トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 農作物用光線吸収コーティング材及びそのコーティング方法
【発明者】 【氏名】一宮 正喜

【氏名】一宮 正憲

【要約】 【課題】ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置した農作物育成用ハウスに対して、その内部に位置する農作物の環境改善を目的として、一定厚みで一定の光線吸収効果のあるコーティング材及びそのコーティング方法を提供する。

【解決手段】透明で耐候性のある合成樹脂エマルジョン中に、粒径0.1μm以下のコロイド領域の無機質微粒子と、散布基準液として定める原液濃度で散布コーティングしたときの被膜厚みで太陽光線中の有害光線及び赤外線を十分吸収し得るだけの量の光線吸収剤で、界面活性剤及び安定剤を含有させ、水で希釈可能に原液を作る。上記原液は、50%程度までの水を加水可能であり、所要のコーティング被膜、即ち所要の光線カット効果を得るべく濃度を定め、最適濃度で散布、コーティングする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウスにコーティング被膜を形成し、その内部に位置する農作物を発芽、育苗、成長、収穫時期を通じて有害光線から保護するための農作物用光線吸収コーティング材であって、透明で耐候性のある合成樹脂エマルジョン中に、粒径0.1μm以下のコロイド領域の無機質微粒子と、散布基準液として定める原液濃度で散布コーティングしたときの被膜厚みで太陽光線中の有害光線を吸収し得ると共に赤外線吸収効果のある光線吸収剤と、界面活性剤及び安定剤とを含有し、前記原液濃度に対し、水で希釈して使用可能とすべく原液濃度を調整したことを特徴とする農作物用光線吸収コーティング材。
【請求項2】 ビニール又はガラス等の透明材料で建造された農作物育成用のハウスに、水性の農作物用光線吸収コーティング材をコーティングする方法であって、前記ハウス内で発芽、育苗、成長、収穫すべき対象農作物に合わせて有害光線をカットする量を定め、定めた量の有害光線をカットできる被膜を形成すべく前記コーティング材の濃度を定め、定めた濃度とすべく原液濃度の前記コーティング材に水を加えて撹拌し、水を加えて希釈された前記コーティング材に関しては所要時間放置して熟成し、定めた濃度の前記コーティング材を、前記ハウスの表面に噴霧、散布によってコーティングすることを特徴とする農作物用光線吸収コーティング材のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農作物用光線吸収コーティング材及びそのコーティング方法に関し、詳しくは、ビニール又はガラス等の透明材料で建造された農作物育成用のハウスの内側又は外側から、紫外線を含めた農作物に対して有害な光線をカットできるコーティング材を噴霧、散布することでコーティングし、農作物の成長を格別促進することができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】我々は太陽光の恩恵を受けつつ地球上で生活している。太陽からは幅広い波長の電磁波が放射され、その中には地球上の生物に極めて有害な短波長(190〜280nm)の紫外線UV−Cが含まれている。この紫外線は、幸いにも地球を取り巻く大気中のオゾンが吸収し、地球上の生物の生命を守ってくれている。しかし、それより少し波長の長い紫外線UV−B(280〜320nm)、UV−A(320〜400nm)が地表面に到達しており、日焼けや皮膚ガン等の発生率を高めるような害をもたらしている。
【0003】一方、紫外線の農作物への悪影響はよく知られている。即ち、多くの研究者が報告しているように、波長200〜400nmの近紫外線は、植物の生育に対し、概して抑制的である。そのため、近紫外線を除去すると、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、キク等多くの植物の育成が促進されることが実験的に知られている。
