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【発明の名称】 人工緑化方法および人工緑地
【発明者】 【氏名】須藤 達美

【氏名】北詰 昌義

【要約】 【課題】ビオトープの水源に、川や沢水、水道水や井戸水などを使用しないようにすること。

【解決手段】止水域1の周囲に水位変動域2aを設け、この水位変動域2aに植物推移帯2を設ける。水位変動域2aには、流水域を接続させ、過剰の流入水を流水域に越流させて、植物推移帯2を限度として水位変動域2aの許容上限水位の制御を行う。さらに流水域は、下流側と上流側とが、下流側に設けた流水貯留槽6から上流側に水を送る送水手段で連絡する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域と、前記水位変動域の周囲に設けられ、冠水しない水際域とを、人工緑化区域内に設け、前記水位変動域内に、前記止水域から前記水際域に向けて、植生の移り行きが見られる植物推移帯を設けて、前記人工緑化区域内に動植物の生態系を定着させることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項2】 請求項1記載の人工緑化方法において、前記人工緑化区域内には、流水域が設けられていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項3】 請求項1記載の人工緑化方法において、前記水位変動域は、流水域に、あるいは排水設備に、または流水域と排水設備との双方に接続され、前記水位変動域の上限水位を上回る過剰流入水を、前記流水域に、あるいは排水設備に、または流水域と排水設備との双方に、越流させることにより水位変動域の水位上昇を制御することを特徴とする人工緑化方法。
【請求項4】 請求項2または3記載の人工緑化方法において、前記流水域では、下流側と上流側とが、前記下流側で受けた流水を前記上流側に送水する送水手段で連絡されていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項5】 請求項2ないし4のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記流水域は、凹部に水を流す人工水路であって、前記凹部の内面上には、荒木田土などの粘性土を張り付けることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項6】 請求項5記載の人工緑化方法において、前記凹部の内面上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記内面上にベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項7】 請求項6記載の人工緑化方法において、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記ベントナイト混合土層の上にゴムシートなどの防水シートを設け、前記防水シートの上に前記粘性土を設けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項8】 請求項2ないし4のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記流水域は、凹部に水を流す人工水路であって、前記凹部の内面上には、ベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に砕石層を設け、前記砕石層の上に防水モルタルを設けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記水際域は、0〜100%の勾配の傾斜が設けられていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項10】 常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域とを、調整池に、あるいは遊水池に、または調整池と遊水池との双方に設けて人工緑化区域を形成し、前記止水域から前記水位変動域にかけて、前記人工緑化区域の予想降水量と予想排水量とに基づく冠水頻度に応じた複数域に区分し、前記複数域に前記冠水頻度に応じた冠水耐性を有する植物を、植生の移り行きが見られるように植栽して植物推移帯を形成し前記人工緑化区域内に動植物の生態系を定着させることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項11】 請求項10記載の人工緑化方法において、前記複数域は、植えた植物が常時冠水する常時冠水域と、植えた植物が前記止水域の水位変動により冠水と非冠水とを繰り返す頻繁冠水域と、植えた植物が前記止水域の水位変動によっても稀にしか冠水しない稀冠水域とに区分され、前記常時冠水域には、浮葉植物を、あるいは沈水植物を、または浮葉植物と沈水植物との双方を、前記頻繁冠水域には、沈水植物を、あるいは湿性植物を、または沈水植物と湿性植物との双方を、前記稀冠水域には、水辺林用植物を、あるいは地上性植物を、または水辺林用植物と地上性植物との双方を、植えることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項12】 