| 【発明の名称】 |
育苗方法及びその装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】橋本 清文
【氏名】小西 雪路
【氏名】厚海 昭文
【氏名】平田 和男
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| 【要約】 |
【課題】光発芽方式による新たな育苗技術を提供する。
【解決手段】底部に開口(3)を有し、内部空間(S1)内に培土(6)が充填された上部容器(1)の下部に、内部空間(S2)内に培土(7)が充填された下部容器(2)を重ね合わせ、前記上部容器(1)内の培土表面に播種した種子(8)より発芽した幼苗の主根(21)の先端部(21a)が、前記上部容器(1)の底部開口(3)を経て前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記上部容器(1)と下部容器(2)とを分離すると共に前記主根先端部(21a)を切除する様にしたものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 培土(6)の表面に播種し、種子(8)の発芽と共に、幼苗(20)の初期育成を行うための育苗方法であって、底部に開口(3)を有し、内部空間(S1)内に培土(6)が充填された上部容器(1)の下部に、内部空間(S2)内に培土(7)が充填された下部容器(2)を重ね合わせ、前記上部容器(1)内の培土表面に所定の種子(8)を播種し、播種した種子(8)より発芽した幼苗の主根(21)の先端部(21a)が、前記上部容器(1)の底部開口(3)を経て前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記上部容器(1)と下部容器(2)とを分離すると共に、前記下容器(1)内の前記主根先端部(21a)を切除する様にした事を特徴とする育苗方法。 【請求項2】 前記上部容器(1)と下部容器(2)とを分離する事により前記下容器(2)内の前記主根先端部(21a)を該下部容器(2)内の培土(7)中より引き抜き、前記上部容器(1)の底部開口(3)より突出した前記主根先端部(21a)を切除する様にした請求項1に記載の育苗方法。 【請求項3】 前記上部容器(1)の内部空間(S1)内に、培土(6)を充填した育苗ポット(9)を装入してなる請求項1又は2に記載の育苗方法。 【請求項4】 培土(6)の表面に播種し、種子(8)の発芽と共に、幼苗(20)の初期育成を行うための育苗装置であって、底部に開口(3)を有し内部空間(S1)内に培土(6)を充填する上部容器(1)と、該上部容器(1)の下部に重合され且つ内部空間(S2)内に培土(7)が充填される下部容器(2)と、前記上部容器(1)の底板(1d)と前記下部容器(2)の上面との間に摺動自在に配置された根切部材(4,26)とを備えてなり、前記上部容器(1)内の培土(6)の表面に播種した種子(8)より発芽した幼苗(20)の主根(21)の先端部(21a)が、該上部容器(1)の底部開口(3)を経て前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記根切部材(4,26)を摺動させて、前記上部容器(1)の底部開口(3)より突出した前記主根先端部(21a)を切断する様にしてなる事を特徴とする育苗装置。 【請求項5】 前記根切部材が、前記上部容器(1)の底板(1d)と前記下部容器(2)の上面との間に摺動自在に配置され、且つ該上部容器の底部開口(3)に対応する位置に開口(5)を有する根切板(4)であり、前記上部容器(1)内の培土(6)の表面に播種した種子(8)より発芽した幼苗(20)の主根(21)の先端部(21a)が、該上部容器(1)の底部開口(3)及び前記根切板(4)の開口(5)を経て、前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記根切板(4)を摺動させて該根切板の開口(5)の部分で、前記底部開口より突出した前記主根先端部(21a)を切断する様にしてなる請求項4に記載の育苗装置。 【請求項6】 前記根切板(4)の開口(5)の周縁部に切断刃(4a)が形成されてなる請求項5に記載の育苗装置。 