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【発明の名称】 宿根草の栽培方法
【発明者】 【氏名】吉村 人志

【要約】 【課題】一年にうちに二回開花させることができ、かつ、秋に開花させた場合であっても草丈の高い高品質の植物体を得ることができる栽培方法を提供する。

【解決手段】ケシ科、ボタン科、ユキノシタ科、バラ科、キンポウゲ科、イソマツ科、ユリ科、ナデシコ科、スミレ科、キキョウ科、又はキク科に属する宿根草を栽培する方法であって、少なくとも以下の1)〜5)の工程を含むことを特徴とする宿根草の栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケシ科、ボタン科、ユキノシタ科、バラ科、キンポウゲ科、イソマツ科、ユリ科、ナデシコ科、スミレ科、キキョウ科、又はキク科に属する宿根草を栽培する方法であって、少なくとも以下の1)〜5)の工程を含むことを特徴とする宿根草の栽培方法。
1)低温に遭遇し得る時期に株を定植する工程2)低温に遭遇した株を一定期間保温又は加温処理する工程3)開花を終えた株を掘り上げ、低温で保存する工程4)低温で保存した株を再度定植する工程5)定植した株を再度保温又は加温処理する工程【請求項2】 宿根草が、ケマンソウ亜科、ユキノシタ亜科、バラ亜科、クリスマスローズ亜科、イソマツ亜科、ユリ亜科、マンテマ亜科、キキョウ亜科又はキク亜科に属する植物であることを特徴とする請求項1記載の宿根草の栽培方法。
【請求項3】 宿根草が、ワレモコウ連、ヒエンソウ連、ナデシコ連、又はキク連に属する植物であることを特徴とする請求項1記載の宿根草の栽培方法。
【請求項4】 宿根草が、コマクサ属、ボタン属、アスチルベ属、ワレモコウ属、オオヒエンソウ属、イソマツ属、ユリ属、ナデシコ属、スミレ属、又はホタルブクロ属に属する植物であることを特徴とする請求項1記載の宿根草の栽培方法。
【請求項5】 宿根草が、シャクヤク節に属する植物であることを特徴とする請求項1記載の宿根草の栽培方法。
【請求項6】 宿根草が、ケマンソウ、シャクヤク、アスチルベ、又はワレモコウであることを特徴とする請求項1記載の宿根草の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、宿根草の栽培方法に関し、より詳しくは一年の間に二度開花させることのできる宿根草の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】切り花や鉢物の需要は、ほぼ一年を通して平均的にあるのに対し、自然状態のままでは、植物はある一定の時期にしか花をつけない。このような需要と供給のギャップを埋めるため、植物の開花期を調整するための様々な工夫が従来からなされてきた。宿根草においては、主として促成栽培と抑制栽培により、開花期の調整がなされている。
【0003】促成栽培は、冬季に定植した株をビニールで被覆したり、ハウス内で栽培することなどにより、温度を一定以上に保ち、それにより開花期を早める栽培方法である。促成栽培により、開花期を自然状態よりも数ヶ月程度早めることができる。例えば、アスチルベは自然状態では6〜7月ごろに開花するが、促成栽培により4〜5月ごろに開花させることができる。
【0004】抑制栽培は、冬季に休眠状態の株を掘り上げ、0℃前後で冷蔵し、開花目標時期の数ヶ月前に解凍、定植し、開花期を自然状態よりも遅らせる栽培方法である。抑制栽培により、11月や12月といった自然状態では到底花が咲かないような時期にも開花させることが可能である。例えば、アスチルベでは、10月〜12月、シャクヤクでは、10月〜11月に開花させることが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】促成栽培も抑制栽培も、需要量に対し供給量が少ない時期に切り花等を提供できるという経済的なメリットがあるが、その反面、通常の栽培法に比べ栽培コストが高くなるという問題があり、特に冷蔵施設等の高額な設備を必要とする抑制栽培の場合、栽培コストの問題はより深刻である。また、このようなコスト面の問題に加え、抑制栽培により秋に開花させた場合、通常の栽培法により得られる植物体よりも草丈が低くなってしまうという問題もある。本発明は、このような従来の栽培方法に代わる新規かつ有用な宿根草の栽培方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、開花後の株を低温保存し、その年のうち定植することにより、宿根草を春と秋に二回開花させることができ、かつ、秋に開花させた場合でも草丈の高い高品質の植物体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、ケシ科、ボタン科、ユキノシタ科、バラ科、キンポウゲ科、イソマツ科、ユリ科、ナデシコ科、スミレ科、キキョウ科、又はキク科に属する宿根草を栽培する方法であって、少なくとも以下の1)〜5)の工程を含むことを特徴とする宿根草の栽培方法である。
