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【発明の名称】 水田作業機
【発明者】 【氏名】田中 富穂

【要約】 【課題】搭乗運転部での居住性の向上を図りながら、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作や、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などからの脱出操作を行う際の操作性の向上を図れるようにする。

【解決手段】踏み込み操作によって主クラッチ32を切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキ42を制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダル64と、踏み込み操作によって前輪用の差動機構34を差動状態から非差動状態に切り換えるデフロックペダル100とを近接配備した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルと、踏み込み操作によって前輪用の差動機構を差動状態から非差動状態に切り換えるデフロックペダルとを近接配備してある水田作業機。
【請求項2】 前記主クラッチ・ブレーキペダルの減速操作領域への移動に連動して車速設定手段を減速操作する減速連動機構を備えてある請求項1記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行機体に主クラッチと走行ブレーキと前輪用の差動機構とを備えた水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のような水田作業機では、搭乗運転部の足元左側箇所に主クラッチの作動状態を切り換える主クラッチペダルを配備するとともに、搭乗運転部の足元右側箇所に走行ブレーキの作動状態を切り換えるブレーキペダルを配備することで、主クラッチペダルを踏み込み操作して主クラッチを切り状態に切り換えながら、ブレーキペダルを踏み込み操作して走行ブレーキを制動状態に切り換える、といったエンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を行えるようにし、更に、搭乗運転部の足元箇所にデフロックペダルを配備することで、圃場の耕盤条件や作業状況により左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることで走行不能状態などに陥った場合には、デフロックペダルを踏み込み操作して差動機構を差動状態から非差動状態に切り換える、といった、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などからの脱出操作を行えるようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術によると、搭乗運転部の足元箇所に3つの操作ペダルを配備することによって搭乗運転部が狭くなり、又、機体を制動させる際には、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を踏み込み操作する必要があり、更に、枕地旋回などを行うための制動減速操作時に、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などに陥った場合には、その状態から脱出するために、主クラッチペダルを踏み込み操作している左足とブレーキペダルを踏み込み操作している右足のいずれか片方をデフロックペダルに踏み代える、といった戸惑いの生じ易い操作を行って、差動機構を差動状態から非差動状態に切り換える必要があることから、居住性及び操作性の向上を図る上において改善の余地があった。
【0004】本発明の目的は、搭乗運転部での居住性の向上を図りながら、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作や、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などからの脱出操作を行う際の操作性の向上を図れるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】〔構成〕上記目的を達成するため、本発明のうちの請求項1記載の発明では、踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルと、踏み込み操作によって前輪用の差動機構を差動状態から非差動状態に切り換えるデフロックペダルとを近接配備した。
【0006】〔作用〕上記請求項1記載の発明によると、搭乗運転部の足元箇所に主クラッチ・ブレーキペダルとデフロックペダルの2つを配備するだけであることから、主クラッチペダルとブレーキペダルとデフロックペダルの3つを配備する場合に比較して、搭乗運転部の足元空間を無理なく広くすることができるようになる。
