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【発明の名称】 コンバイン
【発明者】 【氏名】藤田 靖

【要約】 【課題】車体を前後左右に傾斜して水平制御できるクローラ式のコンバインにおいて、刈取装置の昇降時の車体の水平制御停止時間を適切に制御して、刈取装置の昇降に伴う振動的揺動運動を排除すると共に、振動的揺動運動終了後は速やかに車体水平制御を再開することができるコンバインを提供すること。

【解決手段】車体を前後左右に傾斜して水平制御できるコンバインにおいて、刈取装置上下昇降時の車体の水平制御停止時間を適切に制御して、刈取装置上下昇降中は水平制御を停止し、刈取装置の昇降に伴い車体が振動する運動と車体水平制御による車体の運動との干渉を排除すると共に、刈取装置が上下方向への昇降を終了した後の一定短時間経過後には車体水平制御を再開して、刈取装置昇降の大小にかかわらず、制御遅れを発生することなく、車体を水平状態に自動制御することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 刈取装置を車体上に昇降自在に配置し、該車体を自動的に水平制御する車体水平制御手段を有するコンバインにおいて、刈取装置昇降中および刈取装置昇降終了後の所定時間は車体水平制御手段の作動を停止する構成を備えたことを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローラを走行手段として着装した農業用のコンバインに関する。
【0002】
【従来の技術】図1には穀類の収穫作業を行うコンバインの側面図を示し、図2はその走行装置の詳細を示す側面図であり、図3はその走行装置の詳細を示す上面図を示す。コンバイン1の車体フレーム2aの下部側に左右一対の走行クローラ14を有する走行装置3を配設し、車体フレーム2aと走行装置3との間に車体フレーム2aを昇降する左右傾斜手段4(図2参照)および前後傾斜手段5(図2参照)を介在させている。
【0003】コンバイン1の車体フレーム2aの前方には分草具7と刈刃8(図9参照)を具備する刈取装置6を設け、圃場に植立する穀稈を刈取り、整列して供給搬送装置に引き継ぎ、さらにフィードチェン10に引き継いで脱穀装置11に供給し、脱穀装置11において脱穀、選別してグレンタンク12(図8参照)に穀粒を一時貯留する。刈取装置6の分草具7、刈刃8などは刈取フレーム9に取り付けて、刈取フレーム回動軸9aを中心に、動力の伝動可能かつ一斉に昇降できる構成である。
【0004】コンバイン1は広い接地面積を有する走行クローラ14を装備しているので不整地や軟弱な湿田などを走行しながら刈取作業を行うことができるが、地面の状況により放置すればコンバイン1の全体が沈下して刈取作業に支障を来たしたり、片側だけ沈下することによりコンバイン1の姿勢が前後左右に傾動して、操作席13に搭乗するオペレータに不快感を与え、かつ安全上も好ましくないだけでなく、脱穀装置11内の穀粒の選別作用にも悪影響を及ぼす。
【0005】そこで、オペレータは手動で操縦席13の車高操作スイッチを操作してコンバイン1の車体フレーム2aの地上高さを適正に保持したり、右上げ、左上げスイッチを操作して、左右傾斜手段4を作動させ、また前上げ、前下げスイッチを操作して前後傾斜手段5を作動させ、コンバイン1の傾斜を修正するようにしている。
【0006】また、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を具備したコンバイン1において、左右傾斜センサ35の出力および前後傾斜センサ47の出力に従い、制御手段によりコンバイン1の左右傾斜および前後傾斜を修正して姿勢を水平に自動制御することも行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】コンバイン1の走行装置3は、左右一対の広幅で無端帯状の走行クローラ14により広い接地面積を確保するので、湿田など軟弱な地盤の圃場においても沈下することが少なく、かつ極めて軟弱な地盤の圃場などにおける沈下に対して、前述の左右傾斜手段4あるいは前後傾斜手段5によりコンバイン1の姿勢および圃場面からの高さを適正に維持して走行し、収穫作業などを容易に行うことができる構成としている。