【0004】また、九州大学農学部園芸学教室の研修者龍氏は、夏播ホウレン草の栽培実験を行い、近紫外線除去によりその育成が著しく促進され収量が高まること、また生育最盛期には、植物生長ホルモンである内生ジベレリンの活性が強まることを報告している。
【0005】ただし、これら研究結果は、紫外線の有無による是非を研究したものであり、その濃度による詳細な研究は、今後の課題とされている。人工化学物質によってオゾン層が破壊され、徐々に大気中のオゾン濃度が減少している昨今の状況下において、紫外線の増加が懸念され、農作物に対する対策が急務である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術に鑑みて、ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウス(ビニールハウス、ガラスハウス)を対象として、農作物にとって有害な紫外線特に近紫外線を所望量だけカットし得る農作物用光線吸収コーティング材及びそのコーティング方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、農作物に対する有害光線(例えば近紫外線と、可視光線の一部)を規定し、規定の光線を規定の厚みでカット可能の基準液を定め、定めた液を対象農作物の育成状況に合わせて利用可能とすべく、特許請求の範囲に記載の通りの農作物用光線吸収コーティング材及びそのコーティング方法を構成した。
【0008】即ち、本発明の農作物用光線吸収コーティング材は、ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウスにコーティング被膜を形成し、その内部に位置する農作物を発芽、育苗、成長、収穫時期を通じて有害光線から保護するための農作物用光線吸収コーティング材であって、透明で耐候性のある合成樹脂エマルジョン中に、粒径0.1μm以下のコロイド領域の無機質微粒子と、散布基準液として定める原液濃度で散布コーティングしたときの被膜厚みで太陽光線中の有害光線を吸収し得ると共に赤外線吸収効果のある光線吸収剤と、界面活性剤及び安定剤とを含有し、前記原液濃度に対し、少なくとも水で50%程度まで希釈して使用可能とすべく原液濃度を調整したことを特徴とする。
【0009】また、本発明のコーティング方法は、ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウスに、水性の農作物用光線吸収コーティング材をコーティングする方法であって、前記ハウス内で発芽、育苗、成長、収穫すべき対象農作物に合わせて有害光線をカットする量を定め、定めた量の有害光線をカットできる被膜を形成すべく前記コーティング材の濃度を定め、定めた濃度とすべく原液濃度の前記コーティング材に水を加えて撹拌し、水を加えて希釈された前記コーティング材に関しては所要時間放置して熟成し、定めた濃度の前記コーティング材を、前記ハウスの表面に散布によってコーティングすることを特徴とする。
【0010】コーティング材に含有させる光線吸収剤は、紫外線吸収剤、着色剤、光線拡散材、赤外吸収効果のある材料等光線吸収機能を有する各種材料から選択する。
【0011】光線吸収剤のうち紫外線吸収剤は、一般に通常濃度の散布によるコーティング被膜が20〜75μmの範囲となることが予測されることから、原液濃度による最大厚み75μmを基準厚みとして、この厚みで最大量の紫外線をカットできるものとして定める。このように厚さ75μmでカットできる光線の量を100%とすると、その被膜が1/2、1/3となったときのカット率は、波長280nm以下の紫外線に対しては余り代わらず、280〜380nmの紫外線に対しては段階的に低くなる。これは、図1及び図2で示す透過率の実験結果から明らかである。即ち希釈液のコーティングによる最大厚み75μmを定め、この厚みで所要の紫外線をカット可能とすれば、その希釈度に応じて所望のカット効果を呈することができる。
【0012】一方、可視光線に対する吸収剤は、原液使用による最大厚み75μmのとき、最大のカット率を示すよう、その量を定める。このようにすれば、原液希釈によって、その度合いに応じて透過率を高くすることができる。
