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【発明の名称】 ピ−マンの二品種側枝多本仕立苗
【発明者】 【氏名】佐藤 貞一

【氏名】市橋 映二

【氏名】高岡 英治

【氏名】佐山 春樹

【氏名】石村 英二

【要約】 【課題】容積の小さいサイズのポットを用い、少ない培養土、少ない床面積で、短い育苗時間で、大量に作出することができ、また接木活着率の高いピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得る。

【解決手段】子葉及び複数の本葉を有する二品種の穂木苗を使用し、それぞれ子葉と第一本葉の間の茎を1箇所切断し、下段部と上段部に分け、その一方の品種の下段部に他方の品種の上段部を接木し、その接木で残った一方の品種の上段部を他方の品種の下段部に接木して、接木苗を作成し、いずれの接木苗も上段部の第二本葉より上側を摘芯し、下段部及び上段部のそれぞれの子葉及び本葉の付根から側枝を発生させ伸長させてピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得る。また、子葉及び複数の本葉を有する二品種の穂木苗と、台木苗を使用し、該穂木苗の子葉と第一本葉の間及び子葉の直下をそれぞれ切断して、子葉を有する穂木を品種毎に作成し、これらを台木苗に直列に接木し、それぞれの品種の子葉の付根から側枝を発生させ伸長させてピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】子葉及び複数の本葉を有する二品種の穂木苗を使用し、それぞれ子葉と第一本葉の間の茎を1箇所切断し、下段部と上段部とに分け、その一方の品種の下段部に他方の品種の上段部を接木し、その接木で残った一方の品種の上段部を他方の品種の下段部に接木して、接木苗を作成し、いずれの接木苗も上段部の第二本葉より上側を摘芯し、下段部及び上段部のそれぞれの子葉及び本葉の付根から側枝を発生させて伸長させてなるピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【請求項2】子葉及び複数の本葉を有する二品種の穂木苗と、台木苗を使用し、該穂木苗の子葉と第一本葉の間及び子葉の直下をそれぞれ切断して、子葉を有する穂木を品種毎に作成し、これらを台木苗に直列に接木し、それぞれの品種の子葉の付根から側枝を発生させて伸長させてなるピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【請求項3】使用する穂木苗が、本葉2〜4枚期の幼苗であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【請求項4】二品種の穂木苗が、一つの果実色を有する収穫物が得られる品種の穂木苗と、これとは異なる果実色を有する収穫物が得られる品種の穂木苗との組合せである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【請求項5】上段部の摘芯を接木前、接木中又は順化の時期に行って得られる請求項1〜請求項4のいずれかに記載のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【請求項6】二品種の穂木苗及び台木苗のうち少なくとも一種が、キユウリモザイクウイルスの弱毒ウイルスを接種したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、一株で色や、形状の異なる二種類の果実を多量に収穫できる接木苗、とくに容積の小さいサイズのポットを用い、少ない培養土、少ない床面積で、短い育苗時間で、大量に作出することができ、また接木活着率の高いピ−マンの二品種側枝多本仕立苗に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図3に示す如く、かなり成長した台木苗を用い、この成長点を摘芯し、葉の付根から出る腋芽をとり葉腋にツマ楊枝で穴をあけ、いろいろな品種の苗を胚軸の先を尖らせてさし込み、一株に橙、桃、黄のトマトを成らせることのできるトマト苗の作出法が知られている(森俊人著「まるごと楽しむトマト百科」社団法人、農山漁村文化協会、’96年9月20日発行、第28〜29頁参照)。しかし、一株に異なる品種の果実を成らせることのできるピ−マン苗の作出法は知られていない。
