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【発明の名称】 健全成育植物種子類およびその活性促進剤の施用方法
【発明者】 【氏名】佐々木 進

【氏名】佐々木 康晴

【要約】 【課題】この発明は、種子等の細菌を防除すると共に、植物の活性を促進することを目的としたものである。

【解決手段】この発明は、種子類にトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子を付着させたことを特徴とする健全成育植物種子類によりその目的を達成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 種子類にトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子を付着させたことを特徴とする健全成育植物種子類。
【請求項2】 分生胞子の付着は、種子類をトリコデルマ ハルジアナムSK−5−5の分生胞子液に浸漬し、種子類に前記分生胞子液を噴霧又は塗着し、或いは前記分生胞子製剤を付着させることを特徴とした請求項1記載の健全成育植物種子類。
【請求項3】 分生胞子製剤はトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子および/または厚膜胞子を、多孔質のセラミックス粒子に栄養分と共に付着させて調整したことを特徴とする請求項2記載の健全成育植物種子類。
【請求項4】 播種用籾から籾殻を除去した玄米外周に、トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子を付着させたことを特徴とする健全成育稲の活性促進剤の施用方法。
【請求項5】 分生胞子の付着は、分生胞子混入液に玄米を浸漬することを特徴とした請求項4記載の健全成育稲の活性促進剤の施用方法。
【請求項6】 種馬鈴薯を複数に分割し、該分割した馬鈴薯の切断面にトリコデルマ ハルジアナム製剤を付着させることを特徴とした健全成育馬鈴薯の活性促進剤の施用方法。
【請求項7】 トリコデルマ ハルジアナム製剤は、多孔質のセラミックス粒子に分生胞子および/または厚膜胞子を栄養分と共に付着させて製造したことを特徴とする請求項6記載の健全成育馬鈴薯の活性促進剤の施用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5(微工研菌寄第13327号、国際受託番号BP−4346)菌の分生胞子および/または厚膜胞子(以下分生胞子等という)によって植物の種子類に付着した雑菌(有害菌)を死滅又は封じ込めると共に、前記分生胞子等の発芽増殖により生成する物質により植物に活性を付与し、植物の根、茎、葉等に有害菌に対する抵抗性を付与することを目的とした健全成育植物種子類およびその活性促進剤の施用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】作物の90%以上のものが種子から栽培されるといわれている。これは、翌年栽培の為の種子を大切に保存することになるので、種子中に病菌が付着していると、これも保存されることになり、病菌の長期存続の原因となっている。
【0003】特に水稲栽培は、防除を要する主要病害の殆んどが種子伝染性病害で、このようになったのは機械移植に伴う箱育苗と、いもち病抵抗性弱品種の普及が主原因で、特に種子伝染性病細菌病による種子伝染は現在も拡大傾向にあるとされている。
【0004】そこで水稲に対しては、いもち病、ばか苗病、ごま葉枯病等の糸状菌に対し、エルゴステロール生合成阻害剤(EBI剤)が消毒剤の主流になっている。また水稲の枯細菌病に対しては、オキソリニック酸剤が登録され、難防除病害としての細菌性病害についても防除可となった。そこで現在いもち病等の糸状菌および籾枯細菌病等の細菌による種子伝染性病害の同時種子消毒剤として、多くはEBI剤とオキソリニック酸剤あるいは銅剤との混合剤が用いられており、その使用方法は種子浸漬、粉衣、塗沫又は吹き付け処理等が行われている。
【0005】前記水稲の籾の場合には、籾殻に67%程度、玄米に7.3%程度の保菌率があると言われているが、水稲の苗立枯細菌病菌、籾枯細菌病菌は、籾の頴と玄米の間に多く潜在していると言われており、消毒薬の浸透性が問題とされ、例えば減圧種子消毒法の提案もある。
【0006】また籾の播種時処理としては、カスガマイシン・メタスルホカルプ粉剤の播種前覆土、または床土混和、カスガマイシン粒剤の培土混和および播種面散粒、液剤の潅注など効果が大きいとされている。また前記は種子消毒と併用すると更によいとされ、最近はいもち病に対しカルプロパミド剤等の長期効果持続型薬剤の播種時施用法も開発されている。
