トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 コンバイン
【発明者】 【氏名】藤田 靖

【要約】 【課題】車体を前後左右に傾斜して水平制御を行うことができるクローラ式のコンバインにおいて、車体が前後左右に傾斜した場合の水平制御を迅速に行って応答性を高めるとともに、車体水平制御にともなって制御のオーバーシュートやハンティングなど不具合が発生しない、車体水平制御を行うことができるコンバイン1を提供すること。

【解決手段】車体の左右傾斜の修正手段を有するコンバインにおいて、左右傾斜角が大(例えば、3°以上)のときは左および右の傾斜修正手段を同時かつ反対方向に作動させ、傾斜角が小(例えば、3°未満)のときは一方の傾斜修正手段だけを作動させる構成であるコンバインであり、左右傾斜角が大のときは修正が迅速であり、傾斜角が小のときは傾斜角修正制御を緩速にしてオーバーシュートやハンティングを発生しない水平制御を行うことができて、制御性に優れて、乗り心地のよいコンバインを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体の左右傾斜の修正手段を有するコンバインにおいて、左右傾斜角が大のときは左および右の傾斜修正手段を同時かつ反対方向に作動させ、傾斜角が小のときは一方の傾斜修正手段だけを作動させる構成であることを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローラを走行手段として着装した農業用のコンバインに関する。
【0002】
【従来の技術】図1には穀類の収穫作業を行うコンバインの側面図を示し、図2はその走行装置の詳細を示す側面図であり、図3はその走行装置の詳細を示す上面図である。コンバイン1の車体2のフレーム2aの下部側に左右一対のクローラ14を有する走行装置3を配設し、車体フレーム2aと走行装置3との間に車体フレーム2aを昇降する左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を介在させている。
【0003】コンバイン1の車体フレーム2aの前方には分草具7と刈刃8を具備する刈取装置6を設け、圃場に植立する穀稈を刈取り、整列して供給搬送装置に引き継ぎ、さらにフィードチェン10に引き継いで脱穀装置11に供給し、脱穀装置11において脱穀、選別してグレンタンクに穀粒を一時貯留する。グレンタンクが一杯になれば排穀オーガ12aにより貯留穀粒をコンバイン1の外部に搬出する。刈取装置6の分草具7、刈刃8などは刈取フレーム9に取り付けて、刈取フレーム回動軸9aを中心に、動力の伝動可能かつ一斉に昇降できる構成である。
【0004】コンバイン1は広い接地面積を有するクローラ14を装備しているので不整地や軟弱な湿田などを走行しながら刈取作業を行うことができるが、地面の状況により放置すればコンバイン1の全体が沈下して刈取作業に支障を来たしたり、片側だけ沈下することによりコンバイン1の姿勢が前後左右に傾動して、操作席13に搭乗するオペレータに不快感を与え、かつ安全上も好ましくないだけでなく、脱穀装置11内の穀粒の選別作用にも悪影響を及ぼす。
【0005】そこで、オペレータは手動で操縦席13の車高操作スイッチを操作してコンバイン1の車体フレーム2aの地上高さを適正に保持したり、右上げ、左上げスイッチを操作して、左右傾斜手段4を作動させ、また前上げ、前下げスイッチを操作して前後傾斜手段5を作動させ、コンバイン1の傾斜を修正するようにしている。
【0006】また、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を備えたコンバイン1において、左右水平センサ35の出力および前後傾斜センサ47の出力に従い自動制御装置によりコンバイン1の左右傾斜および前後傾斜を自動制御により修正して姿勢を水平に保持することも行われている。
