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【発明の名称】 播種用トラクタ及びこれに使用する播種装置
【発明者】 【氏名】橋本 清文

【氏名】小西 雪路

【氏名】厚海 昭文

【要約】 【課題】光発芽方式による新たな播種装置を提供する。

【解決手段】土壌を耕運しつつ播種する播種用トラクタであって、少なくとも、回転式鋤刃(10)を備えた耕耘手段(1)と、該耕耘手段(1)にて耕された土壌を畝立てする畝立手段(2)と、該畝立手段(2)にて形成された畝部(11)の表面に所定間隔で所定量の種子(20)を播種する播種手段(3)と、該畝部表面の播種部を転動して種子(20)を地表面に沈圧する押えローラ(4)とを具備し、これら耕耘手段,畝立手段,播種手段及び押えローラを、自走式車体に装着してなるもの。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 土壌を耕耘しつつ播種する播種用トラクタであって、少なくとも、回転式鋤刃(10)を備えた耕耘手段(1)と、該耕耘手段(1)にて耕された土壌を畝立てする畝立手段(2)と、該畝立手段(2)にて形成された畝部(11)の表面に所定間隔で所定量の種子(20)を播種する播種手段(3)と、該畝部表面の播種部を転動して種子(20)を地表面に沈圧する押えローラ(4)とを具備し、前記耕耘手段(1),畝立手段(2),播種手段(3)及び押えローラ(4)を、車体に装着してなる事を特徴とする播種用トラクタ【請求項2】 前記畝立手段(2)の後方中央に、前記畝部中央の土壌を左右に排土しつつ中央に中溝(12)を形成する溝切手段(5)が配置され、該中溝(12)によって前記畝部(11)を左右2条の小畝(11a,11b)に区画すると共に、前記中溝(12)内に所定量の有機肥料(13)を撒布する施肥手段(6)が搭載され、且つ少なくとも前記播種手段(3)及び押えローラ(4)が各小畝(11a,11b)毎に対応して、その間隔が調整可能に各1対配置されてなる請求項1に記載の播種用トラクタ【請求項3】 前記施肥手段(6)は、有機肥料(13)を貯留するホッパー(6a)と、該ホッパー下部に配置された肥料排出部材と、該肥料排出部材の下部に配置され前記中溝(12)に該肥料を案内する筒状ガイド部材(6d)とを有してなるものである請求項2に記載の播種用トラクタ【請求項4】 前記有機肥料(13)が、豚糞又は鶏糞の粉砕物の1種以上若しくはこれに植物粉砕物を添加混合した混合物である請求項3に記載の播種用トラクタ【請求項5】 前記播種手段(3)は、播種すべき種子(20)を貯留するホッパー(3a)と、該ホッパー下部に配置され且つ間欠的に種子を排出する回転式種子排出部材(3b)と、該回転式種子排出部材の下部に配置され前記畝部表面の播種位置近傍に前記種子を案内する筒状ガイド部材(3c)と、前記播種位置の前方及び側方を覆う遮蔽部材(3d)とからなるものである請求項1乃至4のいずれかに記載の播種用トラクタ【請求項6】 前記播種手段(3)における回転式種子排出部材(3b)は1回の種子の排出量が、発芽後に間引きを必要としない程度の少量の種子を排出する様に構成されている請求項5に記載の播種用トラクタ【請求項7】 前記播種手段(3)の後方に、該播種部に所定量の農薬を撒布する投薬手段(7)を配置してなる請求項1乃至6のいずれかに記載の播種用トラクタ【請求項8】 前記投薬手段(7)は、粒状の農薬(21)を貯留するホッパー(7a)と、該ホッパー下部に配置された回転式農薬排出部材(7b)と、該回転式農薬排出部材の下部に配置され且つ前記播種位置近傍に該農薬を案内する筒状ガイド部材(7c)とを有してなり、該筒状ガイド部材の先端は前記播種位置と同位置又はその近傍となる様に配置されている請求項7に記載の播種用トラクタ【請求項9】 