【請求項7】 前記上部容器(1)の底板(1d)の下面周縁部に、下方に突出する突起部(1e)を形成し、該突起部(1e)の下端部に内側方向に突出した内側突起部(1f)を形成し、該内側突起部(1f)と前記底板(1d)とで底板周縁部に断面コ字状の根切板保持溝(11)を形成し、該保持溝(11)内に前記根切板(4)を挿入して該根切板(4)を前記根切板保持溝(11)に沿って摺動可能に保持させてなる請求項5又は6に記載の育苗装置。 【請求項8】 前記下部容器(2)の周壁部(2a)の上部内側周縁部に、内側に突出した内側突起部(2f)を形成し、該内側突起部(2f)と前記上部容器(1)の底板(1d)との間の空間内に前記根切板(4)を挿入し、該根切板(4)を、前記下部容器(2)の内側突起部(2f)で摺動可能に保持させてなる請求項5又は6に記載の育苗装置。 【請求項9】 前記根切部材が、前記上部容器(1)の底板(1d)と前記下部容器(2)の上面との間に摺動自在に配置された線状又は薄板状の根切カッター(26)であり、前記上部容器(1)内の培土(6)の表面に播種した種子(8)より発芽した幼苗(20)の前記主根先端部(21a)が、該上部容器(1)の底部開口(3)を経て前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記カッター(26)を摺動させて前記底部開口より突出した前記主根先端部(21a)を切断する様にしてなる請求項4に記載の育苗装置。 【請求項10】 前記根切カッター(26)は、前記上部容器(1)と下部容器(2)との重合部の対向側面に突出して配置された一対の把持部(26a)と該把持部間で保持された線状又は薄板状のカッター(26b)とからなり、前記把持部(26a)が、前記上部容器(1)の下端面又は前記下部容器(2)の上端面に形成されたガイド溝(25)に摺動自在に装着されてなる請求項9に記載の育苗装置。 【請求項11】 培土(6)の表面に播種し、種子(8)の発芽と共に、幼苗(20)の初期育成を行うための育苗装置であって、底部に開口(3)を有し内部空間(S1)内に培土(6)を充填する上部容器(1)と、該上部容器(1)の下部に重合され、且つ内部空間(S2)内に培土(7)が充填される下部容器(2)とからなり、前記上部容器(1)内の培土表面に播種した種子(8)より発芽した幼苗の主根(21)の先端部(21a)が、該上部容器(1)の底部開口(3)を経て前記下部容器(2)の培土(7)中に至るまで育苗した後、前記上部容器(1)と下部容器(2)とを分離する事により前記主根先端部(21a)を前記下部容器(2)内の培土(7)中より引き抜き、しかる後に、前記上部容器(1)の底部開口(3)より突出した前記主根先端部(21a)を切除できる様にした事を特徴とする育苗装置。 【請求項12】 前記上部容器(1)の内部空間(S1)内に、培土(6)を充填した育苗ポット(9)を装入してなる請求項4乃至11のいずれかに記載の育苗装置。 【請求項13】 前記上部容器(1)は、略矩形の周壁部(1a)内を互いに直交する複数の縦仕切壁(1b)と横仕切壁(1c)とによって複数の内部空間(S1)に画成され、前記下部容器(2)は、略矩形の周壁部(2a)内を該上部容器(1)の各縦仕切壁と横仕切壁とに対応する位置に配置された複数の縦仕切壁と横仕切壁とによって複数の下部空間(S2)に画成されてなる請求項4乃至12のいずれかに記載の育苗装置。 【請求項14】 前記上部容器(1)の底板(1d)の下面周縁部に下方に突出して形成された突起部(1e)と、前記下部容器(2)の周壁部(2a)とが嵌合して該上部容器(1)と下部容器(2)との重合時の位置決めを行う様にしてなる請求項4乃至13のいずれかに記載の育苗装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、野菜や穀物等を田畑に移植する前に、種子より所定の幼苗にまで育苗するための育苗方法と、これに用いる育苗装置に関するものであり、特に、光発芽と呼ばれる方式に適した育苗方法及びこれに用いる育苗装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】各種野菜類や稲等の穀類を田畑で成育させる前に、管理された環境下で種子から幼苗までの初期育成を行い、正常に育苗した幼苗のみを田畑に移植する方法は従来から一般的に行われている方式である。 