トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 肥料散布機
【発明者】 【氏名】北沢 文章

【要約】 【課題】比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能であって、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる肥料散布機の提供。

【解決手段】肥料散布機の肥料攪拌装置30は、タンク25内の散布軸7に対し偏心量dを以って偏心軸33と、この軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アーム31を支持する鉄製の遊星輪34と、偏心軸33に対する遊星輪34の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心軸33の動力を遊星輪34に伝達する磁力継手35と、遊星輪34と偏心軸33の間に介装されたボールベアリング36とを有する。散布軸7が回転すると、遊星輪34は偏心軸33との公転に随伴して公転するも、攪拌アーム32の負荷抵抗に応じて遊星輪34が徐々に逃がし自転するため、それに応じただけ攪拌アーム32の旋回速度が遅くなるが、それに見合うだけの振動数で偏心量dの振動の円振動が生じ、攪拌アーム32は振動旋回する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 底部に肥料落とし孔を持ち、肥料を貯留するための肥料タンクと、前記肥料タンクの外部から前記タンク内へ回転駆動力を伝達するための動力伝達系のタンク内縦従動軸により前記肥料タンク内で旋回して貯留肥料を攪拌するための攪拌アームを持つ肥料攪拌手段と、を備えた肥料散布機において、前記肥料攪拌手段は、前記タンク内縦従動軸の回転を、当該タンク内縦従動軸を略旋回中心とする前記攪拌アームの旋回運動と前記攪拌アーム自身の循環軌跡運動とに夫々変換する動力を前記攪拌アームに伝達する励振式動力伝達手段を有することを特徴とする肥料散布機。
【請求項2】 請求項1において、前記循環軌跡運動が前記旋回中心と前記攪拌アームの最遠点との距離に比し短い振幅の円振動であることを特徴とする肥料散布機。
【請求項3】 請求項1又は請求項2において、前記励振式動力伝達手段は、前記貯留肥料により前記攪拌アームが受ける負荷抵抗の度合いに応じて前記旋回運動への伝達動力を減じると共に相対的に前記循環軌跡運動への伝達動力を増す自動逆変手段であることを特徴とする肥料散布機。
【請求項4】 請求項3において、前記自動逆変手段は、前記タンク内縦従動軸に対し所定の偏心量を以って偏心回転する偏心体と、この偏心体の軸心を回転中心として自転容易であって前記攪拌アームを支持する遊星体と、前記偏心体に対する前記遊星体の相対的逃がし抵抗性自転を許容しながら前記偏心体の動力を前記遊星体に伝達する継手と、を有して成ることを特徴とする肥料散布機。
【請求項5】 請求項4において、前記継手は磁力継手であることを特徴とする肥料散布機。
【請求項6】 請求項5において、前記遊星体と前記偏心体との間に介装されたベアリングを有して成ることを特徴とする肥料散布機。
【請求項7】 請求項5又は請求項6において、前記タンク内縦従動軸と前記偏心体とは一体連結して成ることを特徴とする肥料散布機。
【請求項8】 請求項5乃至請求項7のいずれか一項において、前記磁力継手は、前記偏心体と前記遊星体との軸方向法線の突合せ面の間に設けられていることを特徴とする肥料散布機。
【請求項9】 請求項8において、前記磁力継手は、前記偏心体及び前記遊星体のいずれか一方を磁性材で形成して成り、その他方の前記突合せ面上に固定すると共に、前記一方の前記突合せ面と相合せて成る磁石板を有することを特徴とする肥料散布機。