【0007】又、機体を制動させる際には、主クラッチ・ブレーキペダルを踏み込み操作するだけの極簡単な操作で、エンジンに無理を掛けることなく機体を制動させる際に必要となる主クラッチの切り状態への切り換えと走行ブレーキの制動状態への切り換えとを行えるようになる。
【0008】更に、枕地旋回などを行うための制動減速操作時に、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などに陥った場合には、主クラッチ・ブレーキペダルを踏み込み操作している足を、主クラッチ・ブレーキペダルに近接するデフロックペダルに踏み代えるだけの、片方の足のみによる戸惑うことのない極単純な踏み代え操作で、その走行不能状態などから脱出するための差動機構の差動状態から非差動状態への切り換えを速やかに行えるようになる。
【0009】しかも、機体前部の左右両側に機体前方からの乗降を可能にする乗降ステップを配設してあるものにおいては、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を配備する場合のように、主クラッチペダルとブレーキペダルとを機体の左右に振り分け配備する必要がなく、又、主クラッチ・ブレーキペダルとデフロックペダルとを近接配備していることから、主クラッチ・ブレーキペダルとデフロックペダルが配備されない側の乗降ステップを利用した機体前方からの乗降が行い易くなる。
【0010】〔効果〕従って、搭乗運転部での居住性の向上を図りながら、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作や、左右の駆動前輪に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などからの脱出操作を行う際の操作性の向上を図れるようになった。又、機体前部の左右両側に乗降ステップを配設してあるものにおいては、乗降ステップを利用した機体前方からの乗降を行い易くすることもできるようになった。
【0011】〔構成〕本発明のうちの請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、前記主クラッチ・ブレーキペダルの減速操作領域への移動に連動して車速設定手段を減速操作する減速連動機構を備えた。
【0012】〔作用〕上記請求項2記載の発明によると、主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み操作に連動して減速連動機構が車速設定手段を減速操作するようになることから、車速設定手段を高速側に設定した高速走行中に主クラッチ・ブレーキペダルを踏み込み操作して機体を減速あるいは走行停止させた後に、その踏み込み操作を機体の増速や走行再開のために解除した場合には、機体を減速又は走行停止させる際の主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み操作に連動して車速設定手段が既に減速操作されており、主クラッチの入り作動時には、その減速操作によって回転数が低下している伝動上手側の伝動体と、制動減速又は制動停止されていた伝動下手側の伝動体とが接続されるようになることから、機体の増速時や走行再開時に機体が急加速又は急発進する不都合や主クラッチの摩擦板が焼けるなどの不都合が発生することを防止できるようになる。
【0013】又、車速設定手段を高速側に設定した高速走行中に機体を旋回させる場合には、主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み操作によって車速設定手段の減速操作を行えることから、ステアリングホイールの回動操作などに加えて車速設定手段の減速操作をも手動で行う場合に比較して旋回操作性の向上を図れるようになり、これによって、作業装置の上昇操作をも手動で行うことのある枕地旋回時に、思うような旋回が行えずに条合わせに手こずるといった不都合を招くこともない。
【0014】〔効果〕従って、高速走行中の主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み操作で機体を減速又は走行停止させた後の増速や走行再開時に機体が急加速又は急発進する不都合や主クラッチの摩擦板が焼けるなどの不都合が発生することを防止できる上に、旋回操作性の向上をも図れるようになった。
【0015】
【発明の実施の形態】図1には水田作業機の一例である6条植え用の乗用型田植機の全体側面が、図2にはその全体平面が示されており、この乗用型田植機は、乗用型の走行機体1の後部に、油圧シリンダ2の作動で昇降揺動する四連リンク機構3を介して6条植え用の苗植付装置4を連結し、かつ、6条施肥用の施肥装置5を搭載することによってミッドマウント施肥仕様に構成されている。
