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【発明の名称】 高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置およびそれを用いた種子の発芽率向上方法
【発明者】 【氏名】長谷川 秀翁

【氏名】田村 敏行

【氏名】阿萬 誉

【氏名】多湖 巌

【氏名】武田 宏治

【要約】 【課題】植物の種子を例えば常温、常圧下で処理して種子の発芽率を向上させるための装置および種子の発芽率を向上させる方法を提供する。

【解決手段】高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極と接地側電極を有する処理装置とを備え、前記処理装置の前記電極間に種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させる種子の発芽率向上用装置を用いる。前記電極間に種子を介在させて、パルスストリーマ放電を発生させて、種子を所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極と接地側電極を有する処理装置とを備え、前記処理装置の前記電極間に種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させることを特徴とする高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置。
【請求項2】 請求項1記載の装置の放電側電極と接地側電極間に種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させて、種子を所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させることを特徴とする高電圧を利用した種子の発芽率向上方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置およびそれを用いた種子の発芽率向上方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】植物の種子は親の植物から散布された時には、種子は乾燥した状態にあり、適切な条件が整うと、種子は乾燥した細胞が膨張するまで吸水して代謝活動がおこる。呼吸やエネルギー生成を行い細胞分裂や細胞伸長がはじまり、幼根が外種皮を押して動かし土壌の下方に成長を始め、そして幼根は水や無機塩類を吸収する根毛を形成し、幼根が定着すると幼芽がではじめる(発芽の始まり)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし生きている種子の中には適当な条件にあるにもかかわらず、発芽しない種子が存在する。本発明の第1の目的は、生きているにもかかわらず発芽しない植物の種子も発芽するようにして種子の発芽率を容易に向上する装置を提供することであり、本発明の第2の目的はこの装置を用いて種子の前処理や後処理を行うことなく植物の種子の発芽率を向上させる安全性の高い方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は鋭意研究した結果、放電側電極と接地側電極の間に植物の種子を介在させて、この電極間で例えば常温、常圧下でパルスストリーマ放電を発生させて種子を処理することにより課題を解決できることを見出し、この発明を完成するに到った。
【0005】上記課題を解決するため請求項1の発明は、高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極と接地側電極を有する処理装置とを備え、前記処理装置の前記電極間に種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させることを特徴とする高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置に関するものである。
【0006】請求項2の発明は、請求項1記載の装置の放電側電極と接地側電極間に種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させて、種子を所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させることを特徴とする高電圧を利用した種子の発芽率向上方法に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明においては、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させることにより種子を処理する。例えば、多数配設された針状電極からなる放電側電極に、立ち上がり時間数10nS(ナノ秒)、持続時間1μS(マイクロ秒)程度以下のパルス高電圧を印加すると、放電側電極から線状に伸びるストリーマー放電が発生し、電極間の広い範囲をプラズマ化でき、前記電極間に介在させた種子を処理できる。直流電圧印加時のコロナ放電では放電側電極のごく近傍が発光するのみであるが、パルスストリーマ放電でははるかに広い領域をプラズマ化できる。これは、パルスストリーマ放電では直流コロナ放電でのスパーク電圧より高い電圧が瞬間的に印加でき高電界領域を広くできること、また直流コロナではイオン空間電荷により放電側電極近傍の電離域の電界強度が低下するため放電が抑制されるが、パルスストリーマ放電では電圧の立ち上がりが急峻なため空間電荷電界による放電抑制がわずかであることなどによるものと考えられる。
【0008】以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態における高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置の概要を示す構成図である。図1において、本発明の種子の発芽率向上用装置1は、高電圧を発生する電源部2と、発生した高電圧を印加する放電側電極となる一定の間隔dを置いて多数配設された針状電極(図2参照。例えばステンレス製針状電極で先端が0.5mmφと非常に細いもの)3と、接地側電極となる平板状電極4を有する処理装置5とを備えている。電源部2において、電源21(AC200V、50Hz)から入力された電圧をスライダック22および高電圧トランス23にて昇圧し、全波整流ブリッジ24にて整流する。その後、抵抗25にて電流値を下げ、コンデンサ26を充電する。コンデンサ26に充電された電気エネルギーは、ギャップ27を通して瞬間的に放電され、パルス電圧となって処理槽5の針状電極3と平板状電極4間に印加される。28は抵抗、29は接地手段である。