【0007】左右傾斜手段4および前後傾斜手段5は、刈取装置6の上下昇降、排穀オーガ12aの上下昇降とともに油圧回路により駆動し、油圧回路の作動油は走行装置3を無段変速するHSTと共用する構成である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】コンバイン1の走行装置3は、左右一対の広幅で無端帯状のクローラ14により広い接地面積を確保するので、湿田など軟弱な地盤の圃場においても沈下することが少なく、かつ極めて軟弱な地盤の圃場などにおける沈下に対して、前述の左右傾斜手段4あるいは前後傾斜手段5によりコンバイン1の姿勢および圃場面からの高さを適正に維持して走行し、収穫作業などを容易に行うことができる構成としている。
【0009】例えば、湿田の刈取作業中にローリングして車体の左側が低く傾斜した場合には、左側の左右傾斜手段4を駆動して、車体の左側を上昇し、車体を水平に維持する。車体の右側が低く傾斜した場合には、反対に車体の右側を上昇し、車体を水平に維持する。
【0010】刈取作業中にピッチングして車体の前側が低く傾斜した場合には前後傾斜手段5により車体の前側を上昇し、車体の後側が低く傾斜した場合には反対に車体の後側を上昇し車体を水平に維持する。
【0011】しかしながら、例えば圃場が極めて軟弱で、車体の傾斜角度が大きい場合には、左右傾斜手段4または前後傾斜手段5を作動させてから、車体の傾斜が水平に修正回復するまでに長時間を要するので車体水平制御の制御性が悪いという問題があった。
【0012】また作動時間を短縮するために左右の傾斜手段を同時に反対方向に作動させて、例えば左傾斜では左側の傾斜手段を上昇させると同時に、右側の傾斜手段を下降させる制御を行うと、作動時間の短縮は可能であるが、車体が水平に戻る付近で制御の行き過ぎによるオーバーシュートが発生したり、ハンティングが発生するなどコンバイン1の乗り心地に悪影響を与えるという問題もあった。
【0013】そこで、本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解消するもので、車体を前後左右に傾斜して水平制御を行うことができるクローラ式のコンバインにおいて、車体が前後左右に傾斜した場合の水平制御を迅速に行って応答性を高めるとともに、車体水平制御にともなって制御のオーバーシュートやハンティングなど不具合が発生しない、車体水平制御を行うことができるコンバイン1を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、車体の左右傾斜の修正手段を有するコンバインにおいて、左右傾斜角が大(例えば、2〜3°以上)のときは左および右の傾斜修正手段を同時かつ反対方向に作動させ、傾斜角が小(例えば、2〜3°未満)のときは一方の傾斜修正手段だけを作動させる構成であるコンバインにより解決される。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、車体を前後左右に傾斜して水平制御するコンバインにおいて、左右の傾斜角が大のときは左右の車体水平制御手段を同時に、かつ互いに反対方向に作動させ、車体の傾斜角が小のときは、左右の車体水平手段の一方だけを作動させるようにしたので、傾斜角が大のときの傾斜修正制御が迅速であり、傾斜角が小のときは傾斜角修正制御を緩速にしてオーバーシュートやハンティングを発生しない水平制御を行うことができて、制御性に優れて、乗り心地のよいコンバインを提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、従来技術で説明したコンバインの構成に改良を加えたものであり、図1ないし図3のコンバインの構成部材と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0017】コンバイン1の走行装置3は、無端帯状のクローラ14と該クローラ14を回転させる駆動スプロケット15と、所定間隔を置いて設けられていてクローラ14を地面に接地させる複数の接地転輪16と、地面の凹凸に対応する揺動転輪17と、前記接地転輪16及び前記揺動転輪17とを支持するトラックローラフレーム18と、クローラ14に張力を与えるアイドルローラ19と、該アイドルローラ19を移動調節する調節装置20と、クローラ14の垂れ下がりを防止する支持転輪21などから構成され、これと同じ構成のものが左右一対に設けられている。