【0016】図1〜4に示すように、走行機体1は、その前部に出力軸6aが横向きになる姿勢で搭載されたエンジン6からの動力を、ベルト式伝動装置7及び車速設定手段Aの一例である静油圧式無段変速装置8を介してミッションケース9に内装されたギヤ式伝動装置10に伝達し、そのギヤ式伝動装置10からの走行用動力を、左右の前車軸ケース11に内装された前輪駆動装置12を介して左右の前輪13に伝達するとともに、前後向きの第1伝動軸14及び後車軸ケース15に内装された後輪駆動装置16を介して左右の後輪17に伝達する四輪駆動形式に構成され、その後部側には、左右の前輪13を操向操作するステアリングホイール18、搭乗ステップ19、及び、運転座席20、などを備えた搭乗運転部21が形成されている。
【0017】図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、機体の走行に伴って3つの整地フロート22が苗植え付け箇所を前もって整地する一方で、ギヤ式伝動装置10からの作業用動力が第2伝動軸23を介してフィードケース24に伝達され、そのフィードケース24からの分配動力で、6条分の苗を載置する苗載台25が左右方向に所定ストロークで往復駆動されるとともに、左右方向に所定間隔を隔てて並設された6基のロータリ式の植付機構26が、苗載台25の下端から苗を所定量ずつ取り出して圃場に植え付ける植え付け作動を行うことで、6条分の植え付けを行えるように構成されている。
【0018】施肥装置5は、機体の走行に伴って各植え付け条に対応するように整地フロート22に装備された作溝器27が施肥溝を形成する一方で、6基の繰出機構28がギヤ式伝動装置10からの作業用動力で肥料ホッパ29内の肥料を所定量ずつ繰り出し、電動ファン30の作動で各繰出機構28にて繰り出された肥料を案内ホース31を介して対応する作溝器27に向けて圧送することで、圃場における植え付け苗の横側方箇所に肥料を埋没させるように構成されている。
【0019】図5及び図6に示すように、ギヤ式伝動装置10は、静油圧式無段変速装置8からの伝動を断続する主クラッチ32、主クラッチ32を介して伝達された動力を高低二段に変速する副変速機構33、副変速機構33からの動力を走行用動力として前輪駆動装置12及び第1伝動軸14に伝達する前輪用の差動機構34、主クラッチ32を介して伝達された動力の正転動力のみを作業用動力として伝動する一方向クラッチ35、一方向クラッチ35からの作業用動力を変速する株間変更用の植付変速機構36、及び、植付変速機構36から第2伝動軸23への伝動を断続する植付クラッチ37、などによって構成されている。
【0020】図3及び図5に示すように、前輪駆動装置12は、差動機構34から横外側方に向けて延設された左右の前輪駆動軸38、及び、各前輪駆動軸38に対応する前輪13を操向可能に連動連結する図外のベベルギヤ式伝動機構、などによって構成されている。
【0021】図7〜9に示すように、後輪駆動装置16は、第1伝動軸14に連動連結された横向きの後輪駆動軸39、後輪駆動軸39からの動力を対応する後輪17に減速伝動する左右のギヤ式減速機構40、後輪駆動軸39から左右のギヤ式減速機構40への伝動を各別に断続する左右のサイドクラッチ41、及び、右側のサイドクラッチ41と後車軸ケース15との間に介装された走行ブレーキ42、などによって構成されている。
【0022】図3及び図7〜9に示すように、ステアリングホイール18の回動軸18aには、左右の前輪13にナックルアーム43とタイロッド44とを介して連動連結されたピットマンアーム45を、ステアリングホイール18のステアリング操作量に応じて縦向きの第1軸心P1周りに左右方向に揺動駆動する油圧パワーステアリング用のトルクジェネレータ46が接続されている。ピットマンアーム45は、その直進姿勢から設定角(例えば30度)以上の左右揺動に連動して第1操作ロッド47を前後方向に押し引き操作することで機体中央に配備した中継アーム48を縦向きの第2軸心P2周りに前後揺動させ、中継アーム48は、それと一体揺動する天秤アーム49を介して左右の第2操作ロッド50を互いに前後逆向きに押し引き操作することで、各サイドクラッチ41の操作アーム51を互いに縦向きの第3軸心P3周りに前後逆向きに揺動操作し、各サイドクラッチ41は、その操作アーム51が前方に向けて揺動操作されるのに伴って、操作アーム51の支軸52に形成された偏芯カム53がバネ54の付勢に抗して可動体55を機体外方側に向けて押圧操作することによって、後輪駆動軸39側とギヤ式減速機構40側とに振り分け装着された複数の摩擦板56の圧接を解除する伝動切り方向への切り換え操作が行われ、逆に、操作アーム51が後方に向けて揺動操作されるのに伴って、偏芯カム53による可動体55の押圧操作が解除されてバネ54が可動体55を機体内方側に向けて押圧操作することによって、前記複数の摩擦板56を圧接させる伝動入り方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0023】つまり、ステアリング操作系が油圧パワーステアリング式に構成されるとともに、ピットマンアーム45と各サイドクラッチ41の操作アーム51とを連係する第1操作ロッド47、中継アーム48、天秤アーム49、及び左右の第2操作ロッド50、などによって、ステアリングホイール18の直進状態からの設定角以上のステアリング操作に連動して旋回内側のサイドクラッチ41を切り状態に切り換えて旋回内側の後輪17を遊転させるサイドクラッチ操作機構57が構成されている。そして、この構成によって、作業走行中に畦際で機体を小回り旋回させる枕地旋回時には、ステアリングホイール18の直進状態から旋回方向への設定角以上のステアリング操作を行うだけの簡単な操作で、旋回内側の後輪17を遊転させて圃場荒れを抑制する良好な小回り旋回を行えるようになっている。
