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【発明の名称】 植生住空間構築物
【発明者】 【氏名】服部 重之

【氏名】稲田 正人

【要約】 【課題】住宅の外壁や屋根等の屋外側に植生基盤を形成して植生を図る植生住空間構築物において、植生基盤を設けるための荷重が構築物自体の構造体に大きく負担をかけることなく、且つ容易に施工することができるようにする。

【解決手段】平板部21とその両側端部に全長にわたって立設されたリブ部22とからなる不透水性の溝型パネル2が、リブ部22を外側に向けて合掌組みに接合されることによって内部に住空間が形成されているとともに、土留め材4が両側端部のリブ部22に架設され、土留め材4と平板部21との空隙に植生基盤7が充填されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 平板部とその両側端部に全長にわたって立設されたリブ部とからなる不透水性の溝型パネルが、前記リブ部を外側に向けて合掌組みに接合されることによって内部に住空間が形成されているとともに、土留め材が前記両側端部のリブ部に架設され、前記土留め材と前記平板部との空隙に植生基盤が充填されていることを特徴とする植生住空間構築物。
【請求項2】 土留め材が、前記溝型パネルの水平方向に適宜間隔で配置され、前記植生基盤が複数段を有するステップ状に形成されている請求項1記載の植生住空間構築物。
【請求項3】 前記土留め材に足場や手摺りが取り付けられている請求項1または2記載の植生住空間構築物。
【請求項4】 前記溝型パネルの室外側に断熱層が設けられている請求項1,2または3記載の植生住空間構築物。
【請求項5】 半アーチ型の断面を有する曲面部とその両側端部に全長にわたって立設されたリブ部とからなる不透水性の溝型曲面パネルが、前記リブ部を外側に向けてアーチ状に接合されることによって内部に住空間が形成されているとともに、土留め材が前記両側端部のリブ部に架設され、前記土留め材と前記曲面部との空隙に植生基盤が充填されている請求項3または4記載の植生住空間構築物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅の外壁や屋根等を不透水性構造として、その屋外側に植生基盤を形成して植生を図り、植物からの蒸散や緑陰によって構築物の過熱を緩和させる植生住空間構築物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】住宅や道路の整備等によって都市化が進むにつれて、自然が破壊され植物が衰退し、空気浄化機能が失われて、人々の生存を脅かすようになってきている。また、排気ガスやエアコンの使用等が原因となって、都市部を中心に温暖化等の環境問題を引き起こし、更にエアコンの使用量が増大することにより、一層温暖化が押し進められるという悪循環が生じている。
【0003】そのため、従来より、例えばビルなど陸屋根を有する建築物の場合には、屋上に人工土壌を造成して緑化空間を設け、植物によって緑陰を得たり、植物の蒸散作用で建築物の過熱を緩和させていた。
【0004】また、住宅においては、屋根などの傾斜部分に、プランタ等の植生基盤保持材を設置して植生基盤を造成し、植生を図ることがあった。
【0005】ところが、いずれの場合も、植生基盤の重量が建築物の屋根に直接作用するため、建築物がそれに耐えるためには、構造設計の見直しが必要であり、更に、排水路を確保したり漏水を防ぐための防水工事や根の侵入を防ぐ工事等が必要となり、極めて面倒であるうえ経済的負担が大きく、普及が困難であった。
【0006】そこで、不透水性の平板パネルを地表面から合掌組みに接合して、その平板パネルの外側に土留め材を取り付けて植生基盤を充填し、植生を図る植生住空間構築物が、特開平7−322763号公報に提示されている。
【0007】この方法によると、植生基盤の重量による応力が全て屋根に作用することがなく、一部は地面へ伝えられるため、構築物を支える柱や梁などの構造体を特別に補強する必要がない。また、不透水性のパネルを用いるために室内側へ水が漏れず、雨水等の余分な水はパネルの傾斜に沿って地面へ排水される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の構築物においては、平板パネルに埋設されたインサート等からなる取付部に土留め材を取り付けるため、その取付部に応力が集中してパネルに亀裂が入り、そこから室内へ漏水することがあった。
