能なので、この種の根絡みが発生すると、もはやこの育苗方法により鉢体を容易に分割することはできない。またこの育苗方法は、ワイヤー等からなる根を切断するためのカッターを必要とし、さらに該切断には非常に大きな力を要するので、根の切断作業は非常に煩雑となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、上記のごとき従来の育苗方法の欠点を解決し、育苗後の移植の際に、植物の種類を問わず確実に複数の鉢体を個々に分離・分割することを可能にした育苗キットを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、育苗箱中で複数の鉢体を使用して育苗する際、鉢体の底部に接する根切断部材を設けて育苗することにより、たとえ育苗期間中に個々の鉢体の間で根絡みが発生した場合であっても、育苗後に該鉢体を個々に容易に分離・分割することが可能になることを見出して本発明を完成させた。
【0009】従って本発明は、植物を育苗する複数の鉢体と、該鉢体を収容することができる容積を有する育苗箱と、並びに該鉢体と該育苗箱との間に介在し該鉢体の底部と接する根切断部材であって、育苗中に該鉢体から延びる苗の根を通過させる複数の空隙部と、該空隙部同士を隔て分けそして移植時に該根を切断する空隙周縁部とを含む根切断部材からなることを特徴とする育苗キットに関する。本発明の育苗キットを使用して育苗を行うと、育苗期間中に鉢体の外に伸長した苗の根は根切断部材の下側に伸長し、そして隣接する鉢体と根切断部材の下側において根絡みを生じ得る。しかしながら根切断部材の下側に存在する根は、育苗後、鉢体を移植のために移動する際に根切断部材によって切断されて根絡みによる移植作業の問題は解消される。即ち、鉢体を個々に容易に分離・分割することができ、そして移植作業の効率が飛躍的に改良されるのである。また、鉢体を用いた育苗方法では、育苗期間中に育苗ベンチ、苗床等の育苗区域に苗の根が伸長し、鉢体と育苗区域とを結合して容易に分離不可能にする場合がある。しかしながら本発明の育苗キットを使用した育苗では、育苗箱が存在するために、育苗キットを育苗期間中に容易に移動することが可能となる。一方、本発明の育苗キットを使用した育苗では、苗の根が根切断部材と育苗箱との間の空間内に伸長して、根絡みおよび時には根巻きさえ起こし得るけれども、移植の際に該根切断部材の下側の根は切断されるので、根絡みおよび根巻きによる問題は排除することができる。なお、本発明の育苗キットにおける“底部に接する”とは、育苗の際に鉢体と根切断部材との間の空間内で根絡みが生じない程度に鉢体の底部と根切断部材とが接近した状態を意味する。
【0010】本発明の育苗キットはさらに、根切断部材の下側に敷設された根不透過性シートを含むことができる。根の伸長力が強く、多数の根が激しく繁茂する植物の育苗では、根切断部材と育苗箱の底面との間の空間内で甚だしい根絡みおよび/または根巻きが生じたり、育苗箱に水抜等の目的で設けられた穴を通して根が伸長して育苗箱の外部で根絡みを生じたりする場合がある。しかしながら、本発明の育苗キットにおいて根切断部材の下側に根不透過性シートを敷設すると、根切断部材による根絡み解消効果と根不透過性シートによる根伸長抑制効果が相乗して、根の伸長が著しい植物の育苗においても、移植の際に容易に根絡みによる移植作業の問題を解消して、鉢体を一つづつ分離・分割することができる。
【0011】本発明の育苗キットでは、鉢体として様々な種類のものが使用可能であるが、個々の鉢体が連結部材によって連結されて列状に引き出すことが可能な集合鉢体を使用することが特に有用である。上記のごとき連続型の集合鉢体は、機械による全自動移植が可能であること等の理由により、省力化・省人化の観点からその使用が非常に注目されている。このような連続型の集合鉢体は個々の鉢体が連結片または非腐敗性の糸状体等の連結部材によって互いに連結されており、移植の際に列状に引き出すことができる。しかしながら鉢体間で根絡みが生じて鉢体同士が結合され、そして鉢体の引き出しに要する力が連結部材による連結力よりも大きくなると、鉢体の引き出し時に連結部材による鉢体間の連結が切断される所謂中切れが生じ、移植が中断されたり移植に用いる機械に不具合が生じたりする。連続型の集合鉢体を使用する育苗に関する上記の問題は、本発明の育苗キットを使用することによって解決される。即ち、根切断部材の下側に伸長して根絡みを引き起こす根は、移植のために鉢体を列状に引き出す際に該根切断部材によって切断されることとなる。その結果、鉢体の引き出しに要する力を鉢体同士の連結力よりも小さくすることができ、連続型の鉢体は中切れを生じず作業性の低下、機械の不具合等が発生しない。