【請求項10】 請求項9において、前記磁石板は、前記回転中心の周りに環状離散的に穿った複数の穴を持つ穴付き磁性板と、前記穴に埋め込んだ磁石と、を有して成ることを特徴とする肥料散布機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、タンク内の肥料を攪拌する肥料攪拌手段を備えた肥料散布機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自走しながら肥料を遠心力で散布する自走式肥料散布機は、例えば図5に示すように、左右一対の前輪である駆動輪1a(1b)及び操縦輪である尾輪1cを備えた車体フレーム1と、この車体フレーム1の後部に搭載された小型エンジン2と、車体フレーム1に起立した垂直フレーム3から後方に延びた操縦用二叉ハンドル3a(3b)と、車体フレーム1の前部に搭載された肥料散布装置4とを有しており、小型エンジン2からの原動力はVベルト(図示せず)を経て駆動輪1a(1b)間のトランスミッション部5(図6参照)へ伝達され、そのトランスミッション部5から分岐して水平軸の走行駆動用車軸6と垂直軸の散布駆動軸7とに伝達されるようになっている。アクセルレバー7cの操作でエンジン回転数が変化し、肥料散布機の走行速度を可変できるようになっている。
【0003】また、肥料散布装置4は、図6に示すように、散布駆動軸7にボス部7aを介して固定され、複数の散布羽根9aを有する回転式散布板9と、この上方のタンク取付台板10の上に固定された肥料タンク(肥料ホッパ)15と、肥料タンク15の底板15aを貫通した散布軸7の先端部に締め付けボルト(図示せず)を以て固定されて水平回転する棒状攪拌アーム12と、肥料タンク15の底板15aに形成された1又は2以上の肥料落とし孔15bと、これらの肥料落とし孔15bと揃い合う肥料落とし孔11aを有し、肥料タンク15aの底板15aの裏面に重ね合わせられて軸受7bの周りに回動可能の円板状シャッタ板11とを備えて成る。底板15aとシャッタ板11とが肥料落下調節板機構を構成している。
【0004】散布駆動軸7の回転と共に肥料タンク15内の攪拌アーム12もその底板15aを這うように旋回するため、肥料タンク15内に堆積した貯留肥料(図示せず)は片寄り無く連続的に底板15aの肥料落とし孔15bへ供給されて掻き落され、シャッタ板11の肥料落とし孔11aを介して回転する散布板9上に落下し続けるので、散布板9の遠心力により進行方向前方の扇状の所定散布範囲(散布角内)に肥料が連続的に撒き散らされる。シャッタ操作レバー7dを操作すると、シャッタ11が回動してその肥料落とし孔11aと底板15aの肥料落とし孔15bとの開口度(孔重なり度合い)を絞り調整することができるため、肥料タンク15内から回転式散布板9上へ落下する肥料の落とし込み流量を加減できるので、肥料の厚撒き・薄撒きが可能となっている。また、一方のハンドル3a(3b)に設けたアクセルレバー7cの操作で散布駆動軸7の回転速度を可変できるようになっており、回転式散布板9の遠心力を増減でき、肥料の飛ばし距離の長短調整が可能となっている。
【0005】なお、本出願人が既に開示した特開平7−298741号公報に記載の肥料散布装置の肥料落下調節板機構のように、シャッタ板11の下に肥料落とし孔を持つ第2のシャッタ板を重ねて設け、この第2のシャッタ板の回動位置を調節することにより、肥料の散布方向を変更できるように構成しても良い。この肥料落下調節板機構は2枚のシャッタ板で肥料の落下流量と落下位置とを変更することで肥料の散布範囲と散布方向を調節できるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の肥料散布機にあっては、次のような問題点があった。即ち、化学肥料のように比較的乾燥した肥料を散布する場合は、漏斗状の肥料タンク15内の底面側で旋回する攪拌アーム12の掻きだしによって、散布板9へ落とし込まれた後に残る肥料の空き間には比較的滑落性ないし流動性(易動性)のある貯留肥料が崩落して補給されるものであるから、連続散布を維持できるが、有機肥料(堆肥)などの比較的湿潤性のある肥料は、粘着性が残っているため、攪拌アーム12の掻きだしによって残る空き間への肥料の崩落が自発的に起こり難く、貯留肥料のうち攪拌アーム12の旋回域だけが空洞化し、その余に肥料が固まって架橋状に残るという所謂ブリッジ現象が生じ易く、攪拌アーム12の空回りにより、連続散布の持続が殆ど不可能である。
