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【発明の名称】 乗用水田作業機
【発明者】 【氏名】田中 富穂

【要約】 【課題】エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を居住性並びに操作性の向上を図りながら搭乗位置と降車位置の双方から行えるようにするとともに、降車位置からの制動操作を可能にするために要する連係構造の簡素化を図れるようにする。

【解決手段】走行機体1に、踏み込み操作によって主クラッチ32を切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキ42を制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダル64と、降車位置からの主クラッチ・ブレーキペダル64の踏み込み方向への操作を可能にする主クラッチ・ブレーキレバー78とを配備した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体に、踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルと、降車位置からの前記主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にする主クラッチ・ブレーキレバーとを配備してある乗用水田作業機。
【請求項2】 走行機体の左右一側部に、踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルを配備し、かつ、前記走行機体の左右他側部に、降車位置からの前記主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にする主クラッチ・ブレーキレバーを配設してある乗用水田作業機。
【請求項3】 左右の後輪への伝動状態を各別に切り換える左右のサイドクラッチを装備するとともに、ステアリングホイールの直進状態からの設定角以上のステアリング操作に連動して旋回内側のサイドクラッチを切り状態に切り換えるサイドクラッチ操作機構を設けてある請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】 前記主クラッチ・ブレーキレバーの配設位置を搭乗位置からも操作可能な位置に設定してある請求項1〜3のいずれか一つに記載の乗用水田作業機。
【請求項5】 前記主クラッチが切り状態になる以前から前記走行ブレーキが制動作用するように前記主クラッチと走行ブレーキとを連動させてある請求項1〜4のいずれか一つに記載の乗用水田作業機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行機体に主クラッチと走行ブレーキとを装備してある乗用水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のような乗用水田作業機では、例えば特開平7−96840号公報で開示されているように、搭乗運転部の足元左側に主クラッチの作動状態を切り換える主クラッチペダルを配備し、又、搭乗運転部の足元右側に走行ブレーキの作動状態を切り換えるブレーキペダルを配備し、主クラッチペダルを踏み込み操作して主クラッチを切り状態に切り換えながら、ブレーキペダルを踏み込み操作して走行ブレーキを制動状態に切り換えることで、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を行えるようにしていた。
【0003】又、乗用水田作業機では、機体を圃場に出入りさせるための畦超え走行時や歩み板を用いたトラックの荷台などに対する機体の積み降ろし走行時に機体が前後方向に大きく傾斜する場合があることから、これらの移動走行時には機体に搭乗せずに降車位置から機体を操縦することが望ましく、そのためには、降車位置からでも機体の制動操作を行えるようにしておく必要がある。そこで上記公報の乗用水田作業機では、降車位置からの操作が可能な位置に操作レバーを配備するとともに、その操作レバーを、搭乗運転部の足元左側に配備された主クラッチペダルと搭乗運転部の足元右側に配備されたブレーキペダルとに連係することで、降車位置からでも機体の制動操作を行えるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術によると、搭乗運転部における左右の各足元位置に操作ペダルを配備することによって搭乗運転部が狭くなり、又、搭乗位置から機体を制動させる際には、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を踏み込み操作する必要が生じることから、居住性及び操作性の向上を図る上において改善の余地があった。