【0007】水稲の各種病菌防除については、前記種子の薬剤防除の外に、下記の処理が知られている。
【0008】(1) 緑化期処理この処理は本田持込み伝染源密度の低減に努める防除である。
【0009】(2) 移植直前処理この処理は苗床へ長期効果持続性粒剤を使用する方法である。
【0010】(3) 発病苗及び罹病菌の処理この処理は、育苗箱へ種子消毒剤を潅注して行う。
【0011】(4) 長期効果持続型粒剤の水面施用例えば葉いもち用にプリペナゾール剤等の使用、又はいもちには出種30〜10日、前にピロキロン剤等の使用が行われている。
【0012】(5) 温度による発病抑制例えば、ばか苗病では、浸漬液温を10℃に下げる。また籾枯細菌病に対しては出芽温度を28℃に下げて発病を激減させている。
【0013】(6) 培土による発病抑制育苗培土に自然の土を利用して発病を抑制する。
【0014】(7) 湛水による発病の抑制育苗箱を出芽後成るべく早く湛水状態にして床土が乾燥しないようにしておくこと、但し病菌は死滅しない問題点があった。
【0015】(8) 温湯浸漬法種子を60℃の温湯へ5〜10分浸漬していもち病、ばか菌病、籾枯細菌病に有効とされている。
【0016】(9) 乾熱消毒籾枯細菌病には、40℃で2日間乾燥後75℃で8日間処理して有効であるが、発芽に影響が考えられた。
【0017】(10) 洗浄法種子を電気洗濯機で保菌種子の表面を洗浄する。消毒効果が期待できる。
【0018】(11) 生物的防除技術籾枯細菌、苗腐敗、苗立枯細菌病に対しては、ペセウドモナス(Pseudomonas)が有効だとの報告がある。
【0019】近来減農薬・生態系保全型の病害防除の必要性が強く唱えられ、特に生物防除方法は環境負荷の影響が少ないと考えられるので、精力的に研究が進められている。 植物の根や根圏から分離される細菌や、菌類の中には植物の生育を促進するものがあり、それぞれ植物生育促進根圏(plant growth-promoting rhizobacteria:PGPR)、植物生育促進菌類(plant growth-promoting fungi:PGPF)と呼ばれている。
【0020】前記有用根圏微生物であるPGPR、PGPFは植物の生育を促進するのみならず、各種の土壌病害を抑制することも知られている。また最近では、土壌病害のみならず、地上病害も抑制する事実も明らかにされ、前記PGPR、PGPFは、植物の全身抵抗性の誘導が関わっていることが見出されたと紹介されている(1999年6月号、今月の農業誌)。
【0021】またコウライシバから分離選抜したPhoma,Trichoderma, Fusarium,Penicillium,Sterileなどの菌が、キュウリにおける炭そ病に対し、誘導抵抗性を示すことが報告されている(1999年6月号、今月の農業誌)。
【0022】また農薬を使用せず、環境に悪影響を与えず、かつ根本的に種子伝染性病害を根絶できる種子の無病化技術を確立すると共に、直播栽培において省力的な種子および苗立安定化技術として、稲玄米人工被膜種子、その製造および栽培方法が提案された(特開平9−248017号)。
【0023】
【発明により解決しようとする課題】前記各防除剤又は施用方法は、化学剤である為にその残留分又は使用時の人体への影響が問題になったり、施用法に多大の労力が必要であったりする問題点はあるが、現在は有効な方法として採用され、夫々効果をあげている。前記は有効ではあるけれども、いもち病、ばか苗病又は籾枯細菌病などの細菌を根絶するに至らず、若干残留することは避けられないので、育苗又は本田移植後、前記病菌の増殖環境が整った場合には、残留菌によって多大の損傷を受けるおそれがあった。
【0024】前記玄米に人工被膜を設ける提案は、比較的病菌の少ない玄米を利用した点及び発芽容易な点において優れており、種子伝染に帰因する病害に対しては格段の効果が期待される。然し乍ら発芽の罹病については防除ができないし、抵抗性が増大することもない。従って発芽後又は移植後の病害抵抗力については従来の稲と同等という問題点があった。
【0025】前記化学農薬又は処理方法に比し、この発明は、トリコデルマ ハルジアナムSK−5−5の分生胞子又はその製剤を、玄米又は馬鈴薯に直接付着させて施用するので、雑菌を死滅又は封入することは勿論、健苗効果によって、収穫まで有効に作用することが判明した。
