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【発明の名称】 玄米ゲル被覆種子
【発明者】 【氏名】河野 靖司

【氏名】小林 陽子

【氏名】西山 雄悟

【要約】 【課題】催芽処理ができ、発芽後の取り扱いでも芽や根を傷めるおそれがなく、種子消毒を不要としながら、いもち病、ごま葉枯れ病、ばか苗病などの病害の発生のおそれのない玄米種子を提供する。

【解決手段】無病化玄米が水性ゲル層によって被覆されてなる玄米ゲル被覆種子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 無病化玄米が水性ゲル層によって被覆されてなることを特徴とする玄米ゲル被覆種子。
【請求項2】 略球形であることを特徴とする請求項1に記載の玄米ゲル被覆種子。
【請求項3】 水性ゲル層に防腐剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の玄米ゲル被覆種子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、玄米ゲル被覆種子技術に関する。
【0002】
【従来の技術】稲のいもち病、ごま葉枯れ病、ばか苗病などの病害は、籾殻に付着したこれらの胞子・病原菌から発生する。このため、種籾は選籾された後、催芽処理前に種子消毒が行われる。しかし、このような種子消毒の際の消毒剤廃液が環境汚染の原因となっている。
【0003】このため、胞子・病原菌が付着しているおそれのある籾殻を除去して無病化玄米とした後、水性粘結剤をフィルム状に被膜した玄米人工被膜種子が特開平9―248017号公報記載の技術として提案されている。
【0004】しかし、この技術では被覆膜が剥離しやすく、さらに機械播種を行った場合に生じる物理的衝撃から胚や芽を保護することが困難であり、このとき著しく発芽率が低下する。さらにこの技術では催芽処理を行うことができない。
【0005】さらに、胚乳に各種酵母類、かび等の微生物が繁殖しやすく、発芽期には胚乳でんぷんの糖化によりさらに顕著となり、これら微生物が出芽率を低下させることがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、催芽処理ができ、発芽後の取り扱いでも芽や根を傷めるおそれがなく、いもち病、ごま葉枯れ病、ばか苗病などの病害の発生のおそれのない玄米ゲル被覆種子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の玄米ゲル被覆種子は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、無病化玄米が水性ゲル層によって被覆されてなる玄米ゲル被覆種子である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、無病化玄米とは籾殻が除去されてなる玄米を云う。なお、無病化玄米としての無病化効果をより高くするために、もみすり機などの使用により籾殻が除去された後清澄な水などを用いて洗浄した玄米を用いることができる。
【0009】上記のような無病化玄米に水性ゲル層を設けて本発明の玄米ゲル被覆種子を得る。水性ゲル層は例えば、細管先端に種子被覆用水性ゲル形成性水溶液の液滴を形成し、この液滴中に細管を用いて種子を添加し、その後このゲル形成性液滴を、ゲルを水に対して不溶化させる作用を有する金属イオンを含む溶液(凝固液)に滴下させることにより作成することができる。
【0010】ここで水性ゲルを形成する水溶液としては、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。また、これらを水性ゲルとして硬化させる金属イオンとしてはカルシウム、バリウム等の2価金属やアルミニウムが用いられていて、これらは植物物体への悪影響を防止するため通常、塩化物水溶液として用いられる。
【0011】また、種子被覆用水性ゲル形成性水溶液としてカルボキシメチルセルロース水溶液、凝固液として硫酸カリウムアルミニウム(カリウムみょうばん)を用いることもできる。
【0012】また、上記のような種子被覆用水性ゲル形成性水溶液中に分散させた無病化玄米を水溶液と共にピペット状の管で吸い上げ、これらを凝固液に滴下するなどの方法によっても無病化玄米周囲に水性ゲル層を形成することができる。
【0013】上記種子被覆用水性ゲル形成性水溶液の濃度は、水性ゲル層凝固後に取り扱いに適した強度になるよう調整される。また、凝固液との接触時間によっても水性ゲル層の硬さを調整することができる。