【0003】この一般的な方法は、培土を充填したポット或いは苗床と呼ばれる育苗具の培土中に種子を埋設し、その状態で発芽させ、所定の幼苗にまで成長させた後に、正常に発芽育苗した幼苗のみを選別して、苗として出荷したり、或いは田畑に移植する方式である。従って、育苗具自体は、何の変哲もない単なる可搬式の培土容器であった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】係る従来の育苗方式における基本思想は、発芽管理や初期幼苗の管理を広い田畑で行うのは困難であるので、限られた狭い空間内でこれらを行う事により、環境管理を容易となす事、或いは幼苗自体を商品とするため、効率よく大量に幼苗生産を可能とする事等々が上げられるが、いずれも経済的合理性の観点に立脚した育苗方式であり、「美味しい作物を作る」或いは「収穫量を増やす」という農産物の観点からの育苗思想は存在しない。 【0005】即ち、従来の育苗方式における播種作業では、所定量の種子を所定間隔で育苗具内の培土中に播き、その上に土を被せて覆土処理を行う方式が一般的である。即ち、種子は地表面から数mm〜数十mm下の日光を遮られた土中に埋め込まれ日光を受けることなく土中で発芽する(以下本発明では「暗発芽」と称する)方式となっている。 【0006】この暗発芽を、その経時的状態を示した図11によって説明すると、先ず種子30は同図(イ)に示す様に培土29中の地中に埋め込まれる。次に同図(ロ)に示す様に発芽して種子から発生した幼根32は、土中の播種位置から下方に向けて成長を開始し、発芽した芽31は、土中の播種位置から地表に向けて成長を開始する事になる。従って、発芽初期の子葉31は土中にあって光合成を行えないので白色をしており、主として種子が保有していた養分によって成長を開始すると共に、幼根32は、成長のために必要な窒素分を求めて地下深く根を成長させる傾向を有している。 【0007】次に、子葉31は、同図(ハ)に示す様に、地表に現れて双葉33(双子葉植物の場合。以下同じ)となり、一方、幼根32は土中深く成長して主根35となり、同時に多数の側根36を側方に成長させると共に、根から吸収した養分によって成長点34が上方に向けて成長を続ける。次に、同図(ニ)に示す様に、成長が進んで新葉37が次々と発生,成長するが、この状態では双葉33は萎れて落葉を待つばかりの状態となる。即ち、双葉33は、成長点34の成長と根35の成長のために自己が保有する養分を供給し、自らは枯れていく運命を辿る事になる。 【0008】ところで、土中の養分は、基本的には地表から浸透してくるものであり、地下から湧き上がってくるものでない。しかしながら、従来の暗発芽では、種子30が地下数mm〜数cmの所に埋没する様に播種されるので、これから生じた幼根32は、根の本質的特性に従って養分の少ない地下に向けて且つ成長に必要な窒素分を求めて窒素吸収根である側根36が優先成長する事になる。従って、地表に有機肥料が撒布されても、これが地表近傍の好気性バクテリアに分解され、地表から供給される水分によって土中に運ばれて初めて根毛から吸収される事になるが、根自体は窒素吸収根が優先成長しているので、窒素吸収量が増えて、見た目には背丈も大きく且つ緑の葉を繁らせた茎の順調な成長が観察されるが、果実の生育に必要なリン吸収根の生育が前記窒素吸収根の生育に比べて調和がとれていないのでリン吸収能に劣り、果実の生育面での問題がある。 【0009】一方、上記暗発芽の問題点を解決する発芽方式として、本願発明者等が研究開発し、更にフィールドテストによって実証した「光発芽」方式がある。この光発芽方式は、種子を地表面に播いて日光の存在下で発芽させ、根は、栄養分に富み且つ太陽光中の紫外線による殺菌が行われている地表面近傍で育根させてリン吸収根と窒素吸収根のバランスのとれた根圏を形成させる新規な方式である。この光発芽を、発芽の経時的変化を示した図10によって説明すると、先ず種子30は同図(イ)に示す様に培土29の表面に播かれ、次に同図(ロ)に示す様に、種子30は、地表面で発芽して芽31を出すと共に発生した幼根32は、その特性に従って地中に向かって成長を開始する。 