【0005】又、搭乗運転部の左右に振り分け配備された主クラッチペダルとブレーキペダルとに操作レバーを連係させることから、降車位置からの制動操作を可能にするための連係構造が複雑になる不都合を招くようになっていた。
【0006】本発明の目的は、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を居住性並びに操作性の向上を図りながら搭乗位置と降車位置の双方から行えるようにするとともに、降車位置からの制動操作を可能にするために要する連係構造の簡素化を図れるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】〔構成〕上記目的を達成するため、本発明のうちの請求項1記載の発明では、乗用水田作業機において、走行機体に、踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルと、降車位置からの前記主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にする主クラッチ・ブレーキレバーとを配備した。
【0008】〔作用〕上記請求項1記載の発明によると、運転者が搭乗する通常の移動走行時や作業走行時には、搭乗位置から単一の主クラッチ・ブレーキペダルを踏み込み操作するだけの極簡単な操作によって、又、運転者が搭乗しない方が望ましい畦越え走行時や積み降ろし走行時には、降車位置から主クラッチ・ブレーキレバーを操作するだけの極簡単な操作によって、エンジンに無理を掛けることなく機体を制動させる際に必要となる主クラッチの切り状態への切り換えと走行ブレーキの制動状態への切り換えとを行えることから、搭乗位置と降車位置とに係わらず機体を制動させる際の操作性の向上を図れるようになる。
【0009】又、操作ペダルとして単一の主クラッチ・ブレーキペダルを走行機体に配備するだけであることから、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を配備する場合に比較して、走行機体における搭乗運転部の足元空間を無理なく広くすることができるので、搭乗運転部での居住性の向上を図れるようになる。
【0010】しかも、ボンネットの左右に乗降ステップを配設してあるものにおいては、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を配備する場合のように、主クラッチペダルとブレーキペダルとを走行機体の左右に振り分け配備する必要がないことから、主クラッチ・ブレーキペダルが配備されない側の乗降ステップを利用した機体前方からの乗降を行い易くすることができるようになる。
【0011】その上、主クラッチ・ブレーキレバーによる単一の主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にするだけの極簡単な連係構造で、既存の主クラッチ及び走行ブレーキを利用した降車位置からの機体の制動操作を行えることによって、主クラッチ・ブレーキレバーによってのみ操作される専用のクラッチ及びブレーキを新たに設ける必要がなく、又、主クラッチ・ブレーキレバーを主クラッチ・ブレーキペダルと別系統で主クラッチ及び走行ブレーキに連係する必要がなく、更に、走行機体に主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を装備する場合のように主クラッチ・ブレーキレバーを左右に振り分け配備された主クラッチペダルとブレーキペダルとに連係させる必要がないことから、降車位置からの機体の制動操作を行えるようにするために要する製造コストの削減や連係構造の簡素化を図れるようになる。
【0012】〔効果〕従って、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を、居住性並びに操作性の向上を図りながら搭乗位置と降車位置の双方から行えるようにすることができ、かつ、乗降ステップを利用した機体前方からの乗降を行い易くすることができる上に、降車位置からの制動操作を可能にするために要する製造コストの削減や連係構造の簡素化を図れるようになった。
【0013】〔構成〕本発明のうちの請求項2記載の発明では、乗用水田作業機において、走行機体の左右一側部に、踏み込み操作によって主クラッチを切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキを制動状態に切り換える単一の主クラッチ・ブレーキペダルを配備し、かつ、前記走行機体の左右他側部に、降車位置からの前記主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にする主クラッチ・ブレーキレバーを配設した。