【0003】一方、図3に示すトマト苗の作出法において、トマトに代えてピ−マンを用いようと努力しても、台木として、かなり成長した苗を使用するので、大苗にするための大きなサイズのポットを必要とし、それに伴い培土量が多くなり、床面積のスペースが広く、育苗期間も長くかかり、また穂木を台木苗の葉の付根に設けた穴に差し込む場合、差込穴の幅、深さ加減で台木苗と穂木の密着具合が左右され、接木活着率が悪い問題を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、容積の小さいサイズのポットを用い、少ない培養土、少ない床面積で、短い育苗時間で、大量に作出することができ、また接木活着率の高いピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、赤ピ−マン又は黄色ピ−マンを収穫できるピ−マン苗(穂木苗)を、それぞれ容積の小さなセルを碁盤の目状に並んで有する育苗トレイで別々に大量に育て、そのまま育苗トレイ上で、子葉及び複数の本葉を有する苗に育苗した。そして、それぞれ子葉と第一本葉の間の茎を1箇所切断し、下段部(台木苗)と上段部(穂木)に分け、その赤ピ−マンの品種の下段部(台木苗)に黄色ピ−マンの品種の上段部(穂木)を接木し、その接木で残った赤ピ−マンの品種の上段部(穂木)を黄色ピ−マンの品種の下段部(台木苗)に接木して、接木苗を作成し、いずれの接木苗も上段部(穂木)の第二本葉より上側の茎を摘芯し、下段部(台木苗)及び上段部(穂木)のそれぞれの子葉、第一本葉及び第二本葉の付根から側枝を発生させて伸長させた。また子葉及び複数の本葉を有する赤ピ−マンの穂木苗及び黄色ピ−マンの穂木苗と、台木苗を育苗し、該穂木苗の子葉と第一本葉の間及び子葉の直下をそれぞれ切断して、子葉を有する、赤ピ−マンの穂木及び黄色ピ−マンの穂木を作成し、これらを台木苗に直列に接木し、それぞれの穂木の子葉の付根から側枝を発生させて伸長させた。そして、このように処理することにより、一株のピ−マン苗で二品種の果実、例えば赤ピ−マンと黄色ピ−マンが成るピ−マン苗が簡便に、効率良く、しかも大量生産できることを知った。また育苗トレイ上で接木ができるので接木の効率が高く、またキュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルスを接種しようとする場合、穂木苗及び台木苗のうち一つの苗に接種するだけでよいので、通常の接木苗作成の1/2、又は1/3の使用量で済み、さらに狭いガーデンでの菜園であっても一株の苗で二品種の果実、例えば赤色果実、黄色果実を得ることができ、さらに菜園の彩りを鮮やかにすることができるピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を提供できることを知った。
【0006】本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであって、即ち、本発明は子葉及び複数の本葉を有する二品種のピ−マン苗を使用し、それぞれの子葉と第一本葉の間の茎を1箇所切断し、下段部と上段部に分け、その一方の品種の下段部に他方の品種の上段部を接木し、その接木で残った一方の品種の上段部を他方の品種の下段部に接木して、接木苗を作成し、いずれの接木苗も上段部の第二本葉より上側を摘芯し、下段部及び上段部のそれぞれの子葉及び本葉の付根から側枝を発生させて伸長させてなるピ−マンの二品種側枝多本仕立苗である。また本発明は、子葉及び複数の本葉を有する二品種の穂木苗と、台木苗を使用し、該穂木苗の子葉と第一本葉の間及び子葉の直下をそれぞれ切断して、子葉を有する穂木を品種毎に作成し、これらを台木苗に直列に接木し、それぞれの品種の子葉の付根から側枝を発生させて伸長させてなるピ−マンの二品種側枝多本仕立苗である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面に基づき本発明のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗の作出法を具体的に説明する。
