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【発明の名称】 農業用マルチシート
【発明者】 【氏名】八代 洵

【氏名】羽藤 信弘

【要約】 【課題】地温抑制から保温への変換を作業効率よく、且つ安価に行うことができる農業用マルチシートを提供する。

【解決手段】波長800nmの光透過率が80%以上のプラスチックシート基材上に紙シートを擬似接着させ、波長800nmの光透過率が10%以下に調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 波長800nmの光透過率が80%以上のプラスチックシート基材上に紙シートを擬似接着した農業用マルチシートであって、該マルチシートの波長800nmの光透過率が10%以下である農業用マルチシート。
【請求項2】 プラスチックシートが生分解性樹脂である請求項1記載の農業用マルチシート。
【請求項3】 紙シート部に表面からプラスチックシートに到る深さの複数のスリットあるいはミシン目を入れ、紙をプラスチックシート基材から部分的に剥がすことを可能した請求項1または記載の農業用マルチシート
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は畑作・園芸用に適した農業用マルチシートに関するもので、特に地温抑制から保温への変換を作業効率よく、且つ安価に行う手段とその資材の製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】農業用マルチシートとして、元来稲藁や油紙が主に用いられていたが、近年プラスチックフィルムシートが大幅に普及し、主に春先及び秋・冬の保温による生育促進に用いられている。ところが、プラスチックフィルムシートは初夏から夏場の地温抑制には効果がなく、この用途には従来の稲藁、アルミをプラスチックシートに蒸着した反射フィルム、紙等が用いられている。
【0003】しかし、初夏から夏にかけては遮光・地温抑制をして根の活着を高めるとともに雑草の生長を抑制し、その後秋から初冬にかけては保温に切り替えて生育を促進するという全く相反する機能を求める作物・作型がある。このような例としては、九州・四国などの西南暖地地域でのトマトやメロンの抑制栽培が例として上げられる。この場合の対策として、先に示した保温機能及び遮光・地温抑制機能を持つ相反する機能を持つマルチシートを二重に敷き、夏場は地温を抑制し、地温が低下した段階で地温抑制機能を持つシートを剥がし、保温機能を有するシートのみにするという方法もある。しかし、これには2種のマルチシートが必要であり、また、2回敷設作業を行う必要があり、費用的に高価でかつ作業的にも煩雑なため普及していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、保温機能及び地温抑制機能を有することによって夏から秋まで使用可能な農業用マルチシートを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手投】本発明者らは、上記課題を解決する手段を鋭意検討した結果、プラスチックシートの上面に紙シートを擬似接着した2層の構成とし、プラスチックシート側が地面に接するように敷設することによって、保温機能及び地温抑制機能を有し、夏から秋まで使用可能な農業用マルチシートを完成した。この農業用マルチシートは、紙シートとプラスチックシートを簡単に剥離する事が可能である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の農業用マルチシートの使用形態について詳述する。本発明の農業用マルチシートは、プラスチックシート側を地面に向けて敷設することによって、初夏から夏かけて紙シートにより遮光されるので地温の上昇を抑制することが可能で、根の活着性の向上や青枯れ病の発生抑制、高温によるしおれ、雑草の生長等を防止する。続いて、秋から冬にかけて保温が必要になった段階で上面の紙シートを剥がし、プラスチックシートを露出させる事により保温を行い生長を促進させる。この際、紙シート層のみにスリットやミシン目を一定間隔で碁盤目状に入れておく事により、部分的に紙シートを剥がすことにより必要な箇所のみ保温機能を持たせる事も可能である。本発明は2種類のシートを2回敷設する手間もなく、簡単に紙シートの層を剥がす事が可能である。特開平10-271920号公報、特開平11-113425号公報には、保温を目的として基材である紙の開口部の上面にプラスチックフィルムを張り合わせた農業用マルチシートが開示されているが、本発明は基材をプラスチックシートとして遮光・遮熱を目的に紙を上面に擬似接着させ、その後保温時には紙シートを剥がすものであり全く技術思想的に異なったものである。また、特開平11-253061号公報には紙シート上にプラスチックラミネート層を設けた農業用マルチシートが開示されているが、紙シートとプラスチックラミネート層を剥離することは記載されておらず、本発明のように保温機能と地温抑制機能を任意の時期に付与することは不可能である。