1)低温に遭遇し得る時期に株を定植する工程2)低温に遭遇した株を一定期間保温又は加温処理する工程3)開花を終えた株を掘り上げ、低温で保存する工程4)低温で保存した株を再度定植する工程5)定植した株を再度保温又は加温処理する工程【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の宿根草の栽培方法は、少なくとも、1)低温に遭遇し得る時期に株を定植する工程、2)低温に遭遇した株を一定期間保温又は加温処理する工程、3)開花を終えた株を掘り上げ、低温で保存する工程、4)低温で保存した株を定植する工程、5)定植した株を再度保温又は加温処理する工程、を含むことを特徴とするものである。
【0009】一回目の定植の時期は、開花に必要な低温に遭遇し得る時期であれば特に限定されない。具体的な時期は、対象とする宿根草の種類及び栽培場所等に応じて適宜決めることができる。例えば、佐世保市付近で栽培する場合、アスチルベでは9月〜11月、シャクヤクでは9月〜11月、ワレモコウでは6月〜10月、ケマンソウでは9月〜11月ぐらいに定植すれば各宿根草を開花に必要な低温に遭遇させることができる。
【0010】一回目の保温又は加温処理は、その処理により開花時期を自然状態よりも早めることができるものであればどのような処理でもよく、ビニールでの被覆処理、ハウス内での栽培などを具体的な処理方法として例示できる。保温又は加温処理の開始時期及び終了時期は、対象とする宿根草の種類、栽培場所、意図する開花時期等に応じて適宜決めることができる。例えば、佐世保市付近で栽培する場合、アスチルベでは11月から1月まで、シャクヤクでは11月から1月まで、ワレモコウでは11月から1月まで、ケマンソウでは11月から1月まで保温及び加温処理を行うのが好ましい。保温又は加温処理時の温度は、対象とする宿根草の種類及び意図する開花時期等に応じて適宜決めることができる。例えば、アスチルベの場合、最高温度25℃、最低温度8℃、シャクヤクの場合、最高温度25℃、最低温度15℃、ワレモコウの場合、最高温度30℃、最低温度6℃、ケマンソウの場合、最高温度25℃、最低温度6℃となるように保温又は加温処理を行うのが好ましい。
【0011】低温保存時の温度は、対象とする宿根草の種類等に応じて適宜決めることができる。例えば、アスチルベの場合−5〜8℃、シャクヤクの場合−5〜8℃、ワレモコウの場合−5〜8℃、ケマンソウの場合−5〜8℃となるように保存するのが好ましい。また、低温保存に当っては、保存開始前後に低温保存時の温度よりも数温高い温度で、順化処理を行うのが好ましい。保存期間も対象とする宿根草の種類等に応じて適宜決めることができる。例えば、アスチルベの場合45〜60日間、シャクヤクの場合45〜60日間、ワレモコウの場合45〜60日間、ケマンソウの場合45〜60日間保存するのが好ましい。低温保存の方法は、二回目の定植後に開花させることのできる方法であれば特に限定されず、例えば、ピートモスなどと共にコンテナ中に詰め込み、温度調整された室内で保存する方法などを採用することができる。
【0012】二回目の定植は、一回目の定植と同様にして行うことができるが、一回目の定植のように自然低温に遭遇させる必要はない。二回目の保温又は加温処理は、一回目の処理と同様にして行うことができる。
【0013】本発明の栽培方法を適用することのできる宿根草としては、ケシ科、ボタン科、ユキノシタ科、バラ科、キンポウゲ科、イソマツ科、ユリ科、ナデシコ科、スミレ科、キキョウ科、キク科に属する宿根草を例示できる。ケシ科の宿根草の中では、ケマンソウ亜科に属するものが好ましく、コマクサ属に属するものが更に好ましく、ケマンソウ(Dicentra spectabilis L.)が最も好ましい。ボタン科に属する宿根草の中では、ボタン属に属するものが好ましく、シャクヤク節に属するものが更に好ましく、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.)が最も好ましい。