【0008】図1は、本発明のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗の作出法を示す概略説明図である。本発明における二品種側枝多本仕立苗の品種の組合せとしては、熟した果実の色の違い、果実の形状の違い、果実の熟する時期の違いなどが考えられ、例えば熟した果実の色の異なる組合せとして、サカタのタネ社のソニア・ゴ−ルドとソニア・レッド、タキイ種苗社のワンダ−ベルとゴ−ルデンベル、日本デルモンテ社のオレンジキッスとレッドキッスなどのカラ−ピ−マンの組合せなどが挙げられ、また果実の形状の異なる組合せとして、唐辛子とピ−マン、バナナピ−マンとピ−マンなどが挙げられる。
【0009】(播種、接木苗の育成操作)図1において、赤色ピ−マン及び黄色ピ−マンのそれぞれの種A,Bを、床土を充填したセル状の穴を有するそれぞれの育苗トレイ(a,b)に播種して、赤色ピ−マン穂木苗A及び黄色ピ−マン穂木苗Bを育成した。育苗トレイ(a,b)は38穴〜288穴の規格でよいが、128穴〜200穴規格のトレイが苗の生育、育苗スペース、接木の作業効率などの面から好ましい。育苗トレイ(a,b) は二品種とも同じ規格のものを用いることがそれぞれの苗の生育を均等にする上で望ましい。二品種の穂木苗(A,B)の生育ステージが本葉2.0〜4.0枚期で、第一本葉(A2,B2)上の茎径が1〜3mmで、第二本葉(A3,B3)と第三本葉(A4,B4)との節間長が0.5〜2.0cmになったら接木を行う。接木支持具Cはチューブ(スリーブ)及びピンなどが上げられるが、これらの支持具を用いた接木の仕方にこだわるものではない。
【0010】(弱毒ウイルスの接種操作)苗の生育ステージが本葉0.5枚以上の生育期になったら、どちらか一方の品種の穂木苗(例えばA)の葉面に、キユウリモザイクウイルスの弱毒ウイルス液(ワクチン)(J)を噴霧器(K)などを用いて付着させ、その上からローラー(図面簡略のため図示せず)で擦り、該弱毒ウイルスを接種する(特許第2908594号参照)。あるいはその他の方法により、Aの穂木苗に弱毒ウイルスを接種する。Aの穂木苗のみに接種しても、接木後弱毒ウイルスは苗全体に移行し、弱毒ウイルス感染苗となる。したがって、Bの穂木苗へ予め弱毒ウイルスを接種する操作は不要となる利点を有する。
【0011】(接木操作)赤色ピ−マン穂木苗Aの子葉A1と第一本葉A2の間において、子葉A1の少し上の部分の茎を、破線で示す部位dで切断して苗を二つに分け、切断面から自根部までを下段部(A−1)とし、切断面から上側先端までを上段部(A−2)とした。そして他方、黄色ピ−マン穂木苗Bの子葉B1と第一本葉B2の間において、子葉B1の少し上の茎を、破線で示す部位dで切断して苗を二つに分け、切断面から自根部までを下段部(B−1)とし、切断面から上側先端までを上段部(B−2)とした。そして、一方の赤色ピ−マン穂木苗Aの下段部(A−1)に他方の黄色ピ−マン穂木苗Bの上段部(B−2)を接木し、その接木で残った一方の赤色ピ−マン穂木苗Aの上段部(A−2)を他方の黄色ピ−マン穂木苗Bの下段部(B−1)に接木する。そして、二本の接木苗D及びEを作成した。
【0012】(接木後の養生)接木が完了したら直ちにその接木苗D及びEを育苗トレイごと、湿度93〜98%、温度27℃〜30℃、薄曇り条件のもと三〜五日間養生する。その後直接日光の当たらない場所に育苗トレイを移して徐々に外気に馴らす操作、順化処理(詳細は特開平10−323124参照)を約1週間行う。
【0013】(上段部の摘芯)その順化の時期に、接木苗の第一本葉(A2,B2)と第二本葉(A3,B3)の付根を残し、該第二本葉(A3,B3)より上側の茎を摘芯する。例えば、第二本葉(A3,B3)と第三本葉(A4,B4)の間を一点鎖線eで示す如く切断して芯を除く操作、摘芯を行なう。なお、上段部の摘芯は、順化の時期ばかりでなく、接木前、接木中におこなってもよい。しかし、順化の時期を過ぎて摘芯を行うときは、上段部(A−2),(B−2)の第一本葉及び第二本葉の付根からの側枝(F,G)、及び子葉の付根からの側枝(H,I)の発生が遅れ、生育のバランスが悪くなるので好ましくない。