【0007】かかる場合、タンク15の上部まで長く延ばした攪拌アームを散布駆動軸7に取付けて、貯留肥料の上位をも全体的に攪拌する方法が考えられるが、上記の自走式肥料散布機では、散布軸7の回転速度が自走速度と同期して比較的高速であるため、攪拌アームが受ける負荷抵抗(トルク)が過大化し、攪拌アームの堅牢化を余儀なくされ、自走式肥料散布機の重量化と高コスト化を招く。また、タンク内の貯留肥料は強引な攪拌作用により混練化が強まるため、粘性化と共に団塊化(連結化)が進み、むしろ肥料落とし孔から粒片状の肥料が落下し難くなる。
【0008】他方、攪拌アーム12を低速旋回させる構成を採用する場合は、散布板9を回転するための散布駆動軸7とは別系統の駆動軸に減速機を介して攪拌アーム12を取付ける必要があることから、攪拌アーム12のための新たな駆動伝達系は勿論のこと、タンク内にギアボックスを定置せねばならず、高コスト化を招く。
【0009】そこで、上記問題点に鑑み、本発明の課題は、比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能であって、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる肥料散布機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、攪拌アームを旋回運動させるだけではなく、この旋回運動に攪拌アーム自身の円振動などの循環軌跡運動を重畳させた合成運動たる振動旋回を行わしめる手段を講じたところにある。
【0011】即ち、本発明は、底部に肥料落とし孔を持ち、肥料を貯留するための肥料タンクと、上記肥料タンクの外部から上記タンク内へ回転駆動力を伝達するための動力伝達系のタンク内従動縦軸により上記肥料タンク内で旋回して貯留肥料を攪拌するための攪拌アームを持つ肥料攪拌手段と、を備えた肥料散布機において、上記肥料攪拌手段は、上記タンク内縦従動軸の回転を、当該タンク内縦軸を略旋回中心とする上記攪拌アームの旋回運動と上記攪拌アーム自身の循環軌跡運動とに夫々変換する動力を上記攪拌アームに伝達する励振式動力伝達手段を有することを特徴とする。ここで、循環軌跡運動とは、従動体たる攪拌アームに属する点が或る点から出発して再びその出発点に戻る1周期運動中に閉じた軌跡(直線軌跡、楕円軌跡、円軌跡、矩形軌跡など)を描く運動であり、攪拌アームに属する各点の並進的な1次元ないし3次元の振動に相当する。
【0012】かかる構成において、タンク内縦従動軸が従動回転すると、攪拌アームは励振式動力伝達手段の運動変換作用によって旋回運動すると同時に循環軌跡運動を行うため、攪拌アームの旋回運動による攪拌で比較的湿潤性のある貯留肥料に空き間が生じても、攪拌アームの小刻みな循環軌跡運動によって貯留肥料を加振するので、空き間周囲の肥料の崩落を誘発でき、連続して肥料を攪拌することができる。この励振式動力伝達手段は、タンク内縦従動軸とは別系統の動力を受けて励振するのではなく、また振動モータ等の自励振動手段でもなく、タンク内縦従動軸の従動回転を基に攪拌アームの旋回運動成分と攪拌アーム自身の循環軌跡運動成分との合成運動たる振動旋回運動に変換するものであるため、タンク内縦従動軸と攪拌アームとの間に設けることができ、その余に部材を配する必要がないので、攪拌手段の構成の簡略化とコンパクト化を実現できる。それ故、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化が可能な肥料散布機を提供できる。
【0013】循環軌跡運動としてはストローク(振幅域)の大きな直線振動や楕円振動でも構わないが、等方的ないし多面的に貯留肥料を突き崩し、崩落頻度を高めるには円振動などの2次元振動域の広い循環軌跡であることが望ましい。勿論、循環軌跡運動は攪拌アームのアーム長さ(旋回中心と最遠点との距離)に比し短い振幅の円振動であることが好ましい。振動による負荷抵抗の方を旋回運動による負荷抵抗よりも低くでき、過負荷状態のときでも振動が停止し難くなる。また円振動の場合、励振式動力伝達手段自体の機構の簡略化にも有利である。
