| 【発明の名称】 |
海苔処理剤および処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】安部 敏男
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| 【要約】 |
【課題】養殖海苔に混生し海苔の成長を阻害したり、海苔の品質低下の原因となるアオノリ、ケイ藻等の雑藻の駆除剤および駆除方法、および海苔に寄生し生育を阻害するあかぐされ病、針状細菌症等の病害の防除剤、もしくは予防剤またはこれらの防除剤を用いる病害の防除方法もしくは予防方法、または海苔活性化方法を提供する。
【解決手段】有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有し、かつ比重が1.030未満の溶液を海苔処理剤として使用する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有する溶液であり、かつ溶液比重が1.030未満であることを特徴とする海苔処理剤。 【請求項2】 有機カルボン酸の含量が0.05〜0.5%であり、塩化第二鉄の含量が0.02〜0.3%である、請求項1記載の海苔処理剤。 【請求項3】 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボン酸溶液および2〜30%の塩化第二鉄溶液を含有する溶液を希釈して得られる海苔処理剤である、請求項1または2に記載の海苔処理剤。 【請求項4】 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボン酸溶液からなるA液および2〜70%の塩化第二鉄溶液からなるB液を希釈・混合して得られる海苔処理剤である、請求項1または2に記載の海苔処理剤。 【請求項5】 有機カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、酒石酸およびグリコール酸からなる群より選ばれる有機カルボン酸である、請求項1〜4いずれか1項に記載の海苔処理剤。 【請求項6】 請求項1〜5いずれか1項に記載の海苔処理剤に海苔を浸漬するか、または該海苔処理剤を海苔に散布することを特徴とする海苔処理方法。 【請求項7】 請求項6記載の方法により得られる海苔。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、海苔、特に養殖海苔の処理剤および処理方法に関する。具体的には養殖海苔に混生し海苔の成長を阻害したり、海苔の品質低下の原因となるアオノリ、ケイ藻等の雑藻の駆除剤および駆除方法、および海苔に寄生し生育を阻害するあかぐされ病、針状細菌症等の病害の防除剤、もしくは予防剤またはこれらの防除剤を用いる病害の防除方法もしくは予防方法、または海苔活性化方法に関する。 【0002】 【従来の技術】養殖海苔には、緑藻類に属するスジアオノリ(Enteromorpha prolifera)、ヒラアオノリ(E. compressa)およびケイ藻類に属するリクモフォーラ(Licmophora flabellata)、シネドラ属(Synedra. sp)等の雑藻類、フハイカビ(Pythium)属菌を病原菌とする、あかぐされ病、フクロカビ(Olpidiopsis)属菌を病原菌とする壷状菌病および細菌類を病原菌とする緑斑病、擬似しろぐされ病および針状細菌症等多くの雑藻、病害がある。 【0003】これらの雑藻、病害の駆除、防除法として、雑藻類および病原菌と海苔の乾燥に対する抵抗性の差を利用して、長時間海苔網を空中へ吊り上げて干出をおこなう方法、およびこれら雑藻、病原菌と海苔の冷凍耐性の差を利用して、一時的に−20℃前後の冷凍処理をおこなう方法が従来より行われている。しかし、これらの方法では雑藻類、病原菌の種類によっては海苔との抵抗性の差が明確でないものもあり、十分な効果が上げられないこともある。また、干出を長く取ると海苔の成長も止まり、期待する収穫を上げることが難しい点もある。 【0004】これらの欠点を補う方法として、雑藻類および病原菌と海苔の酸に対する抵抗性の差を利用する酸処理技術が開発され(特公昭56−12601)、一般的な技術として実施されている。しかし、従来から実施されていたリンゴ酸、クエン酸等の有機酸単体による処理は長い処理時間と多大な労力を必要とするものであった。近年の海苔養殖従事者の高齢化や海苔製品価格低迷に対処するため、養殖作業の省力化が必要とされ、その必要性から多くの研究がなされ(特昭60−13648、特開昭60−248121、特開平1−279805、特開平5−139913、特開平7−53306、特開平7−308136、特開平9−40511、特開平9−175910、特開平11−193201)、一部は実用化されている。