【0012】本発明の育苗キットにおける根切断部材は、好ましくは育苗期間中に腐敗しない材料より製造される。根切断部材を、育苗期間中に腐敗しない材料、例えば合成樹脂から製造することにより、一連の育苗および移植後に再び使用することができる。
【0013】本発明の育苗キットにおける根切断部材の形状は、使用する鉢体、育苗する植物、鉢体の分離・分割の容易さ等に依存して様々な形状が考えられる。根切断部材は、育苗の際に苗の根を通す空隙部と該開口部を囲む空隙周縁部とにより定められるが、根絡みを有効に解消する観点から、根切断部材の空隙部は少なくとも1mm2の面積を有し、そして該空隙部の面積は根切断部材の全面積に基づいて少なくとも10%を占めることが好ましい。また、根切断部材の空隙周縁部が鋭利な縁部を有することにより、より容易に根を切断することが可能となる。
【0014】また本発明は、上記の育苗キットにおいて使用するための育苗ネットに関する。さらに本発明は、上記の育苗キットを使用して行う育苗方法にも関する。
【0015】
【発明の実施の態様】次に図面を参照しながら本発明の育苗キットをより詳しく説明する。図1は本発明の育苗キットを表す分解斜視図であり、図中において、1は鉢体を表し、2は根切断部材を表し、また3は育苗箱を表す。
【0016】鉢体1は、その中に培養土を詰め、育苗する植物の種を播種し、その後覆土して目的作物を育苗するために使用する。該鉢体1は、移植の作業性の観点から、移植の際に個々の鉢体に容易に分離・分割することができるべきである。図中では六角形の底部形状を有する集合型の鉢体1が用いられているけれども、本発明においては様々な形状および寸法を有する周知の鉢体を用いることができる。本発明において用いられ得る鉢体の種類としては、例えば紙製鉢、ビニール製鉢等の鉢体並びに紙またはプラスチックからなる集合鉢体であって、例えばペーパーポット(登録商標、日本甜菜製糖株式会社製)のような集合鉢体、チェーンポット(登録商標、日本甜菜製糖株式会社製)のような連続型の集合鉢体、育苗専用セルポット(株式会社クボタ製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、連続型の集合鉢体を本発明の育苗キットにおいて用いると、従来の連続型の集合鉢体を使用する育苗において生じる問題を著しく改善することができるので、連続型の集合鉢体を用いることは本発明の育苗キットの非常に好ましい態様である。また、これらの鉢体は鉢体の種類に従った既知の方法により適宜製造することができる。
【0017】根切断部材2は、育苗後の移植の際、鉢体の移動のために加わえられる力によって、該根切断部材2の下側に伸長した苗の根を鉢体1から切除するために備えられる。該根切断部材2は、天然繊維、合成樹脂、金属等よりなることができるが、なかでも育苗期間中に腐敗しない材料より製造されることが好ましい。該材料とは例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル等の合成樹脂、ステンレス鋼等が挙げられる。このような材料から根切断部材2を製造すると、該根切断部材2は育苗期間中に腐敗せず、繰り返し使用することが可能となる。また育苗期間中に腐敗しない根切断部材2は、苗の根の伸長を阻害する物質または環境的な問題を引き起こす物質を環境中に放出せず、この点からも有利である。
【0018】根切断部材2は鉢体1の底部に接していなければならない。鉢体1の変形、根切断部材2の変形等の理由により、根切断部材2と鉢体1の底部との間に空間が生じると、該空間内において根絡みが生じる。本発明の育苗キットは、根切断部材により根切断部材の下側の根を切除して根絡みを解消することをその特徴としているので、根切断部材の上側で根絡みが生じることは本発明の育苗キットについて好ましくなく、鉢体の分離・分割を困難にしたり、鉢体の破損、苗の損傷等が生じたりする。従って根切断部材2は、鉢体1の底部との間に可能な限り空間を生じないことが要求される。