【0014】この励振式動力伝達手段は、攪拌アームに対し常に画一化した動力比率の旋回運動成分と振動成分を割り当てるものではなく、貯留肥料により攪拌アームが受ける負荷抵抗の度合いに応じて旋回運動への伝達動力を減じると共に相対的に循環軌跡運動への伝達動力を増す自動逆変手段とするのが適切である。攪拌アーム自身の振動よりも攪拌アームの旋回運動の方が貯留肥料による負荷抵抗を強く受けるものであるが、負荷トルクが過大であるとき、攪拌アームの旋回運動自体が止まってしまい、これに追従して攪拌アームの振動も拘束され、攪拌作用自体が消滅し、過負荷状態の解消がもやは困難となる。しかし、励振式動力伝達手段が上記のような旋回運動と循環軌跡運動との相補的な自動逆変手段である場合、貯留肥料により攪拌アームの旋回運動の行程を減退させる負荷抵抗が作用すると、その分、逆に攪拌アームの振動勢力が旺盛化するため、仮に、攪拌アームの旋回運動が停止しても、負荷抵抗の少ない振動は持続し得るので、その振動によって肥料の崩落を誘発でき、負荷状態の衰退により、今度は攪拌アームの旋回微動が生じ、更なる崩落を誘発し、早晩、過負荷状態から脱却し、攪拌アームの旋回運動が復活する。このように、過負荷状態では旋回運動が減退するも振動作用が活性化し、過負荷状態が解消すると振動作用が減退するも旋回運動が旺盛化するため、攪拌アームは殆ど旋回運動を停止することなく、遅速変化しながらも連続旋回し、比較的湿潤性のある肥料でもブリッジ現象を生じさせることなく、攪拌可能であって肥料落下を持続させることができる。
【0015】この自動逆変手段としては、タンク内縦従軸に対し所定の偏心量を以って偏心回転する偏心体と、この偏心体の軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アームを支持する遊星体と、偏心体に対する遊星体の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心体の動力を遊星体に伝達する継手と、を有する構成を採用できる。継手としては、耐久性の点から磁力継手が適切である。タンク内縦従動軸が回転すると、偏心体が所定の偏心量を以って偏心回転(公転)する。偏心体と遊星体とは磁力継手を介してカップリングしているものの、逃がし抵抗性のスリップ動(脱調)によって、両者間では相対的な逃がし自転(空転)が可能となっている。
【0016】原理的には、両者間の摩擦力、遊星体及び攪拌アームの自重や攪拌アームが受ける負荷抵抗が皆無の場合、磁力継手の微弱な吸着力でも、遊星体は相対的な逃がし自転を生じずに偏心体と一体的に同期して偏心回転(公転)するため、攪拌アームはタンク内従動軸を旋回中心とする旋回運動を行うものであるが、摩擦力や遊星体及び攪拌アームの自重が存在することは勿論、攪拌アームには貯留肥料から負荷抵抗や空気抵抗を受けているため、遊星体にかかる総負荷抵抗が磁力継手の吸着力を超えるほどになると、遊星体は偏心体の公転に随伴して公転するも、遊星体が徐々に逃がし自転するため、その逃がし回り量に応じただけ攪拌アームの旋回速度が遅くなる分、逃がし回り量に見合うだけの円振動(振動半径は偏心量)の軌跡長が攪拌アームに付加されることになり、攪拌アームは遅い旋回運動と円振動とが重畳した合成運動たる振動旋回を行う。従って、攪拌アームの円振動は負荷抵抗の増減分に応じて円振動の振動数が自動的に増減し、円振動勢力の増減が起こるため、負荷抵抗が増す程、円振動が小刻みとなり、間断なく円滑に肥料を突き崩すことができる。過負荷状態の場合には、磁力継手に引きずりのない完全なスリップ動が生じるため、攪拌アームの旋回運動が停止し、円振動の振動数が最大になる。この最大振動数は遊星体の公転周波数である。
【0017】ここで、遊星体にかかる過重を支持し、且つ無駄な摩擦力を軽減するために、遊星体と偏心体との間にベアリングを介装すると良い。ボールベアリングで良い。ベアリングの内側に遊星体を、ベアリングの外側に偏心体を配しても良く、またその逆でも構わない。また、タンク内縦従動軸に軸着した太陽歯車と偏心軸に軸着した遊星歯車とを噛み合わせ、変速機構を内蔵しても構わないが、構成の簡易化とコンパクト化を実現するためには、タンク内縦従動軸と偏心軸とを締め付けボルト等で一体連結して成ることが好ましい。かかる場合、偏心体は1公転1自転する。
【0018】磁力継手は、偏心体と遊星体との内外周面に設けても良いが、着磁処理等の製作上の容易性から、偏心体と遊星体との軸方向法線の突合せ面の間に設けることが好ましい。勿論、周面に設けた場合には、両体の細径化と着磁面積の確保を両立できる。