【0014】〔作用〕上記請求項2記載の発明によると、運転者が搭乗する通常の移動走行時や作業走行時には、搭乗位置から単一の主クラッチ・ブレーキペダルを踏み込み操作するだけの極簡単な操作によって、又、運転者が搭乗しない方が望ましい畦越え走行時や積み降ろし走行時には、降車位置から主クラッチ・ブレーキレバーを操作するだけの極簡単な操作によって、エンジンに無理を掛けることなく機体を制動させる際に必要となる主クラッチの切り状態への切り換えと走行ブレーキの制動状態への切り換えとを行えることから、搭乗位置と降車位置とに係わらず機体を制動させる際の操作性の向上を図れるようになる。
【0015】又、操作ペダルとして単一の主クラッチ・ブレーキペダルを走行機体に配備するだけであることから、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を配備する場合に比較して、走行機体における搭乗運転部の足元空間を無理なく広くすることができるので、搭乗運転部での居住性の向上を図れるようになる。
【0016】しかも、単一の主クラッチ・ブレーキペダルと主クラッチ・ブレーキレバーとを走行機体の左右に振り分け配備することによって、主クラッチ・ブレーキペダルと主クラッチ・ブレーキレバーのうちの一方を操作する際に他方が邪魔になる不都合を招くおそれがなく、又、ボンネットの左右に乗降ステップを配設してあるものにおいては、主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を配備する場合のように、主クラッチペダルとブレーキペダルとが左右に振り分け配備された走行機体の左右一側部に主クラッチ・ブレーキレバーを更に配設する、といったことを行う必要がないので、主クラッチ・ブレーキレバーを配備する側の乗降ステップを利用した機体前方からの乗降が行い難くなる不都合の発生を抑制できるようになる。
【0017】その上、主クラッチ・ブレーキレバーによる単一の主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み方向への操作を可能にするだけの極簡単な連係構造で、既存の主クラッチ及び走行ブレーキを利用した降車位置からの機体の制動操作を行えることによって、主クラッチ・ブレーキレバーによってのみ操作される専用のクラッチ及びブレーキを新たに設ける必要がなく、又、主クラッチ・ブレーキレバーを主クラッチ・ブレーキペダルと別系統で主クラッチ及び走行ブレーキに連係する必要がなく、更に、走行機体に主クラッチペダルとブレーキペダルの双方を装備する場合のように主クラッチ・ブレーキレバーを左右に振り分け配備された主クラッチペダルとブレーキペダルとに連係させる必要がないことから、降車位置からの機体の制動操作を行えるようにするために要する製造コストの削減や連係構造の簡素化を図れるようになる。
【0018】〔効果〕従って、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を、居住性並びに操作性の向上を図りながら搭乗位置と降車位置の双方から行えるようにすることができ、かつ、主クラッチ・ブレーキレバーの配設に起因して乗降ステップを利用した機体前方からの乗降が行い難くなることを抑制できる上に、降車位置からの制動操作を可能にするために要する製造コストの削減や連係構造の簡素化を図れるようになった。
【0019】〔構成〕本発明のうちの請求項3記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、左右の後輪への伝動状態を各別に切り換える左右のサイドクラッチを装備するとともに、ステアリングホイールの直進状態からの設定角以上のステアリング操作に連動して旋回内側のサイドクラッチを切り状態に切り換えるサイドクラッチ操作機構を設けた。
【0020】〔作用〕上記請求項3記載の発明によると、作業走行中に畦際で機体を小回り旋回させる枕地旋回時には、ステアリングホイールの直進状態から設定角以上のステアリング操作を行うと、その操作に応じた前輪の操向操作とともに旋回内側の後輪への伝動を断つことができるので、旋回内側の後輪を遊転させて圃場荒れを抑制する良好な小回り旋回を行えるようになる。
【0021】ところで、枕地旋回時に旋回内側の後輪への伝動を断つ方法としては、左右のサイドクラッチを各別に切り換え操作する左右一対の操作ペダルを設けて、ステアリング操作の際に旋回内側のサイドクラッチに連係された操作ペダルを踏み込み操作することが考えられるが、この方法では、搭乗運転部に一対の操作ペダルを配備する必要が生じるとともに枕地旋回時にステアリング操作とペダル操作とを行う必要がある。