【0010】次に、同図(ハ)に示す様に、幼根が地下に向けて成長して主根35を形成するが、その過程で、地表近傍の「酸化層A」(表面から3〜5cm程度の深さの表層部であり、空気の流通も良く且つ太陽光の紫外線により殺菌作用の働いている地表近傍層)では、該主根35から横方向に根毛38が伸長する。この根毛38は、前述の暗発芽では存在しない根毛である。この酸化層Aの部分では、好気性バクテリアが地表面近傍の各種有機物を分解して生成した養分が水と共に最初に浸透してくる部分であり、通気性に富み、雑菌が少なく、燐酸塩等の果実生育に必要な養分に富んだ部分であるから、根毛38は、係る果実育成に不可欠なリンの吸収を効率良く行い得る事になる。尚、主根35は、該酸化層下部の「還元層B」(空気の流通が少なく、主として嫌気性バクテリアによる微生物の分解が進行する部分であって、肥料成分としては窒素成分に富む領域)に向けて下方に伸長し、該還元層B内で主として窒素の吸収を行うための側根36が成長する。因みに、前述の「暗発芽」の場合には、図11に示している通り、通常は酸化層Aと還元層Bの境界近傍に種子30を埋没して発芽させる方式であるから、発芽すると、主根35は真っ直ぐ下方の還元層B内に伸長し、酸化層A内で横方向に伸長する根毛は殆どない。 【0011】更に、光発芽の場合には、図10に示すように、発芽で生じた双葉33は、太陽光を浴びて成長する事になるので、双葉33による光合成も開始され、発芽初期の成育に必要な養分は、種子が本来保有していた養分の他に、双葉33の光合成によっても供給される事になる。この結果、同図(ニ)に示している様に、新葉37が次々と発生しても、双葉33は依然として萎れる事なく青々として光合成を継続する事が判明している。この点は、双葉33が早く萎れる暗発芽の場合とは対照的である。 【0012】従来の育苗方式で育苗した幼苗は、前述の図11に示した様に、主根35が下方に伸長して窒素吸収根36が優先育成した苗であり、これを、そのまま田畑に移植していたので、主根35の土中への成長は一層進行し、窒素吸収による成育能には優れているがリン吸収能とのバランスがとれていないので、相対的に果実成育能には劣る傾向があった。 【0013】本発明は、上記した問題点に鑑み、果実成育能に優れた幼苗を提供するとの新たな観点に立脚して成されたもので、詳しくは、光発芽方式に適した新たな育苗方法と育苗装置の提供を目的とするものである。 【0014】 【課題を解決するための手段】本発明は、係る観点に立脚してなされたものであって、その特徴とするところは、培土の表面に播種し、種子の発芽(光発芽)と共に幼苗の初期育成を行うための育苗方法であって、底部に開口を有し、内部空間内に培土が充填された上部容器の下部に、内部空間内に培土が充填された下部容器を重ね合わせ、前記上部容器内の培土表面に所定の種子を播種し、該種子より発芽した幼苗の主根の先端部が、前記上部容器の底部開口を経て前記下部容器の培土中に至るまで育苗した後、前記上部容器と下部容器とを分離すると共に前記下部容器内に進出している前記主根先端部を切除する様にした点にある。これにより、本発明では、地表面直下に前記リン吸収根を有し且つ窒素吸収根に富むと共に主根成長部である主根先端部を削除する事により、リン吸収根の優先成長を促す事のできる幼苗を提供するものである。 【0015】又、本発明に係る育苗装置には大別して2種類あり、第一の方式のものは、底部に開口を有し内部空間内に培土を充填する上部容器と、該上部容器の下部に重合され且つ内部空間内に培土が充填される下部容器と、前記上部容器の底板と前記下部容器上面との間に摺動自在に配置された根切部材とを備えてなり、前記上部容器内の培土の表面に播種した種子より発芽した幼苗の主根の先端部が該上部容器の底部開口を経て前記下部容器の培土中に至るまで育苗した後、前記根切部材を摺動させて、前記上部容器の底部開口より突出した主根先端部を切断する様にしてなる育苗装置である。これにより前記下部容器内に進出している主根先端部を一律に切除可能とし、得られた苗は、窒素吸収根が除去されてリン吸収根に富む苗となっている。 