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【発明の名称】 脱穀装置の受網構造
【発明者】 【氏名】小谷 真司

【要約】 【課題】格子状の受網が部分的に激しく摩耗した場合の対処に要する費用の低減化及び手間の軽減化を大幅に図れるようにする。

【解決手段】扱胴2を第1軸芯X1周りに回転可能に支持する上部ケース15を、扱胴2の外周に沿って湾曲する受網3を備える下部ケース14に、第2軸芯X2周りに開閉揺動可能に連結するとともに、受網3を、第1軸芯X1と直交する板金製の複数の円弧状部材16と、第1軸芯X1に沿う複数の直線状鋼材17,18とから格子状に構成してある脱穀装置の受網構造において、円弧状部材16の所定箇所を、円弧状部材16に対して受網3の内面側から着脱可能なピース部材16Aで構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 扱胴を第1軸芯周りに回転可能に支持する上部ケースを、前記扱胴の外周に沿って湾曲する受網を備える下部ケースに、第2軸芯周りに開閉揺動可能に連結するとともに、前記受網を、前記第1軸芯と直交する板金製の複数の円弧状部材と、前記第1軸芯に沿う複数の直線状鋼材とから格子状に構成してある脱穀装置の受網構造であって、前記円弧状部材の所定箇所を、前記円弧状部材に対して前記受網の内面側から着脱可能なピース部材で構成してある脱穀装置の受網構造。
【請求項2】 前記受網を、その湾曲方向で、前記扱胴の回転方向上手側に位置する上手側受網部分と、前記扱胴の回転方向下手側に位置する下手側受網部分とに分割可能な2分割構造に構成するとともに、前記ピース部材の配設箇所を、前記下手側受網部分の円弧状部材における前記扱胴の回転方向最上手側箇所に設定してある請求項1記載の脱穀装置の受網構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、扱胴を第1軸芯周りに回転可能に支持する上部ケースを、前記扱胴の外周に沿って湾曲する受網を備える下部ケースに、第2軸芯周りに開閉揺動可能に連結するとともに、前記受網を、前記第1軸芯と直交する板金製の複数の円弧状部材と、前記第1軸芯に沿う複数の直線状鋼材とから格子状に構成してある脱穀装置の受網構造に関する。
【0002】
【従来の技術】脱穀装置の受網には、主に全稈投入型のコンバインに搭載される脱穀装置で使用されている上記構造の格子状の受網(いわゆるコンケーブ)以外に、線状鋼材を編み込んだ構造のクリンプ網や、超高分子量ポリエチレンなどの樹脂材を一体成形した構造の樹脂網などがある。
【0003】クリンプ網及び樹脂網は、主に自脱型のコンバインに搭載される脱穀装置で使用されているものであり、クリンプ網は、線状鋼材を使用するとともに線状鋼材の編み込みによる凹凸を有することから、耐久性並びに穀粒から枝梗などを取り除く単粒化の面で優れている反面、編み込んだ線状鋼材間に枝梗が刺さることに起因した目詰まりが発生し易い、あるいは、濡れに弱いなどの欠点がある。樹脂網は、素材そのものに撥水性がある樹脂材の一体成形構造であることから、濡れに強い上にクリンプ網のような枝梗の刺さりに起因した目詰まりがない、などの利点を有する反面、網表面が平坦であることから、凹凸を有するクリンプ網に比較して単粒化の面で劣り、又、超高分子量ポリエチレンなどの樹脂材を採用することによって高価になる割りにクリンプ網よりも耐久性の面で劣るなどの欠点がある。
【0004】これらに対し、格子状の受網は、クリンプ網のように線状鋼材を編み込むものではないことから、枝梗の刺さりに起因した目詰まりがなく、又、板金製の円弧状部材と直線状鋼材とから構成することによって、線状鋼材からなるクリンプ網や樹脂網に比較して耐久性に優れ、更に、線状鋼材を編み込むクリンプ網よりも製造が容易で、かつ、超高分子量ポリエチレンなどの樹脂材を採用する樹脂網よりも安価になるなどの利点を有することから、近年では、この格子状の受網を自脱型のコンバインに搭載される脱穀装置においても積極的に使用することが考えられている。