【0007】マルチシートに遮光・地温抑制機能を持たせるためには、波長800nmの光透過率が10%以下であることが必要であり、5%以下であればさらに望ましい。波長800nmの光は植物の光合成に関わるものであり、この波長の光透過率を低下させることによって雑草の生長を防止できる。波長800nmの光透過率を10%以下にするためカーボン等の着色填料を内添しても良い。また、厚さも剥離強度、光透過性等の条件を満足できるものであれば特に制限はないが、あまり厚すぎると巻き取りの径が太くなり、敷設機への装着や作業性が悪化するので500μm以下、望ましくは200μm以下が望ましい。
【0008】本発明で使用する紙シートとしては、どのような原料のパルプも利用可能であり、例えばクラフトパルプ、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、脱墨パルプ等が挙げられる。紙としては疑似接着させたプラスチックフィルムから剥がす際や敷設機(マルチャー)で敷設する際に層間剥離したり、破断したり、引き裂けたりしない強度を有していれば、特に限定されるものではないが、少なくとも基材となるプラスチックシートの剥離強度よりも表面強度の強い紙が望ましい。
【0009】本発明で使用するプラスチックシートは、紙シートを剥がした時に、保温機能を付与するためには波長800nmの光透過率が80%以上であることが必要で、90以上であればより好ましい。例を挙げると、一般に農業用マルチシートとして用いられているポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等から成るプラスチックシートを使用することができる。また、生分解性樹脂から成るプラスチックシートは片づける手間もなく、一層好ましく使用することができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、デンプン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂等から成るシートを使用することができる。また、プラスチックシートは、無色透明の他、黒、緑、白等に着色されたものも利用可能である。
【0010】疑似接着方法としてはフィルム原料として用いられる樹脂を押出機などで膜状にして紙に積層する所謂押し出しラミネーションや、予め製膜されたフィルムを加熱ロールで紙に圧着する所謂熟ラミネーション、或いは紙やフィルムのどちらか一方の面に接着剤や粘着剤を塗工して積層する所謂ドライラミネーション、ウェットラミネーション等の公知の方法で積層することが出来るが、目的の疑似接着状態を発現させるために特別の工夫が必要である。
【0011】疑似接着状態は通常の取り扱いや敷設機(マルチャー)などの敷設作業時に拾いて剥離することはなく、引き剥がす時には紙を破断せずに容易に剥がせることができれば全面接着でも部分接着でも特に限定されるものではなく、上述の公知の方法で得ることが出来る。
【0012】全面接着の場合、プラスチックシートと紙シート間のT型剥離強度は20℃、65%R・Hの環境下で剥離速度300mm/分でT型剥離強度が10〜100g/25mmとなるようにすることが好ましい。部分接着の場合はその接着面積やパターン形状によって上述の方法での定量化が出来ず剥離強度を特定することは難しいが製品形態で0.5kg〜10kg/製品幅(900mm〜2100mm)のT型剥離強度が好ましい。
【0013】全面接着の疑似接着状態は、押し出しラミネーションで製造する場合、溶融樹脂温度、エアーギャッフ、ニップ圧力等で調整することができる。また、熱ラミネーションで製造する場合は熱ロール湿度、ニップ圧力等で調整することができる。更に、接着剤や粘着削を用いるラミネーションで製造する場合は接着剤や粘着剤の接着力や塗工量で調整することができる。
【0014】部分接着の疑似接着状態は押し出しラミネーション、熱ラミネーション等ではロール間で挟圧する少なくとも2本のロールのどちらか一方のロールに必要に応じたパターンの凹凸部を設けることによって接着部分と非接着部分が形成され剥離を容易にすることが出来る。接着剤や粘着剤を用いるラミネーションの場合は印刷機や塗工機なとで必要に応じたパターンで塗工することによって同様に接着部分と非接着部分が形成され剥離を容易にすることが出来る。パターン形状は線状、格子状、円形、菱形等必要な剥離強度が得られれば、特に限定されるものではない。