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記止水域は、前記止水域に貯留した水に温度成層を形成するように、階段状に水深が深くなるように形成されていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項13】 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記水位変動域は、前記止水域の水位変動に伴い乾燥と湿潤が繰り返され、0〜20%の勾配の傾斜が設けられていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項14】 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記止水域は、凹部に水を溜める人工池に設けられ、前記凹部の内面上には、荒木田土などの粘性土を張り付けることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項15】 請求項14記載の人工緑化方法において、前記凹部の内面上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記内面上にベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項16】 請求項15記載の人工緑化方法において、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記ベントナイト混合土層の上にゴムシートなどの防水シートを設け、前記防水シートの上に前記粘性土を設けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項17】 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記止水域は、凹部に水を溜める人工池に設けられ、前記凹部の内面上には、ベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に砕石層を設け、前記砕石層の上に防水モルタルを設けたことを特徴とする人工緑化方法。
【請求項18】 請求項1ないし17のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、樹林と、前記樹林により地表に到達する日射量を抑えて日陰で多湿な環境に制御される林床部とを有する植栽部が設けられていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項19】 請求項1ないし18のいずれか1項に記載の人工緑化方法において、前記止水域の水源には、腐敗防止剤を添加して貯留した雨水から前記腐敗防止剤を除去した水、事業所系廃水を川や湖などの公共用水域に放流可能な水質にまで浄化した水、生活系廃水を浄化槽で前記公共用水域に放流可能な水質にまで浄化した後、EWPなどの浄化手段でさらに浄化した水の少なくともいずれかの水が使用されていることを特徴とする人工緑化方法。
【請求項20】 常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域とを有する人工緑化区域に、動植物の生態系を定着させる人工緑地であって、前記人工緑地が、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の人工緑化方法により施工されていることを特徴とする人工緑地。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生態系の定着を目的として、止水域と植物推移帯とを有するビオトープを造成する人工緑化技術に関し、水源に川や井戸水、水道水などを使用することなく、生活廃水の処理水などの中水や人工緑化区域にて集水した雨水を水源とする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】人工的に整備された都市空間などでは、樹木を植えた緑化空間を適宜設けて、積極的な緑化が図られている。近年、かかる緑化に際しては、単に樹木などの植物を植えるばかりではなく、積極的に植栽部分と水域部分とを併せ持ち、昆虫や、小魚などの小動物が生息する環境を創出したビオトープ(バイオトープともいう)の設置が求められている。
【0003】ビオトープとは、例えば、生態学辞典(増補改定版、築地書館、1993年4月発行)には、「特定の生物群集が生存できるような、特定の環境条件を備えた均質なある限られた地域。」と定義されている。本明細書では、以下、ビオトープ(バイオトープ)を、上記定義に倣って、「生物群集が生存できるように人工的に構築した緑化地域」の意味で使用することとする。
【0004】従来、都市空間の一部に設けられたビオトープでは、併設する水域の水源として、川や沢水などの自然の水を利用したり、あるいは井戸水や水道水などを補給水として利用する構成が知られている。さらには、自然の川や、池などをそのまま、あるいは適宜一部改変して取り込んだ構成が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ビオトープを構築するに際して、水源に自然の川や沢水を利用する構成では、近くに適当な川や沢水の存在が必要となり、ビオトープの計画がかかる立地条件の制約を大きく受けることとなる。人工的構築物が主体となりやすい都市空間で、かかる立地条件を見出すことは難しい。
【0006】そのため、水道水や井戸水などを水源として使用する構成のビオトープが提案されている。しかし、かかる構成でも、以下に例示するような種々の制約があり、簡単には水源確保が行なえないのが現状である。