しかしながら、これらの方法は依然として過大な労力を要したり、処理薬剤による危険を伴ったりするため、より効果が高く、作業安全性に優れた防除剤および防除方法の開発が切望されている。 【0005】一方、海苔の処理剤には効力、作業性の性能が求められるのはもちろんであるが、生産された海苔の食品としての安全性、養殖作業従事者の健康、安全性の確保もまた重要である。海苔処理剤の処理効率を高めるためには、処理剤の作用機作から処理液の酸性度を強めればその目的は達せられる。しかし、現在業界でその使用が認められている有機酸では、水素イオンの解離度とコストの面からその酸性度増強にはおのずと限界がある。 【0006】塩酸、硫酸等の強酸を使用すればその酸性度を強めることは可能であるが、これら強酸類は一般に劇物に指定されており、業界ではその使用を禁止されている。この解決策の一つとして、酸に塩化ナトリウム等の無機塩を添加し高張液として処理効率を上げる技術が報告されている(特開平9−201180)。該技術は優れた技術であるが、処理効果を得るためには処理液の溶液比重が1.03以上となるように処理液に対して数%〜10%の塩を添加しなければならない。また、比重が1.20以上となるように塩を添加すると、逆に塩により海苔が障害を受ける可能性がある。このように処理効果を得るためには処理液の比重を一定に保つ必要があるが、連続作業で行われる処理作業中に多量の塩を投入してその濃度を一定に保つのはかなり難しい技術であり、作業効率の面からも難点のある技術である。 【0007】以上の現状より、業界ではより安全性が高く、かつ効力、作業性に優れた処理剤、処理方法の開発が切望されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、養殖海苔に混生するアオノリ、ケイ藻等の雑藻駆除およびあかぐされ病等の各種病害を効果的、効率的かつ安全に防除もしくは予防する方法および処理剤を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行い、有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有し、かつ比重が1.030未満の溶液が海苔処理剤として優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)に関する。 【0010】(1) 有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有する溶液であり、かつ溶液比重が1.030未満であることを特徴とする海苔処理剤。 (2) 有機カルボン酸の含量が0.05〜0.5%であり、塩化第二鉄の含量が0.02〜0.3%である、上記(1)の海苔処理剤。 (3) 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボン酸溶液および2〜30%の塩化第二鉄溶液を含有する溶液を希釈して得られる海苔処理剤である、上記(1)または(2)の海苔処理剤。 【0011】(4) 海苔処理剤が、5〜50%の有機カルボン酸溶液からなるA液および2〜70%の塩化第二鉄溶液からなるB液を希釈・混合して得られる海苔処理剤である、上記(1)または(2)の海苔処理剤。 (5) 有機カルボン酸が、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、酒石酸およびグリコール酸からなる群より選ばれる有機カルボン酸である、上記(1)〜(4)いずれか1つの海苔処理剤。 【0012】(6) 上記(1)〜(5)いずれか1つに記載の海苔処理剤に海苔を浸漬するか、または該海苔処理剤を海苔に散布することを特徴とする海苔処理方法。 (7) 上記(6)の方法により得られる海苔。 本発明において、「海苔処理」とは、養殖海苔に混生し海苔の成長を阻害したり、海苔の品質低下の原因となるアオノリ、ケイ藻等の駆除、および海苔に寄生し生育を阻害するあかぐされ病、針状細菌症等の病害の防除、もしくは予防または海苔活性化を目的として、海苔を本発明の溶液に浸漬したり、本発明の溶液を海苔に散布したりする行為を示す。 【0013】ここで、「病害の防除もしくは予防」とは、海苔病害の治療または海苔が病害に冒されるのを予防することを意味する。また、「海苔の活性化」とは、海苔の成長促進、海苔の色、艶などの品質を向上させることを意味する。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明の海苔処理剤は、有機カルボン酸および塩化第二鉄を含有する溶液であり、かつ溶液の比重が1.030未満の溶液であればいずれの溶液でも使用することができる。