【0018】揺動転輪17はトラックローラーフレーム18に固着された揺動軸45に揺動自在に遊嵌支持される揺動アーム46に回転自在に軸支されていて地面の凹凸に対応する。
【0019】トラックローラフレーム18には、その前部に「へ」字形の前部アーム22がその下端部をトラックローラーフレーム18に固定したピン23に遊嵌連結し、後部に後部アーム24が「へ」字形の下端部をトラックローラフレーム18に固定したピン25に遊嵌連結している。
【0020】前部アーム22の他端は車体フレーム2aに固定されている支持台26の前部ローリング軸27に遊嵌連結されていて、さらに前部ローリング軸27にはアーム30が遊嵌連結されている。前部アーム22とアーム30は連結固定されている。前記後部アーム24の他端は連結フレーム29の後部ローリング軸28に遊嵌連結されていて、さらに、後部ローリング軸28には、アーム31が遊嵌連結されている。後部アーム24とアーム31は連結固定されている。
【0021】また、アーム30とアーム31は連結ロッド32で遊嵌連結されていて、さらに、前記アーム31の端部には、ローリング油圧シリンダ33のピストンロッド34の端部が遊嵌連結されている。ローリング油圧シリンダ33は、車体フレーム2aに対して遊嵌しているアーム33aに遊嵌されていて、その遊嵌軸心からフレーム33bが設けられ、その端部はピン39aによりピッチングアーム39に遊嵌連結している。
【0022】前記フレーム33bはローリング油圧シリンダ33を移動可能にするためのものである。また、前記アーム33aによりローリング油圧シリンダ33をつり下げた状態としているのは、ピッチングシリンダ43を油圧で作動させた時、ローリング油圧シリンダ33の支点を変更させるためのものである。
【0023】したがって、ローリング油圧シリンダ33のピストンロッド34を伸ばすと、図2の側面図において、アーム31は時計方向に回転して連結ロッド32を引っ張り、該連結ロッド32はアーム30を時計方向に回転させる。すると、後部アーム24と前部アーム22はともに時計方向に回転して、これによりトラックローラフレーム18は車体フレーム2aに対して下方へと下がる。
【0024】図2と同じ構造のものが車体の進行方向右側にもあるので、左右水平制御(ローリング)が行える。左右のローリング油圧シリンダ33、33’のピストンロッド34、34’を同時に伸ばすと、クローラ14に対して車体フレーム2aは上昇することになる。また、ローリング油圧シリンダ33、33’のピストンロッド34、34’を縮めると、前述の動きと反対の動きとなるので、トラックローラフレーム18は車体フレーム2aに対して上方へと上がり、クローラ14に対して車体フレーム2aは下降することになる。
【0025】ローリングストロークセンサ36、36’、ローリング油圧シリンダ33、33’にそれぞれ取り付けられ、アーム31に植立するピン36aに一端を遊嵌するロッド36bの他端をアーム36cに遊嵌し、アーム36cはローリングストロークセンサ36に軸着して、ローリングアーム31の移動、つまり左右傾斜手段4のクローラ14に対する相対傾斜位置を検出できる構成である。また、左右のローリングストロークセンサ36、36の両者の検出結果から、車体2のクローラ14に対する相対車高位置を算出することができる。
【0026】コンバイン1の左右方向の傾斜(ローリング)は左右傾斜手段4により修正される。圃場が湿田などでコンバイン1が左右に傾斜すると、左右傾斜センサ35が傾斜を検出して、手動または自動制御装置100による自動制御によりコンバイン1を水平に維持する対ローリング車体水平制御を行うことができる。
【0027】次に、図2を用いて車体フレーム2aの前後方向を傾斜させる前後傾斜手段5について説明すると、連結フレーム29の一端はピッチングアーム39とピン38で連結されていて、該ピッチングアーム39は車体フレーム2aに対して軸40に遊嵌連結されている。