【0019】根切断部材2は、使用する鉢体、育苗する植物等により様々な形状を有することができ、中でも大きな影響を有するのは使用する鉢体の形状、特に鉢体の径である。根切断部材2は空隙部と空隙周縁部とによって定められるが、より広い空隙部の面積を有する根切断部材2が、該根切断部材2の下側に苗の根を伸長させる観点から好ましい。空隙部の面積の比率が小さくなりそして空隙周縁部の比率が大きくなると、根切断部材2の下側に苗の根が十分に伸長できなくなり、根切断部材2の上側で根絡みが生じるので好ましくない。また鉢体を移植時に引き出す際にも、空隙周縁部による摩擦抵抗のために、大きな力を必要とすることとなる。逆に空隙部の面積の比率が大きくなりそして空隙周縁部の比率が小さくなると、根切断部材2の下側への苗の根の伸長は容易となるが、根切断部材の強度が小さくなって根の切断時に空隙部の形状を保つことが困難になる。従って、そのような根切断部材を用いる育苗キットでの育苗では、移植に伴う鉢体の移動による根の切断が、根切断部材の変形によって不十分となる場合が生じる。以上を考慮すると、根切断部材2の外形としては、空隙部が少なくとも1mm2の面積を有し、そして該空隙部の面積は根切断部材の全面積に基づいて少なくとも10%を占めることが好ましく、根切断部材2の開口部の径については、用いる鉢体1の径の2分の1よりも小さいことが好ましい。しかしながら、鉢体1として連結部材によって連結され列状に引き出すことが可能な集合鉢体を使用する場合には、移植に伴って集合鉢体を引き出す際に集合鉢体の中切れを防止する観点から、根絡みを解消して鉢体1を列状に引き出すために要する力が鉢体同士を連結する力よりも小さくなければならない。そのためには、根切断部材2の空隙部は他の種類の鉢体を使用する場合より大きい面積を有することが好ましく、それによって根をより容易に切断することが可能となる。連続型の鉢体を使用する場合の空隙部の面積は、具体的には4mm2より大きいことが特に好ましい。また空隙部の平面形状は、矩形、菱形、六角形、円形等様々に考慮されることができる。根切断部材の作成の観点からは、空隙部の平面形状が四角形で有ることが好ましい。また、移植時に鉢体を取り出す方向に多角形の角が存在するように根切断部材を配置すると、移植に要する力をさらに減少させることができる。
【0020】根切断部材2の空隙周縁部の縁部6が鋭利な形状を有すると、より容易に根を切断することができるので非常に好ましい。即ち、空隙周縁部の断面が該根切断部材2の平面方向において両端がテーパーして、断面形状が図3(a)および(b)において表されるような紡錘形または菱形となると、空隙周縁部の縁部6が刃の役割をして根を切断し、その結果、鉢体同士の根絡みを解消するために要する力が著しく減少する。また根切断部材2の厚さは、根切断部材2の強度および根切りのし易さの観点から、平均厚さが0.5mm〜5mmであることが好ましい。根切断部材2は、例えば網状のものであって、絡み織りによる網、合成樹脂製の部分溶解性シート等が挙げられるが、特にそれらに制限されるものではない。また根切断部材2は、既に当業者に良く知られている様々な方法によって製造することができる。
【0021】育苗箱3は、該鉢体1を収容することができる容積を有する容器である。該育苗箱3を備えることにより、本発明の育苗キットは育苗期間中に容易に移動することができる。また該育苗箱3を使用して育苗を行っても、根切断部材2と該育苗箱3との間の空間に伸長した根を該根切断部材2によって切断することにより根絡みを解消することができ、本発明の効果が損なわれることはない。育苗箱3としては、木製、合成樹脂製等の従来技術において周知である育苗箱を用いることができ、特別な制限は存在しない。また育苗箱3は水抜き等の目的で小孔を有することもできる。それらの製造は従来技術の育苗箱の製造方法として既に知られている方法によって行うことができる。
【0022】本発明の育苗キットにおいては、根を実質的に透過しない根不透過性シートを根切断部材2の下側に敷設することができる。該根不透過性シートを敷設することにより、根の伸長力が強く、多数の根が激しく繁茂する植物の育苗においても、本発明の育苗キットにおける根切断部材と根不透過性シートとの相乗効果により、根絡みによる移植作業の問題を容易に解消することが可能となる。根不透過性シートは実質的に根を透過しないものであれば良く、その材料については木材、合成樹脂、ゴム等の様々な材料を使用し得る。またその製造方法については、従来良く知られている方法を用いることができる。