該海苔処理剤としては、例えば、5%〜50%の有機カルボン酸および2%〜30%の塩化第二鉄の混合溶液からなる処理剤を100〜800倍の海水で稀釈することにより得られる0.05〜0.5%の有機カルボン酸および0.02〜0.3%の塩化第二鉄を含有する溶液、または5%〜50%の有機カルボン酸を含むA溶液、および2%〜70%の塩化第二鉄を含むB溶液をそれぞれ稀釈混合して得られる0.05〜0.5%の有機カルボン酸および0.02〜0.3%の塩化第二鉄を含有する溶液をあげることができる。 【0015】本発明の処理剤が有効に作用するためにはpHは酸性であればよいが、pH 1.5〜3.0であることが好ましい。なお、本発明の処理剤には、海苔の栄養成分として塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アミノ酸等を添加してもよい。 【0016】本発明の処理剤の比重は1.030未満、好ましくは1.026以下である。本発明に用いる有機カルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、酒石酸またはグリコール酸等が用いられ、好ましくはクエン酸、乳酸、リンゴ酸が用いられる。有機カルボン酸の処理剤中の濃度は0.05〜0.5%、好ましくは0.1〜0.4%である。 【0017】本発明の処理剤の調製に用いる塩化第二鉄は、無水物、各種水和物のいずれも用いることができる。六水和物は溶解し易いため、該処理剤を調製する上で適している。塩化第二鉄の処理剤中の濃度は0.02〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%である。本発明の溶液としては、水溶液であることが好ましい。水溶液にするためには水、塩水、海水、緩衝液等を用いることが出来るが、海水を用いることがとりわけ好ましい。緩衝液としてはクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等があげられる。 【0018】以下に海苔処理方法について述べる。海苔処理方法としては、上記処理剤に海苔を浸漬、または該処理剤を海苔に散布する処理方法があげられる。浸漬とは箱船等の容器中に調製した処理剤稀釈液の中に、海苔または海苔の着生した海苔網を手またはローラーで手繰り込み、30秒〜20分間漬け込んで処理することを言う。 【0019】また、散布とは潜り船等の専用処理船による散布処理と、支柱に張って養殖状態の海苔網が干出状態の時に、処理剤稀釈液を海苔網に散布することを言う。上記処理は従来の海苔処理で行われている通常の温度下で行うことができ、好ましくは7℃〜22℃、より好ましくは8℃〜18℃で行う。上記の方法で処理した後、海苔網は直ちに海水中に戻し、通常の方法で養殖を継続する。以下に実施例および参考例で本発明を具体的に説明する。 【0020】 【実施例】実施例 1クエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)のみ30gの区、クエン酸一水和物30gに塩化ナトリウム(NaCl,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化カルシウム(CaCl2・2H2O,片山化学工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化アンモニウム(NH4Cl,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化亜鉛(ZnCl2,片山化学工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化第一鉄(FeCl2・4H2O,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区、クエン酸一水和物30gに塩化第二鉄(FeCl3・6H2O,和光純薬工業株式会社製)10gを加えた区それぞれに70mlまたは60mlの水を加えて100gとして溶解し、8種類の試験原溶液を調製した。次いで、それぞれの試験原溶液を海水で100倍、200倍、400倍に稀釈し24種類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。 【0021】次いで該試験溶液のそれぞれを恒温槽中で水温10℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8cmのアサクサ海苔の葉体(以下、単に海苔葉体と言う)をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより浸漬処理を行った。浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。 【0022】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第1表に示す。 【0023】 【表1】