【0028】具体的には、該軸40は軸受け42(図2、図3)で走行フレーム41に回動可能に支持されている。コンバイン1の前進方向に対して右側のピッチングアーム39のみ、上方に突出していて突出部39aを形成し、その端部には車体フレーム2aに対して遊嵌している油圧で作動するピッチングシリンダ43のピストンロッド44の端部が遊嵌している。
【0029】ピストンロッド44を短縮すると、ピッチングアーム39は軸40を支点にして時計回りに回動する。ピッチングアーム39は軸受42で車体フレーム2aに接続しているので、車体フレーム2aは前側ローリング支点27を中心に時計回りに回転するため、車体フレーム2aの後部とクローラ14との間の間隔は短くなり、後下がり傾斜、すなわち、車体フレーム2aおよびコンバイン1は前上がり傾斜となる。
【0030】ピストンロッド44を伸張すると、前述と反対の動きとなり車体フレーム2aの後部とクローラ14との間隔は長くなり、後上がり傾斜、すなわち、車体フレーム2aおよびコンバイン1は前下がり傾斜となる。
【0031】ピッチングストロークセンサ37は車体フレーム2aに取り付けられ、ピッチングアーム突出部39aに植立するピン37aに一端を遊嵌するロッド37bの他端をアーム37cに遊嵌し、アーム37cはピッチングストロークセンサ37に軸着して、ピッチングアーム39の移動、つまり前後傾斜手段5の作動位置、したがって車体2とクローラ14との相対的な傾斜量を検出できる構成である。
【0032】コンバイン1の前後方向の傾斜(ピッチング)は前後傾斜手段5により修正される。圃場が湿田などでコンバインが傾斜すると、前後傾斜センサ47が傾斜を検出して、手動または自動制御装置100による自動制御によりコンバイン1を水平に維持する対ピッチング車体水平制御を行うことができる。
【0033】本発明の実施の形態は、上述の左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を備えたコンバイン1において、図4の自動制御装置ブロック図に示す自動制御装置100を用い、図5に例示する制御のフロー図のように車体水平制御を行う構成を特徴とする。
【0034】すなわち、図4に示す自動制御装置100のCPU101には、入力インターフェース102を介して、手動・自動切換スイッチ、手動左右傾斜スイッチ、手動前後傾斜スイッチ、パワステレバー刈取上下スイッチ、左右傾斜センサー35、前後傾斜センサー47の各信号が入力され、CPU101で演算処理された後、出力インターフェース103を介して、左右傾斜手段4のローリング油圧シリンダ33、33’および/またはピッチングシリンダ43に出力して、左右および/または前後の車体水平制御を行う構成である。
【0035】そして、車体水平制御のための手動・自動切換スイッチが手動に設定されていれば、操縦席13に搭乗したオペレータが、体感と図示しないコンビネーションメータの傾斜計の指示とから判断して、手動左右傾斜スイッチ、および手動前後傾斜スイッチを操作することにより、それぞれコンバイン1の車体2を左右に傾斜、および前後に傾斜させることができる。
【0036】また、車体水平制御のための手動・自動切換スイッチが自動に設定されていても自動制御装置100に手動優先を組み込むことにより、以下に述べる自動運転中であっても、手動による操作を優先して制御することが可能である。
【0037】車体水平制御のための手動・自動切換スイッチが自動に設定されていれば、図5の制御のフロー線図に例示するような制御の作動が行われる。すなわち、左右傾斜センサー35の検出値から左傾斜が大であれば、右傾斜手段下降を出力し、かつ左傾斜手段上昇を出力する。左傾斜が小になれば左傾斜手段上昇だけを出力する。
【0038】同様にして、左右傾斜センサー35の検出値から右傾斜が大であれば、左傾斜手段下降を出力し、かつ右傾斜手段上昇を出力する。右傾斜が小になれば右傾斜手段上昇だけを出力する。ここに、一例として、車体傾斜角が水平よりも3°以上変化すれば、傾斜角が大としている。
【0039】すなわち、本発明の実施の形態の構成によれば、左右傾斜センサ35がコンバイン1の車体2の傾斜を検出した場合に、単に傾斜が低い側の左右傾斜手段4を作動させて車体を上昇させるのでなく、傾斜の大小を判定して、傾斜が3°以上であれば傾斜の低い側の左右傾斜手段4を上昇するとともに、同時に傾斜が高い側の左右傾斜手段4を下降するように作動し、傾斜が小3°未満)であれば傾斜の低い側の左右傾斜手段4だけを上昇するように作動することを特徴とする。