【0014】(下段部A−1,B−1の子葉付根からの側枝の伸長)このように、摘芯を行なうと、いずれの接木苗も下段部(A−1,B−1)の二枚の子葉(A1、B1)、第一本葉(A2、B2)及び第二本葉(A3,B3)の付根から側枝が発生するので、各側枝を伸長させる。
【0015】本発明においてこの摘芯は、重要であって、摘芯を行わないときは、子葉の付根から側枝が発生しないか、又は発生してもこの側枝は十分に成長することはない。したがってここから発生する側枝からは品質の良好な果実を収量よく収穫することは期待できない。従来、本発明に似た方法としてトマトの主枝1本仕立接木苗の作出法が知られている。この方法は、図4に示す如く、二枚の子葉(イ,ロ)及び第一本葉(ハ)を有する穂木苗(ニ)の該子葉と第一本葉(ハ)の途中を摘芯(切断)して、第一本葉(ハ)を有する穂木(ホ)と二枚の子葉(イ,ロ)を有する摘芯苗(ヘ)とに分け、該穂木(ホ)を、二枚の子葉(チ,リ)を有する台木苗(ヌ)に接木し、トマトの主枝1本仕立接木苗(ル)を得る方法である(特開平10−262452における図3「対照」参照)。しかし、この方法は、穂木(ホ)について摘芯操作を行わない方法であって、台木苗に残っている二枚の子葉(チ,リ)の付根からは側枝を発生させない方法であり、台木苗由来の果実の収穫を期待した方法ではない。これに対し本発明は、穂木の摘芯操作により子葉の付根から側枝を発生させ、伸長させてこの側枝から高品質の果実を収量よく収穫することを目的とするもので、前記の方法とは大きく異なる。
【0016】(通常の育苗管理)このように播種、穂木苗の育成、弱毒ウイルスの接種、接木、養生及び摘芯などを行い通常の育苗管理を行って生育させ、接木から約10〜20日後、育苗トレイの穴に根鉢を形成したら、床土を詰めたポリポットなどの移植鉢に植え換える。なお、鉢上げ用ポリポットは9〜12cmサイズが一般的である。鉢上げ後通常の温度、水管理などを行い鉢上げ苗を育苗管理するにつれて、下段部及び上段部のそれぞれの子葉、第一本葉及び第二本葉の付根からそれぞれ側枝(H、I)、(F、G)が伸張し、ピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得る。
【0017】
【実施例】
【0018】実施例1(穂木苗の育成)図1において、Aを赤色ピ−マンであるレッドキッス(日本デルモンテ社製)とし、Bをオレンジ色ピ−マンであるオレンジキッス(同社製)とし、a,bを床土を充填した128のセル状の孔を有する育苗トレイ(a,b)として、前記本発明の方法に従い、播種後35日育成して、接木に好適な、子葉及び複数の本葉を有し、接木に適したレッドキッス及びオレンジキッスの穂木苗を育成した。この穂木苗の生育状況を表1に示す。
【0019】表1:穂木苗の生育状況
【0020】表1の結果から、いずれの穂木苗も本葉2枚で、第二本葉A3,B3の茎径が1.6〜1.7mmで、第二本葉A3,B3と、第三本葉A4,B4との節間長が1.2〜1.3cmであり、通常の接木支持具を用いて接木を行なう場合、切断する茎径が2mm内外で節間長は1〜1.5cmは必要とされるが、いずれの穂木苗も接木を行えるまでに生育したことが判る。
【0021】(弱毒ウイルスの接種)苗の生育ステ−ジが、本葉1.5枚(播種後25日)の時期に、レッドキッスの葉面にキユウリモザイクウイルス弱毒ウイルス液(ワクチン)(J)を噴霧器(K)により付着させ、その上からロ−ラ−で擦り、該弱毒ウイルスを接種した(特許第2908594号参照)。