前記播種手段(3)の前方に、前記畝部上面を転動し且つ外周面に複数の突起(8a)を有する転動ローラ(8)を有し、該ローラ(8)と同軸に配置した第一歯車(13)と前記播種手段(3)の回転式種子排出部材(3b)と同軸に配置された第二歯車(14)とをチェーン(15)で連結する事により、前記転動ローラ(8)の回転力によって前記播種手段の回転式種子排出部材(3b)を回転させて種子(20)を排出する様にしてなる請求項1乃至8のいずれかに記載の播種用トラクタ【請求項10】 前記投薬手段(7)の回転式農薬排出部材(7b)と同軸に第三歯車(16)を配置し、前記播種手段(3)の前記第二歯車(14)と同軸に第四歯車(18)を配置し、該第四歯車(18)と前記第三歯車(16)とをチェーン(17)で連結する事により、前記播種手段(3)の回転式種排出部材(3b)と該投薬手段(7)の回転式農薬排出部材(7b)とが同期して回転する様にしてなる請求項8に記載の播種用トラクタ【請求項11】 前記投薬手段(7)の回転式農薬排出部材(7b)と同軸に第三歯車(16)を配置し、該第三歯車(16)と前記転動ローラ(8)の第一歯車(13)とを前記播種手段(3)の前記第二歯車(14)を介してチェーンで連結する事により、前記播種手段の回転式種子排出部材(3b)と該投薬手段(7)の回転式農薬排出部材(7b)とが同期して回転する様にしてなる請求項8に記載の播種用トラクタ【請求項12】 前記押えローラ(4)の後方又は該押えローラ(4)と播種手段(3)との間に、前記播種した種子(20)の上面に植物粉砕物を散布する第二施肥手段を配置してなる請求項1乃至11のいずれかに記載の播種用トラクタ【請求項13】 耕耘された土壌を畝立てする畝立手段(2)と、該畝立手段(2)にて形成された畝部(11)の表面に所定間隔で所定量の種子(20)を播種する播種手段(3)と、該畝部表面の播種部を転動して種子(20)を地表面に沈圧する押えローラ(4)とを具備し、前記畝立手段(2),播種手段(3)及び押えローラ(4)が、保持部材(31,32,34,35)によって一体的に保持され、該保持部材を介してトラクタに装着可能とされている事を特徴とする播種装置【請求項14】 前記トラクタは、耕耘手段(1)を備えており、前記畝立手段(2)は、該耕耘手段(1)によって耕耘された土壌を畝立てするものである請求項13に記載の播種装置【請求項15】 前記畝立手段(2)の後方中央に、前記畝部中央の土壌を左右に排土しつつ中央に中溝(12)を形成する溝切手段(5)が前記保持部材(32)に保持され、該中溝(12)によって前記畝部(11)を左右2条の小畝(11a,11b)に区画すると共に、該中溝(12)内に所定量の有機肥料(13)を撒布する施肥手段(6)が前記保持部材に保持され、且つ少なくとも前記播種手段(3)及び押えローラ(4)が各小畝(11a,11b)毎に対応して、その間隔が調整可能に各1対配置されてなる請求項13又は14に記載の播種装置【請求項16】 前記施肥手段(6)は、有機肥料(13)を貯留するホッパー(6a)と、該ホッパー下部に配置された肥料排出部材と、該肥料排出部材の下部に配置され前記中溝(12)に該肥料を案内する筒状ガイド部材(6d)とを有してなるものである請求項15に記載の播種用トラクタ【請求項17】前記播種手段(3)は、播種すべき種子(20)を貯留するホッパー(3a)と、該ホッパー下部に配置され且つ間欠的に種子を排出する回転式種子排出部材(3b)と、該回転式種子排出部材の下部に配置され前記畝部表面の播種位置近傍に前記種子を案内する筒状ガイド部材(3c)と、前記播種位置の前方及び側方を覆う遮蔽部材(3d)とからなるものである請求項13乃至16のいずれかに記載の播種装置【請求項18】 前記播種手段(3)の後方に、該播種部に所定量の農薬を撒布する投薬手段(7)が、前記保持部材(34)に保持されてなる請求項13乃至17のいずれかに記載の播種装置【請求項19】 前記投薬手段(7)は、粒状の農薬(21)を貯留するホッパー(7a)と、該ホッパー下部に配置された回転式農薬排出部材(7b)と、該回転式農薬排出部材の下部に配置され且つ前記播種位置近傍に該農薬を案内する筒状ガイド部材(7c)とを有してなり、該筒状ガイド部材の先端は前記播種位置と同位置又はその近傍となる様に配置されている請求項18に記載の播種装置【請求項20】 