【0024】クエン酸と各種塩化物の組み合わせによる試験溶液によるあかぐされ病防除試験を行った結果、クエン酸単独区、クエン酸と塩化ナトリウム併用区、クエン酸と塩化マグネシウム併用区およびクエン酸と塩化アンモニウム併用区では100倍稀釈区においてもあかぐされ菌の防除効果は認められなかった。また、クエン酸と塩化カルシウム併用区、クエン酸と塩化亜鉛併用区およびクエン酸と塩化第一鉄併用区では、100倍稀釈区においてのみあまり強くないが、あかぐされ菌の抑制効果が見られた。しかし、200倍以上の稀釈区ではあかぐされ菌の防除効果は認められなかった。 【0025】一方、クエン酸と塩化第二鉄の併用区では強いあかぐされ菌防除効果がみとめられ、100倍および200倍稀釈いずれにおいてもあかぐされ菌の完全殺菌が見られ、400倍稀釈区においても抑制効果が認められた。また、いずれの区においても海苔葉体に傷害は認められなかった。 実施例 2クエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)を40%,20%,10%,5%,2.5%,0%の6濃度と、塩化第二鉄六水和物(和光純薬工業株式会社製)を20%,10%,5%,2.5%,0%の5濃度の組み合わせにより、第2表に示す30種類の試験原溶液を調製した。該溶液をそれぞれ海水で100倍に希釈し、30種類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。 【0026】各試験溶液中のクエン酸濃度、塩化第二鉄濃度およびpHを第2表に示した。 【0027】 【表2】
【0028】第2表に示した試験溶液のそれぞれを恒温槽中で水温12℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより浸漬処理を行った。浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。 【0029】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第3表に示す。 【0030】 【表3】
【0031】クエン酸のみの試験溶液ではクエン酸濃度0.4%の試験溶液のみにあかぐされ菌の抑制効果が見られた。塩化第二鉄のみの試験溶液では0.2%の試験溶液のみにあかぐされ菌の殺菌効果が見られた。しかし、0.05%以上の濃度試験溶液では海苔葉体の傷害が見られた。 【0032】一方、クエン酸と塩化第二鉄を併用した試験溶液では、クエン酸濃度が0.025%の場合でも、塩化第二鉄濃度が0.1%以上であれば、防除効果が認められた。逆に、塩化第二鉄の濃度が0.025%の場合でも、クエン酸濃度が0.2%以上であれば防除効果が認められた。このことから、クエン酸と塩化第二鉄の相乗効果が確認された。また、塩化第二鉄単用で見られた海苔葉体に対する傷害もクエン酸を併用することによって認められなくなり、薬害の低減が認められた。 実施例 3クエン酸一水和物30部と塩化第二鉄六水和物20部を50部の水に溶解し、クエン酸と塩化第二鉄の混合溶液からなる試験原溶液を調製した。 【0033】該試験原溶液を海水で100倍、200倍、400倍および800倍に稀釈した4種類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。該試験溶液のそれぞれを恒温槽中で水温18℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより浸漬処理を行った。 【0034】処理を終了したそれぞれの試験溶液は、次に水温15℃の恒温槽中で調温した後、同様の方法であかぐされ菌に感染した海苔葉体の浸漬処理を行った。さらに、同試験液を12℃、さらに9℃に調温して同様の処理をおこなった。浸漬処理後の海苔葉体は、それぞれ処理直後に清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。 【0035】培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定した。結果を第4表に示す。 【0036】 【表4】
【0037】18℃の処理区では、100倍〜800倍稀釈区の全てで高いあかぐされ防除効果が見られた。しかし、100倍稀釈区では海苔葉体にも傷害が認められた。15℃から9℃の処理区では、いずれも100倍〜400倍稀釈区で高いあかぐされ防除効果が見られ、海苔葉体の傷害も認められなかった。しかし、800倍稀釈区では防除効果が不完全で、一部にあかぐされ菌の生残が認められた。 実施例 4上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で100倍に稀釈した液、およびクエン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)を海水で溶解して0.5%溶液とした2種類の試験溶液を調製した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。次にそれぞれの試験溶液を恒温槽中で12℃に調温した後、あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に、30秒間、1分間、2分間、4分間浸漬することにより浸漬処理をおこなった。 【0038】浸漬処理後の海苔葉体は、清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定した。 【0039】試験結果を第5表に示す。 【0040】 【表5】