【0013】赤外線吸収効果は、一部アクリル剤等エマルジョン樹脂そのもの及び無機質微粒子、特にコロイダルシリカにもその効果があるので、特性図(図2参照)を取りつつ、必要に応じての赤外吸収効果のある材料を追加添加する。その作用、効果については、図10で詳細に説明する。
【0014】希釈は、最大50%の水を加えるまでの程度とする。それ以上希釈すると、液の安定性が阻害され、かつ最小被膜厚み20μmが保障できないからである。
【0015】コーティングは圧力液を霧状としてノズルから噴射する形の散布による。散布はハウス内面から又は外面から行うことが可能である。ハウス外面から行うと、農作物の有無に拘わらず常時実行でき、内側透明材がビニールである場合、ビニール膜を保護し、その寿命を長くすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明で用いる合成樹脂エマルジョンとしては、基本的に透明性及び耐候性を必要とすることから、アクリル系エマルジョン樹脂を用いるのが最適である。アクリル系エマルジョン樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、アクリル−スチレン共重合体エマルジョンをはじめとするアクリル共重合体系合成樹脂エマルジョンが用いられ、これらの中から耐候性、被膜強度、コストなどを加味して選択使用する。アクリル共重合体系合成樹脂エマルジョンの固形分濃度に特に限定はないが、通常は10〜75w%の範囲から選ぶことが多い。
【0017】塗膜形式、密着性を良好とするため混入する無機質微粒子としては、粒径0.1μm以下のコロイド領域の粒径の無機質微粒子を用いる。無機質微粒子の例は、各種無機酸化物または無機複合酸化物(Si、Al、Ti、Zr、Ce、Mg、Ca、Fe、Sn、Zn、W、Sb、K、Na、P、B等の単独酸化物または複合酸化物)、各種無機塩(ケイ酸塩、リン酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩等)などである。このうち、ガラスに対する密着度が特別良好である点、透明性維持の上で有効な点、さらに遠赤外吸収効果が高い点等からコロイダルシリカが最適であるが、これに限定されるものではない。
【0018】本例においては、無機質微粒子を含有するアクリル系エマルジョン樹脂として、コロイド領域の粒径の無機質微粒子の共存下にモノマー成分をエマルジョン重合して得たものを用いる。そのようにして得た無機質微粒子含有合成樹脂エマルジョンを用いると、分散性が良好で、安定性が高くなり、素材に対する密着性確保、透明性維持の点で有用だからである。
【0019】エマルジョン中の樹脂分1重量部に対する無機質微粒子の量は、0.05〜1.5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲から選ばれる。無機質微粒子の割合が余りに少ないときは対象物に対する密着性、透明性、硬度などの点で初期の効果が得られず、余りに多いときは密着性、透明性などの点でかえって不利となる。
【0020】そして無機質微粒子含有合成樹脂エマルジョンには、中波長ないし長波長(すなわち280〜400nm)の紫外線を吸収し得る紫外線吸収剤を含有させる。このような紫外線吸収剤の例としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系、シアノアクリレート系、金属錯塩系などあるいはこれらの複合形などがあげられる。
【0021】紫外線吸収剤の含有量は、無機質微粒子を含めたエマルジョン100w%に対し、1〜7w%の範囲から選ばれる。その量が余りに少ないときには所期の紫外線カット効果が得られず、一方その量を余りに多くしても紫外線吸収効果は一定以上には上がらない上、被膜が着色するおそれがあり、またコスト的に不利となる。実際には、図1に示すような光学特性を検討しつつ、例えば原液使用の場合の最大膜厚を75μmとし、そのときの有効量として定めるものとする。
【0022】上記各成分を有する被膜形成用組成物には、増粘剤、低温安定剤、造膜助剤、垂れ防止剤、界面活性剤、消泡剤、適宜着色剤、溶剤などの添加剤を含有させる。