【0008】しかしながら、コンバイン1の車体2は、圃場の地盤の強弱により前後または左右に傾斜するだけでなく、刈取装置6の上下移動によっても、コンバイン1の車体2を前後または左右に傾斜させ、かつ振動的に揺動させることがある。すなわちコンバイン1は走行しながら刈取作業を行う場合には、圃場や植生にあわせて刈取装置6を上下方向に昇降し、また畦際などでコンバイン1を旋回する場合にも、刈取装置6を上下方向に昇降する。刈取装置6を上下に昇降させると、その反動によりコンバイン1の車体2が前後および/または左右に傾斜し、この車体2の傾斜により、短時間の間、振動的な運動が継続する。
【0009】従来技術の車体水平制御においては、この車体2の振動的な運動の影響を避けるため、刈取装置6の上下昇降出力がONしてから一定時間の間(例えば2秒間)は車体水平制御出力を停止させ、車体水平制御と車体の揺動との干渉が避けられ、車体水平制御のハンティングなどの好ましくない現象が起きないようにしていた。
【0010】しかしながら、車体水平制御を停止する時間は、刈取装置6が最も大きく上下する場合を基準として定めていたので、刈取高さの微調整など、昇降高さの変化が少なく、昇降時間が短い場合には、刈取装置6の昇降運動終了後、車体水平制御出力の再開までの停止時間が長くなり、車体水平制御の作動遅れが発生することがあった。
【0011】そこで、本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解消するもので、車体を前後左右に傾斜して水平制御できるクローラ式のコンバインにおいて、刈取装置の昇降時の車体の水平制御停止時間を適切に制御して、刈取装置の昇降に伴う振動的揺動運動を排除すると共に、振動的揺動運動終了後は速やかに車体水平制御を再開することができるコンバインを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は刈取装置を車体上に昇降自在に配置し、該車体を自動的に水平制御する車体水平制御手段を有するコンバインにおいて、刈取装置昇降中および刈取装置昇降終了後の所定時間は車体水平制御手段の作動を停止する構成を備えたコンバインにより解決される。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、車体を前後左右に傾斜して水平制御できるコンバインにおいて、刈取装置上下昇降時の車体の水平制御停止時間を適切に制御して、刈取装置上下昇降中は水平制御を停止し、刈取装置の昇降に伴い車体が振動する運動と車体水平制御による車体の運動との干渉を排除すると共に、刈取装置が上下方向への昇降を終了した後の一定短時間経過後には車体水平制御を再開して、刈取装置昇降の大小にかかわらず、制御遅れを発生することなく、車体を水平状態に自動制御することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、従来技術で説明したコンバイン1の構成に改良を加えたものであり、図1ないし図3のコンバイン1の構成部材と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0015】コンバイン1の走行装置3は、無端帯状の走行クローラ14と該クローラ14を回転させる駆動スプロケット15と、所定間隔を置いて設けられていて走行クローラ14を地面に接地させる複数の接地転輪16と、地面の凹凸に対応する揺動転輪17と、前記接地転輪16及び前記揺動転輪17とを支持するトラックローラフレーム18と、走行クローラ14に張力を与えるアイドルローラ19と、該アイドルローラ19を移動調節する調節装置20と、走行クローラ14の垂れ下がりを防止する支持転輪21などから構成され、これと同じ構成のものが左右一対に設けられている。
【0016】揺動転輪17はトラックローラーフレーム18に固着された揺動軸45に揺動自在に遊嵌支持される揺動アーム46に回転自在に軸支されていて地面の凹凸に対応する。
【0017】トラックローラフレーム18には、その前部に「へ」字形の前部アーム22がその下端部をトラックローラーフレーム18に固定したピン23に遊嵌連結し、後部に後部アーム24が「へ」字形の下端部をトラックローラフレーム18に固定したピン25に遊嵌連結している。
【0018】前部アーム22の他端は車体フレーム2aに固定されている支持台26の前部ローリング軸27に遊嵌連結されていて、さらに前部ローリング軸27にはアーム30が遊嵌連結されている。前部アーム22とアーム30は連結固定されている。前記後部アーム24の他端は連結フレーム29の後部ローリング軸28に遊嵌連結されていて、さらに、後部ローリング軸28には、アーム31が遊嵌連結されている。後部アーム24とアーム31は連結固定されている。