【0041】試験原溶液100倍稀釈液では1分間以上の処理であかぐされ菌を完全に殺菌することができ、また、4分間処理でも海苔葉体に傷害は認められなかった。一方、クエン酸0.5%溶液では2分間以下の処理では全くあかぐされの防除効果は認められず、4分間処理でやっと抑制効果が認められる程度であった。このことから、本試験原溶液は従来の有機酸のみの処理よりも短時間で防除効果を上げることができることが示された。 実施例 5上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で、100倍、200倍、400倍、600倍の4段階に稀釈し、それぞれの溶液を恒温槽中で18℃に調温し、試験溶液を作成した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。 【0042】次に、該試験溶液のそれぞれににスジアオノリおよび葉長約2cmの海苔幼芽を同時に投入し、7分間の浸漬処理を行った。処理終了後、スジアオノリおよび海苔幼芽は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた18℃恒温培養槽中で2日間静置培養を行った。なお、対照区として無処理区を設けた。 【0043】培養終了後、スジアオノリは緑色色素の脱色の有無で生死を判定した。また、海苔幼芽については、0.2%エリスロシン溶液による染色度合いで、その傷害の程度を判定した。結果を第6表に示した。 【0044】 【表6】
【0045】100、200、400倍稀釈の処理区でスジアオノリは完全に脱色枯死が見られたが、600倍稀釈区では、根部が生き残った。海苔幼芽は、100倍稀釈区では大きな障害を受けたが、200倍以上の稀釈区では無処理対照区と差が無く、傷害は無いものと考えられた。 実施例 6クエン酸一水和物30部と塩化第二鉄六水和物10部および水60部、DLリンゴ酸(和光純薬工業株式会社製)30部と塩化第二鉄六水和物10部および水60部、90%乳酸(和光純薬工業株式会社製)33部と塩化第二鉄六水和物10部および水57部、酢酸(和光純薬工業株式会社製)30部と塩化第二鉄六水和物10部および水60部よりなる4種類の試験原溶液を調製した。 【0046】該試験原溶液を海水で、100倍、200倍、400倍、および800倍に稀釈し、合計16種類の試験溶液を作り、12℃の恒温槽中でそれぞれ12℃に調温した。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。あかぐされ菌に感染した葉長約8cmの海苔葉体をそれぞれの試験溶液に5分間浸漬することにより浸漬処理を行った。 【0047】浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で4日間静置培養を行った。培養終了後、海苔葉体を顕微鏡で観察し、あかぐされ菌の生存、死滅および海苔葉体の試験溶液による被傷害度を確認して防除効果を判定した。 【0048】結果を第7表に示す。 【0049】 【表7】
【0050】クエン酸30%と塩化第二鉄10%からなる試験原溶液および、乳酸30%と塩化第二鉄10%からなる試験原溶液では、いずれも100倍〜400倍希釈区であかぐされ菌を完全に殺菌し、両試験原溶液は、ほぼ同等のあかぐされ病防除効果を示した。DLリンゴ酸30%と塩化第二鉄10%からなる試験原溶液では、100倍および200倍希釈ではあかぐされ菌を完全殺菌したが、400倍希釈では防除効果が認められなかった。 【0051】酢酸30%と塩化第二鉄10%からなる試験原溶液では、100倍〜400倍希釈であかぐされ菌を完全に殺菌し、また、800倍希釈でもある程度の菌の抑制効果が見られ、試験した4試験原溶液の中では最も強い作用を示したが、100倍希釈では海苔葉体に傷害が見られ、海苔に対する薬害も強かった。 実施例 7上記実施例3で調製した試験原溶液を海水で25倍、50倍、100倍に稀釈した溶液、および塩化第二鉄六水和物(和光純薬工業株式会社製)を海水で溶解して0.8%、0.4%、0.2%とした6種類の試験液を調製し、それぞれの溶液比重を測定した。 【0052】次いで、該試験液を恒温槽中で12℃に調温した後それぞれの試験液に葉長約5cmの海苔葉体を1分間浸漬処理を行った。また、対照区として海水のみの比重測定、浸漬処理を行った。浸漬処理後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験溶液を除去した後、30mlの清浄海水を満たした径10cmのガラスシャーレに各試験区ごとに収容して、1日10時間の照明を与えた15℃恒温培養槽中で24時間静置培養を行った。 【0053】培養終了後の海苔葉体は0.2%エリスロシン溶液で染色を行い、その染色度合いにより傷害程度を調べた。結果を第8表に示した。 【0054】 【表8】