【0007】例えば、井戸水を使用する場合には、取水工事が必要となり、併せて井戸の新設には取水量によっては許可申請が必要となるなど、水源確保が簡単には行なえない。特に、井戸水の使用に際しては、取水量によっては、地盤沈下や地下水脈に影響を及ぼすなど周辺環境の二次的破壊の虞も十分考えられ、かかる問題点を予め解決する必要がある。
【0008】一方、水道水を使用する場合には、上記地盤沈下などの問題点はないものの、殺菌用に混入された遊離塩素がビオトープの構成に不可欠な小動物などに対して毒性を示し、満足できる生態系の定着に結びつかない場合もある。さらには維持、管理という面からは、長年に亙って水道使用料の計上が必要となる。昨今の財政支出の倹約が求められるなかでは、かかる点が主要因となって、ビオトープの計画が中止される場合も見られる。
【0009】そこで、本発明者は、上記川や沢水などの自然水や、水道水や井戸水などの上水を使用しないビオトープの技術開発が必要であると考えた。
【0010】また、ビオトープの設計に際しては、環境の多様性を向上させて極力自然環境に近い環境を創出し、多様な生物の生息を促すことにより生態系の定着を図ろうとするため、水を常に溜め、その水の流れが発生しないように制御された区域(以下、かかる区域を止水域という。)がその構成要素として重要である。従来のビオトープの構成では、止水域の周辺の植栽は景観的配慮が優先されることが多く、止水域の水位が変動した場合の水際周辺の動植物への影響については考慮されていないのが現状である。
【0011】そのため、豪雨や洪水などにより長時間止水域周辺が冠水した場合には、止水域の周辺に生息させていた小動物が死滅したり、あるいは水際の植生が枯死するなどして、折角定着させた生態系が破壊される場合も見られる。そのため、かかる水位変動が予想される調整池や遊水池に止水域を設ける構成のビオトープの計画は避けられていた。
【0012】一方、調整池や遊水池は、日常的には空き地となって通常の使用効率が低い場所である。さらに、かかる施設は、住宅地に隣接して設けられ、且つ、まとまった面積を有する公共施設であるため、かかる調整池や遊水池を止水域構築地として取り込むことができれば、普段の住環境の中に、住民が手軽に利用できるビオトープを構築することができる。
【0013】しかし、止水域の水位変動に対する考慮が払われていない従来構成のビオトープでは、豪雨などの状況下では水位が大きく変動する可能性のある上記調整池や、遊水池を止水域構築地としてビオトープに取り込むことはできない。
【0014】また、かかる調整池や遊水池は、豪雨などに起因する異常出水時などに付近の住環境の着水を防ぐ目的で設けられているため、調整池や遊水池をビオトープの止水域構築地として取り込むに際しては、その本来的な雨水調節機能を損なうことなく、且つ、水位変動に際しても生息生物の死滅を防止できるような技術の開発が必要である。
【0015】本発明の目的は、ビオトープの止水域の水源に自然の川や沢水、井戸水や水道水などを使用しないようにすることにある。
【0016】本発明の目的は、ビオトープを構成する止水域構築地として、水位変動が予想される調整池や遊水池を使用できるようにすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の人工緑化方法は、常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域と、前記水位変動域の周囲に設けられ、冠水しない水際域とを、人工緑化区域内に設け、前記水位変動域内に、前記止水域から前記水際域に向けて、植生の移り行きが見られる植物推移帯を設けて、前記人工緑化区域内に動植物の生態系を定着させることを特徴とする。前記人工緑化区域内には、流水域が設けられていることを特徴とする。
【0018】前記水位変動域は、流水域に、あるいは排水設備に、または流水域と排水設備との双方に接続され、前記水位変動域の上限水位を上回る過剰流入水を、前記流水域に、あるいは排水設備に、または流水域と排水設備との双方に、越流させることにより水位変動域の水位上昇を制御することを特徴とする。前記流水域では、下流側と上流側とが、前記下流側で受けた流水を前記上流側に送水する送水手段で連絡されていることを特徴とする。
【0019】前記流水域は、凹部に水を流す人工水路であって、前記凹部の内面上には、荒木田土などの粘性土を張り付けることを特徴とする。前記凹部の内面上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記内面上にベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けたことを特徴とする。前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記ベントナイト混合土層の上にゴムシートなどの防水シートを設け、前記防水シートの上に前記粘性土を設けたことを特徴とする。
【0020】前記流水域は、凹部に水を流す人工水路であって、前記凹部の内面上には、ベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に砕石層を設け、前記砕石層の上に防水モルタルを設けたことを特徴とする。