【0005】従来、格子状の受網としては、複数の円弧状部材及び直線状鋼材を、それらの各接合部を溶接して一体化させた構造のものや、複数の円弧状部材と外側端に位置する一対の直線状鋼材とからなる基枠部に、他の直線状鋼材を、円弧状部材に対して直交する方向で抜き差し自在に取り付けた構造のものがあった。尚、上記従来技術のうちの後者の受網は、脱穀装置に装着した際に、受網における穀稈搬送方向の両端を受け止め支持するようになる円弧状の受網ガイドによって、他の直線状鋼材の基枠部からの抜け止めが行われるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、格子状の受網においては、脱穀処理時の脱粒性や単粒化などの向上を図る点から、直線状鋼材に対して円弧状部材を扱胴側に突出させて、扱胴と受網の間での穀稈穂先側の移動速度や処理物の流動速度を規制することが一般的に行われており、その受網構造や受網上での処理物の滞留傾向などとの関係から、円弧状部材が部分的に激しく摩耗する場合がある。そして、そのような摩耗が上記従来技術のうちの前者のものにおいて発生した場合には、受網の全体を交換する必要が生じることから、その摩耗の対処に要する費用が嵩む不都合を招くようになっていた。一方、そのような摩耗が上記従来技術のうちの後者のものにおいて発生した場合には、基枠部の全体を交換する必要が生じることから、その摩耗の対処に要する費用の低減化を図る上で改善の余地があった。又、その交換の際には、受網を脱穀装置から取り外す必要が生じることから、交換作業にかなりの手間を要するようになっていた。
【0007】本発明の目的は、格子状の受網が部分的に激しく摩耗した場合の対処に要する費用の低減化及び手間の軽減化を大幅に図れるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のうちの請求項1記載の発明では、扱胴を第1軸芯周りに回転可能に支持する上部ケースを、前記扱胴の外周に沿って湾曲する受網を備える下部ケースに、第2軸芯周りに開閉揺動可能に連結するとともに、前記受網を、前記第1軸芯と直交する板金製の複数の円弧状部材と、前記第1軸芯に沿う複数の直線状鋼材とから格子状に構成してある脱穀装置の受網構造において、前記円弧状部材の所定箇所を、前記円弧状部材に対して前記受網の内面側から着脱可能なピース部材で構成した。
【0009】〔作用〕上記請求項1記載の発明によると、円弧状部材において部分的な激しい摩耗が生じ易い箇所を所定箇所としてピース部材で構成することで、その所定箇所に激しい摩耗が生じた場合には、下部ケースに対して上部ケースを第2軸芯周りに開き揺動させて受網と扱胴との間を開放する扱胴オープン状態を現出すれば、激しく摩耗した所定箇所のピース部材のみを、受網の内面側から、脱穀装置から受網を取り外す手間なく簡単に交換できるようになる。
【0010】〔効果〕従って、格子状の受網において、部分的に激しい摩耗が生じた場合の対処に要する費用の低減化及び手間の軽減化を大幅に図れるようになった。
【0011】本発明のうちの請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、前記受網を、その湾曲方向で、前記扱胴の回転方向上手側に位置する上手側受網部分と、前記扱胴の回転方向下手側に位置する下手側受網部分とに分割可能な2分割構造に構成するとともに、前記ピース部材の配設箇所を、前記下手側受網部分の円弧状部材における前記扱胴の回転方向最上手側箇所に設定した。
【0012】〔作用〕上記請求項2記載の発明によると、受網を2分割構造に構成することで、クリンプ網や樹脂網に比較して重くなる不都合が生じていた格子状のものにおける扱い性の面での向上を図れるようになり、又、その分割方向が受網の湾曲方向であることによって、各受網部分における湾曲方向の長さが短くなることから、扱胴オープン時に開放される下部ケースと扱胴の間からの受網の着脱を容易に行えるようになる。
【0013】ところで、格子状の受網を構成する場合には、脱穀処理時の脱粒性や単粒化などの向上を図る点から、直線状鋼材に対して円弧状部材を扱胴側に突出させて、扱胴と受網との間における穀稈穂先側の移動速度や処理物の流動速度を規制することが一般的に行われている。又、脱穀処理時には、扱胴の回転に伴って、扱胴と受網の扱胴回転方向上手側部分との間に搬送された穀稈の穂先側から脱粒した穀粒などの処理物が受網の扱胴回転方向下手側部分に向けて拡散されるようになる。そのため、受網を上手側受網部分と下手側受網部分とに分割可能な2分割構造に構成した場合には、その分割によって上手側受網部分側と下手側受網部分側とに縁切りされた状態となる円弧状部材のうちの、下手側受網部分側の円弧状部材における扱胴回転方向最上手側箇所に接触する処理物量が多くなって、その部分が特に激しく摩耗するようになる。