【0022】そこで、上記請求項3記載の発明では、ステアリングホイールの直進状態から設定角以上のステアリング操作に連動して旋回内側のサイドクラッチを切り状態に切り換えるサイドクラッチ操作機構を設けるようにしているのであり、これによって、サイドクラッチ操作用の左右一対の操作ペダルを設ける必要がないことから、左右一対の操作ペダルを設けることによる搭乗運転部での居住性の悪化を回避できるようになり、又、枕地旋回時には、ペダル操作を行わなくてもステアリング操作を行うだけの簡単な操作で旋回内側のサイドクラッチを切り状態に切り換えられることから、枕地旋回時の操作性の向上を図れるようになる。
【0023】〔効果〕従って、搭乗運転部での居住性の悪化を招くことなく、枕地旋回時には、旋回内側の後輪を遊転させて圃場荒れを抑制する良好な小回り旋回を行える上に、枕地旋回時の操作性の向上を図れるようになった。
【0024】〔構成〕本発明のうちの請求項4記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記主クラッチ・ブレーキレバーの配設位置を搭乗位置からも操作可能な位置に設定した。
【0025】〔作用〕上記請求項4記載の発明によると、運転者が搭乗する通常の移動走行時や作業走行時では、搭乗位置からの主クラッチ・ブレーキペダルの踏み込み操作だけではなく、搭乗位置からの主クラッチ・ブレーキレバーの操作によっても、主クラッチの切り状態への切り換えと走行ブレーキの制動状態への切り換えとを行えることから、ペダル操作が苦手であっても、主クラッチ・ブレーキレバーを操作するだけの極簡単な操作で、エンジンに無理を掛けることなく機体を制動させることができるようになる。
【0026】〔効果〕従って、搭乗運転時には、エンジンに無理を掛けることのない機体の制動操作を運転者の得手不得手に応じてペダル操作とレバー操作とに選択できる操作性に優れたものにすることができるようになった。
【0027】〔構成〕本発明のうちの請求項5記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、前記主クラッチが切り状態になる以前から前記走行ブレーキが制動作用するように前記主クラッチと走行ブレーキとを連動させた。
【0028】〔作用〕上記請求項5記載の発明によると、駆動輪への伝動が行われている段階から走行ブレーキが制動作用するようになる。
【0029】ところで、主クラッチと走行ブレーキとの連動方法としては、主クラッチが切り状態に切り換わってから走行ブレーキが制動作用するように主クラッチと走行ブレーキとを連動させることも考えられるが、この方法では、機体を制動させる際に駆動輪への伝動が断たれるとともに走行ブレーキが制動作用していない状態が現出されることから、登坂走行時や降坂走行時での制動操作の際に機体が不測に自重降坂するおそれがある。
【0030】そこで、上記請求項5記載の発明では、駆動輪への伝動が行われている段階から走行ブレーキが制動作用するようにしているのであり、これによって、駆動輪への伝動が断たれるとともに走行ブレーキが制動作用していない状態が現出されることに起因した機体の自重降坂を防止できるようになる。
【0031】〔効果〕従って、主クラッチと走行ブレーキとを連動させることで機体を制動させる際の操作性の向上を図れるようにしながらも、その制動操作の際に駆動輪への伝動が断たれるとともに走行ブレーキが制動作用していない状態が現出されることに起因した機体の自重降坂を防止できるようになった。
【0032】
【発明の実施の形態】図1には乗用水田作業機の一例である6条植え用の乗用型田植機の全体側面が、図2にはその全体平面が示されており、この乗用型田植機は、乗用型の走行機体1の後部に、油圧シリンダ2の作動で昇降揺動する四連リンク機構3を介して水田作業装置の一例である6条植え用の苗植付装置4を連結し、かつ、6条施肥用の施肥装置5を搭載することによってミッドマウント施肥仕様に構成されている。
【0033】図1〜4に示すように、走行機体1は、その前部に出力軸6aが横向きになる姿勢で搭載されたエンジン6からの動力を、ベルト式伝動装置7及び静油圧式無段変速装置8を介してミッションケース9に内装されたギヤ式伝動装置10に伝達し、そのギヤ式伝動装置10からの走行用動力を、左右の前車軸ケース11に内装された前輪駆動装置12を介して左右の前輪13に伝達するとともに、前後向きの第1伝動軸14及び後車軸ケース15に内装された後輪駆動装置16を介して左右の後輪17に伝達する四輪駆動形式に構成され、その後部側には、左右の前輪13を操向操作するステアリングホイール18、搭乗ステップ19、及び、運転座席20、などを備えた搭乗運転部21が形成されている。