【0009】図2は、図1に示した針状電極3と平板状電極4の説明図である。処理装置5中の平板状電極4の上にセラミック板(Al23 )6が配設されており、針状電極3と平板状電極4上のセラミック板6との間に植物の種子(例えば、玄米、野菜や果物の種子、花の種子など)を介在させて処理する。針状電極3と平板状電極4との間隔は特に限定されないが、通常10mm〜50mmである。
【0010】本発明の種子の発芽率向上用装置1において、電源部2において発生した高電圧は、パルス電圧(例えば、エネルギー波を1秒間に約100回発生させる)となって処理槽5の針状電極3と平板状電極4間に印加され、常温、常圧下、針状電極3と平板状電極4間でパルスストリーマ放電を発生させることにより両電極間に介在させた植物の種子を適宜の時間、処理する。植物の種子の種類によって、種子処理量、温度、圧力、湿度、処理時間、処理エネルギーなどの処理条件を変化させることが好ましい。植物の種子は処理前に泥や金属などを除去するなどを行う処理以外の特別の処理をする必要はなく、また処理後において特別の処理をする必要がない。
【0011】針状電極3は多数の針状電極を所定の一定の間隔dを置いて配設して、針状電極3と平板状電極4間に介在させた種子を広範囲にわたってむらなく均一に処理するようにした。多数の針状電極を用いる替わりに1つの針状電極を用いた場合は針状電極3と平板状電極4間に介在させた種子を広範囲にわたってむらなく均一に処理できない恐れがある。印加電圧、パルス数、投入エネルギー(cal/cm3 )、電界強度などは植物の種子の種類、形態などによって異なるので間隔dは特に限定されず、種子の発芽率が向上するように、適宜選定して決めるのが好ましい。しかし、針状電極3と平板状電極4間に介在させた種子を広範囲にわたってむらなく均一に処理するには針状電極の間隔dは通常は、10mmから80mm未満、好ましくは20mmから60mm、特に好ましくは25mmから30mmの範囲から選ばれることが望ましい。
【0012】一般的には、印加電圧、パルス数、投入エネルギー、電界強度ともに大きい方が処理に有効であり、またパルス数よりも印加電圧が高い方が有効であり、同一投入エネルギーにおいては電界強度が高い方が有効である。
【0013】図3は本発明の他の実施形態における高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置の概要を示す構成図である。図3において、本発明の種子の発芽率向上用装置1Aの処理装置5Aは、高電圧を発生する電源部2と、発生した高電圧を印加する多数の針状電極を所定の間隔dを置いて配設した図示しない針状電極3と、図示しないセラミック板6および平板状電極4を設けた電極部分7を備えている。図示しない平板状電極4は接地手段41によって接地されている。21は電源(AC200V、50Hz)である。上述した種子の発芽率向上用装置を作動させ、玄米8を処理装置5Aの上部の入口51から内部に供給して、玄米8を電極部分7に入れ、図示しない針状電極3と平板状電極4間でパルスストリーマ放電により適宜の時間、処理する。処理された玄米9は、処理装置5Aの下部の出口52から外部へ排出して、容器10へ入れる。このようにして玄米8を常温、常圧下で連続的にあるいは半連続的にあるいはバッチ方式で均一に容易に処理することができる。
【0014】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0015】
【実施例】次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
(実施例1)図3に示した本発明の種子の発芽率向上用装置を用いてカイワレダイコンの種子およびもみをとった玄米を下記の処理条件で常温、常圧下で処理し、処理した種子を下記の発芽条件において発芽率を求めた。
処理条件:印加電圧:50kv(可能な範囲:50〜60kv)
処理時間:10秒、30秒、1分、3分、5分、10分、15分パルス立ち上がり時間:40〜50nS(可能な範囲:30〜100nS)
パルス幅:80〜100nS(可能な範囲:40〜400nS)
電極間距離:38mm(可能な範囲:10〜50mm)
種子の処理量:50gおよび100g発芽条件:25℃にて、直径150mmΦのシャーレに湿らせたガーゼを敷き、ガーゼが乾燥しない程度に水分を補給した。その上に種子が重ならないように播き、48時間以内に2mm以上の芽がでたものを発芽とした。試験結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】各データは18検体の平均であり、各データの数値は各データのそれぞれの数値に対して±1%以内であった。表1から、カイワレダイコンの種子および玄米ともに電極間でパルスストリーマ放電を発生させて、所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させることによって発芽率が向上することが判る。
【0018】
【発明の効果】本発明の高電圧を利用した種子の発芽率向上用装置は、高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極と接地側電極を有する処理装置とを備えた簡単な構成からなり、前記処理装置の前記電極間に植物の種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させて、容易に種子の発芽率を向上できる。
【0019】本発明の高電圧を利用した種子の発芽率向上方法により、前記処理装置の前記電極間に植物の種子を介在させて、前記電極間でパルスストリーマ放電を発生させて、例えば常温、常圧下で所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させることにより容易に種子の発芽率を向上できる。種子の特別な前処理や後処理が不要であり、安全性が高い。
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
【公開番号】 特開2001−136812(P2001−136812A)
【公開日】 平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願番号】 特願平11−326808