【0055】本発明の試験原溶液は通常100倍以上の稀釈を想定して調製したものであり、100倍稀釈時の溶液比重は1.025で、稀釈に使用した海水の比重1.024に比べその比重上昇はわずかであった。50倍稀釈では1.028で、この濃度付近から海苔の細胞に傷害が認められた。試験原溶液50倍稀釈液中の塩化第二鉄濃度は0.4%であり、第8表に示したデータから、海苔細胞が傷害を受けるのは塩化第二鉄濃度によるものと考えられ、その限界濃度0.3〜0.4%の間にあるものと考えられる。 【0056】海苔養殖が行われる海域の海水比重は一般に1.018〜1.025とされており、このことから本発明の海苔処理剤を使用する場合、処理剤が海苔の傷害濃度に達しないように、その溶液比重を少なくとも1.030未満に止める必要がある。 実施例 8海苔養殖漁場より採取した海苔葉体を屋外太陽光下に設置した500リットル容透明プラスチック水槽中に栄養無添加の天然海水とともに収容し、14日間通気攪拌培養を行って栄養不足による退色海苔葉体を作成した。 【0057】該退色海苔を用いて、上記実施例3で調製した試験原溶液の200倍稀釈液、およびクエン酸0.4%溶液を用いて12℃、5分間の浸漬処理を行った。各試験溶液の比重はいずれも1.030未満であった。処理終了後の海苔葉体は清浄海水で十分に洗浄して試験液を除去し、それぞれ100リットル容透明プラスチック水槽に海水と共に収容し屋外太陽光下で通気攪拌培養を行った。この時の培養液には硝酸ナトリウムとリン酸ナトリウムを加え、窒素とリンがそれぞれ4.4mg/Lおよび0.5mg/Lとなるように栄養塩補強を行った。 【0058】海苔の黒紫色の色調はクロロフィル、カロチノイド、フィコエリスリン、フィコシアニン等の色素によるとされ、色艶の良い高級海苔にはこれら色素が多く含まれ、栄養不足で退色した海苔には少ないと言われる。それで、色艶の簡便評価法として分析が比較的簡単なクロロフィル量の測定が一般によく用いられるため、本実験でもクロロフィルの測定を行った。 【0059】実験中、浸漬処理直前、浸漬処理後培養3日後、7日後および14日後に培養海苔葉体の一部を採取し、それぞれについてクロロフィルaの量を測定した。クロロフィルa測定方法は、海苔葉体を真水で洗浄後90%アセトンで色素を抽出し分光光度計を使用して665nm、645nmおよび630nmの吸光値を測定し、次式によりクロロフィルaの値を求めた。 【0060】クロロフィルa(μg/ml)=11.6E665−1.31E645−0.14E630結果を第9表に示す。 【0061】 【表9】
【0062】処理後培養3日後には色素の増加が認められ、7日後でピークに達した。クロロフィル含量はクエン酸処理の区よりも試験原溶液稀釈液で処理した区が明らかに多かった。また、14日後には栄養塩枯渇により再び退色が見られたが、退色の程度は試験原溶液稀釈液処理の区が軽微で退色しにくかった。 【0063】 【発明の効果】本発明の海苔処理剤および処理方法によれば、従来のものよりも低濃度で、しかもより短時間で効果的に海苔の雑藻駆除、およびあかぐされ等の病害を防除することができ、作業効率の向上、および確実な駆除、防除が可能となる。また、養殖漁場の栄養塩不足によって起こる、海苔の退色による品質低下の防止効果も期待される。 【0064】さらに、処理剤の成分は食品添加物に指定されている有機酸と鉄化合物のみであるため安全性の高い処理剤を提供できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001029 【氏名又は名称】協和醗酵工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年10月18日(2000.10.18) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−340034(P2001−340034A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月11日(2001.12.11) |
| 【出願番号】 |
特願2000−317752(P2000−317752) |
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