【0024】図7及び図8に示すように、走行ブレーキ42は、その操作アーム58が縦向きの第4軸心P4周りに前方に向けて揺動操作されるのに伴って、操作アーム58の支軸59に装備された一対の偏芯カム60が可動体61を機体外方側に向けて押圧操作することによって、サイドクラッチ41側と後車軸ケース15側とに振り分け装着された複数の摩擦板62を圧接させる制動方向への切り換え操作が行われるようになり、逆に、操作アーム58が後方に向けて揺動操作されるのに伴って偏芯カム60による可動体61の押圧操作が解除されることによって、前記複数の摩擦板62の圧接を解除する非制動方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0025】図5及び図7に示すように、走行ブレーキ42の操作アーム58は、左右向きの第5軸心P5周りでの踏み込み操作が可能となるように搭乗運転部21の右側足元箇所に配設された単一の操作ペダル64にターンバックル式の第3操作ロッド65を介して連動連結されており、図外の復帰バネの付勢に抗した操作ペダル64の踏み込み操作で第3操作ロッド65が前方側に引き込み操作されることによって前方に向けて揺動操作され、逆に、復帰バネによる操作ペダル64の復帰操作で第3操作ロッド65が後方側に押し込み操作されることによって後方に向けて揺動操作されるようになっている。一方、操作ペダル64は、その支軸である左右向きの回動軸66と、操作ペダル64に連動した回動軸66の第5軸心P5周りの回動に伴って前後方向に押し引き操作される第4操作ロッド67とを介して主クラッチ32の操作アーム68に連係されている。
【0026】主クラッチ32は、操作ペダル64の踏み込み操作に連動した第4操作ロッド67の前方側への押し込み操作で、操作アーム68が縦向きの第6軸心P6周りに前方に向けて揺動操作され、操作アーム68の支軸69に形成された操作カム70が、バネ71の付勢に抗して可動体72を機体右側方に向けて押圧操作することによって、その入力側の固定体73と出力側の可動体72とに振り分け装着された複数の摩擦板74の圧接を解除する伝動切り方向への切り換え操作が行われ、逆に、操作ペダル64の復帰操作に連動した第4操作ロッド67の後方側への引き込み操作で、操作アーム68が第6軸心P6周りに後方に向けて揺動操作され、操作カム70による可動体72の押圧操作が解除されて、バネ71が可動体72を機体左側方に向けて押圧操作することによって、前記複数の摩擦板74を圧接させる伝動入り方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0027】つまり、操作ペダル64は、その踏み込み操作によって主クラッチ32を切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキ42を制動状態に切り換える主クラッチ・ブレーキペダルであり、これによって、主クラッチペダルとブレーキペダルとを搭乗運転部21の左右の各足元箇所に振り分け配備する場合に比較して、搭乗運転部21の足元空間を無理なく広く形成することができて搭乗運転部21での居住性の向上を図れる上に、主クラッチ32を切り状態に切り換えながら走行ブレーキ42を制動状態に切り換える、といったエンジン6に無理を掛けることなく機体を制動させるための一連操作を、単一の主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込むだけの極簡単な操作で行えるようになっている。
【0028】図1〜3及び図10〜13に示すように、ステアリングホイール18の回動軸18aを支持するハンドルポスト78には支持ブラケット79が溶接され、支持ブラケット79の左側端部には揺動ブラケット80が左右向きの第7軸心P7周りに前後揺動可能に支持され、揺動ブラケット80には、主変速レバー81が第8軸心P8周りに左右揺動可能に支持されるとともに、ハンドルポスト78を支持する支持枠82から延設された支軸83に左右向きの第9軸心P9周りに前後揺動可能に支持された中継アーム84が第1連係ロッド85を介して連係され、中継アーム84には、静油圧式無段変速装置8のトラニオン軸8aと縦向きの第10軸心P10周りに一体回動する操作アーム86が第2連係ロッド87を介して連係されている。
【0029】又、支持ブラケット79には、左右に位置ズレする前後向きの前進変速域Fと後進変速域Rとを中立位置Nで連通させた形状のガイド溝88aが形成されたガイド板88が連結されており、ガイド溝88aには、主変速レバー81から延設されたガイド杆81aが挿通されている。一方、揺動ブラケット80の下縁には、板バネ89で揺動ブラケット80に向けて付勢されたローラ90との係合によって主変速レバー81の中立位置Nと前進5段・後進3段の各変速操作位置での係合保持を可能にする9つの凹部80aが形成されている。つまり、板バネ89、ローラ90、及び各凹部80aによって、主変速レバー81を中立位置N又は前進5段・後進3段の各変速操作位置に係合保持するデテント機構Bが構成されている。