前記播種手段(3)の前方に、前記畝部上面を転動し且つ外周面に複数の突起(8a)を有する転動ローラ(8)を前記保持部材(34,35)に保持させ、該転動ローラ(8)の回転力によって前記播種手段(3)の回転式種子排出部材(3b)を回転させて種子(20)を排出する様にしてなる請求項13乃至19のいずれかに記載の播種装置【請求項21】 前記播種手段(3)の前方に、前記畝部上面を転動し且つ外周面に複数の突起(8a)を有する転動ローラ(8)を前記保持部材(34,35)に保持させ、該転動ローラ(8)の回転力によって前記播種手段(3)の回転式種子排出部材(3b)及び前記投薬手段(7)の回転式農薬排出部材(7b)を同期回転する様にしてなる請求項13乃至19のいずれかに記載の播種装置
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農地に畝立てを行いつつ野菜や穀物等の種子を播種する播種用トラクタと該トラクタに装着して用いられる播種装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、各種機能を備えた農業用トラクタが開発され、農業の省力化に多大に寄与している事は周知の通りである。係る従来の農業用トラクタを用いた播種育苗作業の工程を概観すると次の通りである。
【0003】先ず、第一工程では、荒起こし専用の比較的大きなピッチの回転刃を備えた耕耘機で農地の荒起こしを行って農地を掘り起こしつつ雑草の掘り起こしを行う。次に、第二工程では、比較的小さなピッチの回転刃を備えた培土用回転式耕耘刃と、培土を両側より中央に盛り上げて畝を形成する畝立具とからなる畝立装置をトラクタに搭載し、これによって上記荒起こしした土塊を細かく砕きつつ畝の形成を行う。ここまでの工程は、重労働であるので、農業用トラクタにより機械化されている。
【0004】次に、第三工程として、畝に中溝切りを行って、比較的広幅の畝を中溝を挟んだ2つの小畝を形成し、続いて第四工程では、この小畝の中央に所定量の種子を播く播種作業を行い、次に、第五工程として前記中溝に肥料の散布を行い、更に発芽してくると、第六工程として育成苗を制限するための間引き作業を行う。これら第三〜第六工程の内、第四工程の播種作業は、播種装置を搭載したトラクタによって機械化されている場合もあるが、通常の農家では、これら第三〜第六工程は手作業によって行われるのが普通である。又、第二工程(畝立作業)において幅の狭い畝を形成する場合には、上記第三工程(中溝切り作業)を省略し、第五工程(施肥作業)では、畝間の溝に肥料を撒布する場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の通り、従来の第一工程(荒起こし作業)〜第六工程(間引き作業)において、播種作業前の準備作業としての耕耘作業は機械化されているが、その後の工程は、夫々には単独の機能を有する機器(例えば播種装置)も開発され販売されているものの、耕耘作業に比べて比較的軽作業である事と、全ての機械化には膨大な設備投資が必要となる事から、積極的な機械化が進んでいないのが実情である。
【0006】又、従来の機械化は「農作業を楽にする」との省力,省人化の観点から進められており、「美味しい作物を作る」或いは「収穫量を増やす」という農産物の観点からの機械化思想は存在しない。例えば、上記第二工程(畝立作業)では、培土を盛り上げて畝を形成し、この畝の形状を綺麗に保持させるために、畝の側面を強く押圧して、見た目には綺麗な畝が形成されるが、畝側面からの通気性は悪くなる。又、上記第三工程(中溝切り作業)を行う場合でも、専用の中溝切装置を用いた中溝切りでは、中溝側面は押圧されて型崩れし難い綺麗な筋状の中溝が形成されるが、同様に、通気性は悪くなり、且つ側壁面からの肥料の吸収も悪くなる。