【0021】前記水際域は、0〜100%の勾配の傾斜が設けられていることを特徴とする。より好ましくは、上記勾配の傾斜は0〜50%である。水際域に設ける傾斜勾配が100%を越える場合には、山椒魚や蛙などの両生類や、蛍や蜻蛉などの昆虫類などの小動物が往来できにくくなるが、0%を含まない100%以下に設定すれば、比較的その往来を確保することができる。小動物にとっては、勾配の程度は、我々人間が考える以上に、その往来の容易さに大きな影響を与えることとなり、本発明者らは、実際の上記小動物を使用した実験を通して、上記適切な勾配を見出したもので、従来はかかる小動物の往来という観点からの水際の適切勾配の数値は見出されていなかった。
【0022】より好ましくは、0%を含まない50%以下の勾配に設定すればよく、かかる勾配に設定しておけば、50%よりも大きい勾配に設定した場合に比べて、水中と陸とを往来する上記両生類や昆虫類の種類を多く確保することができるので、それだけ多種多様な生態系の定着が図れることとなる。
【0023】他の本発明の人工緑化方法は、常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域とを、調整池に、あるいは遊水池に、または調整池と遊水池との双方に設けて人工緑化区域を形成し、前記止水域から前記水位変動域にかけて、前記人工緑化区域の予想降水量と予想排水量とに基づく冠水頻度に応じた複数域に区分し、前記複数域に前記冠水頻度に応じた冠水耐性を有する植物を、植生の移り行きが見られるように植栽して植物推移帯を形成し前記人工緑化区域内に動植物の生態系を定着させることを特徴とする。
【0024】前記複数域は、植えた植物が常時冠水する常時冠水域と、植えた植物が前記止水域の水位変動により冠水と非冠水とを繰り返す頻繁冠水域と、植えた植物が前記止水域の水位変動によっても稀にしか冠水しない稀冠水域とに区分され、前記常時冠水域には、浮葉植物を、あるいは沈水植物を、または浮葉植物と沈水植物との双方を、前記頻繁冠水域には、沈水植物を、あるいは湿性植物を、または沈水植物と湿性植物との双方を、前記稀冠水域には、水辺林用植物を、あるいは地上性植物を、または水辺林用植物と地上性植物との双方を、植えることを特徴とする。
【0025】前記止水域は、前記止水域に貯留した水に温度成層を形成するように、階段状に水深が深くなるように形成されていることを特徴とする。前記水位変動域は、前記止水域の水位変動に伴い乾燥と湿潤が繰り返され、0〜20%の勾配の傾斜が設けられていることを特徴とする。より好ましくは、上記勾配の傾斜は0〜10%である。
【0026】かかる水位変動域の傾斜勾配が20%を越える場合には、植物推移帯の定着、形成が促進し難いことが分かった。0を含まない20%以下に、より好ましくは10%以下に設定すれば、かかる勾配設定をしない場合よりも、植物推移帯の定着、形成が促進されることを本発明者らは実験、観察を通して初めて見出した。
【0027】前記止水域は、凹部に水を溜める人工池に設けられ、前記凹部の内面上には、荒木田土などの粘性土を張り付けることを特徴とする。前記凹部の内面上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記内面上にベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けたことを特徴とする。前記ベントナイト混合土層の上に前記粘性土を張り付けるに際しては、前記ベントナイト混合土層の上にゴムシートなどの防水シートを設け、前記防水シートの上に前記粘性土を設けたことを特徴とする。
【0028】前記止水域は、凹部に水を溜める人工池に設けられ、前記凹部の内面上には、ベントナイトと現地発生土とを混合したベントナイト混合土層を設け、前記ベントナイト混合土層の上に砕石層を設け、前記砕石層の上に防水モルタルを設けたことを特徴とする。
【0029】前記いずれかの構成において、樹林と、前記樹林により地表に到達する日射量を抑えて日陰で多湿な環境に制御される林床部とを有する植栽部が設けられていることを特徴とする。前記止水域の水源には、腐敗防止剤を添加して貯留した雨水から前記腐敗防止剤を除去した水、事業所系廃水を川や湖などの公共用水域に放流可能な水質にまで浄化した水、生活系廃水を浄化槽で前記公共用水域に放流可能な水質にまで浄化した後、EWPなどの浄化手段でさらに浄化した水の少なくともいずれかの水が使用されていることを特徴とする。
【0030】他の本発明は、常時水が貯留され、貯留された水の流れが抑制された止水域と、前記止水域の周囲に設けられ、水位が変動する水位変動域とを有する人工緑化区域に、動植物の生態系を定着させる人工緑地であって、前記人工緑地が、上述のいずれかの構成の人工緑化方法により施工されていることを特徴とする。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の人工緑化方法により構成されたビオトープとしての人工緑地である。図2は、本発明のビオトープの構成を示す断面図である。図3(A)は図1に示す人工緑地をA−A線、(B)はB−B線、(C)はC−C線でそれぞれ切断した断面図である。
【0032】本発明の人工緑地は、図1、2に示すように、止水域1を中心に設けた人工池を形成し、この止水域1の周囲の水位変動域2aに植物推移帯2を設け、その周囲に植栽部3を配置し、さらに人工水路で小川に構成した流水域4を水位変動域2aに接続して構築された人工緑化区域Zに構成されている。図中、人工緑化区域Zと周囲環境Yとの境を境界線5で明示した。
【0033】止水域1は、図2、3に示すように、計画地の止水域配置箇所を掘削した凹部1aに水を満たしてなる人工池の常時水を満たしている範囲に設定すればよい。かかる止水域1の凹部内面は、図3(B)に示すように、段階状に深くなるように形成され、各段階に合わせて止水域1に満たされた水の温度成層が形成されるようになっている。