【0030】以上の構成から、中立位置Nにて主変速レバー81を第8軸心P8周りに左右揺動させることによって、静油圧式無段変速装置8の前進変速操作が可能な状態と後進変速操作が可能な状態とに切り換える前後進切り換え操作を行うことができ、前進変速域Fにて主変速レバー81を第7軸心P7周りに揺動ブラケット80と一体で前後揺動させることによって静油圧式無段変速装置8による前進5段の変速操作を行うことができ、後進変速域Rにて主変速レバー81を第7軸心P7周りに揺動ブラケット80と一体で前後揺動させることによって静油圧式無段変速装置8による後進3段の変速操作を行えるようになっている。ちなみに、前進変速域Fにおける最低速位置は畦越え走行時などに現出する超低速走行用の変速操作位置である。
【0031】尚、図11及び図12に示す符号91は、操作アーム86に形成されたV字状のカム面86aに、揺動アーム92の遊端部に設けられたローラ93をバネ94の作用で押し当てることで、静油圧式無段変速装置8のトラニオン軸8aを中立姿勢に回動付勢する中立付勢機構である。
【0032】図5、図7、図11及び図12に示すように、中継アーム84には、その主変速レバー81の前進増速方向への揺動操作に連動した第9軸心P9周りの揺動で、支持枠82に支軸95を介して左右向きの第11軸心P11周りに前後揺動可能に支持された連係アーム96を後方側に押圧揺動させる操作ピン84aが装備されている。連係アーム96は、主変速レバー81の前進減速方向への揺動操作に連動した中継アーム84の第9軸心P9周りの揺動に追従して第11軸心P11周りに前方側に揺動するようにバネ97によって揺動付勢されるとともに、その遊端部には、主クラッチ・ブレーキペダル64と主クラッチ32の操作アーム68とを連係する第4操作ロッド67の前端部に装備された押圧具98による連係アーム96の第11軸心P11周りでの前方側への押圧揺動操作を可能にする接当部99が螺合されている。
【0033】図5、図7、図11、図12及び図14に示すように、中継アーム84の操作ピン84a、連係アーム96、押圧具98、及び接当部99は、静油圧式無段変速装置8の出力回転数Noが第1設定回転数Na(例えば1500rpm)を超える高速走行状態が現出される前進変速域Fにおける高速側の変速位置に主変速レバー81を操作した場合において、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作が行われると、主クラッチ・ブレーキペダル64が所定の半クラッチ位置に到達するまでの踏み込み操作量で、静油圧式無段変速装置8の出力回転数Noが第1設定回転数Na以下になる前進変速域Fにおける低速側の操作位置まで主変速レバー81を押し戻し、又、静油圧式無段変速装置8の出力回転数Noが第2設定回転数Nb(例えば500rpm)を超える走行状態が現出される前進変速域Fにおける3速以上の高速側の変速位置に主変速レバー81を操作した場合において、機体を走行停止させるための主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み限界位置への踏み込み操作が行われると、そのときの踏み込み操作量で、静油圧式無段変速装置8の出力回転数Noが第2設定回転数Nb程度になる前進変速域Fの2速位置まで主変速レバー81を押し戻すように設定されている。一方、押し戻された主変速レバー81は、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作が解除されても、デテント機構Bの作用によって押し戻された操作位置に保持されるようになっている。
【0034】つまり、中継アーム84の操作ピン84a、連係アーム96、押圧具98、及び接当部99によって、主クラッチ・ブレーキペダル64の減速操作領域への踏み込み操作に連動して静油圧式無段変速装置8を減速操作する減速連動機構Cが構成されており、これによって、例えば、静油圧式無段変速装置8の出力回転数Noが第1設定回転数Naを超える高速走行中に機体を旋回させる場合には、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作で静油圧式無段変速装置8の減速操作を行えることによって、主変速レバー81の手動操作による静油圧式無段変速装置8の減速操作を行う必要がないことから、ステアリングホイール18の手動回動操作による機体の旋回操作を余裕を持って行えるようになり、もって、作業走行時における枕地旋回後の条合わせなどを簡単に行えるようになり、又、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作による機体の減速あるいは走行停止後の増速又は走行再開時には、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み解除に伴って、静油圧式無段変速装置8の減速操作によって回転数が低下している伝動上手側の伝動体の一例であるギヤ式伝動装置10の入力軸10aと、制動減速又は制動停止されていた伝動下手側の伝動体の一例であるギヤ式伝動装置10の第1ギヤ10bとが主クラッチ32の作動によって接続されるようになることから、増速時に機体が急加速する又は走行再開時に機体が急発進する不都合や主クラッチ32の摩擦板74が焼けるなどの不都合が発生することを防止できるようになっている。