【0023】以上の如く配合された農作物用光線吸収コーティング材は、光沢があり、所要硬度(例えばJIS鉛筆硬度2H)を持たせることができ、樹脂そのものの紫外線に対する劣化が少なく、かつ通過光線中の紫外線、特に波長380nm以下の紫外線を略100%吸収できる。紫外線吸収剤を混入したエマルジョン樹脂が固化すると、光拡散効果のある透明フィルムとなり、着色剤混入なしのものでは通常可視光線(400〜800nm)は略95%通過させる。一方、紫外線は、厚さ75μmの膜に対して順次吸収され、75μm位置で略100%吸収されることになる。
【0024】図1及び図2に、上記配合によるコーティング材を0.75mmのビニールに濃度を変えてコーティングした場合の透過率特性を示した。図1は波長を250〜450nmの範囲で、図2は185〜3,200nmの範囲で示している。曲線1はビニールだけのとき、曲線2は原液コーティングしたとき(厚み75μm)、曲線3は20%希釈(厚み約60μm)、曲線4は30%希釈(厚み50μm)、曲線5は50%希釈(厚み20μm)のときの特性を示す。
【0025】図において、ビニールそのものの特性を示す曲線1を参照すると、全体的にはS字状のカーブを描き、波長280〜300nmの紫外線に対しては100〜60%カットし、300〜330nmでは60%カットし、330〜370nmでは60〜85%カットしている。これには5%程度の反射による除去も含まれる。一般に、農作物に対し有害な紫外線は波長200〜400nmであるから、透明材料の紫外線カットでは不十分でかつ中途半端であるといえる。
【0026】次に、曲線2を参照すると、原液コーティングでは、75μmの被膜が形成され、波長380nm以下の紫外線を100%カットしている。全体的にはS字状のカーブを描いている。波長380〜400nmの紫外線は、100%〜10%にかけて、カット率を次第に小さくしている。400〜420nm以上の可視光線に対しては、全体的に光線の約10%を吸収(一部反射)している。波長3200の赤外付近では、本配合剤の特性として20%程度の吸収力を示している。
【0027】次いで、曲線3,4,5を参照すると、希釈に応じ、被膜が薄くなるに連れ、次第にカット率が低下する。この低下の度合いは、ビニールのみのときのS字カーブと、原液コーティングのときのS字カーブを段階的に埋める形である。言い換えれば、コーティング厚みの調整により、算術的にカット度合いを調整可能である。
【0028】以上のように組成された光線吸収コーティング材をビニール又はガラス等の透明材料で建造された農作物育成用のハウスにコーティングするには、次のような手順で行う。
【0029】まず、前記ハウス内で発芽、育苗、生長、収穫すべき対象農作物に合わせて有害光線をカットする量を定め、定めた量の有害光線をカットできる被膜を形成すべく前記コーティング材の濃度を定める。
【0030】有害光線をカットする量は、作付けする農作物について、種別、時期、作付位置等を考慮し、過去及び現在、そして将来に亘る研究結果に寄り、例えば夏播ホウレン草を植えている又は植えるべき位置に相当する天井部分に、近紫外線を80%程度カットする等と、農業主と相談して定める。必ずしも可能な限りの紫外線をカットしようとしないのは、農作物と紫外線との関係が不明の点もあり、農業主と共に研究しながら定めて行くこととしているためである。このためには、最初は20%、次には40%、最終的には80%というようにカット率を次第にあげるべく複数回のコーティングを行い、重ね塗りすることもできる。
【0031】紫外線のカット率を表現するには、2つの方法がある。一つには、所要のカット率(例えば70%)を実現できる波長に対応する濃度で示す表現である(表1)。即ち、図1の光学特性に応じ、例えば70%までカットしたい波長(nm)の指定により濃度を定める方法である。他の一つは、一定波長であり、例えば370nmに対するカット率を実現できる濃度を定める方法である(表2)。
【0032】
【表1】

【表2】

しかしながら、以上の如くして定める濃度は、あくまで参考値であり、所望のカット効果を具現するには膜厚を定めねばならない。即ち、実際のコーティング作業では、上記濃度を参考として、実際に形成される平均膜厚が所望のものになるよう濃度を定めて作業する。気温による希釈による濃度補正値を表3に示す。表中プラス(+)の数字は濃度が薄くなり、マイナス(−)数値が濃くなることを示す。気温が高いと乾燥が速く、膜が厚くなるからである。