【0007】更に、上記第四工程(播種作業)では、所定量の種子を所定間隔で培土中に埋め込み、その上に土を被せて覆土処理を行う方式が一般的である。即ち、種子は地表面から数cm下の日光を遮られた土中に埋め込まれ、日光を受けることなく土中で発芽する(以下本発明では「暗発芽」と称する)様になっている。この暗発芽の経時的状態を示した図6によって説明すると、先ず種子20は同図(イ)に示す様に培土23中の地下数cm程度の位置に埋め込まれる。次に同図(ロ)に示す様に発芽して種子から発生した幼根53は、土中数cmの位置から下方に向けて成長を開始し、発芽した芽54は、土中数cmの位置から地表に向けて成長を開始する事になる。従って、発芽初期の子葉54は土中にあって光合成を行えないので白色をしており、主として種子が保有していた養分によって成長を開始すると共に、幼根53は、成長のために必要な窒素分を求めて地下深く根を成長させる傾向を有している。
【0008】次に、子葉54は、同図(ハ)に示す様に、地表に現れて双葉55(双子葉植物の場合。以下同じ)となり、一方、幼根53は土中深く成長して主根56となり、同時に多数の側根57を側方に成長させる。次に同図(ニ)に示す様に、更に成長が進むと、新葉59が次々と発生,成長するが、この状態では双葉55は萎れて落葉を待つばかりの状態となる。即ち、双葉55は、成長点60の成長と根56の成長のために自己が保有する養分を供給し、自らは枯れていく運命を辿る事になる。
【0009】ところで、土中の養分は、基本的には地表から浸透してくるものであり、地下から湧き上がってくるものでない。しかしながら、従来の暗発芽では、種子20が地下数cmの所に埋設されて播種されるので、これから生じた根56は、根の本質的特性に従って養分の少ない地下に向けて且つ成長に必要な窒素分を求めて窒素吸収根である側根57が成長する事になる。従って、地表に有機肥料が撒布されても、これが地表近傍の好気性バクテリアで分解され、地表から供給される水分によって土中に運ばれて初めて根毛から吸収される事になるが、根自体は窒素吸収根が優先成長しているので、窒素吸収量が増えて、見た目には背丈も大きく且つ緑の葉を繁らせた茎の順調な成長が観察されるが、果実の生育に必要なリン吸収根の生育が前記窒素吸収根の生育に比べて調和がとれていないのでリン吸収能に劣り、果実の生育面での問題がある。
【0010】一方、上記暗発芽の問題点を解決する発芽方式として、本願発明者等が研究開発し、更にフィールドテストによって実証した「光発芽」方式がある。この光発芽方式は、種子を地表面に播いて日光の存在下で発芽させ、根は、栄養分に富み且つ太陽光中の紫外線による殺菌が行われている地表面近傍で育根させてリン吸収根と窒素吸収根のバランスのとれた根圏を形成させる新規な方式である。この光発芽を、発芽の経時的変化を示した図5によって説明すると、先ず種子20は同図(イ)に示す様に培土23の表面に播かれ、次に同図(ロ)に示す様に、種子20は地表面で発芽して芽54を出すと共に発生した幼根53は、その特性に従って地中に向かって成長を開始する。
【0011】次に、同図(ハ)に示す様に、幼根が地下に向けて成長して主根56を形成するが、その過程で、地表近傍の「酸化層A」(表面から3〜5cm程度の深さの表層部であり、空気の流通も良く且つ太陽光の紫外線により殺菌作用の働いている地表近傍層)では、該主根56から横方向に根毛58が伸長する。この根毛58は、前述の暗発芽では存在しない根毛である。この酸化層Aの部分では、好気性バクテリアが地表面近傍の各種有機物を分解して生成した養分が水と共に最初に浸透してくる部分であり、通気性に富み、雑菌が少なく、燐酸塩等の果実生育に必要な養分に富んだ部分であるから、根毛58は、係る果実育成に不可欠なリンの吸収を効率良く行い得る事になる。尚、主根56は、該酸化層下部の「還元層B」(空気の流通が少なく、主として嫌気性バクテリアによる微生物の分解が進行する部分であって、肥料成分としては窒素成分に富む領域)に向けて下方に伸長し、該還元層B内で主として窒素の吸収を行うための側根57が成長する。因みに、前述の「暗発芽」の場合には、図6に示している通り、通常は酸化層Aと還元層Bの境界近傍に種子20を埋設して発芽させる方式であるから、発芽すると、主根56は真っ直ぐ下方の還元層B内に伸長し、酸化層A内で横方向に伸長する根毛は殆どない。