【0034】温度成層の形成は、止水域1の水温および水深に応じた生物分布を多様にし、生物の棲み分けを連続的に推移できるようにするためである。かかる構成により、階段状に構成しない場合に比べて、より多くの生物を生息させ、且つ定着させることができる。
【0035】温度成層は、水面を渡る風に起因する波により破壊されやすいため、階段状に水深が深くなる構造とすることにより、波による温度成層の拡散の影響を少なくすることができる。かかる温度成層の形成に当たっては、例えば、水域面積が100m2 以下の小規模な止水域では、階段状に構成して温度成層を多層化するに際しては、2、3段程度が好ましい。
【0036】一方、止水域1を1ha以上の大規模止水域に構成する場合、あるいは、止水域の水質が富栄養化している場合などには、水の拡散を極力防止して温度成層を形成することが、貧酸素水塊の形成を促し、生物相を貧弱化する虞がある。そのため、現場状況に合わせて、上記階段状構成を適宜選択採用することが必要である。
【0037】かかる構成の止水域1の周囲の水位変動域2aには、図2に示すように、20%程度以下の緩やかな勾配に形成され、植生が止水域1から徐々に勾配に沿って推移するように植物推移帯2が設けられている。20%以下の勾配に設定することにより、生物多様性に富む植物推移帯2の定着、形成が促進され、安定的に維持される。より好ましくは、10%以下の勾配に設定すればよい。10%以下に設定すれば、傾斜がそれよりも急峻な場合に比べて、同一の水位変動に対して、より広い植物推移帯2が確保され、併せて、植物推移帯2の土壌の乾燥、湿潤の変化がより緩慢になる。土壌の乾燥、湿潤が、水位変動に敏感に対応して急激に変化するといった極端な環境変化をなくすことができ、生態系の定着に好ましいことが本発明者らにより確認された。
【0038】止水域1周囲の植物推移帯2が設けられた水位変動域2aでは、水の水位変動により、乾燥と湿潤を繰り返す。かかる構成の水位変動域2aには、図1に示すように、流水域4が接続され、予め設定しておいた許容上限水位を上回る過剰流入水が流れ込んだ場合には、流水域4に越流して、水位変動域2aの許容上限水位を越えないように制御されている。
【0039】このように、止水域1の周囲に許容上限水位の制御が行える水位変動域2aを設けておくことにより、止水域1には、通常流入水による流れが発生しないように制御することができる。そのため、池などに設けられた止水域1を生息場とする生物を生息させることができる。
【0040】さらに、植物推移帯2の外周の水際域2bには、山椒魚や蛙などの両生類、あるいは蛍や蜻蛉などの昆虫類などの小動物が往来できるように、勾配を100%以下に設定した傾斜が設けられている。勾配が100%を越える場合には、上記小動物の往来の確保が難しくなり、100%以下であれば、上記小動物の大半の往来の確保が期待できる。また、勾配に形成することにより、段差のある階段状に構成する場合とは異なり、上記小動物の行き来の確保が行なえる。
【0041】かかる勾配は、より好ましくは、0を含まない50%以下に設定すればよい。かかる50%以下に設定すれば、盛土においても土砂の崩壊が防げると共に、1:2の勾配となり施工が容易である。併せて、登坂能力の比較的低い両性類などでも往来が可能となる。
【0042】人工池に設けた止水域1には、周囲地盤への漏水を防止するための漏水処理が施されている。漏水処理としては、例えば、周辺の地下水位が高く、漏水の可能性が低い場合には、凹部内面に荒木田土などの粘性土の張り付けを行なうだけで済む。
【0043】地下水位および止水域1を設ける地盤の土質条件によっては、ベントナイトと掘削した際に発生した現地発生土とを1:3程度の割合で混合したベントナイト混合土を、凹部1aの内面上に10〜20cm程度敷き均して転圧し、その上に粘性土を張り付けるようにしてもよい。現地発生土を使用することにより、現地環境に生息していた土中生物をそのまま生息させることもでき、ビオトープに必要な生態系の地中規模での寄与が可能となるためである。また、ベントナイトを使用することにより、防水効果の向上に加え、漏水箇所の自己補修の効果が得られる。
【0044】さらに、止水域1の漏水の可能性が非常に高い場合には、上記ベントナイト混合土層の上に伸縮性に優れたゴムシートなどの防水シートを敷設し、その防水シートの上に粘性土を張り付けるようにすればよい。防水シートにより、水の漏出を遮断することができる。防水シートには、必要に応じて、表面に凹凸を設けて、ベントナイト混合土層の張り付けが行い易いように構成してもよい。
【0045】また、止水域1の施工完了後に、メンテナンスなどにより止水域1内の作業を行なう必要が予想される場合には、作業性を考慮して、上記構成のベントナイト混合土層の上にモルタル層の下地として砕石層を設け、砕石層の上に防水モルタル層を設けた3層構造としてもよい。
【0046】かかる3層構造とすることにより、長期間に蓄積した落葉や底泥浚渫や、モニタリングのための生物調査が止水域1内からできるため、メンテナンスの作業が行い易くなる。
【0047】水位変動域2aに接続された流水域4は、図3(C)に示すように、地盤掘削により凹部4aを水路状に形成し、かかる凹部4aに水を流して、人工水路の小川を構成する。流水域4の漏水処理は、前記止水域1の漏水処理と同様に行なえばよく、例えば、周辺の地下水位が高く、漏水の可能性が低い場合には、凹部内面に荒木田土などの粘性土の張り付けのみとすればよい。地下水位および地盤の土質条件によっては、ベントナイトと現地地盤を掘削した際に発生する現地発生土とを1:3程度の割合で混合したベントナイト混合土を、凹部内面上に10〜20cm程度敷き均して転圧し、その上に粘性土を張り付けるようにすればよい。
