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【発明の名称】 農用作業車
【発明者】 【氏名】玉井 利男

【氏名】神谷 寿

【要約】 【課題】複数の原動機を搭載し、対地作業装置が機体に対して昇降可能に装備されてある農用作業車において、この作業装置を昇降させるための昇降駆動を複数の原動機によって行うと、この昇降駆動装置が油圧駆動の場合には昇降時にハンチングが発生し、作業時の追従性も悪く、油圧昇降性能の低下を招くおそれがある。本発明は、かかる問題点を解消し、油圧昇降性能の安定化を図ることを目的とする。

【解決手段】本発明は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さとなるよう作業装置を昇降可能に構成して設け、該作業装置を昇降させるための昇降駆動源として前記複数の原動機のうちの一方側の一次原動機によって駆動するよう構成してあることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さとなるよう作業装置を昇降可能に構成して設け、該作業装置を昇降させるための昇降駆動源として前記複数の原動機のうちの一方側の一次原動機によって駆動するよう構成してあることを特徴とする農用作業車。
【請求項2】 複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体の傾斜姿勢が一定角度を越えると前記複数の原動機のうちの一つの原動機によって駆動するよう構成してあることを特徴とする農用作業車。
【請求項3】 複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、通常走行時では一方側の一次原動機により常時駆動する構成とし、機体旋回時には他方側の二次原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする農用作業車。
【請求項4】 複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さとなるよう作業装置を昇降可能に構成して設け、通常作業時では一方側の原動機により常時駆動する構成とし、作業中における作業装置の対地高さが機体に対して所定以上に高くなると、他方側の原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする農用作業車。
【請求項5】 複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、通常の走行作業時では前記複数の原動機のうち一方側の原動機により常時駆動する構成とし、機体後進時には他方側の原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする農用作業車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複数の原動機の駆動により走行する農用作業車に関する。
【0002】
【従来の技術】複数の原動機を搭載したハイブリッド車両としては自動車などにおいて知られている。従来の公知技術では、通常はその複数の原動機のうち、一方側の一次原動機の常時駆動により走行し、そして、車両に一定以上の走行負荷が生じた時には、その走行負荷に応じて二次原動機を駆動することにより駆動力を増加するようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】農用作業車には、対地作業装置が機体に対して昇降可能に装備されてあり、この作業装置を昇降させるための昇降駆動を、従来のように複数の原動機によって行うようにすれば、特に、この昇降駆動装置が油圧駆動の場合には昇降時にハンチングが発生し、作業時の追従性も悪く、油圧昇降性能の低下を招くおそれがある。
【0004】本発明は、かかる問題点を解消し、油圧昇降性能の安定化を図ることを目的とする。そのため、本発明は、次のような技術的手段を講じた。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明における課題解決のための第1の具体的手段は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さとなるよう作業装置を昇降可能に構成して設け、該作業装置を昇降させるための昇降駆動源として前記複数の原動機のうちの一方側の一次原動機によって駆動するよう構成してあることを特徴とする。これによれば、作業装置の昇降を複数の原動機によって駆動せず、一次原動機のみによって駆動するため、作業装置の油圧昇降動作がスム−ズで安定し、油圧昇降性能を高く維持することができる。
【0006】本発明における課題解決のための第2の具体的手段は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体の傾斜姿勢が一定角度を越えると前記複数の原動機のうちの一つの原動機によって駆動するように構成してあることを特徴とする。つまり、一次及び二次原動機が共に同時駆動の場合であっても、機体の前後、左右傾斜がある一定角度を越えると、直ちに二次原動機を停止して一次原動機のみで駆動することにより、畦越え時や圃場への出入り、アユミ登坂時等において危険性を伴うことがなく、不慮の転倒を未然に防止することができ、常に作業を安全に遂行することができる。