【0012】更に、光発芽の場合には、発芽で生じた双葉55は、太陽光を浴びて成長する事になるので、双葉55による光合成も開始され、発芽初期の成育に必要な養分は、種子が本来保有していた養分の他に、双葉55の光合成によっても供給される事になる。この結果、同図(ニ)に示している様に、新葉59が次々と発生しても、双葉55は依然として萎れる事なく青々として光合成を継続する事が判明している。この点は、双葉55が早く萎れる暗発芽の場合とは対照的である。
【0013】尚、従来から存在する播種装置は、種子を地中に埋設する方式であって、係る光発芽方式に適する播種装置は存在しなかった。又、従来の播種装置では、播種部一ケ所への播種量が多いので、これらが発芽した後に適当数の苗株のみを残すため、折角発芽した苗を間引くという矛盾した作業も必要となっている。
【0014】本発明は、上記した各種問題点に鑑み、これらの諸問題を解決するものであって、光発芽方式に適した新たな播種装置を提供する事を第一の目的とし、又、前記播種育苗の各種工程を1つの機械で一度に行える様にして、大幅な省力と省人化を可能にした播種トラクタを提供する事を第二の目的とし、更に、前記第六工程(間引き作業)を省略でき、播種量の少ない合理的な播種作業を行える様にする事を第三の目的とし、加えて「美味しく且つ収穫量の多い」という農作物の観点に立った播種用トラクタを提供する事を目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、その基本思想とするところは、種子の発芽を従来の「暗発芽」ではなく、種子を地表面に播種して日光の存在下で発芽させ、根は、栄養分に富み且つ太陽光中の紫外線による殺菌が行われている地表面近傍で育根させてリン吸収根と窒素吸収根のバランスのとれた根圏を形成させる「光発芽」を採用し、この思想を実現するための播種装置に関するものであり、具体的には、少なくとも、回転式鋤刃を備えた耕耘手段と、該耕耘手段にて耕された土壌を畝立てする畝立手段と、該畝立手段にて形成された畝部の表面に所定間隔で播種する播種手段と、該畝部表面の播種部を転動する加圧ローラとを具備し、前記耕耘手段,畝立手段,播種手段及び押えローラを、1つの車体に装着してなる播種用トラクタである。これにより、前述の光発芽方式に不可欠な第二工程(畝立作業)と第四工程(播種作業)を1つのトラクタによって実施でき、しかも、播種手段における播種量を間引きの必要のない程度の量に設定しておけば、前述の第六工程(間引き作業)も省略する事が可能となる。
【0016】又、上記トラクタの好ましい態様としては、前記畝立手段の後方中央に前記畝部中央の土壌を左右に排土しつつ中央に中溝を形成する溝切手段を配置し、該中溝によって前記畝部を左右2条の小畝に区画すると共に、該中溝内に所定量の有機肥料を撒布する施肥手段を搭載する一方、前記播種手段及び押えローラは、各小畝毎に対応して、その間隔が調整可能に各1対配置されてなるものがある。この場合には、前記第三工程(中溝切作業)と第五工程(施肥作業)も同時に1つのトラクタで実施可能となる。
【0017】又、他の実施態様としては、前記播種手段の後方に、播種部に所定量の農薬を撒布する投薬手段を配置することにより、農薬撒布をも含めて同時に実施する事が可能となる。この場合の農薬としては粒状のものが好ましく、しかも、前記播種手段と投薬手段とを同期作動させて、農薬を播種位置又はその近傍に撒布させる様にして、農薬撒布量を軽減する様になすのが好ましい態様である。
【0018】又、前記施肥手段で撒布される肥料を、有機肥料となし、特に、リン成分に富む豚糞,鶏糞の1種以上或いはこれに植物粉砕物を混合した有機肥料を使用するのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る播種用トラクタの一例を示す要部平面図であり、図2は、図1の主要部の左側面図である。図1,2において、自走式トラクタ本体30の後部には、回転刃1aを備えた耕耘手段1が配置され、その後部には一対の板状体からなる畝立手段2が配置され、その後方中央位置に溝切手段5が配置され、更に後方両側には、周囲に突起8aを備えた転動ローラ8,播種手段3,投薬手段7及び押えローラ4が、夫々左右一対配置され、これらは本体30から後方に延出した支持部材31,32及びこれに保持された保持枠34,35によってトラクタ本体30に保持されている。