【0026】前記従来のPGPR、PGPFは、特定植物(例えばキュウリ)に対し、炭そ病についての有効性を示すもので、今後研究の結果、その使用方法の改善などにより、他の植物、病原菌に対して有効なことが判明する可能性はあるとしても、未だ具体的植物、病原菌に対しては今後の課題とされている。
【0027】然し乍ら単に病原菌を殺菌するという従来の生物農薬の技術的形態が、植物の根茎に亘り抵抗性を付与する健苗乃至健全育成方向に変りつつあることは、今後の植物栽培上重要な示唆を含むものである。
【0028】この発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK-5−5菌について、各種実験を重ねている間に、前記生物農薬の将来性と合致することに想到し、更に使用方法、対象植物等を選定、研究の結果、この発明を完成したのである。将来の植物栽培に多大の影響を与えるものとして、この発明きわめて有望であり、将来の農業等を支える重要な手段の1つとなることに疑はない。
【0029】
【課題を解決するための手段】この発明は、トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5菌の分生胞子および/または厚膜胞子或いはその製剤を、植物の種子等または馬鈴薯の切断面に付着させることにより、種子等に付着していた有害菌を死滅又は封入させると共に、種子等の発芽に伴って、前記トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5菌の分生胞子の発芽増殖時に分泌する生成物(特殊アミノ酸など)が、植物の成長時における根・茎・葉の活性促進に寄与することが判明した。そこで前記処理を施した種子の発芽、生長に伴って、植物の根・茎・葉又は実が病菌に耐性を付与し、いわゆる健苗、健根・茎・葉になることが確信された。
【0030】この発明の健全成育種子類の発明は、種子類にトリコデルマ ハルジアナムSK−5−5の分生胞子を付着させたことを特徴とする健全成育植物種子類である。また分生胞子の付着は、種子類をトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子液に浸漬し、種子類に前記分生胞子液を噴霧又は塗着し、或いは前記分生胞子製剤を付着させるものであり、分生胞子製剤はトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の分生胞子および/または厚膜胞子を、多孔質のセラミックス粒子に栄養分と共に付着させて調整したものである。
【0031】次に方法の発明は、播種用籾から籾殻を除去した玄米外周に、トリコデルマハルジアナム SK−5−5の分生胞子を付着させたことを特徴とする健全成育稲の活性促進剤の施用方法であり、分生胞子の付着は、分生胞子混入液に玄米を浸漬するものである。
【0032】また種馬鈴薯を複数に分割し、該分割した馬鈴薯の切断面にトリコデルマ ハルジアナム製剤を付着させることを特徴とした健全成育馬鈴薯の活性促進剤の施用方法であり、トリコデルマ ハルジアナム製剤は、多孔質のセラミックス粒子に分生胞子および/または厚膜胞子を栄養分と共に付着させて製造したものである。
【0033】前記発明における厚膜胞子は、特に温度耐性を有するので、寒冷地はもとより高温地(例えば30℃以上)でも有効に作用する。然して育苗においては温度調節できるので、分生胞子等の発芽の最適温度(例えば20℃〜28℃)で効率よく増殖させることができる。
【0034】また分子胞子の増殖に際して分泌された特殊アミノ酸等は通常の植物生長温度に対し変化はないので、植物を苗床から本舗に移植してから、有効成分が変化するおそれはない。
【0035】この発明の分生胞子等の施用は、種子の外面に分生胞子等を付着させ、または馬鈴薯などにおいては、種芋の切断面に分生胞子等を付着させるものである。
【0036】前記植物の種子において、水稲の種(籾)の場合には、玄米に付着させることが好ましい。通常種子により伝染するいもち病、ばか苗病、籾枯細菌病の細菌は、何れも籾殻に大部分付着しており(例えば70%)、玄米には殆んど付着していない(10%以下)から、玄米を用いることにより、前記各種病菌は排除されたものとなる。
【0037】即ち比較的病菌の付着の少ない玄米に、この発明の分生胞子等を付着させて殺菌させると、比較的容易に殺菌又は清浄化ができることが判明した。従って生物処理による成功確率を飛躍的に向上させたのである。
【0038】