【0033】
【表3】

以上のようにして濃度を定め、原液濃度のコーティング材に水を加え、撹拌し、日陰に置いて放置し、熟成する。熟成時間は約半日(12時間)が好ましく、1日(24時間)が更に好ましい。未熟成のコーティング材をコーティングすると、被膜が不均一となり、特に紫外線吸収効果に影響があり、被膜強度が十分でない。
【0034】実際コーティングにおいて、例えば25%の濃度のコーティング材が必要となる場合、前もって作成した20%のコーティング液と30%のコーティング液を1:1で混合して作成することもできる。この場合、両コーティング材は予め熟成され準備されたものであるので、この場合には長時間の熟成を必要としない。
【0035】図3に示すように、熟成された濃度のコーティング材6をビニールハウスやガラスハウス7の表面に噴霧、散布機8による散布によってコーティングする。コーティング方向は、内側よりも外側からの方が好ましい。外側だと、内部農作物の作付け状況に関係なくできる。また、透明材料がビニールの場合、ビニール材をアクリル樹脂によって保護することが可能であり、光線吸収効果に加えてハウスの耐久性を高くすることができる。
【0036】散布機としては、背負い式、タンク据置式、車両掲載式いずれでもできる。本コーティングは、散布方式で行うので1棟500平方メートルのビニールハウスに対しては、人員1名で2時間程度と、相当素速く行うことができる。作業容易であるので、農業主本人も実施できる。コーティング材の原料である薬剤は人体無害のものばかりを利用しており、水性であるので、作業は安全で、衛生的に行うことができる。
【0037】図4に示すように、以上の如くして、ビニール膜1にコーティング材被膜6が形成されると、ハウス7への入射光9は、その保有エネルギーEの一部Eを被膜6の表面で反射し、紫外線及び可視光の一部Eを被膜で吸収し、残り部分の一部Eをビニール膜1で吸収し、残りEをハウス内へ送る。被膜6及びビニール膜1で吸収されるエネルギーE,Eは、全て熱エネルギーに変換され、夏場は外気へ放熱する意味で、冬場はハウス内へ熱供給する意味で有効利用され、ハウス内農作物の育成を助長させるものである。
【0038】内部に入射されるエネルギーEの光線からは不用とされた紫外線及び可視光線の一部が取り除かれた形のものとなっており、その下で作付けされた農作物が 勢いよく生長するよう期待されるものである。その結果、果実の糖度が増し、彩 色が良くなり、軟弱野菜等については育成を促進し、作物の品質向上に役立つ。 また作業者の日焼け防止、ハウス内温度及び地中温度上昇の抑制等作業環境の改 善にも役立つ。
【0039】図5〜図10で検証例を示す。図5,図6は、それぞれビニールハウス又はガラスハウスの紫外線カット状況を比較検討した説明図、図7,図8は、それぞれビニールハウス又はガラスハウスの温度変化状況を比較検討したものの説明図。図9は、ビニールハウス内における1日の地熱温度を評価した説明図、図10はビニールハウス内における1月の温度を評価した説明図である。
【0040】図5において、実線■は屋外の紫外線量(μw/cm)、破線■は紫外線カットしていない場合のビニールハウス内の紫外線量、1点鎖線■は遮光ネットの ある場合の紫外線量、2点鎖線■が本発明コーティング材(原液)をコーティン グした場合の紫外線量を示している。
【0041】図示のように、線■,■の比較からビニール自体は全体の半量を吸収し、遮光ネットを施すと、線■が示すように、それが約半量となる。一方、本発明コーティング材を施すと、紫外線量は95%程度カットされている。これら結果は図1に示す特性から当然の結果である。
【0042】図6において、実線■は屋外の紫外線量(μw/cm)を、破線■は紫外線カットしていない場合のガラスハウス内の紫外線量を、2点鎖線■はコーティン グ材(原液)をコーティングした場合の紫外線量を示している。図示の通り、原 液コーティングではほとんどの紫外線(95%)がカットされている。この結果 は図1の原理から当然である。