【0020】前記耕耘手段1は、比較的小ピッチの培土用耕耘刃1aが装備され、車体駆動源からの動力により回転軸1bを回転させて該耕耘刃1aを回転させる事により農地を培土に適する様に細かく耕す役目をなしている。尚、この耕耘手段1による培土用耕耘に先立ち、必要に応じて事前に農地の荒起こしと雑草の掘り起こしを行う事は言うまでもない。
【0021】次に、畝立手段2は、前記耕耘手段1によって細かく耕された培土を、左右一対の作業板2aによって左右から盛り上げて畝を形成すると共に、前記耕耘手段1のカバー1cの下端部に配置された均し板2bによって、畝表面を均一な平面に形成する様にした部材であり、図3に示した様に、一対の畝合24間に比較的広幅の畝11を一条づつ形成していくものである。尚、従来の畝立手段では図4(イ)に示している様に、作業板2aの進行方向(図中矢印の方向)との角度θ1が大きく設定され、周囲の多くの土壌を畝11内に集めて畝の両斜面11cに押圧する事により、見た目には綺麗な畝が形成されるているが、本発明では、同図(ロ)に示している様に作業板2aの角度θ2は比較的小さく設定され(θ2<θ1)、これにより畝斜面11cへの作業板2aの押圧力が小さくなる様に工夫されている。この結果、本発明で使用する畝立手段によって形成された畝の側面は、従来のものに比べて通気性に富んだものとなっている。
【0022】次に、溝切手段5は、前記畝立手段2によって形成された比較的広幅の畝11の中央に浅い中溝12を形成し、広幅の畝11を中溝12を挟んだ左右一対の小畝11a,11bに分割する部材であって、先端が尖った船の如き形状をした排土部材5aを前記支持部材32にボルト等の固定手段33によって保持させたものである。尚、この固定手段33は、排土部材5aの上下方向及び左右方向の位置を適宜調整して固定できる様になっており、これによって中溝12の深さと位置が調整可能となっている。ここでも本発明では、中溝12(図3参照)の両斜面に土壌を押圧して中溝を形成するのではなく、主として中溝形成位置に存在する土壌を両側に排出して中溝12を形成する様に、前記排土部材5aの形状が工夫されている。従って、中溝の両斜面も通気性に富む土壌となっている。
【0023】次に、転動ローラ8,播種手段3,投薬手段7及び押えローラ4は、図2に示す様に、前記支持部材32に固着された左右一対の保持枠34,35によって一体に保持され、各保持枠34の間隔は、保持枠35の支持部材32への装着位置によって自由に調整可能となっている。即ち、保持枠35は支持部材32に対して摺動可能に装着されており、止めネジ36によって位置固定される様になっているので、畝幅と畝面での播種位置に応じて適宜間隔を調整できる様になっている。
【0024】前記転動ローラ8は、保持枠35の下端に配置された回転軸8bを中心に自由回転するローラであり、前記支持部材32からの高さ調整は、留めピン35a等により自由に調整可能となっている。又、転動ローラ8の外表面に突出して複数の突起8aが形成され、図中矢印方向にトラクタが進行すると、該突起8aが培土23中に食い込んでローラ8を回動させる事になる。又、前記回転軸8bには第一歯車13が装着されており、ローラ8の回転と共に回転し、この回転力を該歯車13に装着したチェーン15を介して後述する播種手段3及び投薬手段7の駆動源としている。