【0014】そこで、上記請求項2記載の発明では、その点を考慮して、受網の内面側から着脱可能なピース部材の配設箇所を、下手側受網部分の円弧状部材における扱胴の回転方向最上手側箇所に設定しているのであり、これによって、その箇所に激しい摩耗が生じた場合には、扱胴オープン状態を現出すれば、その激しい摩耗が生じた箇所に配設されているピース部材のみを、受網の内面側から、脱穀装置から受網を取り外す手間なく簡単に交換できるようになる。
【0015】〔効果〕従って、格子状の受網を、扱い性の向上や脱穀装置に対する着脱の容易化を図れる構造としながら、それによって新たに生じる部分的な激しい摩耗の対処に要する費用の低減化及び手間の軽減化を大幅に図れるようになった。
【0016】
【発明の実施の形態】図1には自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断側面が示されており、この脱穀装置は、刈取穀稈を横向き姿勢で挾持搬送するフィードチェーン1、前後向きの第1軸芯X1周りに回転することでフィードチェーン1で挾持搬送される刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施す扱胴2、脱穀処理で得られた処理物を漏下させる受網3、受網3から漏下しなかった処理物を落下させる送塵口4、受網3を漏下した処理物と送塵口4から落下した処理物に対してクランク機構5による揺動駆動で篩い選別処理を施す揺動選別装置6、揺動選別装置6に向けて選別風を供給する唐箕7、揺動選別装置6の前部側から漏下する単粒化穀粒(枝梗などが取り除かれたもの)を回収する一番物回収部8、揺動選別装置6の後部側から漏下する未単粒化穀粒(枝梗などが取り除かれていないもの)などを回収する二番物回収部9、及び、切れワラやワラ屑などを機外に排出する排塵ファン10、などによって構成されている。
【0017】一番物回収部8の底部には、回収した単粒化穀粒を脱穀装置の右外方に搬出する一番スクリュー8Aが配備され、一番スクリュー8Aの右端には、一番スクリュー8Aで搬出された単粒化穀粒を図外の穀粒タンクの穀粒受入口に向けて揚送する揚送スクリュー11が連設されている。二番物回収部9の底部には、回収した未単粒化穀粒を右外方に搬出する二番スクリュー9Aが配備され、二番スクリュー9Aの右端には、二番スクリュー9Aで搬出された未単粒化穀粒に再脱穀処理を施して揺動選別装置6の前部側に還元する二番還元装置12が連設されている。
【0018】図1〜4に示すように、受網3は、扱胴2の外周に沿って湾曲する湾曲形状で、その湾曲方向に、扱胴2の回転方向上手側に配設される上手側受網部分3Aと、扱胴2の回転方向下手側に配設される下手側受網部分3Bとに分割可能な2分割構造に構成され、扱胴2の前後両下方に配設された円弧状の受網ガイド13に亘って扱胴2の回転方向下手側寄り(扱胴2の右側部寄り)に架設されるとともに、揺動選別装置6や受網ガイド13などを備える下部ケース14に対して、扱胴2を支持する上部ケース15を前後向きの第2軸芯X2周りで上昇揺動させた扱胴オープン時に大きく開放される開口Hから、前後の受網ガイド13に対して着脱できるようになっている。
【0019】図2〜8に示すように、上手側受網部分3A及び下手側受網部分3Bは、扱胴2の回転軸芯である第1軸芯X1と直交する姿勢で所定ピッチで並設される板金製の複数の円弧状部材16、それらの両端を支持するように第1軸芯X1に沿う姿勢で配設された直線状鋼材の一例としての断面視コの字状の一対の支持鋼材17、及び、それら一対の支持鋼材17の間に第1軸芯X1に沿う姿勢で所定ピッチで並設された直線状鋼材の一例としての断面視円形の複数の棒状鋼材18、などを溶接することによって格子状に構成されるとともに、それら受網部分3A,3Bの分割端側に位置する各支持鋼材17が、前後の受網ガイド13に亘って架設された補強部材19で受け止め支持されるようになっている。
