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【発明の名称】 ギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置。
【発明者】 【氏名】大内 久平

【氏名】三木 博幸

【要約】 【課題】部品の簡素化を図りながら、バックラッシュを有効に防止することのできる装置を提供することを目的とする。

【解決手段】遊星ギヤ51に隣接して、補助ギヤ部材54を設け、補助ギヤ部材54の周縁部に、一部切り欠き部を形成するとともに、更に、内部側に切り欠き部を大きく設けて、周縁部に片持ち部54Aに形成して、この片持ち部54Aを縮径方向に弾性変形可能に構成する。片持ち部54Aの外縁に大径歯部54aを設け、非咬合状態で大径歯部54aの歯先円を遊星ギヤ51の歯先円より大きくなるように形成するとともに、第2中間ギヤ50と咬合した状態で縮径方向に弾性変形して、バックラッシュの発生を阻止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 相手側ギヤと噛合い状態にある伝動ギヤを装着する伝動軸に、前記相手側ギヤに噛合する補助ギヤ部材を設けるとともに、前記補助ギヤ部材の周縁部に、非噛合い状態で前記伝動ギヤの歯先円より大径の歯先を有しかつ前記相手側ギヤとの噛合い状態で縮径方向に弾性変形する大径歯部を形成してあるギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置。
【請求項2】 前記補助ギヤ部材の周縁部を切り欠き、その切り欠いて形成した周縁部の一部を片持ち部分に形成し、その片持ち部分を径方向に弾性変形自在でかつ片持ち部分に前記大径歯部を形成してある請求項1記載のギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置。
【請求項3】 前記補助ギヤ部材の周縁部における片持ち部分以外の部分には、非噛合い状態において、前記伝動ギヤと標準寸法を同じくする標準歯部を形成してある請求項2記載のギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上記したバックラッシュ防止装置としては、例えば実開昭62−148013号公報に開示されているように、中間伝動軸に二枚のギヤを重ねあわせて遊嵌し、二枚のギヤの合わせ面に両ギヤを反対方向に回転付勢するバネを設けて、バネを縮める状態で相手側ギヤに咬合させると、バネの付勢力によってバックラッシュを防止する構成を採っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来構成においては、二枚のギヤを必要とするだけでなく、さらに、付勢バネを必要とするだけ、部品点数が多く組付けも難しくなる欠点があった。
【0004】本発明の目的は、バックラッシュを防止しながら、構造が簡単なギヤ式伝動装置におけるバックラッシュ防止装置を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】(構成)請求項1に係る発明は、相手側ギヤと噛合い状態にある伝動ギヤを装着する伝動軸に、前記相手側ギヤに噛合する補助ギヤ部材を設けるとともに、前記補助ギヤ部材の周縁部に、非噛合い状態で前記伝動ギヤの歯先円より大径の歯先を有しかつ前記相手側ギヤとの噛合い状態で縮径方向に弾性変形する大径歯部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】(作用効果) 補助ギヤ部材の大径歯部が、相手側ギアに咬合した状態で、縮径方向に弾性変形しているので、相手側ギヤの歯部に弾性的に係合し、バックラッシュが発生するのを阻止する。そして、大径歯部自体が弾性的に変形するので、従来の構成における付勢バネの機能をも発揮することになり、付勢バネを必要としない。したがって、部品構成が簡素になり、組付け作業も容易になった。
【0007】(構成)請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記補助ギヤ部材の周縁部を切り欠き、その切り欠いて形成した周縁部の一部を片持ち部分に形成し、その片持ち部分を径方向に弾性変形自在でかつ片持ち部分に前記大径歯部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】(作用効果)つまり、大径歯部を弾性変形可能に構成するのに、大径歯部を弾性変形が容易に行える片持ち部分を形成することによって達成したので、ゴム等の弾性部材を使用して大径歯部を形成する場合に比べてかわらない弾性変形量を採ることができ、かつ、大径歯部の材料としても相手側ギヤとの噛合いに耐えられるだけの材料を選定できるよさもある。
