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【発明の名称】 冬虫夏草の栽培方法
【発明者】 【氏名】稲冨 聡

【氏名】水野 正幸

【要約】 【課題】大量の冬虫夏草を栽培しても胞子の発生量を極わずかに抑え、人体への胞子の影響もほとんど無く、栽培施設の汚染や機械の腐蝕、劣化や能力の低下も回避できる冬虫夏草の栽培方法の提供。

【解決手段】殺菌した冬虫夏草栽培用培地に冬虫夏草菌を接種する工程、冬虫夏草菌を前記栽培用培地に蔓延させる培養工程、冬虫夏草を発生させる発芽工程、発生した冬虫夏草を1500ppm以上の炭酸ガス濃度を含有する栽培環境下で生育させる工程を経て栽培を行う。生育工程において、冬虫夏草栽培用培地の周辺に筒状の囲いを設けることにより該囲い内を炭酸ガス濃度を1500ppm以上の栽培環境とし、その囲いの中で冬虫夏草を発生させ生育させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】殺菌した冬虫夏草栽培用培地に冬虫夏草菌を接種する工程、冬虫夏草菌を前記栽培用培地に蔓延させる培養工程、冬虫夏草を発生させる発芽工程、発生した冬虫夏草を1500ppm以上の炭酸ガス濃度を含有する栽培環境下で生育させる生育工程を経て栽培することを特徴とする冬虫夏草の栽培方法。
【請求項2】発芽工程及び生育工程若しくは生育工程のみにおいて、冬虫夏草栽培用培地の周辺に筒状の囲いを設けることにより該囲い内を炭酸ガス濃度1500ppm以上の栽培環境とし、その囲いの中で冬虫夏草を発生させ生育させる請求項1に記載の冬虫夏草の栽培方法。
【請求項3】使用する冬虫夏草菌がFERM P−17423若しくはFERM P−17424である請求項1若しくは2に記載の冬虫夏草の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハナサナギタケ、コナサナギタケ等の冬虫夏草の栽培方法に関し、さらに詳しくは、前記冬虫夏草の胞子の発生量を抑制する冬虫夏草の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、冬虫夏草の薬理効果は古くから認められているが、虫に寄生してきのこが発生する特徴を有する冬虫夏草の人工栽培は極めて困難とされてきた。しかし近年において、蚕に人為的に寄生させたり、蛹の死骸に菌糸を繁殖させて栽培する等様々な研究開発が行われ、冬虫夏草の栽培の可能性が高まり、最近では、一般的な食用キノコ例えばエノキタケ、ブナシメジ、シイタケ等の栽培と同様に、冬虫夏草栽培用培地を容器に充填し工業的に栽培することが可能となった(例えば、特開平9−62号公報等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、工業的に栽培が可能になった冬虫夏草のハナサナギタケ等では、その栽培中に非常に多くの胞子が発生し、これが栽培室内を飛散するために、栽培施設が汚染されたり機械類の腐蝕、劣化や能力の低下を早め、また、収穫作業をする人間に対して大量の胞子は胞子アレルギー等を引き起こし、喘息等の原因となり、人体に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0004】本発明は、このような状況に鑑み、大量の冬虫夏草を栽培しても胞子の発生量を極わずかに抑え、人体への胞子の影響もほとんど無く、栽培施設の汚染や機械の腐蝕、劣化や能力の低下も回避できる冬虫夏草の栽培方法の提供を目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための本発明に係る冬虫夏草の栽培方法の特徴は、殺菌した冬虫夏草栽培用培地に冬虫夏草菌を接種する工程、冬虫夏草菌を前記栽培用培地に蔓延させる培養工程、冬虫夏草を発生させる発芽工程、発生した冬虫夏草を1500ppm以上の炭酸ガス濃度を含有する栽培環境下で生育させる生育工程を経て栽培することにある。