【0007】本発明における課題解決のための第3の具体的手段は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、通常走行時では一方側の一次原動機により常時駆動する構成とし、機体旋回時には他方側の二次原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする。これによれば、機体旋回時は、特に湿田のような軟弱な圃場内での旋回時には、高馬力の駆動力が要求されるが、これはワンサイド駆動からツ−サイド駆動に切り換えることによって対処でき、各原動機の安定化を図ることができる。
【0008】本発明における課題解決のための第4の具体的手段は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さとなるよう作業装置を昇降可能に構成して設け、通常作業時では一方側の原動機により常時駆動する構成とし、作業中における作業装置の対地高さが機体に対して所定以上に高くなると、他方側の原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする。これによって、湿田走行時、特に耕盤の深い圃場での走行時には車輪の沈下により作業装置が機体に対して所定以上に高くリフトされることになるが、このような時には二次原動機の駆動によって対処するので、所要馬力を確保することができて、原動機の安定化を図ることができる。
【0009】本発明における課題解決のための第5の具体的手段は、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、通常の走行作業時では前記複数の原動機のうち一方側の原動機により常時駆動する構成とし、機体後進時には他方側の原動機を駆動することにより駆動力を増加する構成としてあることを特徴とする。これにより、通常の走行作業時では一次原動機によって必要最小限の駆動力にてまかなうことができ、後進時のように大きな走行負荷がかかる時にのみ二次原動機を駆動することによって対処するものであるから、全体として原動機の小型化及び高馬力発生時における原動機の安定化を図ることができる。
【0010】
【発明の効果】以上要するに、本発明によれば、複数の一次及び二次原動機の駆動により走行する農用作業車であって、機体に対して所定の対地高さで作業する作業装置を昇降可能に構成して設け、該作業装置を昇降させるための昇降駆動源として前記複数の原動機のうちの一方側の一次原動機によって駆動するよう構成したものであるから、作業装置の油圧昇降動作をハンチングなくスム−ズに安定よく行うことができ、油圧昇降性能の向上を図ることができるに至った。
【0011】
【発明の実施の形態】この発明の実施例を図面に基づき説明する。図1〜図3は、農用作業車の一例として6条植乗用田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部に操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有するステアリングポスト部6がステップフロア7より上方に立設され、車体後方部には苗植付部8によって構成される作業装置が昇降リンク機構9を介して昇降可能に装備されている。ステアリングポスト部6の後側にはステップフロア7より上方に突設する運転席支持部10の上端に運転席11が設置され、該運転席11の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジン12及び作業車の走行駆動をアシストする電動モ−タ13が搭載されている。
【0012】前記ステアリングポスト部6側には、エンジン12を始動及び電動モ−タ13を駆動するバッテリ−14が収納装備されている。苗植付部8(作業装置)は、前記エンジン12から動力伝達される油圧ポンプを介して作動する油圧昇降シリンダ15の伸縮により上下に昇降するよう設けられている。この油圧昇降シリンダ15は、前記エンジン12から動力伝達される油圧ポンプ及び植付昇降レバ−16の操作により切り替える油圧切替バルブを介して伸縮作動する構成になっている。
【0013】また、苗植付部8は、主として左右に往復動する苗載タンク17、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆を有する植付装置18、苗植付面を整地するフロ−ト19等からなる。前記エンジン12の出力軸20から駆動ベルト21を介して中間出力軸22を回転駆動すべく連動構成してあり、そして、この中間出力軸22には前記モ−タ13をワンウエイクラッチ23を介して連動連結した構成としている。
【0014】走行ミッション装置24は、エンジン12から入力された回転動力を左右前輪2,2及び左右後輪3,3に伝動するよう車体1の前側部でステップフロア7の下方に配置してミッションケ−ス25内に装備した構成としている。なお、前記苗植付部8は、ミッションケ−ス25内の走行ミッション装置24の作業伝動機構を介して動力伝達される植付伝動軸26により伝動されて作動する構成となっている。