【0019】また、アーム30とアーム31は連結ロッド32で遊嵌連結されていて、さらに、前記アーム31の端部にはローリングシリンダ33のピストンロッド34の端部が遊嵌連結されている。ローリングシリンダ33は車体フレーム2aに対して遊嵌しているアーム33aに遊嵌されていて、その遊嵌軸心からフレーム33bが設けられ、その端部は突出部39aによりピッチングアーム39に遊嵌連結している。
【0020】前記フレーム33bはローリングシリンダ33を移動可能にするためのものである。また、前記アーム33aによりローリングシリンダ33をつり下げた状態としているのは、ピッチングシリンダ43を油圧で作動させた時、ローリングシリンダ33の支点を変更させるためのものである。
【0021】したがって、ローリングシリンダ33のピストンロッド34を伸ばすと、図2の側面図において、アーム31は時計方向に回転して連結ロッド32を引っ張り、該連結ロッド32はアーム30を時計方向に回転させる。すると、後部アーム24と前部アーム22はともに時計方向に回転して、これによりトラックローラフレーム18は車体フレーム2aに対して下方へと下がる。図2と同じ構造のものが車体の進行方向右側にもあるので、左右水平制御(ローリング)が行える。
【0022】左右のローリングシリンダ33、33’のピストンロッド34、34’を同時に伸ばすと、地面に対して車体フレーム2aは上昇することになる。また、ローリングシリンダ33、33’のピストンロッド34、34’を縮めると、前述の動きと反対の動きとなるので、トラックローラフレーム18は車体フレーム2aに対して上方へと上がり、地面に対して車体フレーム2aは下降することになる。
【0023】ローリングストロークセンサ36はローリングシリンダ33、33’に取り付けられ、アーム31に植立するピン36aに一端を遊嵌するロッド36bの他端をアーム36cに遊嵌し、アーム36cはローリングストロークセンサ36に軸着して、ローリングアーム31の移動、つまり左右傾斜手段4の作動位置を検出できる構成である。
【0024】コンバイン1の左右方向の傾斜(ローリング)は左右傾斜手段4により修正される。圃場が湿田などでコンバイン1が左右に傾斜すると、左右傾斜センサ35が傾斜を検出して、手動または制御装置100(図4)による自動制御によりコンバイン1を水平に維持する対ローリング車体水平制御を行うことができる。
【0025】次に、図2を用いて車体フレーム2aの前後方向を傾斜させる前後傾斜手段5について説明すると、連結フレーム29の一端はピッチングアーム39とピン38で連結されていて、該ピッチングアーム39は車体フレーム2aに対して軸40に遊嵌連結されている。
【0026】具体的には、該軸40は軸受け42(図2、図3)で走行フレーム41に回動可能に支持されている。コンバイン1の前進方向に対して右側のピッチングアーム39のみ、上方に突出していて突出部39aを形成し、その端部には車体フレーム2aに対して遊嵌している油圧で作動するピッチングシリンダ43のピストンロッド44の端部が遊嵌している。ピッチングシリンダ43のピストンロッド44と反対側の端部は車体フレーム2aに支持されたブラケット43aに遊嵌されている。
【0027】ピストンロッド44を短縮すると、ピッチングアーム39は軸38を支点にして時計回りに回動する。ピッチングアーム39は軸受け42で車体フレーム2aに接続しているので、車体フレーム2aは、前側ローリング支点27を中心に、時計回りに回転するため、車体フレーム2aの後部と走行クローラ14との間の間隔は短くなり、後下がり傾斜、すなわち、車体フレーム2aおよびコンバイン1は前上がり傾斜となる。
【0028】ピストンロッド44を伸張すると、前述と反対の動きとなり車体フレーム2aの後部と走行クローラ14との間隔は長くなり、後上がり傾斜、すなわち、車体フレーム2aおよびコンバイン1は前下がり傾斜となる。
【0029】ピッチングストロークセンサ37は車体フレーム2aに取り付けられ、ピッチングアーム突出部39aに植立するピン37aに一端を遊嵌するロッド37bの他端をアーム37cに遊嵌し、アーム37cはピッチングストロークセンサ37に軸着して、ピッチングアーム39の移動、つまり前後傾斜手段5の作動位置を検出できる構成である。
【0030】コンバイン1の前後方向の傾斜(ピッチング)は前後傾斜手段5により修正される。圃場が湿田などでコンバインが傾斜すると、前後傾斜センサ47が傾斜を検出して、手動または制御装置100による自動制御によりコンバイン1を水平に維持する対ピッチング車体水平制御を行うことができる。