【0048】流水域4の漏水の可能性が非常に高い場合には、上記ベントナイト混合土層の上に伸縮性に優れたゴムシートなどの防水シートを敷設し、その防水シートの上に粘性土を張り付けるようにすればよい。さらに、流水域4の施工完了後に、メンテナンスなどにより流水域1内の作業を行なうことが予想される場合には、作業性を考慮して、上記構成のベントナイト混合土層の上に砕石層を設け、砕石層の上に防水モルタル層を設けた3層構造とすることもできる。なお、図3(C)に示す構成では、凹部内面にベントナイト混合土層4b、防水シート4c、粘性土層4dを順に設け、さらに川床に玉石層4eを設けた流水域4の構成を示した。
【0049】このようにして漏水処理が施された流水域4の川床に相当する部分は、流水域4を流れる水の流速に合わせて適宜の仕上げを行なうことが好ましい。例えば、流速の早い側から、礫仕上げ、小石仕上げ、砂仕上げの順に仕上げればよい。流速に合わせた川床の仕上げを行なうことにより、流速、川床仕上げのそれぞれに応じた生物種が生息することとなり、多種多様な生物種の生息環境を人工的に創出することができる。かかる構成は、生態系を定着させるビオトープの構成に有効である。
【0050】流水域4は、前述の如く、止水域1の周辺に設けた水位変動域2aの許容上限水位で接続されているため、かかる接続位置を溢水部として、例えば、雨水などにより水位変動域2a内の水位が上昇しても、溢水部を越流して植物推移帯2の上限を越えるまで水位は上昇することがない。流水域4を設けることができない場合には、下水道へ放流するための排水設備に接続すればよい。
【0051】流水域4を設けた場合には、越流した水は、人工水路に形成した流水域4に流れ、流水域4の下流側に設けた流水貯留槽6に貯留される。流水貯留槽6と流水域4の上流側とは、例えば、ポンプ7を介した配管などの送水手段で連絡され、止水域1内の水の越流がない場合でも、流水域4の水が涸れないように水を循環して流すようにする。
【0052】ポンプ7としては、水中ポンプ、あるいは揚水ポンプなど給水ポンプを現場状況に合わせて適宜選択して使用すればよい。このように、流水域4に水を流し続けることにより、流水域4を生息場とする魚類やカゲロウやカワゲラなどの流水域特有の水性昆虫類などの生物の生息場を確保することができる。なお、流水域4は、下水道に繋がる汚水桝に接続して、必要に応じて排水できるように構成しておけばよい。
【0053】上記構成では、送水手段を使用して、流水域4の水涸れを防止するようにしたが、止水域1の水涸れも、同様な構成で防止するようにすることもできる。かかる構成は、人工緑化区域内に設けた雨水貯留槽や生活系廃水などを水源とする人為的な補給水の供給が可能な場合には、図4に示すように、止水域1の水位変動を確認する水位センサ8に給水ポンプ9を接続し、止水域1に満たされた水が許容水位の下限である給水レベルに達した時に、上記水源から水の補給ができるようにしてもよい。
【0054】給水ポンプ9の代わりに、吸水と給水とを選択的に行えるポンプを使用することにより、水位センサ8の水位検知により、止水域1の上限水位以下になった場合には水を供給し、水位変動域2aの許容水位上限を越える場合には、吸水するようにしてもよい。
【0055】かかる構成を採用することにより、水位変動域2aの水位を植物推移帯2以下にならないように制御して、植物推移帯2が乾燥して湿地としての環境が保持できなくなるのを防止することができる。
【0056】雨水貯留槽に溜めた水を使用する場合には、その水には溜めた水が腐敗しないように塩素系殺菌剤などが雨水の腐敗防止剤として投入されているため、貯留雨水の使用は、かかる雨水腐敗防止剤を除去した後で使用することが必要である。例えば、塩素系殺菌剤では、雨水貯留槽に溜めた水をさらに小型貯留槽に移し、数日間放置して自然に塩素を飛ばすか、紫外線で塩素を分解するか、エアレーションを行い強制的に塩素を除去する方法が考えられる。あるいは、土壌や植物の植え込み部分に散布して、地中内の自然濾過により塩素除去を行う方法も考えられる。さらには、かかる土壌や植生を利用した濾過装置を別途併設することにより、そこで貯留雨水の浄化を行うこともできる。
【0057】工場の生産過程などで発生する廃水や、冷却水、洗浄水などの事業所系廃水も、その水質浄化を行うことにより、本発明のビオトープの水源として使用することもできる。例えば、工場の生産過程で発生する廃水は、川や湖などの公用水域に放流する場合には、定められた水質基準までの浄化が求められるが、かかる公用水域に放流可能なまでに水質浄化が行われた処理水ならば使用することができる。
【0058】しかし、かかる事業所系廃水については、重金属などの有害金属については、公用水域への排出基準で厳しく規制されているため許容値以上に含まれる心配はないが、窒素や燐などについては別途必要に応じて独自に水質検査を行い、特に水の流れが抑えられた止水域1の富栄養化を防いで、異臭やアオコの発生などが起きないように注意する必要がある。
【0059】また、トイレから排出される汚水や、台所、洗面所、さらには食堂などから排出される雑排水などの所謂生活系廃水については、一旦合併浄化槽などで浄化した後、さらに、EWP(ヨシの湿地)に通して自然濾過により浄化して使用すればよい。合併浄化槽の通過後の再度の浄化には、例えば、機械的な高度処理装置などの上記EWP以外の浄化手段を使用してもよい。