【0009】また、この平板パネルは、前記の土留め材の保持に加えて、雨水などを含んで重量が増大した植生基盤を支えることを考慮して、十分な厚さを有するものとする必要があるため、重量が極めて大きく、運搬や施工が大がかりになるとともに、経済的にも不利なものとなっていた。
【0010】本発明は、以上のような問題点を解決し、構築物自体の構造体に大きく負担をかけることなく、且つ容易に施工することができる植生住空間構築物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、平板部とその両側端部に全長にわたって立設されたリブ部とからなる不透水性の溝型パネルが、リブ部を外側に向けて合掌組みに接合されることによって内部に住空間が形成されているとともに、土留め材が両側端部のリブ部に架設され、土留め材と平板部との空隙に植生基盤が充填されている住空間構築物とした。
【0012】溝型パネルがリブ部を有することによって、断面性能が向上し、薄くても十分な強度を有するために、従来よりもパネル厚の薄いものを用いることができる。
【0013】そして、溝型パネルのリブ部に土留め材を取り付けるために、土留め材の取付部に大きな力が作用して亀裂が入ることがあっても、平板部には影響がなく、室内側への漏水の心配がない。
【0014】また、植生基盤が複数段を有するステップ状になるように土留め材が配置されていれば、土留め材を足場として利用しながら植栽や植物のメンテナンス等の作業を行うことができて便利である。
【0015】更に、土留め材に足場や手摺りを設ければ、大がかりな装置を利用しなくても、給水や植物のメンテナンス等の作業を安全且つ容易に行うことができる。
【0016】そして、溝型パネルの室外側に断熱層が設けられていれば、室内側の結露を防ぎ、室外の天候や気候による室内の温度変化を少なくして、一層快適な室内空間を提供することができる。
【0017】更にまた、半アーチ型の断面を有する曲面部とその両側端部に全長にわたって立設されたリブ部とからなる不透水性の溝型曲面パネルがアーチ状に接合されて内部に住空間が形成される場合には、室内空間を広く確保することができるとともに、外形の設計バリエーションが豊富なものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】図3は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、図1および図2は、図3に示した構築物の施工手順を示すものである。以下、図面に基づいて施工手順を説明する。
【0020】先ず、図1に示すように、コンクリート等で形成された床10の上に、アスファルト等によって表面に不透水性処理を施した鉄筋コンクリート製の溝型パネル2を適宜枚数だけ横方向に配置させ、対向する溝型パネル2同士を、切妻屋根を形成するように、合掌組みに接合する。
【0021】溝型パネル2は、平面形状が長方形で厚さがほぼ150mm程度の平板部21と、その長手方向両側端部に全長にわたって適宜高さだけ直角に立設されたリブ部22とで構成され、コ字状の横断面を有している。
【0022】床10と溝型パネル2とが接する部分および溝型パネル2同士が接する部分には、例えば弾性ゴム等、弾性を有する材質からなり一般にシーリング材として用いられている止水材20が挟まれる。そして、溝型パネル2には、貫通孔24が、例えば平板部21の横方向に面に沿って、また、平板部21の上端部に面と垂直方向に、適宜間隔で設けられており、その貫通孔24にPC鋼棒や炭素繊維等の線材を挿通し、両端からナット等により緊結して、溝型パネル2同士が止水材20を介して隙間なく密着されるように固定する。また、溝型パネル2と床10とが接する部分は、アンカ等を用いて緊結する。その後、これらの接続部分やアンカなどの取付部分には、防水材を塗布し、室内11側へ漏水しないようにする。
【0023】更に、溝型パネル2の平板部21の外側には、図4に示すように、断熱層3を形成する。この断熱層3は、例えば、気泡モルタルを吹き付けたり、或いは合成樹脂の発泡板などの断熱材を取り付けた後、保護モルタル等で表面を保護することによって形成される。