【0022】(接木操作)本発明の接木は、先ず赤色ピ−マン穂木苗Aについて、子葉A1と第一本葉A2の間において、子葉A1の少し上の茎部分を、破線で示す部位dをカミソリで斜めに切断し、苗を二つに分け、切断面から自根部までを下段部(A−1)とし、切断面から上側先端までを上段部(A−2)とした。また他方、オレンジ色ピ−マン穂木苗Bについて、同様に子葉B1と第一本葉B2の間において、子葉B1の少し上の茎を、破線で示す部位dをカミソリで斜めに切断し、苗を二つに分け、切断面から自根部までを下段部(B−1)とし、切断面から上側先端までを上段部(B−2)とした。そして、一方の穂木苗Aの下段部(A−1)に他方の穂木苗Bの上段部(B−2)を接木し、その接木で残った一方の穂木苗Aの上段部(A−2)を、他方の穂木苗Bの下段部(B−1)に接木し、2本の接木苗D,Eを作成した。接木支持具は、チュ−ブ型のナスニックス社製のス−パ−ウイズ17を用いた。
【0023】(接木後の養成、馴化処理)接木が完了したら直ちにその接木苗を育苗トレイごと湿度95%、温度27〜32℃、薄曇りの条件のもと、5日間養成した。その後直射日光の当たらない場所に育苗トレイを移して除々に外気に馴らす操作、馴化処理(特開平10−323124参照)を約一週間行い、接木活着率を調べた。その結果を表2に示す。
【0024】表2:接木活着率
【0025】(上段部の摘芯)馴化処理の時期に、育苗トレイ上の接木苗の第一本葉(A2,B2)と第二本葉(A3,B3)の付根を残し、図1の一点鎖線eで示す如く、第二本葉(A3,B3)より上側の茎を切断して、芯を除く操作である摘芯を行った。その摘芯前の接木苗の節間長を調べた。結果を表3に示す。
【0026】表3:接木苗における節間長の比較
【0027】表3の結果から、接木苗の第一本葉と第二本葉の節間は0.02〜0.04cmと極端に短く、この間での摘芯は容易ではない。しかし、第二本葉と第三本葉の節間は0.3〜0.4cmと長く、容易に行えることが判明した。本発明は、トマトには見られないピ−マンに特有のものであることを利用して初めて可能な、ピ−マンの二品種側枝多本仕立苗である。
【0028】(通常の育苗管理)摘芯してから、育苗トレイで栽培管理した。しばらくすると、苗が根鉢を形成したので、床土を詰めた9cmポリポットに苗を移し換えた。摘芯から7日目について、本発明の二品種側枝多本仕立苗と、通常の主枝一本仕立苗(台木がレッドキッス、穂木がオレンジキッス)との側枝発生を比較した。結果を表4に示す。
【0029】表4:接木苗の側枝発生比較
注)側枝長は、葉の付根から発生している側枝のみの平均値を示し、葉の付根から発生してないものを含めない。
【0030】表4の結果より、従来の接木苗は、主枝が伸びるので、草丈、本葉の生育が本発明の接木苗より生育が旺盛であるが、接木苗の上段部、下段部のいずれからも、側枝の発生率が低く、また殆ど成長しない。これに対し、本発明の摘芯した接木苗は、苗の先端が成長できないので、一本の苗で側枝多本苗となることが判る。本発明の接木苗における側枝発生は、台木と穂木が異なる場合においても差はないことが判る。
【0031】次に、本実施例のピ−マンの二品種側枝多本仕立苗の作成法の特徴を、従来法と比較して表5に示す。
【0032】
表5:本発明と従来法との比較 本発明 比較例(従来法)※ 接木方法 実施例1により得られたピ− 芯止め大苗台木の葉の付根の腋 マンの二品種側枝多本仕立苗 芽を除去し、切断した幼苗穂木を 差し込む。 品種 台木 穂木 台木 穂木 レッドキッス オレンジキッス スケットK レッドキッス オレンジキッス育苗トレイ 128穴 128穴 128穴 128穴 接木まで なし なし 15cm なし鉢上げ有無 ポリポット 接木時の 2.5枚 2.5枚 8.5〜9.0枚 2.5枚本葉数 接木までの 20日 20日 70日 20日育苗期間 育苗箱当り 128本 10本接木苗数 接木活着率 95% 70% 【0033】※:比較例1表1に示す如く、かなり成長したピ−マンの台木苗、「スケットK(南国種苗社製)」を用い、この成長点を摘芯し、葉の付根から出る腋芽を4箇所とり葉腋にツマ楊枝で穴をあけ、この4箇所の穴にレッドキッス、オレンジキッスの品種の苗を胚軸の先を尖らせて2本づつさし込み、一株に赤色、橙色のピ−マンを成らせることのできるピ−マン苗を作出した(以下従来法という)(森俊人著「まるごと楽しむトマト百科」社団法人、農山漁村文化協会、1996年9月20日発行、第28〜29頁参照)。