【0015】主クラッチ装置27は、エンジン12からの中間出力軸22と走行ミッション装置24の中間入力軸28との間に設けた伝動ベルト27a,該伝動ベルト27aを緊張・弛緩するベルトテンション式のクラッチ27b,該クラッチ27bを断続操作する主クラッチペダル27cにより構成している。
【0016】副変速装置29は、中間入力軸28とミッションケ−ス25の入力軸30との間に設けたベルコン式の無段変速ベルト29aとテンションプ−リ29bと副変速レバ−29cとからなり、該副変速レバ−29cの操作により、入力軸26を低速・中速・高速へと無段的に変速伝動する構成である。
【0017】なお、図中、31は主変速レバ−を示す。前述の実施例における農用作業車では、作業中は主動力として常に一次原動機(エンジン12)が駆動し、そして、一定以上の走行負荷或は作業負荷が加わるとその負荷に応じて二次原動機(モ−タ13)を駆動することにより、一次原動機12の駆動力が増加するよう補助する構成としている。
【0018】そして、前記第1発明にかかる油圧昇降シリンダ15への油圧ポンプの駆動は常時駆動の一次原動機12によってのみ駆動する構成としてある。従って、作業装置の昇降駆動は二次原動機の駆動力を借りないため、油圧の流量が大きく変化しないようにでき、昇降動作にハンチングがなくスム−ズに作動することになる。
【0019】第2発明にかかる実施例では、複数の一次原動機12及び二次原動機13の駆動により走行する農用作業車において、走行中、機体の傾斜姿勢が一定角度を越えると、その複数の原動機12,13のうちの一つの一次原動機12によって駆動するように構成したものである。すなわち、例えば、畦越え時などにおいてはかかる負荷が大きいため、一次原動機12と二次原動機13が共に同時駆動される場合がある。この時、機体の前後或は左右の傾斜がある一定角度を越えると、傾斜センサ32がそれを検出し、この検出結果に基づき、直ちに二次原動機13を停止して一次原動機12のみによって駆動する構成である。かかる実施例によれば、機体が傾斜しているときには二次原動機の動力を借りないため、二次原動機が駆動することによる機体の走行速度が急激に大きく変化しないようにでき、畦越え時での機体の転倒を未然に防ぐことができるものである。
【0020】第3発明にかかる実施例では、複数の一次原動機12及び二次原動機13の駆動により走行する農用作業車において、通常走行時では一方側の一次原動機12により常時駆動する構成とし、機体旋回時には他方側の二次原動機13をも駆動することにより駆動力を増加する構成である。つまり、機体旋回時は、特に湿田のような軟弱な圃場内での旋回時である場合には、高馬力の駆動力が要求されることになる。そのため、一次原動機12によるワンサイド駆動から二次原動機13をも含めたツ−サイド駆動に切り換える必要がある。
【0021】ここにいう旋回時とは、植付クラッチ「切り」で苗植付部「最上位置」の時、片側の車輪を制動する「片ブレ−キ」旋回の時、ステアリングハンドル「所定角以上」回した時などで判断する。例えば、センサで植付クラッチ「切り」を検出し、昇降リンクセンサ33で苗植付部「最上位置」を検出することによって旋回時と判断するようにし、そして、それらセンサの検出結果に基づき二次原動機13を駆動するように関連構成する。
【0022】第4発明にかかる実施例では、複数の一次原動機12及び二次原動機13の駆動により走行する農用作業車において、機体に対して所定の対地高さで作業する作業装置を昇降可能に構成して設け、通常作業時では一方側の一次原動機12により常時駆動する構成とし、作業中における作業装置(苗植付部8)の対地高さが機体に対して所定以上に高くなると、他方側の二次原動機13を駆動することにより駆動力を増加する構成である。つまり、湿田での走行時、特に耕盤の深い圃場での走行時には車輪の沈下により苗植付部8が所定以上に高くリフトされることになるが、このような時には昇降リンクセンサ33がそれを検出するようにし、そして、該センサ33の検出結果に基づき、二次原動機13を駆動するよう制御可能に構成したものである。
【0023】第5発明にかかる実施例では、複数の一次原動機12及び二次原動機13の駆動により走行する農用作業車において、通常の走行作業時では複数の原動機のうち一方側の一次原動機12により常時駆動する構成とし、機体後進時には他方側の二次原動機13を駆動することにより駆動力を増加するように構成している。つまり、通常の走行作業時では一次原動機12によって必要最小限の駆動力にてまかなうようにし、後進時のように大きな走行負荷がかかる場合には二次原動機13を駆動することによって対処するものである。
【0024】機体後進時は、後輪ラグが前進用とは逆形状のため接地抵抗が大きく、しかも、前輪が大きく沈下するため、多大の走行負荷を受けることになる。従って、機体後進時にオペレ−タが主変速レバ−31を前進操作から後進操作に切り換えると、これに関連して二次原動機13が駆動を開始するよう連動構成するものである。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成12年3月23日(2000.3.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−258332(P2001−258332A)
【公開日】 平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願番号】 特願2000−82225(P2000−82225)