【0060】このように工場や事業所の放流水を水源とする場合には、浄化用の湿地を併設することにより、従来廃棄するのみであった廃水の有効活用が可能となる。かかる活用を図ることにより、補給水の維持費用が不要になる。さらに、水源確保のための流域も必要としないため、必要な水域を確保する場合に比べて、イニシャルコスト、維持管理費が比較的に少ない小規模ビオトープの計画に有効である。
【0061】ビオトープからビオトープ外に排出される排水は、ビオトープ内で浄化作用により、SS(浮遊物質量)、BOD(生物学的酸素必要量)、N(窒素)含有量、P(リン)含有量などの点において水質向上がなされるため、排水に関わる公共用水域への汚濁負担の軽減が図れる。
【0062】植栽部3は、例えば、図1の凡例に示すように、種々の樹径(円の大きさで区別)の地域の潜在自然植生を考慮し、多様な樹木(樹木種は円形内の線種で区別)で構成すればよい。ここでは樹木としては、シラカシ、ケヤキ、コナラ、クスノキ、スダジイ、タブノキなどが使用されている。既存の樹林は、生物の定着を阻害しないと思われる場合は、そのまま残しておいてもよい。図中、樹径は、5cm未満、5cm以上10cm未満、10cm以上15cm未満、15cm以上で区別した。かかる樹径は植樹時の樹径である。
【0063】上記構成の植栽部3は、図2に示すように、さらに、植樹したり、あるいは緑化するまで現地にあった林などを伐採せずに保存して利用することにより構成する樹林3aと、樹林3aの地上側である林床部3bとから構成される。樹林3aの樹木を植樹したり、あるいは増殖したりすることにより、地表に到達する日射量を抑え、日陰で多湿な自然界に存在する林床部を再現する。かかる林床部3bには、樹木のない草地や花壇などと異なる林床特有の動植物を生息させることができる。
【0064】上記のように止水域1、植物推移帯2、植栽部3、流水域4などから構成されたビオトープとしての人工緑地の計画に当たっては、水源を、雨水とする場合には、例えば、人工緑地の水域の貯水容量と、オーバーフローや、蒸発散などに基づく損失水量と、アメダスデータなどの気象データに基づく平均降水量とをそれぞれ算出し、平均降水量から得られた水量が損失水量に見合うように、流出係数および安全係数を考慮して集水に必要な水域面積を求めておけばよい。
【0065】しかし、流域からの雨水の直接流入が困難な場合には、前述の如く雨水貯留施設を必要に応じて設け、水中ポンプなどのポンプを使用した送水手段により、随時必要に応じて水域に貯留雨水を供給するなどの方法を適宜選択して使用すればよい。
【0066】図5には、調整池10に止水域1を設ける構成を示す。調整池10は、一般的には、図5(A)で破線表示(現状地盤)するように、周囲地盤より低く掘り下げられて、調整池底部10aが平らな器状に構成され、豪雨などの周囲環境の異常出水時には一時的に貯水できるように構成されている。
【0067】調整池10に止水域1を設けるには、先ず、調整池底部10aを掘削して、凹部11を形成する。凹部11は、底部11aと、その周囲を傾斜法面11bで略すり鉢状に囲んで調整池底部10aに繋がるように構成されている。かかる構成の凹部11に水を常時満たした区域を常時冠水域Aとする。この場合には、常時冠水域Aが、止水域1と一致することとなる。常時冠水域Aには、例えば、ヒシ類やアサザなどの浮葉植物、沈水植物を植えておく。
【0068】調整池底部10aには、凹部11の周囲に平坦部分を残して、階段状に盛土12aを設ける。盛土12aの一段目の高さは、例えば、異常冠水状況を除いて、月に数回程度の冠水状況下の平均水位より少し高めに設定しておけばよい。常時冠水域Aから盛土12aの構築位置までを、図5(A)に示すように、頻繁冠水域Bとして設定し、この頻繁冠水域Bには、例えば、ガマやヨシなどの抽水植物、ヤナギ類やショウブなどの湿性植物を植えておけばよい。
【0069】階段状に形成した盛土12aの平坦部分12bには、冠水に弱い植物や、ハルニレ、コナラなどの水辺林を構成する硬木を植えればよい。かかる平坦部分12bから頻繁冠水域Bまでを、稀冠水域Cとして設定した。稀冠水域Cでは、稀に発生する可能性がある異常豪雨などの場合には冠水するが、通常の調整池10の利用範囲では冠水しない。通常の調整池10の利用状況下では、頻繁冠水域Bが冠水することとなる。
【0070】さらに、本発明では、上記異なる区域に植えた浮葉植物、沈水植物、抽水植物、湿性植物、水辺林を構成する硬木などの水辺林用植物、地上性植物などが、常時水のある止水域1から、水位変動域2aを経て地上側にまで、漸次植生の移り行きが見られる植物推移帯に形成されている。
【0071】かかる構成では、調整池10の調整池底部10aを掘削するとともに、その周囲を階段状に盛土して、冠水頻度により常時冠水域A、頻繁冠水域B、稀冠水域Cを設けているため、冠水を想定せずに一律に冠水に弱い植物を設ける従来のビオトープの構成とは異なり、雨水調節機能を発揮することにより水位変動が生じても、植物が死滅する虞がない。
【0072】上記構成の調整池と止水域との両機能を併有させる構成は、例えば、対象地域のアメダスなどの気象データを利用した降水量解析と、人工緑化区域内の排水計画とに基づき調整池内の冠水頻度と水位との関係をシミュレーションして、冠水頻度を常時冠水域、頻繁冠水域(例えば、月に数回冠水)、稀冠水域(年に一回程度冠水)に区分する。
【0073】実験では、上記構成の止水域を設けたビオトープを構成し、上記構成を設けない場合と比較した結果、造成後半年経過した時点での植物調査では、上記構成の冠水頻度により区分を施した場合の方が、かかる構成を採用しない場合に比べて、植物種の増加傾向が著しいことが確認された。さらには、当初植えつけた植物種の衰退や、消滅も確認されず、本発明に係る上記構成が生態系の定着に有効であることが分かった。