【0031】本発明の実施の形態は、上述の左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を備えたコンバイン1において、図4の制御装置ブロック図に示す自動制御装置100を用いて図5の制御のフロー線図に示すように車体水平制御を行う構成を特徴とする。すなわち、図4に示す制御装置100のCPU101には、入力インターフェース102を介して、手動・自動切換スイッチ、手動左右傾斜スイッチ、手動前後傾斜スイッチ、パワステレバー刈取上下スイッチ、左右傾斜センサー35、前後傾斜センサー47の各信号が入力され、CPU101で演算処理された後、出力インターフェース103を介して、左右傾斜手段4のローリングシリンダ33、33’および/またはピッチングシリンダ43に出力して、左右および/または前後の車体水平制御を行う構成である。
【0032】そして、車体水平制御手動・自動切換スイッチが手動に設定されていれば、操縦席13に搭乗したオペレータが、体感と図示しないコンビネーションメータの傾斜計の指示とから判断して、手動左右傾斜スイッチ、手動前後傾斜スイッチを操作することにより、それぞれコンバイン1の車体2を左右に傾斜、前後に傾斜させることができる。また、車体水平制御手動・自動切換スイッチが自動に設定されていても制御装置100に手動優先を組み込むことにより、以下に述べる自動運転中であっても、手動による操作を優先して制御することが可能である。
【0033】車体水平制御手動・自動切換スイッチが自動に設定されていれば、図5の制御のフロー線図に例示するような制御の作動が行われる。すなわち、手動・自動切換スイッチが自動であれば、左右傾斜センサ35の信号を読み込み、左右傾斜がなければ後述する前後傾斜センサ47の信号読み込みを行う。左右傾斜があれば、つぎにパワステレバー13a(図1)による刈取上下スイッチのON・OFFを読み込み、刈取上下スイッチがOFFでなければ左右傾斜センサ35の信号の読み込みに戻る。刈取上下スイッチがOFFであれば刈取上下スイッチOFFで作動するタイマーのタイマーON後の所定のt時間経過をチェックし、t時間経過後に左右傾斜手段4のローリングシリンダ33または33’を作動させ、再び左右傾斜センサ35の信号を読み込み、車体2の左右傾斜がなくなるまでローリングシリンダ33または33’の作動を継続する。左右傾斜がなくなれば、前後傾斜センサ47の信号の読み込みを行う。
【0034】前後傾斜センサ47の信号読み込みから、前後傾斜がなければ制御のフローはリターンする。前後傾斜があれば、つぎに刈取上下スイッチのON・OFFを読み込み、刈取上下スイッチがOFFでなければ左右傾斜センサ47の信号の読み込みに戻る。刈取上下スイッチがOFFであれば刈取上下スイッチOFFで作動するタイマーのタイマーON後の所定のt時間経過をチェックし、t時間経過後に前後傾斜手段4のピッチングシリンダ43を作動させ、再び前後傾斜センサ47の信号を読み込み、車体2の前後傾斜がなくなるまでピッチングシリンダ43の作動を継続する。前後傾斜がなくなれば、リターンする。
【0035】すなわち、上記実施の形態によれば、左右傾斜センサ35および/または前後傾斜センサ47がコンバイン1の車体2の傾斜を検出しても、直ちに左右傾斜手段4および/または前後傾斜手段5により車体2の傾斜を修正するのではなく、刈取装置6の上下昇降をチェックして刈取装置6が上下昇降中には車体2の傾斜修正を行わず、かつ刈取装置6の上下昇降が完了してから一定t時間経過後にはじめて車体2の傾斜修正を行うように作動する。刈取装置6の上下昇降完了後、傾斜装置制御開始までの一定t時間は、刈取停止時のコンバイン機体振動が収まるまでの時間にあわせて調節設定可能とするので、刈取装置6の上下昇降の反力による機体の振動中に車体傾斜制御を行う場合に発生するハンチングなどの好ましくない現象を防止でき、かつ、刈取装置上下昇降完了後一定短時間後に傾斜制御を行うので、刈取装置上下昇降の大小にかかわらず適切な傾斜制御を行うことができ、車体2の水平制御に制御遅れが発生しない。
【0036】上記図1ないし図5に示す実施の形態のコンバイン1の変形例を図6および図7に示す。図6は本変形例の制御装置ブロック図であり、図7は本変形例の制御のフローを示す線図である。本変形例によれば、左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を有するコンバイン1が旋回作動する場合に発生する、旋回終了時の不必要な車体の傾きを防止し、かつ、揺動する傾き振動によるオペレータの船酔い、各リンク機構の磨耗を防止することができる。