【0025】次に、播種手段3は、種子20を貯留するホッパー3aと、該ホッパー下部に配置された回転式の種子排出部材3bと、排出された種子を畝面に落下案内する筒状ガイド部材3cと、畝面に落下中の種子或いは落下した種子20が風で飛ばされない様に播種の周囲を覆う風避けとしての遮蔽部材3dとからなっている。ここで、回転式種子排出部材3bは、前記保持枠34に回転可能に保持された回転軸3eを具備し、該回転軸3eに、外周面に所定間隔で凹部3fが形成された円筒状の回転体からなっており、該回転体の回転により、外周面の凹部3f内に落ち込んだ種子のみを間欠的に排出する様になっている。又、前記回転軸3eには、同軸で第二歯車14が配置され、該第二歯車14は前記転動ローラ8の第一歯車13とチェーン15で連結され、該転動ローラ8の転動に同期して前記種子排出部材3bも回転し、この結果、間欠的に種子が培土面に落下する様になっている。
【0026】次に、投薬手段7は、前記畝表面に落下した種子20の近傍に遅効性の粒状農薬21を撒布するもので、 粒状農薬を貯留するホッパー7aと、該ホッパー下部に配置された回転式の農薬排出部材7bと、排出された農薬21を前記播種手段3の遮蔽部材3dに囲まれている前記播種位置近傍に落下案内する筒状ガイド部材7cとからなっている。ここで、回転式農薬排出部材7bは、保持枠34に回転可能に保持された回転軸7fを具備し、該回転軸7fに、外周面に所定間隔で凹部7dが形成された円筒状の回転体からなっており、該回転体の回転により外周面の凹部7d内に落ち込んだ粒子のみを間欠的に排出する様になっている。又、前記回転軸7fには、同軸で第三歯車16が配置され、該第三歯車16は前記播種手段3の第二歯車14と同軸に配置されている第四歯車18とチェーン17で連結されており、これにより前記転動ローラ8の転動に同期して前記種子排出部材3bと共に該回転式農薬排出部材7bも回転し、この結果、間欠的に粒状農薬が前記播種位置近傍に撒布される様になっている。
【0027】尚、前記回転式農薬排出部材7bの回転方式としては上記の方式の他、転動ローラ8の第一歯車13と前記回転式種子排出部材3bの第二歯車14と前記回転式農薬排出部材7bの第三歯車16とを1連のチェーンで連結して同期回転する様になす事も可能である。又、播種間隔の調整は、前記第一歯車13と第二歯車14との歯車比を適当に調整する事により容易に変更可能である。具体的には、第一歯車13は固定しておき、播種手段3の第二歯車14を取り替える事により行う。この場合に、投薬手段7の農薬撒布間隔と播種間隔は同一でなければならないから、播種間隔を変える場合には、同時に第三歯車16も代える必要がある事は言うまでもない。
【0028】次に、沈圧ローラ4は、前記保持枠34に装着されている回転軸4aに遊嵌されて保持されており、該ローラは畝表面との摩擦抵抗による自由回転する構成となっている。この沈圧ローラ4は、畝表面に単に自然落下した状態にある種子20を、該ローラの重量により押圧して培土面に種子をしっかりと保持させるものであり、播種された種子が風で飛ばされたり、僅かな雨で流されたりするのを防止するものである。尚、沈圧力を高めるには、前記保持枠35と保持枠34との接合部を前記転動ローラ8の回転軸8bによって回動自在に接合する様にしておけば、前記播種手段3と投薬手段7と沈圧ローラ4と保持枠34との総重量が前記転動ローラ8と沈圧ローラ4とによって保持される事になるので、単に沈圧ローラ4の重量のみの場合に比して沈圧力を高くする事が可能となる。
【0029】次に、図1中6は、施肥手段であり、図1では図面が複雑になるので位置のみを点線で示している。この施肥手段6は、播種作業と同時に前記中溝12内に有機肥料13の撒布を行うもので、その構成は前述の播種手段や投薬手段と同様に有機肥料13を貯留するホッパー6aと該肥料の排出機構と該肥料を中溝に案内する筒状ガイド部材6dとからなっている。ここで使用する排出機構は、前述の回転式種子排出部材3bや回転式農薬排出部材7bと同様な構造となし、回転部材を適宜の動力源で回転させることも可能であるが、必ずしも有機肥料は間歇的に撒布する必要はないので、ホッパー6aから排出口及び筒状ガイド部材6dを通して連続的に自由落下させる方式でも構わない。
【0030】この有機肥料としては、豚糞や鶏糞の粉砕物の如き燐酸成分を豊富に含有するものが好ましい。又、この粉砕物に、竹や籾殻や雑草等の植物を、特開平8−253385号公報に記載されている如く、回転スクリューによって加圧しながら粉砕する事により植物繊維が破砕された植物粉砕物を混合したものも好ましい有機肥料である。