【0009】(構成)請求項3に係る発明は、請求項2記載の発明において、前記補助ギヤ部材の周縁部における片持ち部分以外の部分には、非噛合い状態において、前記伝動ギヤと標準寸法を同じくする標準歯部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】(作用効果)つまり、補助ギヤ部材には大径歯部とともに、標準歯部も形成してあるので、例えば、噛合い部で石等をかみ込む等の衝撃が作用した場合には、標準歯部が相手側ギヤとの伝動機能を受け持つので、補助ギヤ部材の破損を回避しながら伝動状態を維持することができるバックラッシュ防止装置を提供する事ができた。
【0011】
【発明の実施の形態】(第1実施例)図1に、農用トラクタの全体側面が示されている。1は走行機体、2は操向車輪、3は駆動車輪、4は操縦部、5はエンジン、6はベルト伝動機構、7はミッションケース、8は後車軸ケース、Aは苗植付装置、10は昇降リンク機構,11は苗のせ台、12はPTO用伝動軸9の動力が入力されるフィードケース 13は植付ケース、Bは回転ケース14と植付アーム15,15とからなるロータリー式の植付機構、16は整地フロートである。
【0012】苗植付装置Aについて説明する。図2に示すように、センターに位置するフィードケース12と、これの左右に配置される植付ケース13,13とは、フィードケース12の下端部から左右に突出した出力軸26を覆う左右の横向き伝動ケース17,17を介して連結一体化されている。図2及び図3に示すように、フィードケース12には、苗のせ台11に備えられた縦送り機構25を駆動するために、左右揺動式の駆動アーム27a,27aを備えた縦送り軸27と、苗のせ台11を走行機体1に対して左右方向に往復横送り駆動するための螺旋軸22が備えられている。図中18は、横送り用の螺旋軸22への動力を変速する変速装置であり、図中32は、植付クラッチである。
【0013】フィードケース12内の伝動構造について更に詳述する。図3に示すように、PTO用伝動軸9とカップリング19によって連結された入力用筒軸20をフィードケース12の前面に挿入するとともに、入力用筒軸20に直交する状態で植付用伝動軸21を架設し、入力用筒軸20の内端と植付用伝動軸21とに亘ってベベルギヤ伝動機構24を設け、フィードケース12への動力伝達を行っている。植付用伝動軸21には、ベベルギヤ伝動機構24の入力用ベベルギヤ24Aを遊嵌するとともに、この入力用ベベルギヤ24Aに対向する状態でクラッチスリーブ28を植付用伝動軸21に取り付け、クラッチスリーブ28を入力用ベベルギヤ24Aと係合離脱するように植付用伝動軸21の軸心方向にスライド移動可能にかつキーによって一体回転可能に構成してある。つまり、入力用ベベルギヤ24Aとクラッチスリーブ28とで、入力用ベベルギヤ24Aから植付用伝動軸21への動力伝達を入り切りする植付クラッチ32を構成してある。
【0014】植付用伝動軸21と平行に前記した出力軸26を設け、両軸21,26に亘ってチェーン伝動機構31を架設して、植付ケース13への伝動構造を構成する。一方、両軸21,26と平行に前記した螺旋軸22を架設するとともに、この螺旋軸22のフィードケース12より突出した部分には螺旋溝が刻設されており、図示してはないが苗のせ台11を駆動する連結フレーム内に設けたコマ部材と螺旋溝との係合作用によって、苗のせ台11を一定ストロークで往復横移動させるように構成してある。植付用伝動軸21と螺旋軸22とを他端側のフィードケース側面より突出させるとともに、両側端に亘って前記したギヤ減速式の横送り軸変速装置18を装着してあり、螺旋軸22への動力伝達を行い、変速用のギヤ18Aを覆うカバー30を取り外して異なる減速比のギヤ18Aと取り替えることができるように構成してある。
【0015】図3及び図4に示すように、植付用伝動軸21より後方側に前記した縦送り軸27を架設するとともに、縦送り軸27におけるフィードケース12内に位置する部分に被動アーム33を固着する。一方、螺旋軸22における前記被動アーム33と対向する位置に回転駆動アーム22Aを設けてあり、回転駆動アーム22Aは螺旋軸22とともに連続回転するとともに、回転駆動アーム22Aの回転領域の一部に干渉する状態にある被動アーム33が回転駆動アーム22Aとの接当によって一定回転角だけ揺動駆動されるように成っている。被動アーム33には戻り付勢バネ34が設けてあり、一定の待機位置に戻るように付勢されている。縦送り軸27のおけるフィードケース12より突出する部分には、前記した駆動アーム27a,27aが設けてあり、後記する縦送りベルト35の揺動駆動アーム36を接当駆動するように構成してある。