【0024】また、溝型パネル2のリブ部22には、例えばインサートを埋設したり、或いはフック状の突起等を設けることによって形成された土留め材4の取付部23が設けられており、その取付部23を利用して、図2に示すように土留め材4をステップ状に取り付ける。土留め材4は、植生基盤の重量や形態に応じて、金網や、或いは透水性のコンクリート等によって形成され、余分な水が排水されるように、また、植物の根が伸長したときに下方へ伸びていくことができるように、下方に開口40を有するように取り付けられる。
【0025】土留め材4の上端部には、必要に応じて、外側へ水平方向に突出する足場5を設けたり、図3に示すように例えばステンレス製の手摺り6を設置することによって、植栽や給水、植物等のメンテナンス作業等を容易且つ安全に行うことができるようにする。
【0026】その後、土留め材4と溝型パネル2の平板部21との空隙に植生基盤7を充填し、適宜播種または植栽を行って植生を図る。尚、植生基盤7としては、バーク堆肥、ピートモス、パーライトなどのような軽量の土壌材が好ましい。
【0027】こうして、対向する二面の外壁が植生で囲まれた構築物1が構築され、構築物1は植物の成長とともに緑陰が得られるうえ、室内11は外気の影響を受けにくく、植物の蒸散作用によって過熱が緩和されるので、空調に費やされるエネルギーを節約することができる。更に、周辺環境に向けて緑の景観を提供するとともに、植物による空気清浄機能を発揮する。
【0028】尚、溝型パネル2の室内側にも断熱層を設けたり防水処理を施すことにより、更に快適な室内空間を得ることができる。
【0029】図5は本発明の異なる実施の形態を示し、前記の実施の形態で用いた溝型パネル2と同様のものを用いて、床10から適宜高さまでは溝型パネル2を鉛直方向に設置し、それよりも上方に積み上げられた溝型パネル2を合掌組みに接合して、内部に住空間が形成された構築物である。この場合も、前記の実施の形態と同様の方法で溝型パネル2を緊結するとともに、土留め材4を取り付けて溝型パネル2の室外側に植生を図る。このような実施の形態は、室内空間を広くしたり、住空間を複数階の構造とする場合等に有効である。
【0030】また、図6は本発明の更に異なる実施の形態を示し、曲面部102とその両側端部に立設されたリブ部103とからなる溝型曲面パネル101が、アーチ状に接合されて内部に住空間が形成されたものである。この場合も、施工方法は前記の実施の形態と同様であり、室内空間を広く確保する場合等に有効である。
【0031】尚、上記のいずれの実施の形態においても、構築物の外周のうち、溝型パネル2や溝型曲面パネル101が設置されない面には、扉や窓等を設けて、住空間としての便宜性および快適性を有するものとする。
【0032】
【発明の効果】本発明によると、リブ部を有する溝型パネルを用いるために、平板パネルに比べて、パネル厚を薄くしても十分な強度性能を発揮することができる。従って、運搬や施工が容易であるとともに、経済的である。
【0033】また、土留め材がリブ部に架設されているために、土留め材の取付部に応力が集中して亀裂が入っても、平板部に影響がないために室内への漏水の心配がない。しかも、土留め材の重量が大きい場合には、リブ部のみを厚くして取付部の許容応力を大きくすればよく、溝型パネル全体を厚くする必要がないので経済的である。
【0034】更に、リブ部に土留め材を取り付けることにより、土留め材と平板部との空隙を必要に応じて広く確保できるので、植生基盤を十分に充填することができ、植物の種類や大きさが限定されない自由な植栽空間を構築することができる。
【0035】また、土留め材がステップ状に形成されていれば、土留め材を足場として利用することができ、更に土留め材に足場や手摺りが取り付けられていれば、一層安全且つ容易に植栽や給水、植物のメンテナンス等の作業を行うことができる。
【0036】更に、溝型パネルの室外側に断熱層が設けられていれば、結露を防ぎ、快適な室内空間を得ることができる。
【0037】更にまた、曲面部とリブ部とからなる溝型曲面パネルをアーチ状に接合して住空間を構成すれば、室内空間を広く確保できるとともに、外観デザインの幅が広くなる。
【出願人】 【識別番号】595057948
【氏名又は名称】稲田 正人
【出願日】 平成11年11月22日(1999.11.22)
【代理人】 【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦 (外1名)
【公開番号】 特開2001−145425(P2001−145425A)
【公開日】 平成13年5月29日(2001.5.29)
【出願番号】 特願平11−331084