【0037】本変形例では、上述の左右傾斜手段4および前後傾斜手段5を備えたコンバイン1において、図6の制御装置ブロック図に示す自動制御装置100を用い,図7の制御のフロー線図に示すように車体水平制御を行う構成を有する。すなわち、図6に示す制御装置100のCPU101には、入力インターフェース102を介して、手動・自動切換スイッチ、手動左右傾斜スイッチ、手動前後傾斜スイッチ、パワステレバー旋回スイッチ、左右傾斜センサー35、前後傾斜センサー47の各信号が入力され、CPU101で演算処理された後、出力インターフェース103を介して、左右傾斜手段4のローリングシリンダ33、33’および/またはピッチングシリンダ43に出力して、左右および/または前後の車体水平制御を行う構成である。
【0038】そして、車体水平制御手動・自動切換スイッチが手動に設定されていれば、操縦席13に搭乗したオペレータが、体感と図示しないコンビネーションメータの傾斜計の指示とから判断して、手動左右傾斜スイッチ、手動前後傾斜スイッチを操作することにより、それぞれコンバイン1の車体2を左右に傾斜、前後に傾斜させることができる。
【0039】本変形例において、車体水平制御手動・自動切換スイッチが自動に設定されていれば、図7の制御のフロー図に例示するような制御の作動が行われる。すなわち、手動・自動切換スイッチが自動であれば、左右傾斜センサ35および/または前後傾斜センサ47がコンバイン1の車体2の傾斜を検出しても、直ちに左右傾斜手段4および/または前後傾斜手段5により車体2の傾斜を修正するのではなく、パワステレバーの旋回スイッチをチェックして、旋回作動中には車体2の傾斜修正を行わず、かつ旋回作動が完了してから一定時間t1経過後にはじめて車体2の傾斜修正を行うように作動する。
【0040】旋回終了後、傾斜装置制御開始までの一定時間t1は、旋回終了時のコンバイン機体振動が収まるまでの時間にあわせて調節設定可能とするので、パワステレバーの旋回操作によるコンバイン旋回中に車体傾斜制御を行う場合に発生するハンティングなどの好ましくない現象を防止でき、かつ、コンバインの旋回終了時のショックに反応して機体が一時的に傾斜する不具合、機体の揺動振動によりオペレータの船酔い感など乗り心地の悪化、揺動振動に伴うコンバイン各部リンクなど磨耗と耐久性の低下を防止できる。
【0041】上記図1ないし図5に示す実施の形態のコンバイン1の第2の変形例を図8ないし図10に示す。図8は本変形例のコンバイン1の正面立面図であり、図9は本変形例の駆動力伝動機構説明図であり、図10は、本変形例のコンバイン1の車速と刈取引起し速度との関係を示す線図である。本変形例によれば、直立稲と倒伏稲とが混在する圃場の刈取作業においてコンバイン1の走行速度の変速と引起し手段の変速とを適切かつ容易に行うことができる。操縦席にはHSTレバー13b、HSTモータ操作スイッチ13c、副変則レバー13dが設けられている。
【0042】図9の駆動力伝動機構説明図に示すように、コンバイン1に搭載したエンジン50が発生する動力は、走行装置3、刈取装置6、脱穀装置11、グレンタンク12および排穀オーガ12aなどに伝動され、それぞれを駆動する。またエンジン50の出力の一部は、直接またはベルト・プーリを介してエンジン冷却ファン51、ジェネレータ52およびコンプレッサ53に伝動され、それぞれを駆動する。
【0043】すなわち、エンジン50の出力軸50aには出力プーリ50bが設けられ、プーリ50b、ベルト50cを介して伝動ギヤボックス55の入力軸55aに取り付けられたプーリ54を駆動する。伝動ギヤボックス55内には伝動ギヤトレーンが配置され、直結または必要な変速を行った後、出力軸55bは脱穀装置11を駆動し、また出力軸55cはグレンタンク12および排穀オーガ12aを駆動する。出力軸55bおよび出力軸55cの回転速度は、直結またはギヤで一定の変速比に変速されるだけで、エンジン50の回転速度に比例するので、脱穀装置11、グレンタンク12および排穀オーガ12aはエンジン回転速度に比例した速度で駆動される。
【0044】伝動ギヤボックス55のギヤトレーンは、また、ハイドロスタティックトランスミッション(HST)の可変容量油圧ポンプ56を駆動する。したがって、可変容量油圧ポンプ56はエンジン50の回転速度に比例した回転速度で駆動されるが、後述するHSTレバー13bを操作して可変容量機構を調節すると、油圧ポンプ56の吐き出し量は任意に変更することができる。