【0040】コンバイン1が3°以上に大きく傾斜した場合には左右両方の左右傾斜手段が互いに反対方向に同時に作動するので、傾斜を修正する速度が大となり、水平制御の応答が迅速になるように作用し、傾斜が3°未満に小となれば一方の左右傾斜手段4だけが作動して、傾斜修正速度を緩やかするように作用するので、車体水平制御の応答性が向上するとともに、車体がほぼ水平に修正された後は緩やかに傾斜修正を行って、水平制御に伴うオーバーシュートやハンティングなどの問題が発生しないという効果がある。
【0041】上記図1ないし図5に示す実施の形態のコンバイン1の変形例を図6に示す。図6は本変形例の制御のフローを示す線図である。本変形例によれば、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を有するコンバイン1において、左右傾斜手段4による車高上昇作動と前後傾斜手段5による後傾作動とを同時に行うことが可能な構成により、水平制御を迅速にすると同時に、水平制御に伴う車体とクローラの接触破損を防止することができる。
【0042】本変形例では、上述の左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を備えたコンバイン1において、図6の制御のフロー図に例示するように車高上昇制御と車体後傾制御を行う構成を特徴とする。従来の左右傾斜手段4および前後傾斜手段5の同時作動ができない構成においては、作動の順序を左右傾斜、前後傾斜、車高の順に定めていたので、制御の速度が遅く車体の姿勢安定までに長い時間を要していた。
【0043】しかし左右傾斜および前後傾斜の作動を同時にできる構成にすると、車体の姿勢安定までの時間は短縮されるが、車体2の車高が低い場合に、車体2を大きく後傾させると、車体2の後部下部とクローラ14の後部上部との距離が接近して両者が接触して、車体2およびクローラ14の破損を招くことがあった。
【0044】この車体2とクローラ14が接触する車体の後傾量と車高との関係は、図7の線図の後傾禁止領域により示される。ただし、ここにいう車高および車体後傾量は、いずれも圃場面と車体2との絶対値ではなく、クローラ14と車体2との相対位置関係を示す値である。車体2の車高(相対値)は2個のローリングストロークセンサ36、36’の検出値から求めることができる。また車体後傾量(相対値)はピッチングストロークセンサ37の検出値から求めることができる。
【0045】自動制御装置100には、あらかじめ図7の後傾禁止区域を記憶しておき、図6に示すように、前後傾斜センサ47が前傾傾斜を検出したときに、車高が後傾可能高さであるかを判別して、YESであれば後傾出力を行うが、NOであれば後傾禁止領域かを判別し、禁止領域であれば、まず車高上げ出力を行う。
【0046】また後傾禁止領域でなければ、後傾出力と車高上げ出力とを同時に出力する。車体が圃場面に対して水平であるかを前後傾斜センサ47でチェックして、車体が水平になるまで上述のフローを繰り返すように作動する。車体が水平になれば制御のフローをリターンするように作動する。
【0047】本変形例によれば、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を有するコンバイン1において、左右傾斜手段4による車高上昇作動と前後傾斜手段5による後傾作動とを同時に行うことができる構成にしたので、従来、車体の水平制御において、左右傾斜の水平制御、前後傾斜の水平制御、および車高調節の順に順次制御していたために、制御のスピードが遅く、コンバイン1の姿勢が安定するまでに長時間を必要としていたが、この問題を解消することができた。
【0048】また、車高上昇と前後傾斜の同時制御では、低車高で車体を後傾させると、車体とクローラとが接触することがあるが、このような場合には、後傾禁止領域を設けておき、まず車高を上昇し、ついで後傾禁止領域以外において後傾作動するようにしたので、同時制御による接触問題が発生することはない。また、後傾から前傾への作動においてもピッチングとローリングとを同時作動させて迅速に車体水平制御ができる。