【0043】図7において、実線■は、外気温(℃)を、破線■は紫外線カットしていない場合のビニールハウス内の温度を、1点鎖線■は遮光ネットを施した場合、2点鎖線■が本発明コーティング剤をコーティングした場合の温度特性を示している。
【0044】2点鎖線■で示すように、コーティングをすると紫外線カットされ、紫外線カットしていない場合■と比べ、遮光ネットのある場合■と略同様に温度がやや高く、かつ遮光ネットのある場合■を平均化したような滑らかな温度特性となっている。即ち、紫外線をカットすると、遮光ネットを施した場合に類似の温度特性となり、かつ均一化される。
【0045】図8において、実線■は屋外温度を、破線■は紫外線カットしていない場合のガラスハウス内温度を、2点鎖線■がコーティングし、紫外線カットした場合の温度特性を示している。図示の通り、ガラスハウスにおいても、恰も遮光ネットを施したかのように温度が緩和され、かつ均一化されている。
【0046】図9は期間(11/12〜12/17)を通じての北半球に位置する日本におけるビニールハウス内の温度特性を示す説明図である。実線■MINは紫外線カットしない場合の1日最低気温、実線■MAXは最高気温を示す。これに対し、2点鎖線■MINがコーティングし、紫外線カットした場合の最低気温、■MAXが最高気温を示す。
【0047】図示のように、紫外線カットすると、最低温度に関し、比較的暖かい時は1〜2℃低くなり、寒くなると1〜2℃高くなる。その理由は、図4で示したコーティング材による紫外線吸収効果によると推定される。即ち、コーティング膜は紫外線を吸収し、熱エネルギーEに変換する。このため、温度が高いときは、大気への放熱量を増し、室内温度を低下するように作用する。一方、寒い時期は、 ビニール膜の断熱効果を助長し、暖かい膜を作って保温し、その結果、室内温度 を1〜2℃高めるのである。これにより、農作物の温度環境を温度的に最適方向 としているのである。一方、最高温度に対しては、紫外線カット効果によって、 室温25℃以上と暖かい時期には、大きく温度を5℃程度低下させ、比較的冷た い時期(15℃以下)には、寧ろ温度を1〜2℃上昇させている。これは、最低 温度のときと同様の本発明の作用によるものである。即ち、本発明では、コーテ ィング膜の紫外線吸収効果に併せて吸熱効果があり、コーティング膜自体が有す る断熱保温効果に加えて、温かい時期に温度を下げ、寒く、冷たい磁気に温度を 上昇させる作用がある。原液コーティングし、最大メリットを出させることがで きる。
【0048】図10は、ビニールハウス内地熱温度の変化状況を示す。実線■は外気温、破線■は紫外線カットしていないハウス内の地熱温度、1点鎖線■は遮光ネットのあるハウスの地熱温度、2点鎖線■がコーティングし、紫外線カットしたハウスの地熱温度を示している。
【0049】この図に示されるように、紫外線カット効果は、単に紫外線をカットするだけでなく、図9でも示したと同様に驚くべき断熱保温効果があることが解る。即ち、朝5時から8時にかけて太陽光線が入射されると、元々保温性よく高温(24℃)になった地熱が27〜29℃位まで急上昇する。その後は紫外線カットしていない場合は不用に急上昇してくるが、遮光ネットを施している場合と同様に緩やかに上昇する。そうして夕方になり、17時〜20時になると、紫外線カットしていない場合■及び遮光ネットを施した場合■に比し、格別保温効果を呈し、午後8時時点で他が27〜28℃まで低下したのに対し、32℃を保っている。この理由は、コーティング膜による紫外線吸収効果にある。即ち、本発明のコーティング材(原液では)、紫外線を95%吸収し、全てを熱エネルギーに変換するので、朝室温を上昇させる。昼間は適当に放熱する。そして、夜間は、ビニール膜の断熱効果に加えてアクリル材で断熱性の良いコーティング膜が断熱し、必要十分な保温効果を呈しているのである。このとき、本発明のコーティング材は、図2に示す赤外線3,800〜3,200nmから1mmに対する吸収効果も関係する。即ち、地下より大気へ向けて放射する近〜遠赤外線を、コーティング膜で受け、熱変換して保温している。