【発明の実施の形態】この発明は、植物の種子類にトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5菌又はその分生胞子或いは厚膜胞子を付着させるのである。付着方法は、前記分生胞子の液中に浸漬し、前記液を噴霧し、又は塗布するなどの手段がある。前記種子が、例えば馬鈴薯のように大きい場合には、その切口にトリコデルマ ハルジアナム製剤付着させれば十分である。この場合に、馬鈴薯を切断して直ぐ切口を前記製剤におしつければ、切口の水分により簡単に付着するので、接着剤などは不必要である。他の植物種子の場合にも、種子類を濡らして、前記製剤を振りかければ、容易に付着させることができる。
【0039】前記種子が籾の場合には、籾殻を除去し、玄米に付着させる。このようにすると、稲の病菌の大部分を含む籾殻が除去される為に発病の危険性が大幅に改善される。
【0040】また病菌には繁殖濃度があって、或程度の濃度にならなければ発病しないのであるが、籾殻には病菌が比較的少ないので発病濃度にも達しないということができる。従って籾の場合には籾殻を除去しただけで発病率を大幅に改善することができる。
【0041】因にトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5は1g中に5×10〜5×10位の濃度を必要とするとされている。然し乍ら前記玄米又は馬鈴薯の場合には、直接付着させる為に、濃度は非常に高くなので、増殖は容易に行われる。
【0042】
【実施例1】この発明のアグロミックSK−10(トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5菌を多孔性セラミックスヘキトサンと共に付着させた製剤の商標)20gを500CCの水と混合して混合液とする。この混合液中へ、苗床1m分の種玄米(胚芽などを傷けないように籾殻除去約290g)を入れて1時間浸漬した後、取り出し、水切りして通常の要領により播種すると共に、前記残った浸漬液を前記苗床に散布した(発明区)。
【0043】また無処理の種籾を、通常の要領により播種した(対照区)。
【0044】前記発明区と、対照区を比較した所、発明区の発病苗は皆無であり、対照区で5%の発病が認められた。前記は苗についての実施であるが、昨年度の実績によれば発明区は、移植後順調かつ健全に成育し、無消毒で発病なく対照区に比し、30%以上の増収と、蛋白質量が少なくなり美味であることが期待される。
【0045】
【実施例2】種馬鈴薯による実施例を示す。種薯を1/2〜1/4に切断し、切断面へアグロミックSK−10を付着させた。付着させる量は、種馬鈴薯1個(2〜3個に切断)についてアグロミックSK−10を1g付着させた。この場合に、分生胞子量は2×10/gであった。
【0046】前記種馬鈴薯を通常の要領により植付けた所、発明区(前記処理を施した)は無病であって、対照区(無処理)では若干の発病がみられた(1%〜2%位)。
【0047】前記発明区では360kg/100mの収穫があり、対照区では250kg/100mの収穫が認められたので、平均して約50%の増収と認定した。
【0048】
【発明の効果】この発明によれば、水稲については、玄米にトリコデルマ ハルジアナム SK−5−5の製剤を付着させたので、発病苗が皆無であった。
【0049】また馬鈴薯については、種薯の切断面へ分生胞子等を付着させたので、発病が皆無であることは勿論、健苗・根・茎・葉・薯であって、50%の増収が認められる効果がある。
【0050】前記効果は、玄米、種薯などの病菌を死滅又は封入して、根・茎・葉の発育を促進し、これにより各種細菌に対する抗力のある植物として増殖がはかられたものである。
【0051】換言すれば、トリコデルマ ハルジアナム SK−5−5は、単に有害菌を死滅又は封入させ、または有害菌の繁殖を阻止するのみならず、植物の根・茎・葉の生長促進と活性を付与するなどの諸効果がある。
【0052】この発明は、播種時の一度の施用により生長、結実の全期間有効に存続するので、農業の合理化、環境改善、効率のよい生産などを予測できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】392001461
【氏名又は名称】株式会社北海道グリーン興産
【識別番号】398023782
【氏名又は名称】佐々木 康晴
【出願日】 平成12年4月24日(2000.4.24)
【代理人】 【識別番号】100059281
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正次 (外1名)
【公開番号】 特開2001−299016(P2001−299016A)
【公開日】 平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願番号】 特願2000−123066(P2000−123066)