【0016】次に、縦送り機構25の構造について説明する。図4に示すように、苗のせ台11の裏面に下側駆動プーリ37Aとそれより上方側に上側プーリを設け、両プーリ37Aに亘って縦送りベルト35を巻回してある。下側駆動プーリー37Aを駆動する揺動駆動アーム36は、横向きに移動する苗のせ台11が移動ストローク端に至ると、駆動アーム27aと位相が合致して一定回転角度だけ駆動される。これによって、下側駆動プーリー37Aを介して縦送りベルト35を駆動し、マット状苗を苗取り出し口に向けて一定量だけ引き降ろすように構成してある。
【0017】次に、苗取り量調節構造について説明する。図4に示すように、苗のせ台11の下端部に苗のせ台11の横向き移動時に、マット状苗の下端面を受け止めながら、マット状苗の横移動を案内する摺動レール38を設けるとともに、摺動レール38の下面に支持ロッド39を設けてある。そして、この支持ロッド39を、植付ケース13に対して上下スライド自在に支持するとともに、この支持ロッド39を上下アーム40でスライド駆動するようにし、この上下アーム40を苗取り量調節レバー41で調節設定するようにしてある。つまり、苗のせ台11全体が摺動レール38とともに、上下方向に位置調節可能であり、苗のせ台11に載置されたマット状苗の下端部と植付爪15Aの苗取り軌跡との干渉量を調節することによって苗取り量を変更できるように構成してある。つまり、苗のせ台11を上方側に位置させると、苗取り量が少なくなり、苗のせ台11を下方に位置させると苗取り量を大きくできる。
【0018】次に、苗取り量調節構造と縦送り量との対応関係について説明する。図4(イ),(ロ)に示すように、苗取り量調節を行うと、縦送り機構25は苗のせ台11とともに上下移動するので、下側プーリー37Aを駆動する揺動駆動アーム36も上下移動し、揺動駆動アーム36の揺動開始位置が変動する。一方、揺動駆動アーム36を駆動する駆動アーム27aの揺動開始位置は常に一定位置であるので、図4(ロ)に示すように、苗のせ台11が上方に位置して苗取り量を小さくした場合には、揺動駆動アーム36の揺動量αが小さくなり、苗取り量に対応した縦送り量になる。一方、図4(イ)に示すように、苗のせ台11を下方に位置させて苗のせ台取り量を大きくした場合には、揺動駆動アーム36の揺動量βが大きくなり、縦送り量も大きくなる。このように、縦送り量と苗取り量とがバランスを取れた状態になっている。
【0019】左右の横向き伝動ケース17,17は、パイプ17a,17aの左右両端夫々にフランジ17b,17bを溶着して構成され、フィードケース12側面の取付座12a及び前後向き伝動ケース部13側面の取付座13a夫々にボルト止めされる。図2に示すように、植付ケース13は、フィードケース12からの出力軸26を内嵌して伝動連結されている駆動スプロケット20と、植付機構Bに動力伝達する従動軸29に装着されている従動スプロケット19とに亘ってチェーン44を巻回して、植付機構Bへの伝動構造を構成している。図2に示すように、植付機構Bは、従動軸29に取付けられて一体回転される回転ケース14と、回転ケース14内に装備してある遊星ギヤ機構との協動によって、植付爪15Aを軌跡に沿って循環移動させるように構成してある。
【0020】次に、ロータリー式植付機構Bの駆動構造について説明する。図5に示すように、植付ケース13から延出された従動軸29の突出部分に、まず軸承部43を外嵌するとともに、軸承部43をテーパーピン47で従動軸29に連結し、さらに、植付ケース13の筒ボス13aにベアリング45を外嵌するとともにこのベアリング45に回転ケース14を相対回転可能に装着して、図6に示すように、回転ケース14を第1軸心X1周りで回転方向Fに回転可能に取り付ける。回転ケース14の長手方向端部に、植付爪15Aや苗押出機構E等を備えた植付アーム15を第2軸心X2周りで回転するように設けてある。