【0019】そして、磁力継手は、偏心体及び遊星体のいずれか一方を磁性材で形成して成り、その他方の突合せ面上に固定すると共に、一方の突合せ面と相合せて成る磁石板を有する。偏心体又は遊星体を磁力継手の従動節又は従動節として利用しているので、部品点数の削減に寄与し、低コスト化を図ることができる。
【0020】磁力継手の磁石板としては、その回転中心の周りに環状離散的に穿った複数の穴を持つ穴付き磁性板と、その穴に埋め込んだ磁石と、を有するものを採用する。大盤無垢の磁石板では、それ自身の製造コスト高と共に、相手側の磁性板とのはみ出し磁路が長くなり、吸着力が弱い。しかし、ヨーク板として機能する穴付き磁性材を用いると、隣接する穴同士の間の磁性材質にはみ出し磁路が至近形成されるため、磁路の長さが最短化し、吸着力が増強し、閾値トルクを高くできる。また、穴に埋め込んだ磁石が穴付き磁性板の表面より若干突出した状態に位置決め設定し、試験稼動を行うと、必然的に、突出した磁石の表面が摩滅平坦化し、相手側の磁性材との無限小間隙を形成するので、好都合である。
【0021】上記した肥料散布機は自走式肥料散布機でも良い。かかる場合においては、タンク内縦従動軸は、散布羽根を回転するための散布軸を上方に延長して肥料タンクの底面を貫通させた軸端側とすることができるので、別部品の軸や駆動伝達系を新たに設ける必要がなく、低コスト化を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る自走式肥料散布機の全体的外観を示す左側面図、図2は同自走式肥料散布機における肥料攪拌装置を示す縦断面図、図3は図2中のA−A線に沿って切断して見た切断矢視図、図4は同肥料攪拌装置における攪拌アームの運動形態を説明するための平面図である。
【0023】本例の自走式肥料散布機も、左右一対の前輪である駆動輪1a(1b)及び操縦輪である尾輪1cを備えた車体フレーム1と、この車体フレーム1の後部に搭載された小型エンジン2と、車体フレーム1に起立した垂直フレーム3から後方に延びた操縦用二叉ハンドル3a(3b)と、車体フレーム1の前部に搭載された肥料散布装置24とを有しており、小型エンジン2からの原動力はVベルト2aを経て駆動輪1a(1b)間のトランスミッション部5へ伝達され、そのトランスミッション部5から分岐して水平軸の走行駆動用車軸6と垂直軸の散布駆動軸7とに伝達されるようになっている。アクセルレバー(図示せず)の操作でエンジン回転数が変化し、肥料散布機の走行速度を可変できるようになっている。
【0024】また、肥料散布装置24は、散布駆動軸7にボス部7aを介して固定され、複数の散布羽根9aを有する回転式散布板9と、この上方のタンク取付台板(図示せず)上に固定された肥料タンク(肥料ホッパ)25と、肥料タンク25の底板25aを貫通した散布軸7の先端部に締め付けボルト31を以って固定されて肥料攪拌装置30と、肥料タンク25の底板25aに形成された1又は2以上の肥料落とし孔25bと、これらの肥料落とし孔25bと揃い合う肥料落とし孔11aを有し、肥料タンク25の底板25aの裏面に重ね合わせられて回動可能の円板状シャッタ板11とを備えて成る。底板25aとシャッタ板11とが肥料落下調節板機構を構成している。
【0025】散布駆動軸7の回転に同期して肥料タンク25内の攪拌アーム32も旋回するため、肥料タンク25内に堆積した貯留肥料(図示せず)は片寄り無く連続的に底板25aの肥料落とし孔25bへ供給されて掻き落され、シャッタ板11の肥料落とし孔11aを介して回転する散布板9上に落下し続けるので、散布板9の遠心力により進行方向前方の扇状の所定散布範囲(散布角内)に肥料が連続的に撒き散らされる。
【0026】本例の肥料攪拌装置30は、タンク25内の散布軸7に対して偏心量dで偏心回転する鉄製の偏心軸33と、この偏心軸33体の軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アーム32をボルト32aを以って支持する鉄製の遊星輪34と、偏心軸33に対する遊星輪34の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心軸33の動力を遊星輪34に伝達する磁力継手35と、遊星輪34と偏心軸33との間に介装されたボールベアリング36とを有している。