【0016】尚、前記根切部材としては、前記上部容器の底部開口に対応する位置に開口を有する板状の根切板方式と、線状又は薄板状のカッターを容器の略全長に亘って摺動させる方式とがある。 【0017】次に、第二の方式のものは、第一の方式を簡略化した方式であり、底部に開口を有し内部空間内に培土を充填する上部容器と、該上部容器の下部に重合され、且つ内部空間内に培土が充填される下部容器とからなり、前記上部容器内の培土表面に播種した種子より発芽した幼苗の主根の先端部が、該上部容器の底部開口を経て前記下部容器の培土中に至るまで育苗した後、前記上部容器と下部容器とを分離する事により前記主根先端部を前記下部容器内の培土中より引き抜き、しかる後に、前記上部容器の底部開口より突出した前記主根先端部を切除できる様にした育苗装置にある。これにより、前記上部容器の下方に突出した主根先端部を、鋏等の任意の切断手段によって、任意の位置で主根先端部の切除を行える様にしている。 【0018】尚、これらの育苗装置においては、種々の形態の実施態様が存在する。即ち、前記上部容器及び下部容器に多数の育苗空間が形成される様に、これらの容器を多数の部屋に画成したものや、上部容器の育苗空間には通常使用されているポットを装入配置したものがある。 【0019】又、前記第一の方式における根切部材の取付方も種々の形態がある。具体的には、上部容器の底板の下面周縁部に下方に突出する突起部を形成し、該突起部の下端部に、内側方向に突出した内側突起部を形成し、該内側突起部と前記底板とで底板周縁部に断面コ字状の根切板保持溝を形成し、該保持溝内に前記根切板を挿入して該根切板を保持溝に沿って摺動可能に保持させたもの、或いは、前記下側容器の周壁部の上部内側周縁部に、内側に突出した内側突起部を形成し、該内側突起部と前記上部容器の底板との間の空間内に前記根切板を挿入し、該根切板を前記下部容器の内側突起部で摺動可能に保持させてなるものがある。 【0020】 【発明の実施の形態】以下に本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る前記第一の方式の育苗装置の実施形態を示す要部断面図であり、図2は、その一部平面図,図3は、その側面図である。これらの図において、本発明の育苗装置は、正方形又は長方形の上部容器1と、同形状の下部容器2とが上下に重合した構造のものであり、該上下容器の底面には、上部容器の底部周縁部に下方に突出した突起部1eが形成され、該突起部1eが下部容器2の周壁部2a内に嵌合する事によって両容器の重合時の位置決めがなされる様になっている。 【0021】又、上部容器1は、図2に示す様に、周壁部1a内に配置された複数の縦仕切壁1bと横仕切壁1cとによって、多数の内部空間(育苗空間)S1に区画されると共に、底板1dの各内部空間の中央部には、開口3が形成されている。一方、下部容器2にも、上記上部容器1の各縦仕切壁1b,横仕切壁1cに対応する位置に、夫々縦仕切壁2b,横仕切壁2cが配置されて、前記上部容器1の育苗空間S1に対応して、その直下に内部空間S2が形成されている。尚、図1に示すように、下部容器2の底部には、適当数の水抜き穴10が形成されている。 【0022】更に、図3に示すように、上部容器1の底部には、前記底板周縁部に下方に突出して形成された突起部1eの下部に、内側に突出して内側突起部1fが形成され、該内側突起部1fと前記底板1dとで底板周縁部に、断面コ字状の溝部11を形成し、該溝11内に挿入して根切板4を摺動自在に保持させている。尚、前記突起部1eと、その下部の内側突起部1fは、上部容器1の底面の一対の対向する辺部又は該一対の辺部と他の1辺に形成されており、少なくとも1辺は、前記根切板4を挿入して摺動させるための開放部となっている。 【0023】上記根切板4は、図4に示している様に、ステンレス薄板或いはプラスチック板等の腐植し難い材料で形成され、前記上部容器1の底部開口3と対応する様に同一径の開口5が同一間隔で形成されたものであって、図1に示している様に、上部容器1の底部開口3と同一位置に開口5が位置する様に前記溝部11内に挿入配置されている。又、図4に示すように、該根切板4の一端部には把持部4bが形成されており、該把持部4bを握って前記溝部11内で摺動できる様に構成されている。 