【0006】尚、発芽工程及び生育工程若しくは生育工程のみにおいて、冬虫夏草栽培用培地の周辺に筒状の囲いを設けることにより該囲い内を炭酸ガス濃度を1500ppm以上の栽培環境とし、その囲いの中で冬虫夏草を発生させ生育させること、及び、使用する冬虫夏草菌がFERM P−17423若しくはFERM P−17424であることが好ましい。
【0007】
【実施の形態】次に本発明に係る冬虫夏草の栽培方法の実施の形態を具体的実施例をあげて説明をする。尚、本発明はこれらに限定されるものでなく、細部の手法等において本発明の精神を逸脱しない範囲で任意に変更が可能である。
【0008】実施例1冬虫夏草用培地割麦15gとサナギ粉3gと水30ccを混合し、121℃で15分殺菌してから室温になるまで放置し、その後無菌状態で滅菌シャーレに充填した。
接種工程冬虫夏草用培地に長野県飯綱高原で採集したハナサナギタケの菌糸を接種した。
培養工程ハナサナギタケを接種した冬虫夏草用培地は25℃で培養し、21日間で菌糸が蔓延した。
発芽工程発芽処理として培養が終了した培地の表面を菌かきして発生を促進させ、次に、対照区として、シメジ等の通常のキノコが栽培される施設を使用し、タイマーを使用して定期的に換気することによって1000ppm以下の炭酸ガス濃度に調整した栽培室内に発芽処理をしたシャーレを置き、試験区としては、対象区と同じ設備を使用し、透明の箱内に発芽処理をしたシャーレを置き、該箱内を炭酸ガスメータでモニターしながら換気して炭酸ガス濃度が1500ppm以上になるように設定した。それぞれの炭酸ガス濃度以外の主な環境設定は温度18℃、湿度90%照度50luxとした。
生育工程冬虫夏草の子実体が発芽したシャーレは、そのままの環境条件下の中で14日間生育させてから収穫した。この時の収量及び胞子の量等は、第1表に示すとおりであった。
【0009】第1表
【0010】実施例2冬虫夏草用培地割麦15gとサナギ粉3gと水30ccを混合し、121℃で15分殺菌してから室温になるまで放置し、その後無菌状態で滅菌シャーレに充填した。
接種工程冬虫夏草用培地に長野県飯綱高原で採集したハナサナギタケの菌糸を接種した。
培養工程ハナサナギタケを接種した冬虫夏草用培地は25℃で培養し、21日間で菌糸が蔓延した。
発芽工程発芽処理として培養が終了した培地の表面を菌かきして発生を促進させ、次に、実施例1と同じ設備を使用して1000ppm以下の炭酸ガス濃度下で温度18℃、湿度90%照度50luxの環境下で発芽させた。
生育工程図1に示すように発芽が完了したシャーレ1の回りを半透明合成樹脂製の高さが略5cmの円筒形の囲い2aで囲い、実施例1と同様にして子実体3の生育する空間の炭酸ガス濃度が1500ppm以上になるように調整して発芽させた。
【0011】この時の結果は、第2表に示すとおりであった。
【0012】第2表
【0013】実施例3冬虫夏草用培地割麦15gとサナギ粉3gと水30ccを混合し、ポリプロピレン製の袋に充填し121℃で15分殺菌してから室温になるまで放置した。
接種工程冬虫夏草用培地に微生物寄託センターに寄託したFERM P−17423及びFERM P−17424のハナサナギタケの菌糸を別々に接種した。
培養工程上記菌株を接種したそれぞれの冬虫夏草用培地は25℃で培養し、21日間で菌糸が蔓延した。菌糸が蔓延した培地を砕いて、シャーレに充填し、その後3日間培養を継続した。
発芽工程発芽処理として培養が終了した培地の表面を菌かきして発生を促進させ、次に、実施例1と同様にして1000ppm以下の炭酸ガス濃度下で温度18℃、湿度90%照度50luxの環境下で発芽させた。