【0035】ちなみに、前述したように、減速連動機構Cにおいては連係アーム96の遊端部に接当部99を螺合していることから、接当部99の螺合調節によって、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作に基づいた減速連動機構Cによる静油圧式無段変速装置8の減速操作開始位置や減速操作量を設定変更できるようになっている。又、減速連動機構Cは、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作量が大きくなるほど、主変速レバー81を前進変速域Fの低速側に押し戻す押し戻し操作量が小さくなるように操作設定されており、これによって、主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作で主変速レバー81が中立位置Nを超える操作力が発生することを防止できるようになっている。
【0036】図2、図5及び図7に示すように、差動機構34は、図外の復帰バネの付勢に抗したデフロックペダル100の踏み込み操作に連動した第5操作ロッド101の押し下げ操作で、操作アーム102が前後向きの第12軸心P12周りに下方に向けて揺動操作され、操作アーム102の支軸103に形成された操作カム104が、左側の前輪駆動軸38と一体回転するシフト部材105を、左右の前輪駆動軸38に対して相対回転可能な状態で伝動する差動ケース106に向けて摺動操作し、シフト部材105に形成された噛合爪105Aと差動ケース106に形成された噛合爪106Aとが噛合されることによって、左右の前輪13の差動を阻止しながら伝動する非差動状態に切り換えられ、逆に、復帰バネによるデフロックペダル100の復帰操作に連動した第5操作ロッド101の引き上げ操作で、操作アーム102が第12軸心P12周りに上方に向けて揺動操作され、操作カム104がシフト部材105を差動ケース106から離間する側に向けて摺動操作し、シフト部材105の噛合爪105Aと差動ケース106の噛合爪106Aとが噛合解除されることによって、左右の前輪13の差動を許容しながら伝動する差動状態に切り換えられるようになっている。
【0037】図2及び図7に示すように、デフロックペダル100は、主クラッチ・ブレーキペダル64の右側に近接配備されており、これによって、例えば、枕地旋回などを行うために主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作による減速操作を行ったときに、片方の前輪13の枕地での浮き上がりなどで左右の前輪13に対する抵抗が著しく異なることに起因した走行不能状態などに陥った場合には、主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み操作している右足を、主クラッチ・ブレーキペダル64に近接するデフロックペダル100に踏み代えるだけの、右足のみによる戸惑うことのない極単純な踏み代え操作で、その走行不能状態などから脱出するための差動機構34の差動状態から非差動状態への切り換え操作を速やかに行えるようになっている。
【0038】又、搭乗運転部21の足元右側箇所に主クラッチ・ブレーキペダル64とデフロックペダル100とを近接配備していることによって、搭乗ステップ19に連なる状態でその前方に配設された前部ステップ107の左右の乗降ステップ部107Aのうち、主クラッチ・ブレーキペダル64とデフロックペダル100とが配備されない側である左側の乗降ステップ部107Aを利用した機体前方からの乗降を行い易くすることができるようになっている。
【0039】図1〜4及び図15に示すように、前部ステップ107の中央部には、エンジン6などを前方から覆う前部ボンネット75とエンジン6などを後方から覆う後部ボンネット76とが、ハンドルポスト78に支持された操縦パネル77に亘る状態で配設されている。
【0040】図3及び図15に示すように、前部ボンネット75は、その左右のアーム部75Aを介して、支持枠82から前上方に向けて延設された略U字状の支持ステー108における左右の第1連結部108Aに左右向きの第13軸芯P13周りに開閉揺動可能に支持されている。後部ボンネット76は、前部ステップ107の連結部107Bと支持ステー108における左右の第1連結部108A及び第2連結部108Bとに着脱可能にボルト連結されている。