【0074】本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更してもよい。
【0075】例えば、上記構成では、調整池に止水域を設けた場合について説明したが、ビオトープの構成規模が大きく、その人工緑化区域内に複数の調整池、遊水池を含む場合には、これらを複数併用してもよい。
【0076】また、ビオトープの水源や、止水域や流水域への補給水などに、雨水貯留槽に溜めた水を使用する場合には、前述のように、溜めた水が腐敗しないように貯留雨水に投入されている塩素系殺菌剤などの雨水の腐敗防止剤を除去した後で使用すればよい。
【0077】例えば、塩素系殺菌剤では、雨水貯留槽に溜めた水をさらに小型貯留槽に移し、数日間放置して自然に塩素を飛ばすか、紫外線で塩素を分解するか、エアレーションを行い強制的に塩素を除去する方法が考えられる。あるいは、土壌や植物の植え込み部分に散布して、地中内の自然濾過により塩素除去を行う方法も考えられる。さらには、かかる土壌や植生を利用した濾過装置を別途併設することにより、そこで貯留雨水の浄化を行ってもよい。
【0078】工場の生産過程などで発生する廃水や、冷却水、洗浄水などの事業所系廃水も、その水質浄化を行うことにより、本発明のビオトープの水源などに使用することができる。例えば、工場の生産過程で発生する廃水は、川や湖などの公用水域に放流するためには、定められた水質基準にまで浄化する必要があるが、かかる浄化後の処理水を水源などに使用すればよい。
【0079】かかる事業所系廃水については、重金属などの有害金属については、公用水域への排出基準で厳しく規制されているため許容値以上含まれる心配はないが、窒素や燐などについては別途必要に応じて独自に水質検査を行い、特に水の流れが抑えられた止水域の富栄養化を防いで、異臭やアオコの発生などが起きないようにする必要がある。
【0080】トイレから排出される汚水や、台所、洗面所、さらには食堂などから排出される雑排水などの所謂生活系廃水については、一旦合併浄化槽などで浄化した後、さらに、EWP(ヨシの湿地)に通して自然濾過により浄化して使用することができる。合併浄化槽の通過後の再度の浄化には、上記EWP以外にも、例えば、機械的な高度処理装置などの浄化手段を使用することができる。
【0081】このように事業所系廃水や生活系廃水を必要に応じて浄化することにより、従来は排水するだけであった廃水も、本発明では、ビオトープの水源として、あるいは補給水として有効活用が可能となる。かかる活用を図ることにより、補給水の維持費用が不要になる。さらに、水源確保のための流域も必要としないため、必要な水域を確保する場合に比べて、イニシャルコスト、維持管理費が比較的に少ない小規模ビオトープの計画に有効である。
【0082】ビオトープからビオトープ外に排出される排水は、ビオトープ内での浄化作用により、SS(浮遊物質量)、BOD(生物学的酸素必要量)、N(窒素)含有量、P(リン)含有量などの点において水質向上がなされるため、排水に関わる公共用水域への汚濁負担の軽減を図ることができる。
【0083】また、前記説明では、冠水頻度を、常時冠水域、頻繁冠水域、稀冠水域と区別したが、調整池などの設置状況の降水量などに基づき、頻繁冠水域、稀冠水域を構成する水位変動の高さを変更してもよい。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、人工緑地の水域の維持に必要な補給水を、流域から直接あるいは貯留槽を経由して集水する構成としているため、水道水を使用する場合とは異なり、自然に近い水質の水を供給することができる。そのため、多様な小動物をその生態系の中に取り込む必要のあるビオトープの構成に有効である。川や水道水などの水源を必要としないため、立地条件や維持費用などの面からも水源確保が楽に行なえ、ビオトープの計画がし易い。
【0085】本発明によれば、従来とは異なり、事業所系廃水や、生活系廃水をビオトープの水源などに使用することができ、ビオトープの水源に立地条件や維持費用などの問題点の解消が図れる。
【0086】本発明によれば、冠水頻度に応じた植栽計画を行なうことができ、止水域の植物水位帯の水位変動に対する耐性を向上することができる。また、かかる構成の植物推移帯は、常時冠水下で生育できる浮葉植物、沈水植物と、頻繁冠水域下である程度の冠水には耐性を有する沈水植物、湿性植物と、稀冠水域で生育する冠水には弱い水辺林、地上性植物とが、段階的に移りゆく構成とされるため、より自然に近い配置構成が達成できる。そのため、種が定着し易く、長期間安定した生態系の構成を促進することができる。
【0087】また、冠水頻度に応じた植物推移帯を設けることにより、植生の配置に強く影響される小動物の冠水頻度に応じた棲み分けが促進され、結果として定着性の強い動植物相が構成され、多様な生態系内包した優れたビオトープを創出することができる。
【出願人】 【識別番号】000112668
【氏名又は名称】株式会社フジタ
【出願日】 平成12年2月15日(2000.2.15)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
【公開番号】 特開2001−224243(P2001−224243A)
【公開日】 平成13年8月21日(2001.8.21)
【出願番号】 特願2000−36563(P2000−36563)