【0034】図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、機体の走行に伴って3基の整地フロート22が苗植え付け箇所を前もって整地する一方で、ギヤ式伝動装置10からの作業用動力が第2伝動軸23を介してフィードケース24に伝達され、そのフィードケース24からの分配動力で、6条分の苗を載置する苗載台25が左右方向に所定ストロークで往復駆動されるとともに、左右方向に所定間隔を隔てて並設された6基のロータリ式の植付機構26が、苗載台25の下端から苗を所定量ずつ取り出して圃場に植え付ける植え付け作動を行うことで、6条分の植え付けを行えるように構成されている。
【0035】施肥装置5は、機体の走行に伴って各植え付け条に対応するように整地フロート22に装備された作溝器27が施肥溝を形成する一方で、6基の繰出機構28がギヤ式伝動装置10からの作業用動力で肥料ホッパ29内の肥料を所定量ずつ繰り出し、電動ファン30の作動で各繰出機構28にて繰り出された肥料を案内ホース31を介して対応する作溝器27に向けて圧送することで、圃場における植え付け苗の横側方箇所に肥料を埋没させるように構成されている。
【0036】図5及び図6に示すように、ギヤ式伝動装置10は、静油圧式無段変速装置8からの伝動を断続する主クラッチ32、主クラッチ32を介して伝達された動力を高低二段に変速する副変速機構33、副変速機構33からの動力を走行用動力として前輪駆動装置12及び第1伝動軸14に伝達する差動機構34、主クラッチ32を介して伝達された動力の正転動力のみを作業用動力として伝動する一方向クラッチ35、一方向クラッチ35からの作業用動力を変速する株間変更用の植付変速機構36、及び、植付変速機構36から第2伝動軸23への伝動を断続する植付クラッチ37、などによって構成されている。
【0037】図3及び図5に示すように、前輪駆動装置12は、差動機構34から横外側方に向けて延設された左右の前輪駆動軸38、及び、各前輪駆動軸38に対応する前輪13を操向可能に連動連結する図外のベベルギヤ式伝動機構、などによって構成されている。
【0038】図7〜9に示すように、後輪駆動装置16は、第1伝動軸14に連動連結された横向きの後輪駆動軸39、後輪駆動軸39からの動力を対応する後輪17に減速伝動する左右のギヤ式減速機構40、後輪駆動軸39から左右のギヤ式減速機構40への伝動を各別に断続する左右のサイドクラッチ41、及び、右側のサイドクラッチ41と後車軸ケース15との間に介装された走行ブレーキ42、などによって構成されている。
【0039】図3、図4及び図7〜9に示すように、ステアリングホイール18の回動軸18aには、左右の前輪13にナックルアーム43とタイロッド44とを介して連動連結されたピットマンアーム45を、ステアリングホイール18のステアリング操作量に応じて縦向きの第1軸芯P1周りに左右方向に揺動駆動する油圧パワーステアリング用のトルクジェネレータ46が接続されている。ピットマンアーム45は、その直進姿勢から設定角(例えば30度)以上の左右揺動に連動して第1操作ロッド47を前後方向に押し引き操作することで機体中央に配備した中継アーム48を縦向きの第2軸芯P2周りに前後揺動させ、中継アーム48は、それと一体揺動する天秤アーム49を介して左右の第2操作ロッド50を互いに前後逆向きに押し引き操作することで、各サイドクラッチ41の操作アーム51を互いに縦向きの第3軸芯P3周りに前後逆向きに揺動操作し、各サイドクラッチ41は、その操作アーム51が前方に向けて揺動操作されるのに伴って、操作アーム51の支軸52に形成された偏芯カム53がバネ54の付勢に抗して可動体55を機体外方側に向けて押圧操作することによって、後輪駆動軸39側とギヤ式減速機構40側とに振り分け装着された複数の摩擦板56の圧接を解除する伝動切り方向への切り換え操作が行われ、逆に、操作アーム51が後方に向けて揺動操作されるのに伴って、偏芯カム53による可動体55の押圧操作が解除されてバネ54が可動体55を機体内方側に向けて押圧操作することによって、前記複数の摩擦板56を圧接させる伝動入り方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0040】つまり、ステアリング操作系が油圧パワーステアリング式に構成されるとともに、ピットマンアーム45と各サイドクラッチ41の操作アーム51とを連係する第1操作ロッド47、中継アーム48、天秤アーム49、及び左右の第2操作ロッド50、などによって、ステアリングホイール18の直進状態からの設定角以上のステアリング操作に連動して旋回内側のサイドクラッチ41を切り状態に切り換えて旋回内側の後輪17を遊転させるサイドクラッチ操作機構57が構成されている。そして、この構成によって、作業走行中に畦際で機体を小回り旋回させる枕地旋回時には、ステアリングホイール18の直進状態から旋回方向への設定角以上のステアリング操作を行うだけの簡単な操作で、旋回内側の後輪17を遊転させて圃場荒れを抑制する良好な小回り旋回を行えるようになっている。