【0049】上記図1ないし図5に示す実施の形態のコンバイン1の第2の変形例を図8に示す。図8は本変形例の油圧回路図であり、この油圧回路は、左右傾斜手段による車高上昇作動と前後傾斜手段による後傾作動との同時作動が可能な油圧回路である。
【0050】上述の図6、図7の例では、車高上昇制御と車体後傾制御とを同時に制御する構成であるが、自動制御装置が車高上昇制御と車体後傾制御とを同時に制御する信号を発生しても、油圧回路の特性から実際には車高上昇制御と車体後傾制御とは同時に作動しないという問題があった。
【0051】すなわち、従来の油圧回路では、油圧ポンプから供給される高圧の作動油を、車体左右ローリング、車体前後ピッチング、刈取昇降、オーガ昇降の各油圧シリンダに並列に供給していたので、図6、図7の例では、例えば車高上昇制御と車体後傾制御との信号が同時に発信されて、ローリング油圧シリンダおよびピッチングシリンダに並列に作動油が供給されても、負荷が小で、低い作動圧力で作動するピッチングシリンダから先に作動が開始されるので、実際には車高上昇と車体後傾とは同時に作動しない。
【0052】このような問題を解決するには、それぞれを独立の油圧回路に分割し、それぞれに油圧ポンプを設けて作動油を供給する方法があるが、このようにすると複数の油圧ポンプと管路とを必要とし、設置するスペースや経済的に好ましくない。
【0053】本例では図8に示すように、油圧回路50において、油圧ポンプ51の出口側の管路52に油圧パイロット切換弁53を設け、分流された一方の管路54に流量調整弁55を設け、該流量調整弁55の下流側に電磁作動方向切換制御弁56のPポートを介して、ピッチングシリンダ43を接続する構成を特徴とする。
【0054】油圧パイロット切換弁53は電磁作動アンロード弁57の作動により作動し、また油圧パイロット切換弁53の分流された他方の管路58には、それぞれ電磁作動方向切換制御弁59、60、61、62のPポートを介して、刈取昇降シリンダ9b、オーガ昇降油圧シリンダ12b、車体水平ローリング(左)シリンダ33、車体水平ローリング(右)シリンダ33’が並列に接続される。電磁作動アンロード弁57および電磁作動方向切換制御弁56、59、60、61、62のTポートは管路63に並列に接続され、戻り作動油を油タンク64に戻す構成である。
【0055】本例の作動を図8を用いて説明する。油タンク64の作動油は油圧ポンプ51により汲み上げられ、高圧に加圧されて管路52から切換弁53に送られる。非作業時で電磁作動アンロード弁57がアンロードしているときには、切換弁53を通過した作動油は電磁作動アンロード弁57から管路63を経て油タンク64に戻る(図8に示す状態)。
【0056】電磁作動アンロード弁57を作動させてアンロードを停止するとパイロット油圧により切換弁53が切り替えられ、油圧ポンプ51から送られた作動油は分流される。分流された作動油の一方は管路54から流量調整弁55を経て制御弁56のPポートに到る。このとき制御弁56がCPU101の信号により作動していれば、ピッチングシリンダ43に送液して、車体を後傾または前傾するように作動する。
【0057】また、切換弁53で分流されて管路58に送液された作動油は、制御弁59、60、61、62のPポートに並列に供給され、各制御弁59、60、61、62の作動により、それぞれに接続するシリンダを駆動する。制御弁61および62がCPU101の信号により作動していれば、ローリング油圧シリンダ33および33’に作動油が供給されて車体2を上昇または下降するように作動する。
【0058】ここに、制御弁56、61、62は電磁駆動4ポート方向切換弁であり、それぞれにパイロット圧付き逆止弁56a、61a、62a、流量調整弁56b、56c、61b、61c、62b、62c、逆止弁61d、62dを接続してピッチングシリンダ43、ローリング油圧シリンダ33、33’を駆動する。