ユキノシタ科に属する宿根草の中では、ユキノシタ亜科に属するものが好ましく、アスチルベ属に属するものが更に好ましく、アスチルベ(Astilbe arendsii)が最も好ましい。バラ科に属する宿根草の中では、バラ亜科に属するものが好ましく、ワレモコウ連に属するものが更に好ましく、ワレモコウ属に属するものが特に好ましく、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)が最も好ましい。キンポウゲ科に属する宿根草の中では、クリスマスローズ亜科に属するものが好ましく、ヒエンソウ連に属するものが更に好ましく、オオヒエンソウ属に属するものが最も好ましい。イソマツ科に属する宿根草の中では、イソマツ亜科に属するものが好ましく、イソマツ属に属するものが更に好ましい。ユリ科に属する宿根草の中では、ユリ亜科に属するものが好ましく、ユリ連に属するものが更に好ましく、ユリ属に属するものが最も好ましい。ナデシコ科に属する宿根草の中では、マンテマ亜科に属するものが好ましく、ナデシコ連に属するものが更に好ましく、ナデシコ属に属するものが最も好ましい。スミレ科に属する宿根草の中では、スミレ属に属するものが好ましい。キキョウ科に属する宿根草の中では、キキョウ亜科に属するものが好ましく、ホタルブクロ属に属するものが更に好ましい。キク科に属する宿根草の中では、キク亜科に属するものが好ましく、キク連に属するものが更に好ましい。
【0014】
【実施例】〔実施例1〕 アスチルベの栽培前年12月に株分け定植したアスチルベ(品種:エリカ)100株を、1月下旬からビニールで被覆し、夜間最低12〜15℃、日中最高25℃ぐらいになるように保温した。3月下旬から開花が始まり、6月中旬まで開花は続いた。開花終了後、株を掘り上げ、根茎を3〜5芽ずつ株分けし、根を切り除き、次いで、オーソサイドの800倍液で消毒した。
【0015】ユリ球根保存用のコンテナ(長さ60cm、幅40cm、高さ25cm)にビニールを敷き、ピートモスを2〜3cm程度敷き詰め、その上に消毒が終了した株を並べ、1段敷き詰め終わった後、その上にピートモスを3cm程度敷き、さらにその上にもう一段消毒が終了した株を敷き詰め、ピートモスを3〜5cm程度載せ、ビニールで密閉した(1コンテナ当り100〜150株)。ピートモスは80%程度の水分含量に調整して用いた。
【0016】コンテナを6℃で1週間順化処理を行った後、5〜−3℃で45〜60日程度保存した。6〜8℃で1週間順化処理を行った後、9月下旬ごろにハウス内に定植した。定植後の株を遮光度50%の寒冷紗で覆い、葉が出揃った後、寒冷紗を除いた(定植から約2〜3週間後)。10月下旬から夜温が18℃以下になったので(佐世保)、ビニールで株を被覆し、最低夜温12〜15℃、日中最高25℃になるように保温した。この保温により、11月中下旬に再び開花を開始した。開花後は、1週間最低夜温8℃で管理し、不要な葉や茎を切除後、ビニールを除去し、1月下旬まで自然低温下に放置した。
【0017】〔実施例2〕 シャクヤクの栽培シャクヤク(品種:華燭の典)100株を実施例1と同様にして栽培した。この栽培法により、3月下旬から6月中旬及び11月中下旬の2回シャクヤクを開花させることができた。
〔実施例3〕 ワレモコウの栽培ワレモコウ(品種:アスカ)100株を実施例1と同様にして栽培した。この栽培法により、3月下旬から6月中旬及び11月中下旬の2回ワレモコウを開花させることができた。
〔実施例4〕 ケマンソウの栽培ケマンソウ(品種:白色種)100株を実施例1と同様にして栽培した。この栽培法により、3月下旬から6月中旬及び11月中下旬の2回ケマンソウを開花させることができた。
【0018】
【発明の効果】本発明は、宿根草の新規な栽培方法を提供する。この栽培方法により、一年のうちに春と秋に二回開花させることができ、かつ、秋に開花させた場合であっても草丈の高い高品質の植物体を得ることができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
【識別番号】500252730
【氏名又は名称】有限会社ワイルドプランツ吉村
【出願日】 平成12年5月31日(2000.5.31)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
【公開番号】 特開2001−340016(P2001−340016A)
【公開日】 平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願番号】 特願2000−162842(P2000−162842)