【0023】次に、育苗期間中の図1で表される本発明の育苗キットの断面を表す図2を参照して、本発明の育苗キットを使用する育苗について説明する。図2において、1〜3は図1と同じものを表し、4は培養土を、そして5は苗を表す。
【0024】育苗に際しては先ず始めに、鉢体1中に培養土4を詰め、そして該培養土4の上に育苗する対象植物を播種する。そしてその上にさらに培養土4を覆土して育苗する。育苗期間中に苗5の根は根切断部材2の下側に伸長し、該根切断部材2と育苗箱3との間の空間内で根絡みを生じる。その結果、鉢体1は隣接する鉢体と互いに根によって結合されて、個々の鉢体に分離・分割することが困難となる(図2(a)参照)。
【0025】しかしながら、育苗終了後に移植を行うに伴い鉢体1を移動させると、根切断部材2により苗5の根が切断されて、鉢体間での根絡みが解消される。一方、該根切断部材2の下側に伸長した根は、該根切断部材2と育苗箱3との間の空間内に留まる(図2(b)参照)。この際に要する力は、苗5の根の切断に適した根切断部材の存在により、該根切断部材2が存在しない場合と比較して非常に小さくなる。
【0026】以上のように、本発明の育苗キットは育苗期間中の根絡みを解消するために非常に有効である。また、本発明の育苗キットに、従来技術においてすでに知られている根絡みを防止する手段をさらに設けることも可能である。一例を挙げると、根の伸長力が強く多数の根が繁茂する植物、例えばエダマメ、スイートコーン等の根絡みによる移植作業の問題を解消する目的で、本発明の育苗キットにおける鉢体、育苗箱、根不透過性シート等に根の伸長を抑制する薬剤、例えば水酸化第二銅を塗布することができる。
【0027】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明の育苗キットをさらに説明する。
実施例1紙製の連続型集合鉢体(登録商標:チェーンポット、日本甜菜製糖株式会社製、商品名CP303、寸法:径30mm、高さ30mm)を専用展開具で展開してハニカム状としたものの底部に、空隙部の形状が一辺10mmの略正方形(空隙部の面積=100mm2)、厚さが1mm、空隙部の面積が根切断部材の全面積に基づいて80%であるポリエチレン製ネットを275mm×575mmの寸法に切り出して根切断部材としたものを敷設し、そして双方を接触させた。該鉢体と該根切断部材とを底面積280mm×580mm、深さ40mmの上部が開口したポリエチレン製容器中に収容して本発明の育苗キットとした。上記の育苗キットを使用して育苗を行った。始めに、該鉢体に培養土(商品名:ニッテン葱培土、日本甜菜製糖株式会社製)を詰め、そしてネギコート種子(品種:錦蔵)を鉢体当り3粒づつ播種して覆土した。育苗は育苗ハウス内で、一般の管理法に準じた条件に従って行った。また対照として、根切断部材を使用せずに同様の育苗を行い比較試験を実施した。60日間育苗した後の鉢体を、連続型集合鉢体用移植機(商品名:ぴっぱりくん、HP−6型、日本甜菜製糖株式会社製)を使用して移植した。本発明の育苗キットを用いた育苗では、育苗後の移植の際に容易に鉢体を引き出して個々の鉢体に分離・分割することができ、移植作業をまったく支障なく行えた。それに対して、根切断部材を使用せずに行った育苗では、鉢体を引き出すために大きな力が必要となり連続鉢体の連結の切断が多発し、安定した移植作業はできなかった。また本発明の育苗キットを用いた育苗と、根切断部材を使用せずに行った育苗の間で、苗の育成状態に差異は見られなかった。
【0028】実施例2ないし6紙製の連続型集合鉢体(登録商標:チェーンポット、日本甜菜製糖株式会社製、商品名CP253、寸法:径25mm、高さ30mm)を専用展開具で展開してハニカム状としたものの底部に、空隙部の形状が以下の表に表される寸法の一辺からなる略正方形、厚さが以下の表に表される値である5種のポリエチレン製ネットを275mm×575mmの寸法に切り出して根切断部材としたものを敷設し、そして双方を接触させた。該鉢体と該根切断部材とを底面積280mm×580mm、深さ40mmの上部が開口したポリエチレン製容器中に収容して本発明の育苗キットとした。上記の育苗キットを使用して実施例1と同様な条件で育苗を行った。60日間育苗した後、各実施例について鉢体を列状に引き出す際の抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【表1】