【0059】本例の油圧回路50によれば、管路54の作動油は切換弁53により分流され、流量調整弁55により流量および圧力を調節されてピッチングシリンダ43に供給される。ピッチングシリンダ43の負荷が小さく、低圧力で作動する場合でも、流量調整弁55を調節して、管路54の流量と管路58の流量との比を、例えば30対70になるように設定しておけば、ピッチングシリンダ43は30パーセント分に相当して緩やかに作動する。 管路58に接続するローリング油圧シリンダ33、33’は、70パーセント分に相当する圧力、流量の作動油の供給を受けて、負荷が大で作動に高圧力を必要としても、ピッチングシリンダ43に比べて迅速に作動し、車体2の車高上昇と車体2の後傾を同時に平行して作動させることができる。
【0060】したがって、本例によれば、油圧回路50に切換弁53を設けるだけの簡単な構成により、自動制御装置100から左右傾斜手段4による車高上昇と前後傾斜手段5による後傾との同時作動を指令された場合に、実際的に車高上昇作動と後傾作動との同時作動ができる油圧回路が得られる。
【0061】上記図1ないし図5に示す実施の形態のコンバイン1の第3の変形例を図9に示す。図9は本変形例の油圧制御回路を示す油圧回路図であり、本変形例によれば、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を有するコンバイン1において、左右傾斜手段4による車高上昇作動と前後傾斜手段5による後傾作動との同時作動、および/または左右傾斜手段4による車高上昇作動と刈取装置の上昇作動との同時作動が可能な油圧制御回路50’を構成することができる。
【0062】上述の第2変形例で、車高上昇制御と車体後傾制御とを同時に作動させる油圧回路50の構成を示したが、車高上昇制御と刈取装置上昇制御とを同時に制御する信号を発生した場合にも、油圧回路50の特性から実際には車高上昇と刈取装置上昇とは同時に作動しないという問題があった。
【0063】すなわち、第2変形例の油圧回路50では、油圧ポンプ51から供給される高圧の作動油を、車体左右ローリング油圧シリンダ33、33’、刈取昇降油圧シリンダ9b、オーガ昇降油圧シリンダ12bの各油圧シリンダに並列に供給していた。
【0064】例えば自動制御装置100から車高上昇制御と刈取装置上昇制御との信号が同時に発信されて、ローリング油圧シリンダ33、33’および刈取昇降油圧シリンダ9bに同時に作動油が供給されても、負荷が小で、低い作動圧力で作動する刈取昇降油圧シリンダ9bから先に作動が開始され、ローリング油圧シリンダ33、33’の作動は遅れるので、実際には車高上昇と刈取上昇とは同時に作動しない。
【0065】本例では図9に示すように、油圧回路50’において、油圧ポンプ51の出口側の管路52に油圧パイロット切換弁53を設け、分流された一方の管路54に流量調整弁55を設け、該流量調整弁55の下流側に電磁作動方向切換制御弁56のPポートを介して、ピッチングシリンダ43を接続し、さらに分流された他方の管路58に第2切換弁65を設け、該第2切換弁65により分流された一方の管路66に流量調整弁67を設け、該流量調整弁67の下流側に電磁作動方向切換制御弁59のPポートを介して、刈取昇降シリンダ9bを接続する構成を特徴とする。
【0066】油圧パイロット切換弁53は電磁作動アンロード弁57の作動により作動し、第2油圧パイロット切換弁65は第2電磁作動アンロード弁68の作動により作動する。
【0067】また第2油圧パイロット切換弁65の分流された他方の管路69には、それぞれ電磁作動方向切換制御弁60、61、62のPポートを介して、オーガ昇降油圧シリンダ12b、車体水平ローリング(左)シリンダ33、車体水平ローリング(右)シリンダ33’が並列に接続される。電磁作動アンロード弁57、第2電磁作動アンロード弁68および電磁作動方向切換制御弁56、59、60、61、62のTポートは管路63に並列に接続され、戻り作動油を油タンク64に戻す構成である。
【0068】本例の作動を図9を用いて説明する。油タンク64の作動油は油圧ポンプ51により汲み上げられ、加圧されて管路52から切換弁53に送られる。非作業時で電磁作動アンロード弁57がアンロードしているときには、作動油は電磁作動アンロード弁57から管路63を経て油タンク64に戻る(図9に示す状態)。