【0050】図1で示した分光特性は参考例を示したものであり、本発明は、これと類似の分光特性を持つ種々のコーティング材を提供できる。例えば、波長400nm以上の可視光線に対しては、ほとんど吸収しないもの、光線を十分に撹拌できるよう白色コロイド粒子を混入したもの等々である。ただし、いずれの紫外線吸収剤を使用しようとも、波長400nm以下の紫外線に対する特性は、図1で示したようなS字状の光学特性となる。
【0051】本発明の農作物用光線吸収コーティング材の基材を統一して、例えば可視光線に対し吸収力の異なる複数種のコーティング材を生成し、また濃度を少なくとも原液と最大希釈度のものを2種準備し、各基材又は各濃度のコーティング材を混合撹拌して所望特性、所望濃度のコーティング材を生成し、所要濃度で、農作物育成用ハウスにコーティングすることもできる。農業主が自己でコーティングする場合には、農業主に、着色料の使用限度を定める表を預け、所望に色づけして利用させることもできる。ハウス全体に同一内容のコーティングを行うのではなく、例えばハウス前後に対し異ならせるというように、場所に応じ使い分けるようにしても良い。
【0052】以上の説明では、ハウスとして比較的大型の農作物育成用ハウスについて示したが、本発明は小型の農作物育成用ハウス、例えば苗木育成用のビニールカバー、家庭用温室等にも適用できる。また、これらの場合、コーティングをハウス設置後でなく、設置の前に予めコーティングしておくこともできる。
【0053】本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜の通常技術としての工夫を行うことにより、より農作物の品質が向上するよう広く利用することができる。
【0054】
【発明の効果】以上の通り本発明は、ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウスにコーティング被膜を形成し、その内部に位置する農作物を発芽、育苗、成長、収穫時期を通じて有害光線から保護するための農作物用光線吸収コーティング材であって、透明で耐候性のある合成樹脂エマルジョン中に、粒径0.1μm以下のコロイド領域の無機質微粒子と、散布基準液として定める原液濃度で散布コーティングしたときの被膜厚みで太陽光線中の有害光線を吸収し得ると共に遠赤外線吸収効果のある光線吸収剤と、界面活性剤及び安定剤とを含有し、前記原液濃度に対し、水で希釈して使用可能とすべく原液濃度を調整したことを特徴とする農作物用光線吸収コーティング材であるので、濃度、紫外線吸収剤、着色料の変化に応じて光学特性を定めることができ、一般的な散布機を用い厚さ20〜100μm程度で安全容易に有害紫外線を除去すべくコーティングを行うことができる。コーティングされたハウスでは、野菜類の成長が促進され、果実の糖度が増し、特色が良くなり、品質が向上する。また、作業者の日焼け防止に役立ち、ハウス内温度が適正化される。コーティング材は水性で無害のものであり、安全にコーティングできる。
【0055】また、本発明は、ビニール又はガラス等の透明材料で建造ないし設置された農作物育成用のハウスに、水性の農作物用光線吸収コーティング材をコーティングする方法であって、前記ハウス内で発芽、育苗、成長、収穫すべき対象農作物に合わせて有害光線をカットする量を定め、定めた量の有害光線をカットできる被膜を形成すべく前記コーティング材の濃度を定め、定めた濃度とすべく元気濃度の前記コーティング材に水を加えて撹拌し、水を加えて希釈された前記コーティング材に関しては所要時間放置して熟成し、定めた濃度の前記コーティング材を、前記ハウスの表面に散布によってコーティングすることを特徴とする農作物用光線吸収コーティング材のコーティング方法であるので、コーティング作業を安全、容易にでき、濃度管理によってコーティング被膜厚さを所望のものに調整でき、光線カット率を最適値に定めることが容易にできる。
【出願人】 【識別番号】594106874
【氏名又は名称】日本テクニカルシステム株式会社
【出願日】 平成11年12月1日(1999.12.1)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外9名)
【公開番号】 特開2001−157519(P2001−157519A)
【公開日】 平成13年6月12日(2001.6.12)
【出願番号】 特願平11−342442