生育工程図1に示すように発芽が完了したシャーレ1の回りを、半透明合成樹脂材料をもって成形した高さ5cmの円筒形の囲い2aで覆って、子実体3の生育する空間の炭酸ガス濃度が1500ppm以上になるように調整して生育させた。
【0014】この時の結果は、第3表に示すとおりであった。
【0015】第3表
【0016】実施例4冬虫夏草用培地の調整割麦15gとサナギ粉3gと水30ccを混合し、121℃で15分殺菌してから室温になるまで放置し、その後無菌状態で滅菌シャーレに充填した。
接種工程冬虫夏草用培地に微生物寄託センターに寄託したFERM P−17424のハナサナギタケの菌糸を接種した。
培養工程上記菌株を接種したそれぞれの冬虫夏草用培地は25℃で培養し、21日間で菌糸が蔓延した。
発芽工程発芽処理として培養が終了した培地の表面を菌かきして発生を促進させ、次に、実施例1と同様にして1000ppm以下の炭酸ガス濃度下で温度18℃、湿度90%照度50luxの環境下で発芽させた。
生育工程図1に示すように発芽が完了したシャーレ1の回りを半透明の高さ5cmの樹脂製の円筒形の囲い2aで覆って、子実体3の生育する空間の炭酸ガス濃度が1500ppm以上になるように調整して生育させた。図2に示すように囲い2aの上部から子実体の頂部までの距離Hが約1cmまで子実体が伸長してきたところで、囲い2aの上に更に5cmの上記円筒形の囲い2bを置いて囲いを延長させ、同様にして図3に示すように子実体3の伸長に合わせて囲い2cを置いて生育工程を継続させ、培地が収縮し菌の活力が衰えるまで同様の操作をを繰り返した。この時の結果は、第4表に示すとおりであった。
【0017】第4表
【0018】
【発明の効果】本発明に係る冬虫夏草の人工栽培方法によれば、発生した冬虫夏草を1500ppm以上の炭酸ガス濃度を含有する栽培環境下で生育させる生育工程を経て栽培するようにしたことにより、大量の冬虫夏草を栽培してもごくわずかな胞子の発生量で抑えられるために、人体への胞子の影響もほとんど無く、栽培施設の汚染の防止、さらに機械に付着した胞子による腐蝕や劣化そして能力の低下の防止がなされる。
【0019】また、発芽工程及び生育工程若しくは生育工程のみにおいて、冬虫夏草栽培用培地の周辺に筒状の囲いを設けることにより該囲い内を炭酸ガス濃度1500ppm以上の栽培環境とし、その囲いの中で冬虫夏草を発生させ生育させることにより、子実体の発芽あるいは生育に必要な空間のみの炭酸ガスの濃度を上昇させるので、収穫作業を行う人は、人体に影響の無い炭酸ガス濃度下で作業ができて安全面においての効果が得られる。また、生育工程のみで炭酸ガス濃度を上昇させれば、子実体の発生数が抑制されずそのために収率が高くなって増収効果が得られ、さらに、実施例4のような栽培方法を行えば、子実体は胞子を生産せずに子実体の徒長を促進していくので、栽培サイクルは延長するが培地重量当たりの収率が極めて高くなり増収効果が得られる。
【0020】更に、微生物寄託センターに寄託した冬虫夏草菌FERM P−17423若しくはFERM P−17424を使用すれば、胞子生産の抑制効果はさらに上昇し、そして、その菌の特性により増収効果もあるので生産性が向上する。
【0021】以上のように本発明によれば冬虫夏草の人工栽培での大量生産での生産性の向上のために顕著な効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】390034142
【氏名又は名称】ホクト産業株式会社
【出願日】 平成11年9月2日(1999.9.2)
【代理人】 【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
【公開番号】 特開2001−69850(P2001−69850A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−248182