【0024】次に、該育苗装置による育苗手順について説明する。図1に示している様に、先ず、内部空間S2内に培土7を充填した下部容器2の上部に、前記上部容器1を前述の通り上部容器1の下部突起部1eと下部容器2の周壁部2aとで位置決めして重合配置する。続いて、前記根切板4を前記コ字状溝11内に挿入し、該根切板4の開口5と上部容器1の底部開口3との位置を合致させておく。続いて上部容器1の各内部空間S1内に培土6を充填したポット9を装入配置し、該培土6の上面に種子8を播種する。尚、この際に、種子8を培土上に単に載置するだけでは、風によって飛ばされる可能性があるので、押しつけて沈圧しておくのが好ましい。 【0025】この状態で、培土6,7に適度の水分を保持させておくと、種子8の発芽が始まり、所定期間が経過すると、図5にその概念図を示している様に、主根21は上部容器1の底部開口3,根切板4の開口5を貫通して下部容器2の培土7の中にまで成長する事になる。この状態においては、幼苗20の双葉23は、光発芽のため、青々として光合成を行っている状態にあり、又、主根21の前記上部容器1内の部分には、多数の側根22が発生している。この側根22は、前述した地表面近傍の主としてリン吸収根であり、又、下部容器2の培土7中にまで達した主根先端部21aにも、同様に側根24が発生しているが、これは、前述の通り、窒素吸収根を主体とする側根である。 【0026】この様に、主根の先端部21aが下部容器内の培土7中に達する様に充分な育苗がなされると、前記根切板4を摺動させると、該根切板4の開口5の周縁部に形成されている切断刃4aによって、主根21は、下部容器2内の主根先端部21aと上部容器1内の部分とに切り離される事になる。この状態で、上部容器1を持ち上げて、上下容器を分離すると、主根先端部21aを切除された幼苗20が、上部容器1内に得られる事になる。続いてポット9を上部容器1から抜き出し、この状態で幼苗として販売するか、該ポット9から出して田畑に移植する事になる。 【0027】以上の様に、主根先端部21aを切除された苗は、多数のリン吸収根22を有する苗であるので、リン吸収能に優れ、この苗の成育したものからは、大きな美味しい果実が得られる事になる。 【0028】次に、図6は、図1に示した育苗装置の変形例を示す要部断面図であり、上部容器1の下部周縁部に、下方に突出する突起部1eが形成され、これによって、上下容器を重合する際の位置決めを行う点は前述の場合と同様であるが、本例では、下部容器2の周壁部2aの上方内側に、内側突起部2fが形成されており、該内側突起部2fと上部容器1の底面との間の空間12内に前記根切板4を配置する様にしたものであり、その他の構成は図1と同様であるので、同一構成は同一符号を付して重複説明は省略する。 【0029】尚、以上の説明において、根切板4の開口5内周面に切断刃4aを形成しているが、幼苗の主根自体は柔らかいものであるので、必ずしも鋭利な切断刃を形成する必要はなく、上部容器1の底部開口3と根切板4の開口5とによる剪断力によって切断する様になす事も可能である。 【0030】次に、図7は、本発明の第一の方式による育苗装置の他の実施形態を示す要部断面図であり、図8は、その要部斜視図であって、前述の実施形態のものとは、根切部材の構造が相違している。即ち、本実施形態では、下部容器2の対向する一対の周壁部2aの頂部をに切り欠き25を形成し、ここに根切カッター26を摺動自在に装着している。この根切カッター26は、前記切り欠き25に装着されて該切り欠き25をガイド溝として摺動する一対の把持部26aと、該一対の把持部26a間に張架されたピアノ線からなるカッター26bとから成っている。そして、前述の場合と同様に、幼苗20の主根先端部21aを下部容器2の培土7内に所定量進出させた後、前記把持部26aを手動にて摺動させる事により、前記上部容器1の底部開口3から突出している主根先端部21aが、該把持部26aと共に移動するピアノ線(カッター)26bによって簡単に切断される。この切断作業を行った後に上下容器を分離し、上部容器1よりポット9と共に移植すべき苗が取り出される事になる。尚、その他の構成は前述のものと同一であるので、同一構成は同一符号を付して重複説明は省略する。 