【0069】電磁作動アンロード弁57を作動させてアンロードを停止するとパイロット油圧が作用して切換弁53が切り替えられ、分流された作動油の一方は管路54から流量調整弁55を経て制御弁56のPポートに到る。このとき制御弁56がCPU101の信号により作動していれば、ピッチングシリンダ43に送液して、車体2を後傾または前傾するように作動する。 また、切換弁53で分流されて管路58に送液された作動油は、電磁作動アンロード弁57と同時に作動する第2電磁作動アンロード弁68の作動によりパイロット油圧が作用して第2切換弁65が切り替えられ、分流された作動油の一部は管路58から流量調整弁67を経て制御弁59のPポートに到る。
【0070】このとき制御弁59がCPU101の信号により作動していれば、刈取昇降シリンダ9bに送液して、刈取装置6を上昇または下降するように作動する。
【0071】第2切換弁65により分流された他方の作動液は管路69に流入し、制御弁60、61、62のPポートに並列に供給され、各制御弁、60、61、62の作動により、それぞれに接続するシリンダを駆動する。制御弁61および62がCPU101の信号により作動していれば、ローリング油圧シリンダ33および33’に作動油が供給されて車体2を上昇または下降するように作動する。
【0072】ここに、制御弁59、60は電磁駆動4ポート方向切換弁であり、それぞれにパイロット圧付き逆止弁59a、59b、59c、60a、流量調整弁59d、59e、60bを接続して刈取昇降シリンダ9b、オーガ昇降油圧シリンダ12bを駆動する。
【0073】本例の油圧回路50’によれば、管路54の作動油は切換弁53により分流され、流量調整弁55により流量および圧力を調節されてピッチングシリンダ43に供給され、分流された管路58の作動油は第2切換弁65によりさらに分流され、流量調整弁67により流量および圧力を調節されて刈取昇降シリンダ9bに供給される。
【0074】ピッチングシリンダ43の負荷が小さく、低圧力で作動する場合および/または刈取シリンダ9bの負荷が小さく、低圧力で作動する場合でも、流量調整弁55および流量調整弁67を調節して、管路54の流量と管路58の流量と管路69との比を適切に設定しておけば、ピッチングシリンダ43および/または刈取昇降シリンダ9bは緩やかに作動し、管路69に接続するローリング油圧シリンダ33、33’は、適切な圧力、流量の作動油の供給を受けて、負荷が大で作動に高圧力を必要としても、ピッチングシリンダ43および/または刈取昇降シリンダ9bに比べて迅速に作動し、車体2の車高上昇と車体2の後傾、車高上昇と刈取上昇、車体2の後傾と刈取上昇、または車高上昇、刈取上昇、車体2後傾を、いずれも同時に平行して作動するように作用する。
【0075】したがって、本例によれば、油圧回路に2個の切換弁を設けるだけの簡単な構成により、自動制御装置から左右傾斜手段による車高上昇と前後傾斜手段による後傾と刈取装置上昇の同時作動を指令された場合に、実際的に車高上昇作動と後傾作動と刈取装置上昇とのいずれか2者または3者の同時作動ができる油圧回路を構成するという優れた効果がえられる。
【0076】本例によれば刈取装置上昇と、車体のピッチングとを同時に迅速に行うことができるので、畦畔などにおける刈上げを的確に行い、かつ刈取装置先端を畦畔に突っ込むことを防止するという効果も得られる。
【0077】なお、上記の実施の形態および変形例において示した傾斜角度の数値、油圧分流の比率の数値は、説明のために例として示したものであり、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成11年9月8日(1999.9.8)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
【公開番号】 特開2001−78543(P2001−78543A)
【公開日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願番号】 特願平11−253953