【0041】図3、図4及び図15に示すように、前部ボンネット75と後部ボンネット76とで形成されるエンジンルーム内における前部ボンネット75側には、エンジン6以外に、エンジン6からの動力で駆動される冷却ファン109、冷却ファン109の作用で冷却されるラジエータ110、エンジン6の前部に連結される気化器111及びエアクリーナ112、ハンドルポスト78及び支持ステー108で支持された燃料タンク113、などが配設されており、これによって、前部ボンネット75を第13軸芯P13周りに開放揺動させることで、エンジン6やラジエータ110、あるいはエアクリーナ112などのメンテナンスを容易に行えるようになっている。
【0042】前部ステップ107における左右の乗降ステップ部107Aの下方には、ベルト式伝動装置7、気化器111及び燃料タンク113に接続される燃料排出用の3方切換コック114、冷却水貯留用のリザーブタンク115、及びミッションケース9用のオイルフィルター116、などが配備されており、これによって、ベルト式伝動装置7やオイルフィルター116のメンテナンス、あるいは、気化器111及び燃料タンク113に残った燃料の排出や冷却水量の確認などを、前部ボンネット75の開閉操作や前部ステップ107の着脱作業を行う手間なく簡単に行えるようになっている。
【0043】エンジンルームに臨む状態となるミッションケース9には、静油圧式無段変速装置8、トルクジェネレータ46、及び油圧シリンダ2に対する作動油の流動状態を切り換える電磁制御弁117が連結されており、これによって、前部ボンネット75を第13軸芯P13周りに開放揺動させて後部ボンネット76を取り外すことで、静油圧式無段変速装置8、トルクジェネレータ46、及び電磁制御弁117の各油圧機器に対するメンテナンスを一挙に行えるようになっている。
【0044】尚、図2に示す符号118は、ステアリングホイール18の右側方に配設された摩擦保持式のアクセルレバーであり、このアクセルレバー118の操作によって作業に合わせたエンジン回転速度の設定を行えるようになっている。又、図示は省略するが、搭乗運転部21の右側足元箇所には主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み限界位置に固定保持可能なロック具が装備されており、このロック具にて主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み限界位置に固定保持することによって、走行ブレーキ42を駐車ブレーキとして利用できるようになっている。
【0045】〔別実施形態〕以下、本発明の別実施形態を列記する。
■ 水田作業機としては、走行機体1の後部に直播装置が連結された直播機や、薬剤散布装置が連結された薬剤散布機、あるいは除草装置が連結された除草機などであってもよい。
■ 水田作業機としては、4条分、5条分、8条分、あるいは10条分などの作業を行うように構成されたものであってもよい。
■ デフロックペダル100を、主クラッチ・ブレーキペダル64の左側に近接配備するようにしてもよい。
■ 図16及び図17に示すように、減速連動機構Cとしては、主クラッチ・ブレーキペダル64の減速操作領域への踏み込み操作に連動して、車速設定手段Aの一例であるエンジン6のアクセル119を減速操作するように構成されたものであってもよい。この構成によると、後進走行時においても主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み操作に連動した車速設定手段Aの減速操作を行えるようになる。尚、図16に示す符号120は、摩擦保持式のアクセルレバー118とエンジン6のアクセル119とを連動連結する連係ロッドである。又、図17に示す符号121は、その踏み込み操作に連動してエンジン6のアクセル119が増速操作されるように、第1連係ロッド122、クランクアーム123、及び第2連係ロッド124などを介してアクセル119に連動連結されたアクセルペダルであり、符号125は、摩擦保持式のアクセルレバー118に、その増速側への揺動操作に連動してクランクアーム123を押圧操作するように第3連係ロッド126を介して連係されることで、アクセルペダル121の復帰揺動によるアクセルレバー118にて設定された設定速度からのエンジン回転速度の低下を防止する操作アームである。
■ 車速設定手段Aとして静油圧式無段変速装置8の代わりにベルト式無段変速装置などを装備する場合には、主クラッチ・ブレーキペダル64の減速操作領域への踏み込み操作に連動して減速連動機構Cがベルト式無段変速装置を減速操作するように構成してもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成12年3月23日(2000.3.23)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−258335(P2001−258335A)
【公開日】 平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願番号】 特願2000−81433(P2000−81433)