【0041】図7及び図8に示すように、走行ブレーキ42は、その操作アーム58が縦向きの第4軸芯P4周りに前方に向けて揺動操作されるのに伴って、操作アーム58の支軸59に装備された一対の偏芯カム60が可動体61を機体外方側に向けて押圧操作することによって、サイドクラッチ41側と後車軸ケース15側とに振り分け装着された複数の摩擦板62を圧接させる制動方向への切り換え操作が行われるようになり、逆に、操作アーム58が後方に向けて揺動操作されるのに伴って偏芯カム60による可動体61の押圧操作が解除されることによって、前記複数の摩擦板62の圧接を解除する非制動方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0042】図5及び図7に示すように、走行ブレーキ42の操作アーム58は、左右向きの第5軸芯P5周りでの踏み込み操作が可能となるように搭乗運転部21の右側足元位置に配設された単一の操作ペダル64にターンバックル式の第3操作ロッド65を介して連動連結されており、図外の復帰バネの付勢に抗した操作ペダル64の踏み込み操作で第3操作ロッド65が前方側に引き込み操作されることによって前方に向けて揺動操作され、逆に、復帰バネによる操作ペダル64の復帰操作で第3操作ロッド65が後方側に押し込み操作されることによって後方に向けて揺動操作されるようになっている。一方、操作ペダル64は、その支軸である左右向きの回動軸66と、操作ペダル64に連動した回動軸66の第5軸芯P5周りの回動に伴って前後方向に押し引き操作される第4操作ロッド67とを介して主クラッチ32の操作アーム68に連係されている。
【0043】主クラッチ32は、操作ペダル64の踏み込み操作に連動した第4操作ロッド67の前方側への押し込み操作で操作アーム68が縦向きの第6軸芯P6周りに前方に向けて揺動操作され、操作アーム68の支軸69に形成された操作カム70がバネ71の付勢に抗して可動体72を機体右側方に向けて押圧操作することによって、その入力側の固定体73と出力側の可動体72とに振り分け装着された複数の摩擦板74の圧接を解除する伝動切り方向への切り換え操作が行われ、逆に、操作ペダル64の復帰操作に連動した第4操作ロッド67の後方側への引き込み操作で操作アーム68が第6軸芯P6周りに後方に向けて揺動操作され、操作カム70による可動体72の押圧操作が解除されてバネ71が可動体72を機体左側方に向けて押圧操作することによって、前記複数の摩擦板74を圧接させる伝動入り方向への切り換え操作が行われるようになっている。
【0044】つまり、操作ペダル64は、その踏み込み操作によって主クラッチ32を切り状態に切り換えるとともに走行ブレーキ42を制動状態に切り換える主クラッチ・ブレーキペダルであり、これによって、主クラッチペダルとブレーキペダルとを搭乗運転部21の左右の各足元位置に振り分け配備する場合に比較して、搭乗運転部21の足元空間を無理なく広く形成することができて搭乗運転部21での居住性の向上を図れる上に、エンジン6などを覆う前後のボンネット75,76の左右に配設された乗降ステップ77のうち、主クラッチ・ブレーキペダル64が配備されない左側の乗降ステップ77を利用した機体前方からの乗降を行い易くすることができるとともに、主クラッチ32を切り状態に切り換えながら走行ブレーキ42を制動状態に切り換える、といったエンジン6に無理を掛けることなく機体を制動させるための一連操作を、単一の主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込むだけの極簡単な操作で行えるようになっている。
【0045】図2、図7及び図10に示すように、搭乗運転部21の右側足元位置には、回動軸66に遊嵌支持されるとともに、主クラッチ・ブレーキペダル64のアーム部64Aの直後方をアーム部64Aと交差する状態で通るように回動軸66から上方に向けて延出された主クラッチ・ブレーキレバー78が配備されており、これによって、乗車位置及び機体前部右側方の降車位置のいずれからでも、主クラッチ・ブレーキレバー78をバネ79の付勢に抗して第5軸芯P5周りに機体前方側に揺動操作することによって、主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み方向に操作できるようになっている。
【0046】つまり、回動軸66に主クラッチ・ブレーキレバー78を遊嵌するだけの簡単な改良で、ペダル操作が苦手であっても、搭乗位置から主クラッチ・ブレーキレバー78を揺動させるだけの簡単な操作で、エンジン6に無理を掛けることのない機体の制動操作を行えるようになり、又、機体が前後方向に大きく傾斜することから運転者が搭乗しない方が望ましい畦越え走行時や積み降ろし走行時には、降車位置からでも主クラッチ・ブレーキレバー78を揺動させるだけの簡単な操作で、エンジン6に無理を掛けることのない機体の制動操作を行えるようになっている。