【0045】可変容量油圧ポンプ56が吐き出した高圧の作動油は、高圧ホース56aを経てカウンターギヤボックス58に設けた油圧モータ57に供給される。本変形例において、油圧モータ57として無段変速型または2段変速型のモータを用い、油圧モータ57の出力軸57aで副変速ギヤ59を駆動し、該副変速ギヤ59で副変速した出力を走行トランスミッション60に伝動して、詳細を図示しないギヤトレーン、クラッチ、ブレーキなどを経て駆動スプロケット15、15に伝達され、クローラ14、14を駆動し、コンバイン1を走行させる。
【0046】油圧モータ57の出力は、また、カウンターギヤボックス58内のギヤトレーン58aを経て出力軸58bに伝動され、引起しラグ6a、刈刃8など刈取装置6の各部を駆動する。従来例では、副変速ギヤを変速操作しない限り、コンバイン1の走行速度と刈取装置6の引起し装置6aの引起し速度とは、油圧モータ57の出力軸回転速度に比例した値となり、HSTレバー13bを操作してコンバイン1の走行速度を減速すると引起し装置6aの引起し速度も減速する構成となっていた。
【0047】図9に示す構成では、カウンターギヤボックス58の出力軸58bにはプーリ58cが軸着され、刈取装置6の入力軸61に軸着されたプーリ61bをベルト61aで駆動すると、軸62、軸63、軸64を経て引起し装置入力軸65に動力が伝動される。本例において、引起し装置入力軸65と引起し装置駆動軸67との間には、プーリとベルトからなるベルト式無段変速機66を設けて、引起し装置駆動軸67を増速駆動できることが特徴である。
【0048】該引起し装置駆動軸67の出力は、変速ギヤ68、軸69、軸70、70、・・・、軸71、71、・・・を経てチェン72、72、・・・を一斉に駆動する。チェン72には引起しラグ73(図8参照)、73、・・・が一定間隔に取り付けられていて、チェン72の移動により引起しラグ73、73、・・・が倒伏した稲の穀稈を引上げて、引起すように作動する。
【0049】本例では、HSTモータ57の変速用操作スイッチ13cをHST変速レバー13bに設けて(図8参照)、HSTモータ57の変速操作を容易にするとともに、図示しない制御回路によりHSTモータ57の減速操作が行われた場合には、ベルト式無段変速機66を増速側に制御する構成とした。すなわち、圃場に植立する穀稈が倒伏している場合には、HSTスイッチ13cを操作してコンバイン1の走行速度を低下させて、刈取負荷の増大に対応するとともに、制御回路は自動的に引起し装置6aを駆動するベルト式無段変速機66を増速して、コンバイン1の走行速度低下にかかわらず引起し速度を低下させないように作用するので、コンバイン1の走行速度低下に伴い刈取能率が低下することを防止できる。
【0050】また、HSTスイッチ13cの操作によるHST油圧モータ57の減速に連動して、ベルト式無段変速機66の増速を自動制御するようにしたので、直立稲と倒伏稲とが混在する圃場などで車速を低下させるためのHSTモータ57の減速操作と、ベルト式無段変速機66の増速操作の二つの操作を行う煩わしさを解消し、操作性の向上を図ることができるという効果が得られる。引起し装置6bの引起し速度は、図10に示すように、車速に対してベルト式無段変速機66により自在に変速できるので、倒伏稲の倒伏状況に最も適当な引起し速度を選んで運転できる効果も得られる。
【0051】さらに、本変形例では図9に略示したようにHST油圧モータ57と走行トランスミッション60との間にカウンターギヤボックス58を設け、該カウンターギヤボックス58にHST油圧モータ57と、走行トランスミッション60に対して副変速した動力を伝動する副変速ギヤ59と、刈取装置6に対して動力を伝動するギヤトレーン58aとを設ける構成としたので、刈取装置6に対する動力取り出し位置の自由度が大になり、かつ動力を取り出す出力軸58bは、進行方向左側におくことができて、ベルト61aのメンテナンスが極めて容易になるという利点が得られる。
【0052】さらに、小形のカウンターギヤボックス58に副変速ギヤ59を収容する構造であるから、主要ギヤトレーンを収容する走行トランスミッション60の構造を共通化したまま、カウンターギヤボックス58だけを車速の変更に対応して副変速ギヤ59を取り替えて取り付ける構成をとることも容易であり、動力伝動機構の配置が容易になる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成11年7月23日(1999.7.23)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
【公開番号】 特開2001−28929(P2001−28929A)
【公開日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【出願番号】 特願平11−208396