【0015】本発明の製品形態としては、900mm〜2100mm幅、100〜200mの巻き取りとし敷設機(マルチャー)に利用可能な形として仕上げる。また、この際紙側に100〜10000mm間隔でスリットあるいはミシン目を入れる事によりプラスチックシートから紙シートを容易に剥がすことができる。これを畑地に紙面を上にして敷設する。敷設後夏場は紙の遮光機能により地温が抑制される。地際部の紙は1ケ月程度で分解されるが一般にプラスチックシート部は耐久性が高いため風に飛ばされる事もない。保温が必要となった段階で紙シートを剥がす。この際必要に応じて根の先端部分のみをはがして保温性をあげたり、スイカ、メロン等の瓜科作物の場合は果実の部分の下のみ紙シートを残し、果実がプラスチックシートに直接接し高温になるのを抑制する事もできる。剥がした紙は周辺に埋め込み、自然分解を図る事も可能で環境対策となる。特に生分解性のプラスチックシートを用いた場合にはすべてを土中で分解・消滅させる事も可能である。
【0016】
【実施例】以下に実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
T型剥離強度:ASTM D1876-72“PEEL RESISTANCE OF ADHESIVES(T-PEEL TEST)”に準じて、測定した。
光透過率:分光光度計(商品名:UV−3100PC、(株)島津製作所製)を用いて、セル部にシートを1枚セットし、800nmの光に対する光透過率を測定した。
【0017】[実施例1]紙シートとして、パルプ分として脱墨パルプ100%から成り、丸網式抄紙機にて3層抄きで抄造した、坪量120g/m2、厚さ169μmの紙を用いた。プラスチックフィルムシートとして、低密度ポリエチレン樹脂から成る坪量20g/m2、厚さ25μmのポリエチレンフィルムシート(商品名:透明ポリフィルム、800nmの光透過率92%、住友化学工業製)を用いた。これらの紙シート及びプラスチックフィルムシートをロール幅方向100mm間隔に10mm幅の凸部を設けた熱ロールでロール温度200℃の条件にて圧着貼合し、幅1500mm、長さ100mの巻き取りに加工して、ポリエチレンフィルムシートと紙シートの疑似接着マルチシートを作成した。このマルチシートのT型剥離強度は2.4kg/1500mm幅で、容易に紙シートのみを剥がし取ることが可能であり、800nmの光透過率は4.0%であった。さらに、マルチシートをマルチャーに装着し、畑に敷設したところ剥離、破断等の不具合もなく敷設することが可能であった。
【0018】[実施例2]紙シートは実施例1と同様のものを使用し、プラスチックフィルムシートとしてポリ乳酸系生分解性樹脂フィルムシート(商品名:レイシア、800nmの光透過率85%、三井化学製)を使用し、実施例1と同様に疑似接着した後、幅1500mm、長さ100mの巻き取りに加工した。このマルチシートのT型剥離強度は3.1kg/1500mm幅で、表層の紙を簡単に剥がし取ることが可能であり、800nmの光透過率は3.9%であった。さらにマルチシートをマルチャーに装着、畑に敷設したところ剥離、破断等の不具合もなく敷設することが出来た。
【0019】[実施例3]紙シートは実施例1と同様のものを使用し、プラスチックフィルムシートとししてポリエチレン樹脂を押出温度300℃で30μmの厚みになるよう押出ラミネーションで紙シートに全面接着させ、幅1500mm、長さ100mの巻き取りに加工した。このマルチシートのT型剥離強度は76g/25mmで、容易に紙シートのみを剥がし取ることが可能であり、800nmの光透過率は4.0%(ポリエチレン樹脂シート単独の光透過率は88%)であった。さらに、マルチシートをマルチャーに装着、畑に敷設したところ剥離、破断等の不具合もなく敷設することが出来た。
【0020】[実施例4]実施例1で作成したマルチシートに50cm間隔で網の目状にミシン目を入れた後、マルチャー敷設を行った。これからミシン目に沿って紙を剥がしたところ、その形に剥がし取る事ができた。
【0021】[実施例5]温室内に、実施例1のマルチシートを敷設した畝、及び対照として白黒ポリマルチ(商品名:白黒ダブルマルチ、光透過率5%、みかど化工製)を白を上に敷設した畝を作り、株間50cm、2条植えで両方にトマトを定植し、その生育を比較した。表1に示したように、8月20日に定植後10月1日に生長状態を比較したところ、実施例1のマルチシートを敷設した畝の方が草丈が約5%高かった。これは実施例1のマルチシートを敷設した畝は対照の畝と比較して地温の上昇が抑えられ、根の活着が良かった為と考えられる。10月2日に実施例1のマルチシートの表層の紙シートのみを剥がした。この時、地際の埋め込み部の紙は既に腐食しており、表面の紙シートのみを簡単に剥がすことが可能であった。12月20日に6果房まで収穫したところ、実施例1のマルチシートを敷設した畝では総収量及びトマトの標準規格表より見た秀優品率で対照の畝を約10%凌ぐ収穫が得られた。
【0022】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【出願日】 平成12年1月17日(2000.1.17)
【代理人】 【識別番号】100074572
【弁理士】
【氏名又は名称】河澄 和夫
【公開番号】 特開2001−197837(P2001−197837A)
【公開日】 平成13年7月24日(2001.7.24)
【出願番号】 特願2000−8206(P2000−8206)