【0031】尚、カッター26bとしては、前記ピアノ線の如き細い線状体の他、薄肉のステンレス鋼板の板条体やプラスチックの板条体が使用可能である。要は、柔らかな主根先端部21aを簡単に切断可能なものであれば、材質や形状は問われない。 【0032】次に、図9は、本発明の第二の方式に係る育苗装置の実施形態を示す要部断面図であり、前述の方式とは、根切部材の有無において相違している。即ち、本実施形態では、上部容器1と下部容器2とは、上部容器下面に形成された前述の突起部1eと下部容器2の周壁部2aとで、両容器の位置決めを行って重合し、この状態で種子8を上部容器1の培土6の上面に播種する。発芽後、図5に示した如く、主根先端部21aが下部容器2の培土7内に充分進出した状態にまで育苗すると、そのまま上部容器1を持ち上げて下部容器2から分離すると、主根の先端部は下部容器2の培土7から抜けて上部容器1の底部開口3から露出した状態となる。この状態で、主根先端部21aの育成状態を見ながら、鋏等の適宜の切断具を用いて一本づつ主根先端部21aの切断除去を行うか、或いは、ナイフを上部容器1の底板1dの裏面に沿わせて一律に切断する事になる。この様に、本装置の場合には、前述の根切板4が一体的に装置内に組み込まれていないので、適宜の手段によって主根先端部21aの切断を行う必要があるが、その他の構成は前述のものと同一であるので、同一構成は同一符号を付して重複説明は省略する。 【0033】以上の説明においては、上部容器1の内部空間S1内に、培土6を充填したポット9を配置しているが、該ポット9を省略し、該空間S1内に直接て培土6を充填する様になす事も可能である。又、この場合に、培土6が底部開口3から落下しない様に、該開口部3に粗目の網目状のものを配置することも可能であるが、本発明では、主根先端部21aが該開口3を通って下部容器2内に進出させる事が必要であるので、小石等により該開口3を閉塞するのは避けなければならない。 【0034】 【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、従来にない光発芽方式に基づく育苗を行う事が可能となるのみならず、「美味しい果実」,「収量増加」との新たな観点からの育苗装置を世に提供するものであり、育苗技術における歴史的意義は大きなものがある。 【0035】特に、本発明方式で育苗された苗は、主根先端部が切除されているので、移植後も、主根の下方への成長、即ち、還元層への不要な伸長は抑えられ、養分の豊富な地表近傍において、横方向に側根の成長を促進させる事になるので、リン成分の吸収促進と共に、主要養分のバランスのとれた吸収が行われる結果、良好な果実を得る事が可能となる。 【0036】更に、本発明の方式によって得られた苗を移植後、肥料として、鶏糞や豚糞等の伝統的な燐酸系自然肥料を使用すれば、化学肥料を用いた場合に生じる土壌障害も生じず、且つ地表近傍の前記成長したリン吸収根によって、これらが効率良く吸収される結果、安全な良質の農作物が安定して得られる事になる等、本発明による効果は、農業に新たな転換を促すものであり、その社会的効果も計り知れないものがある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】391037571 【氏名又は名称】神鋼造機株式会社 【識別番号】594003090 【氏名又は名称】株式会社バイケミ
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| 【出願日】 |
平成11年10月5日(1999.10.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之
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| 【公開番号】 |
特開2001−103841(P2001−103841A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月17日(2001.4.17) |
| 【出願番号】 |
特願平11−283889 |
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