【0047】図11の(イ)に示すように、主クラッチ32と走行ブレーキ42は、主クラッチ32の切り操作が開始される位置から走行ブレーキ42が徐々に制動作用するように作動設定された状態で連係されており、これによって、機体を制動させる際に前後輪13,17への伝動が断たれるとともに走行ブレーキ42が制動作用していない状態が現出されることを防止でき、もって、登坂走行時や降坂走行時での制動操作の際に、前後輪13,17への伝動が断たれるとともに走行ブレーキ42が制動作用していない状態が現出されることに起因して機体が不測に自重降坂するおそれを未然に回避できるようになっている。
【0048】又、前述したように主クラッチ・ブレーキペダル64と走行ブレーキ42の操作アーム58とをターンバックル式の第3操作ロッド65を介して連動連結していることから、第3操作ロッド65の長さ調節を行うことによって、図11の(ロ)に示すように、主クラッチ32の切り操作の途中から走行ブレーキ42が徐々に制動作用するように作動設定を変更することも可能となっている。
【0049】ちなみに、図1及び図2に示す符号80は、静油圧式無段変速装置8を変速操作するようにステアリングホイール18の左側方に配備された主変速レバーであり、符号81は、ギヤ式伝動装置10の副変速機構33を変速操作するように運転座席20の左側方に配設された副変速レバーであり、符号82は、その踏み込み操作でギヤ式伝動装置10の差動機構34を差動状態から差動不能状態に切り換えるように搭乗運転部21における左側の足元後方箇所に配設されたデフロックペダルである。
【0050】又、図7及び図10に示す符号85は、主クラッチ・ブレーキレバー78との係合で主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み限界位置(主クラッチ32の切り状態と走行ブレーキ42の制動状態とが現出される位置)に固定保持するロック具であり、このロック具85にて主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み限界位置に固定保持することによって、走行ブレーキ42を駐車ブレーキとして利用できるようになっている。
【0051】〔別実施形態〕以下、本発明の別実施形態を列記する。
■ 乗用水田作業機としては、走行機体1の後部に水田作業装置4の一例である直播装置を連結してなる直播機などであってもよい。
■ 水田作業装置4としては、4条分、5条分、8条分、あるいは10条分などの作業を行うように構成されたものであってもよい。
■ 図12に示すように、搭乗運転部21の右側足元位置に主クラッチ・ブレーキペダル64を配備し、かつ、搭乗運転部21の左側足元位置に主クラッチ・ブレーキレバー78を配設するようにしてもよい。ちなみに、この別実施形態においては、主クラッチ・ブレーキレバー78は、回動軸66に遊嵌された筒軸83の左端部から延設されており、その前方への揺動操作に連動して、筒軸83とその右端部に装備された操作アーム84とを介して、主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み方向に押圧操作するように構成されている。尚、主クラッチ・ブレーキレバー78が回動軸66を介して主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み方向に押圧操作するように構成してもよい。
■ 主クラッチ・ブレーキペダル64との係合で主クラッチ・ブレーキペダル64を踏み込み限界位置に固定保持するペダルロック具を、搭乗位置と降車位置の双方から操作可能な位置に配設するようにしてもよい。
■ 乗用水田作業機としては、走行機体1の前端中央に立設装備される照準具を、前方又は左右に倒伏する倒伏姿勢に姿勢切り換え可能で、かつ、その倒伏姿勢への姿勢切り換えによって降車位置から機体を操縦する際の操縦レバーとして利用できる強度を有するように構成したものであってもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成12年1月25日(2000.1.25)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−204210(P2001−204210A)
【公開日】 平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願番号】 特願2000−15891(P2000−15891)