【0027】偏心軸33は略円柱形状で、中心から偏心量dだけオフセットした位置に散布軸7を挿入するための軸孔33aと、周側面には軸孔33aに達し、締め付けボルト31を螺入するための横ねじ孔33bと、上部中央には縮径突起部33cとを有している。
【0028】遊星輪34は倒立の略有底筒状で、筒内に差し込んだ偏心軸33と筒壁34aの間にはボールベアリング36が介在している。このボールベアリング36は、筒壁34aに嵌る外輪36aと、偏心軸33に嵌る内輪36bと、両輪間に挟まる複数の鋼球36cとから成る。このボールベアリング36は止め輪37によって抜け止めされている。また、偏心軸33も止め輪38によって抜け止めされている。
【0029】磁力継手35は、偏心軸33の縮径突起部33cとその段部に溶接などで固着された原動側の磁石板35aと、これに無限小のクリアランスで相合う従動節の遊星輪34の底面35bとから成る。磁石板35aは、縮径突起部33cに嵌る嵌め孔を持つ鉄製の円環状底板35aaと、縮径突起部33cに隙間を以って嵌る嵌め孔を持ち、環状離散的に穿った6個の孔に小円盤状磁石Mを埋め込んだ孔付き磁性板35abとを溶接などで固着して成る。
【0030】散布軸7が回転すると、偏心軸33が偏心量dを以って偏心回転(公転)する。偏心軸33と遊星輪34とは磁力継手35を介してカップリングしているものの、磁力継手35であるため、スリップ動(脱調)によって、両者間では相対的な逃がし抵抗性自転(空転)が可能となっている。
【0031】原理的には、両者間の摩擦力、遊星輪34及び攪拌アーム32の自重や攪拌アーム32の受ける負荷抵抗が皆無の場合、磁力継手35の微弱な吸着力でも、遊星輪34は相対的な逃がし自転を生じずに偏心軸33と一体的に同期して偏心回転(1公転1自転)するため、図4の攪拌アーム32の点Aの実線軌跡が円弧状であるように、攪拌アーム32が散布軸7を略旋回中心とする旋回運動を行うものである。しかし、現実には、摩擦力や遊星輪34及び攪拌アーム32の自重が存在することは勿論、攪拌アーム32には貯留肥料から負荷抵抗や空気抵抗を受けているため、遊星輪34にかかる総負荷抵抗が磁力継手35の吸着力を超えるほどになると、遊星輪34は偏心軸33との公転に随伴して公転するも、遊星輪34が徐々に逃がし自転するため、その逃がし回り量に応じただけ攪拌アーム32の旋回速度が遅くなる分、逃がし回り量に見合うだけの円振動(振動半径は偏心量d)の軌跡長が攪拌アーム32に付加されることになり、図4の破線軌跡で示すように、肥料攪拌装置30は、タンク25内の散布軸7に対して偏心量dで偏心回転する。
【0032】過負荷状態の場合には、磁力継手35に引きずりのない完全なスリップ動が生じるため、攪拌アーム32の旋回運動が停止し、円振動の振動数が最大になる。この最大振動数は遊星輪34の公転周波数である。
【0033】肥料攪拌装置30は、散布軸7とは別系統の動力を受けて励振するのではなく、また振動モータ等の自励振動手段でもなく、散布軸7の従動回転を基に攪拌アーム32の旋回運動成分と攪拌アーム32自身の循環軌跡運動成分との合成運動たる振動旋回運動に変換するものであるため、散布軸7と攪拌アーム32との間に設けることができ、その余に部材を配する必要がないので、攪拌装置30の構成の簡略化とコンパクト化を実現できる。それ故、タンク25内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化が可能な肥料散布機を提供できる。
【0034】磁力継手35は、磁性体の遊星輪34自身を従動節として利用しているので、部品点数の削減に寄与し、低コスト化を図ることができる。また、磁力継手35では、孔付き磁性板35abの穴に磁石Mを埋め込んだものであるから、隣接する穴同士の間の磁性材質にはみ出し磁路が至近形成されるため、磁路の長さが最短化し、吸着力が増強し、閾値トルクを高くできる。また、孔に埋め込んだ磁石Mが孔付き磁性板35abの表面より若干突出した状態に位置決め設定し、試験稼動を行うと、必然的に、突出した磁石Mの表面が摩滅平坦化し、相手側の遊星輪34の底面35bとの無限小間隙を形成するので、好都合である。