【0031】これらの有機肥料は、それ自体では肥料としての即効性はなく、好気性バクテリアによって分解されて初めて有効な肥料となるものであり,その自然分解には数週間を要するので、播種と同時に施肥を行っても、植物が肥料を必要とする時期に分解して地中に浸透し始める事になる。
【0032】更に、図3に示している様に、沈圧した種子20の上面に、上記植物粉砕物25を撒布しておき、該植物粉砕物25の有する適度の保水性により、地表に露出した種子の乾燥を防止するのも好ましい方式であり、播種後の散水頻度を軽減する効果があると共に、該植物粉砕物自体も好気性バクテイアによって分解されて肥料となるので、肥料撒布の手間の軽減も期待される。この意味から、本発明においては、前記沈圧ローラ4の後部に、適宜の第二施肥手段(図示せず)を配置して播種部を該植物粉砕物25で覆う様に撒布する様になすのも好ましい態様である。
【0033】以上の説明は、1つの広畝11の中央に1条の中溝12を形成して左右一対の小畝11a,11bを形成する場合の例であるが、1つの広畝内に2条以上の複数の中溝を形成して3条以上の小畝を形成する事も可能であり、この場合には前記溝切手段5が複数個装着され、同時に転動ローラ8,播種手段3,沈圧ローラ4等も夫々複数ユニット装着される事になる。逆に、中溝を形成せず、1条づつ畝立てして播種作業を行う場合には、前記溝切手段5は不要であり、この場合の施肥手段6は、畝合24に前記有機肥料の撒布を行う事になる。
【0034】又、図面の例では、耕耘手段1,畝立手段2,溝切手段5,転動ローラ8,播種手段3,投薬手段7,沈圧ローラ4及び施肥手段6を一体に装着した播種用トラクタを例示しているが、本発明の意図する前記光発芽方式を実現するための手段として必要不可欠な構成としては、耕耘手段1,畝立手段2,播種手段3と沈圧ローラ4であるから、これらのみを搭載した播種用トラクタを形成する事も簡便な方式である。この場合には、必要に応じて溝切手段5と施肥手段6を搭載したトラクタで溝切と施肥を行い、更に適宜農薬撒布を行う事になる。
【0035】又、前記本発明の播種装置としての基本構成は、畝立手段2,播種手段3と沈圧ローラ4であるから、これらを一体的に保持させて播種装置となし、これを既存のトラクタに装着可能となす事により、耕耘しながら或いは耕耘後の農地に畝立しつつ播種を行う様になす事も可能である。
【0036】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、従来にない光発芽方式に基づく播種を機械的に行う事が可能となるのみならず「美味しい果実」,「収量増加」との新たな観点からの農業機械を出現させるものであり、農業機械における歴史的意義は大きなものがある。
【0037】特に、光発芽方式を機械化できる結果、大規模に光発芽方式による農作物の栽培が可能となり、美味しい果実を大量に生産できる事になる結果、世界的な食料危機が予見される現在において、大いなる福音となる事が期待される。
【0038】更に、肥料として、鶏糞や豚糞等の伝統的な燐酸系自然肥料を使用するため、化学肥料を用いた場合に生じる土壌障害も生じず、安全な農作物の生産を安定的に行う事が可能となる等、本発明による効果は、単なる省力,省人化を目的とした農業機械とは異なり、農業に新たな転換を促すものであり、その社会的効果も計り知れないものがある。
【出願人】 【識別番号】391037571
【氏名又は名称】神鋼造機株式会社
【識別番号】594003090
【氏名又は名称】株式会社バイケミ
【出願日】 平成11年9月1日(1999.9.1)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
【公開番号】 特開2001−69813(P2001−69813A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−247023