【0034】表5の結果から、従来法によれば、台木は播種後30日目に15cmポリポットに鉢上げし、大苗に育てなければならず、接木までの育苗期間が約70日もかかり、短期間に生産できない。また育苗箱トレイ当り、約10株しか生産できず、また大苗なので接木活着率が約70%と極端に悪い問題を有する。また台木1株と穂木2株から得られる接木は1株と少ない問題点を有することが判る。これに対し本発明によれば、接木までの育苗期間が20日と短く、接木方法が簡単で、30cm×60cmの育苗箱当り128本の接木苗を得ることが可能で、接木活着率も95%と非常に高く、また台木1株と穂木1株とから2株の接木苗を得ることができることが判る。
【0035】実施例2(ピ−マンの二品種側枝多本仕立苗の作成例、その2)
(穂木苗の育成)実施例1と同様にして、子葉及び複数の本葉を有し、接木に適した赤色ピ−マン穂木苗及び黄色ピ−マン穂木苗を育成した。また常法に従いピ−マンの台木苗を育成した。
【0036】(接木)図2において、子葉及び第一本葉を有する赤色ピ−マン穂木苗Aについて、子葉A1と第一本葉A2の間において、子葉A1の少し上の部分の茎と、子葉A1の直下の茎を、それぞれ破線で示す部位dで切断して苗を上段、中段、下段の三つの区分に分け、その中央の区分、すなわち子葉を有する赤色ピ−マン穂木(A−3)を得た。また、同様にして、黄色ピ−マン穂木(B−3)を得た。一方、台木苗の地際部の茎を切断して台木Nを作成し、これに前記二品種の穂木(A−3,B−3)を直列に接木し、接木苗Lを得た。
【0037】(接木後の養生、馴化)接木が完了したら直ちにその接木苗Lを育苗トレイごと、湿度95%程度、温度27℃〜30℃、薄曇り条件のもと三日間養生する。その後直接日光の当たらない場所に育苗トレイを移して徐々に外気に馴らす操作、順化処理(詳細は特開平10−323124参照)を約1週間行う。
【0038】(通常の育苗管理)このように穂木苗、台木苗の育成、接木、養生、馴化及び通常の育苗管理を行って生育させ、接木から約10日後、育苗トレイの穴に根鉢を形成したら、床土を詰めた鉢上げ用ポリポット(9cmサイズ)移植鉢に植え換え、育苗管理を行った。その結果、それぞれの品種の二枚の子葉(A1,B1)の付根から側枝(M,O)が発生(合計4本)し、それぞれ伸長させて、ピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得た。
【0039】
【本発明の効果】本発明は、容積の小さいサイズのポットを用い、少ない培養土、少ない床面積で、幼苗期に育苗トレイ上で短い育苗時間で作出することができ、また接木活着率の高いピ−マンの二品種側枝多本仕立苗を得ることができる。また一株で二種類の果実が収穫できる、例えば一株で赤ピ−マン、黄色ピ−マンが収穫できるピ−マン苗が簡便に、効率良く、しかも大量生産できる。また二種類の品種の苗で二株の接木苗ができる。また育苗トレイ上で接木ができるので接木の効率が高く、キュウリモザイクウイルスの弱毒ウイルスは一方の種類の苗のみに接種するので、通常の接木苗作成の半分の使用量で済みコストが軽減される利点を有する。また狭い菜園であっても、一株の苗で二品種のカラーピ−マンが多量に収穫できるので、菜園の彩りを鮮やかにすることができる。最近、ガーデニングブームを反映し、黄色、赤色のピ−マンを栽培して食用することと、ガーデンの彩りを楽しむ、家庭菜園愛好家が増えているが、本発明はこれらの愛好家の期待に十分応えるものと思われる。また、一般に普及している育苗トレイ幼苗接木方法の接木支持具、育苗トレイをそのまま用いて本発明の二品種側枝多本仕立苗を得ることができる利点を有する。
【出願人】 【識別番号】000104559
【氏名又は名称】日本デルモンテ株式会社
【出願日】 平成12年6月1日(2000.6.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−340020(P2001−340020A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−163990(P2000−163990)