【0035】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明に係る肥料散布機は、攪拌アームを旋回運動させるだけではなく、この旋回運動に攪拌アーム自身の円振動などの循環軌跡運動を重畳させた合成運動たる振動旋回を行わしめる励振式動力伝達手段を設けたことを特徴とするため、次のような効果を奏する。
【0036】(1) 攪拌アームは励振式動力伝達手段の運動変換作用によって旋回運動すると同時に循環軌跡運動を行うため、攪拌アームの旋回運動による攪拌で比較的湿潤性のある貯留肥料に空き間が生じても、攪拌アームの小刻みな循環軌跡運動によって貯留肥料を加振するので、空き間周囲の肥料の崩落を誘発でき、連続して肥料を攪拌することができる。この励振式動力伝達手段は、タンク内縦従動軸とは別系統の動力を受けて励振するのではなく、また振動モータ等の自励振動手段でもなく、タンク内縦従動軸の従動回転を基に攪拌アームの旋回運動成分と攪拌アーム自身の循環軌跡運動成分との合成運動たる振動旋回運動に変換するものであるため、タンク内縦従動軸と攪拌アームとの間に設けることができ、その余に部材を配する必要がないので、攪拌手段の構成の簡略化とコンパクト化を実現できる。それ故、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化が可能な肥料散布機を提供できる。
【0037】(2) 励振式動力伝達手段が貯留肥料により攪拌アームが受ける負荷抵抗の度合いに応じて旋回運動への伝達動力を減じると共に相対的に循環軌跡運動への伝達動力を増す自動逆変手段である場合、過負荷状態では旋回運動が減退するも振動作用が活性化し、過負荷状態が解消すると振動作用が減退するも旋回運動が旺盛化するため、攪拌アームは殆ど旋回運動を停止することなく、遅速変化しながらも連続旋回し、比較的湿潤性のある肥料でもブリッジ現象を生じさせることなく、攪拌可能であって肥料落下を持続させることができる。
【0038】(3) 自動逆変手段としては、タンク内縦従軸に対し所定の偏心量を以って偏心回転する偏心体と、この偏心体の軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アームを支持する遊星体と、偏心体に対する遊星体の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心体の動力を遊星体に伝達する継手と、を有する構成を採用できる。攪拌アームの円振動は負荷抵抗の増減分に応じて振動数が自動的に増減し、円振動勢力の増減が起こるため、間断なく円滑に肥料を突き崩すことができる。継手としては耐久性の点から磁力継手が適切である。
【0039】(4) 磁力継手は偏心体と遊星体との軸方向法線の突合せ面の間に設けることが好ましい。着磁処理等の製作上の容易化を実現できる。
【0040】(5) 磁力継手は、偏心体及び遊星体のいずれか一方を磁性材で形成して成り、その他方の突合せ面上に固定すると共に、一方の突合せ面と相合せて成る磁石板を有する。偏心体又は遊星体を磁力継手の従動節又は従動節として利用しているので、部品点数の削減に寄与し、低コスト化を図ることができる。
【0041】(6) 磁力継手の磁石板としては、その回転中心の周りに環状離散的に穿った複数の穴を持つ穴付き磁性板と、その穴に埋め込んだ磁石と、を有する。ヨーク板として機能する穴付き磁性材を用いると、隣接する穴同士の間の磁性材質にはみ出し磁路が至近形成されるため、磁路の長さが最短化し、吸着力が増強し、閾値トルクを高くできる。また、穴に埋め込んだ磁石が穴付き磁性板の表面より若干突出した状態に位置決め設定し、試験稼動を行うと、必然的に、突出した磁石の表面が摩滅平坦化し、相手側の磁性材との無限小間隙を形成するので、好都合である。
【出願人】 【識別番号】000104434
【氏名又は名称】カンリウ工業株式会社
【出願日】 平成11年12月21日(1999.12.21)
【代理人】 【識別番号】100089945
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
【公開番号】 特開2001−178217(P2001−178217A)
【公開日】 平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願番号】 特願平11−363295