実施例2においては、大きな引出抵抗のために鉢体の中切れが生じた。一方、実施例3〜6では根が容易に切断されて根絡みが解除され、その結果、鉢体の中切れは生じなかった。苗の引き出しの抵抗は、空隙部の寸法が大きければ大きいほど鉢体の引出抵抗は小さくなる傾向が認められた。
【0029】実施例7ないし9先の請求項において使用した連続型集合鉢体・CP253よりも個々の鉢体間の連結強度を増した連続型集合鉢体(登録商標:チェーンポット、日本甜菜製糖株式会社製、商品名BP303、寸法:径30mm、高さ30mm)を専用展開具で展開してハニカム状としたものの底部に、空隙部の形状が以下の表に表される寸法の一辺からなる略正方形、厚さが以下の表に表される値である3種のポリエチレン製ネットを275mm×575mmの寸法に切り出して根切断部材としたものを敷設し、そして双方を接触させた。さらに該根切断部材の下側に根不透過性シート(商品名:クラパピー)を敷設し、そしてその後、鉢体、根切断部材および根不透過性シートを底面積280mm×580mm、深さ40mmの上部が開口したポリエチレン製容器中に収容して本発明の育苗キットとした。上記の育苗キットを使用して、育苗植物としてキャベツ(品種:若峰、タキイ種苗製)を採用したことを除いて実施例1と同様な条件で育苗を行った。30日間育苗した後、各実施例について鉢体を列状に引き出す際の抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

全ての実施例において、根が容易に切断されて根絡みは解除された。鉢体は中切れを生じることなく引き出すことができた。苗の引き出しの抵抗は、空隙部の寸法が大きければ大きいほど鉢体の引出抵抗は小さくなる傾向にあった。
【0030】実施例10実施例1の育苗キットに加えて、育苗箱と接する表面に根伸長阻害剤(水酸化第二銅)を塗布した根不透過性シート(商品名:クラパピー)を根切断部材の下側に敷設して、本実施例の育苗キットとした。上記の育苗キットを使用して、育苗植物としてエダマメ(品種:サッポロミドリ、雪印種苗製)を採用したことを除いて実施例1と同様な条件で育苗を行った。20日間育苗した後の鉢体を、連続型集合鉢体用移植機(商品名:ぴっぱりくん、HP−6型、日本甜菜製糖株式会社製)を使用して移植した。本実施例の態様では、育苗植物として根の伸長力が強く多数の根が繁茂して根絡みの解消が困難であるエダマメを採用したにもかかわらず、本発明の育苗キットと根伸長抑制剤との相乗効果により、鉢体を中切れなく容易に引き出すことができた。
【0031】
【発明の効果】本発明の育苗キットを使用することにより、水稲、野菜、花卉等の育苗において、育苗終了後の移植時に根切断部材によって苗の根が切断されて鉢体間の根絡みが解消され、鉢体の分離・分割が容易になる。このため移植の作業性が著しく向上する。また鉢体として連続型の集合鉢体を使用する場合には、移植に伴う列状の引き出しに要する力が減少し、集合鉢体の中切れが防止される。これにより連続型の集合鉢体用の移植機のトラブルが減少するだけでなく、移植姿勢の安定化、鉢体間距離の均等化等の効果も達成される。さらに本発明の育苗キットにおいて用いる根切断部材を育苗期間中に腐敗しない材料から製造すると、根切断部材を繰り返し使用することが可能となり、経済的にも有利になる。
【出願人】 【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
【出願日】 平成12年6月6日(2000.6.6)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫 (外3名)
【公開番号】 特開2001−346448(P2001−346448A)
【公開日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願番号】 特願2000−168942(P2000−168942)