【0021】回転ケース14内に装備する遊星ギヤ機構を含む連動伝達機構Sを次のように構成する。従動軸29に対して太陽ギヤ42を遊嵌するとともに、その太陽ギャ42を植付ケース13の筒ボス13aと係合爪bにより咬合させて、相対回転不能に設けてある。第1軸心X1と第2軸心X2との間に、互いに偏心する状態にある第3軸心X3と第4軸心X4との二つの軸心を持つ軸23を支承してある。この軸23には、第3軸心X3を有する第1中間ギヤ49を一体回転可能に装着するとともに、第4軸心X4を有する第2中間ギヤ50を遊嵌してあり、第1中間ギヤ49より第2中間ギヤ50へ不等速動力を伝達するために、偏心クランク式連動機構Gを設けてある。第2軸心X2位置に回転連動軸48が枢支してあり、この回転連動軸48に第2中間ギヤ50と咬合する遊星ギヤ51を一体回転自在に装着してあり、回転連動軸48の回転ケース14より突出する先端部にフランジ部を介して植付アーム15を第2軸心X周りで回転自在に取付けてある。
【0022】偏心クランク式連動機構Gについて説明する。図5及び6に示すように、回転ケース14が回転すると、太陽ギヤ42が相対固定状態にあるので、第1中間ギヤ49が第3軸心X3周りで自転する。第1中間ギヤ49と第2中間ギヤ50とには、互いのギヤ49,50の半径方向にスライド移動可能なクランクピン52が係合しており、第1中間ギヤ49とともに回転しながら半径方向にスライド移動するクランクピン52が第2中間ギヤ50を駆動する。クランクピン52はカム溝53内を移動するのは、第1中間ギヤ49と第2中間ギヤ50との偏心に基づくためである。従って、第1中間ギヤ49が等速で回転駆動されているが、第2中間ギヤ50はクランクピン52が半径方向の大径側に位置するほど高速の動力を受け取るので、伝達速度が速くなる不等速回転運動を行う。
【0023】以上のような、構成によって回転ケース14が回転するに連れて、植付アーム15が軸心X1周りで公転運動を行いながら、公転回転方向とは反対方向に軸心X2周りで自転することになり、太陽ギヤ42と植付アーム15とを同方向に回転させる連動伝達機構Sと称する。
【0024】次に、回転伝動ケース14内の連動伝達機構Sに対するバックラッシュ防止機構について説明する。図5に示すように、遊星ギヤ51と隣接して補助ギヤ部材54を配置し、補助ギヤ部材54を回転連動軸48に遊星ギヤ51と同様にスプライン外嵌してある。図7に示すように、補助ギヤ部材54は、SK材等の強靭な材料でディスク状に形成されたもので、周縁部の一部を切り欠くとともに、周縁部の内側に切り欠き部を延長して、周縁部を片持ち状態に形成している。そして、左右両側部に前記した片持ち部分54A,54Aを配置し、片持ち部分54A,54Aに挟まれて通常の円盤部54Bを配置して、夫々片持ち部分54A,54Bと円盤部54Bとに歯部54a,54bを形成してある。
【0025】片持ち部分54Aは、径方向に対して弾性変形可能であり、かつ、この片持ち部分の外縁に大径歯部54aを形成してある。円盤部54Bの外縁に遊星ギヤ51の歯部とモジュール等の基準寸法を同じくする標準歯部54bを形成してある。この大径歯部54aの歯先径は第2中間ギヤと噛合しない自由状態で、標準歯部54bの歯先円より大であり、第2中間ギヤ50と咬合する状態で、縮小する方向に押し込まれる。これによって、大径歯部54aは外向きに弾性復帰するように、第2中間ギヤ50に噛合い、第2中間ギヤ50とのバックラッシュの発生を阻止する。
【0026】〔別実施形態〕本発明は以下のような形態で実施することもできる。
・補助ギヤ部材を軸57に取付ける場合でもよい。つまり、図7に示すように、回転連動軸48にスプライン外嵌した補助ギヤ部材54と同様の歯部54a,54bを形成するとともに、図8に示すように、軸57に対して遊嵌する孔を形成した補助ギヤ部材55を軸57に外嵌する構成を採ってもよい。この補助ギヤ部材55にも、図示してないが、補助ギヤ部材54と同様に、大径歯部と標準歯部とを形成し、大径歯部が太陽ギヤ42と遊星ギヤ51とに同時に咬合するように構成してもよい。尚、この場合の軸57は偏心軸ではなく直線軸であり、中間ギヤ56も単一のものであり、太陽ギヤ42と遊星ギヤ51とに咬合するものである。ただし、偏心クランク式連動機構Gが備えられていないので、偏心ギヤ又は非円形ギヤを採用する必要がある。
・補助ギヤ部材54に使用する材質としては、金属材料以外に樹脂材料を使用してもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−169629(P2001−169629A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−359125