【0020】つまり、受網3として上記構造の格子状のものを採用することで、樹脂網よりも安価なものにしながら、クリンプ網を採用した際に生じる虞のある枝梗の刺さりに起因した目詰まりを抑制できるとともに、樹脂網やクリンプ網に比較して耐久性の向上を図れるようになり、又、その反面、樹脂網やクリンプ網よりも重量が重くなって扱い性の面で不利になる格子状の受網3を、その湾曲方向で上手側受網部分3Aと下手側受網部分3Bとに分割可能な2分割構造に構成して、各受網部分3A,3Bの湾曲方向での長さを短くすることで、扱胴オープン時に大きく開放される扱胴2と各受網ガイド13の間からの前後の受網ガイド13に対する受網3の着脱を容易に行えるようにしている。
【0021】又、円弧状部材16は、支持鋼材17及び棒状鋼材18に対して扱胴2側に突出するようになっており、これによって、脱穀処理時には、扱胴2と受網3との間における穀稈穂先側の移動速度や処理物の流動速度を規制することができ、もって、穀粒の脱粒性や単粒化などの向上を図れるようになっている。
【0022】図2、図3及び図6〜8に示すように、下手側受網部分3Bの各円弧状部材16は、扱胴2の回転方向最上手側に位置する棒状鋼材18Aのみを支持するピース部材16Aと、それ以外の棒状鋼材18Bを支持する部材本体16Bとに分離可能に構成されている。各ピース部材16Aのうち、受網ガイド13に載置される両端の円弧状部材16に属するピース部材16Aは、受網ガイド13の切欠部13aから対応する部材本体16Bにボルト連結されるように、又、それら以外の他の円弧状部材16に属するピース部材16Aは、対応する部材本体16Bに対して扱胴2側から外嵌係合するように形成されている。
【0023】要するに、受網3を上手側受網部分3Aと下手側受網部分3Bとに分割可能な2分割構造に構成することでより多くの処理物が接触することによる部分的な激しい摩耗が生じ易くなっている受網3の所定箇所、つまり、下手側受網部分3Bの各円弧状部材16における扱胴2の回転方向最上手側箇所を、分離可能なピース部材16Aで構成するとともに、それらのピース部材16Aに、下手側受網部分3Bにおける扱胴2の回転方向最上手側に位置する棒状鋼材18Aを支持させるようにしていることから、各ピース部材16Aに部分的な激しい摩耗が生じた場合には、扱胴オープン状態を現出して、両端に位置するピース部材16Aと部材本体16Bとのボルト連結を解除するだけで、各ピース部材16Aを、それらで支持される棒状鋼材18Aと一体で、受網3の内面側から、受網ガイド13から受網3の全体あるいは下手側受網部分3Bを取り外す手間なく簡単に交換できるようになっており、もって、この受網3において部分的な激しい摩耗が生じた場合の対処に要する費用の低減化及び手間の軽減化を大幅に図れるようになっている。
【0024】〔別実施形態〕以下、本発明の別実施形態を列記する。
■ 脱穀装置としては、全稈投入型のコンバインに搭載されるものであってもよい。
■ 受網3としては、上手側受網部分3Aと下手側受網部分3Bとに分割不能に構成されたものであってもよい。
■ 各ピース部材16Aのうちの受網ガイド13に載置される両端の円弧状部材16に属するピース部材16Aと、それに対応する部材本体16Bとの連結を、上記実施形態で例示したボルトの代わりにピンやビスなどで行うようにしてもよい。
■ 各ピース部材16Aを、円弧状部材16に対して受網3の内面側から単独で着脱可能となるように構成してもよい。
■ 図9に示すように、ピース部材16Aに、棒状鋼材18に対する切欠部16aと、円弧状部材16に対する切欠部16bとを形成して、ピース部材16Aの着脱を、棒状鋼材18及び円弧状部材16に対する係合及び係合解除のみで、より簡単に行えるようにしてもよい。
■ ピース部材16Aの配設箇所としては、円弧状部材16における部分的な激しい摩耗が生じ易い箇所であれば、上記実施形態で例示した下手側受網部分3Bの各円弧状部材16における扱胴2の回転方向最上手側箇所以外の箇所であってもよい。
■ ピース部材16Aとして、部材本体16Bよりも耐摩耗性の高い材質で構成されたものを採用するようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年8月26日(1999.8.26)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−61334(P2001−61334A)
【公開日】 平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願番号】 特願平11−239763