【0014】上記のような種子被覆用水性ゲル形成性水溶液中に、各種防腐剤、肥料成分、成長促進剤等を添加することにより、無病化玄米を被覆する水性ゲル層にこれら各種成分を保持させることができ、発芽、出芽、及びその後の成長に寄与させることができる。
【0015】このように形成された水性ゲル層は、内部の無病化玄米を物理的、化学的、及び、生物学的に保護するともに、さらにこれに水分を供給してその発芽を促進する。また内部の無病化玄米が発芽した後はこれら水性ゲル層の中を芽及び根が成長するため、機械播種や取り扱い時にもこれら芽や根を傷めることがない。
【0016】本発明に係る玄米ゲル被覆種子の形状としては、機械播種や各種ホッパでの取り扱いの点から球状であることが望ましく、この場合、若干の凹凸の変形等は許容されるため、真球である必要はなく略粒状であればこれら播種機械や各種ホッパの取り扱い上充分である。
【0017】また、機械播種やホッパなどで取り扱いを行う場合、水性ゲル層の厚さとしては、通常、玄米ゲル被覆種子として直径が6mm以上となる厚さであれば内部の無病化玄米あるいはその芽や根の保護には充分である。一方、玄米ゲル被覆種子の直径が30mm超となると播種機などのホッパに投入可能な個数が減少するためホッパ投入作業の回数が増加し、また、体積や重量増による取扱性の低下を来すと共に、出芽率の低下などの不都合が生じる場合があるため、通常、直径が15mm以下となるようにする。
【0018】また、本発明に係る玄米ゲル被覆種子は、製造直後に速やかに乾燥することにより比較的長期間貯蔵することが可能となり、水性ゲル層を形成するための設備、機器等の有効利用が可能となる。なお、乾燥された玄米ゲル被覆種子は吸水させることにより、ほぼ作製直後・乾燥前の状態に戻すことができ、その後は機械播種などで通常の玄米ゲル被覆種子同様に取り扱うことができる。
【0019】
【実施例】以下に本発明の玄米ゲル被覆種子について例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]細管先端に種子被覆用水性ゲル形成性水溶液である1.5重量%アルギン酸水溶液(さらに、食品添加用防腐剤(パームケムアジア社製トップサイド400)0.01%を添加してある)の液滴を形成し、この液滴中に細管を用いてコシヒカリ玄米を1粒添加し、その後このゲル形成性液滴を、ゲルを水に対して不溶化させる作用を有する金属イオンを含む溶液(凝固液)である10重量%水酸化カルシウム水溶液に滴下し、40秒間浸漬した後、取り出して水洗し、直径10mmの球形の玄米ゲル被覆種子を得た。
【0020】このようにして得たゲル被覆種子400粒を、濾紙を2枚重ねて敷いた直径120mmのシャーレ4つにそれぞれ100粒ずつ播種し、それぞれのシャーレに水8mlを潅水し、その後25℃に保った。
【0021】一方、玄米をゲル被覆することなく、そのまま、100粒ずつ、濾紙を2枚重ねて敷いた直径120mmのシャーレ4つにそれぞれ播種し、それぞれのシャーレに水8mlを潅水し、その後25℃に保った。このときの発芽率(小数点以下2桁目を四捨五入)の変化について、表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】表1により本発明に係るゲル被覆種子の発芽率が、玄米に比べ非常に高いことが理解できる。なお、水性ゲル層を有しない玄米では播種後2日目からかびが発生していたが、本発明に係るゲル被覆種子ではかびの発生はなかった。
【0024】[実施例2]細管先端に種子被覆用水性ゲル形成性水溶液である3重量%カルボキシメチルセルロース(さらに、食品添加用防腐剤(パームケムアジア社製トップサイド400)0.01%を添加してある)の液滴を形成し、この液滴中に細管を用いてコシヒカリ玄米を1粒添加し、その後このゲル形成性液滴を、ゲルを水に対して不溶化させる作用を有する金属イオンを含む溶液(凝固液)である10重量%硫酸カリウムアルミニウム(カリウム明礬)水溶液に滴下し、45秒間浸漬した後、取り出して水洗し、直径10mmの球形の玄米ゲル被覆種子を得た。(得られた玄米ゲル被覆種子のモデル図を図1に示す。)
【0025】このようにして得たゲル被覆種子400粒を、濾紙を2枚重ねて敷いた直径120mmのシャーレ4つにそれぞれ100粒ずつ播種し、それぞれのシャーレに水8mlを潅水し、その後25℃に保った。
【0026】一方、玄米をゲル被覆することなく、そのまま、100粒ずつ、濾紙を2枚重ねて敷いた直径120mmのシャーレ4つにそれぞれ播種し、それぞれのシャーレに水8mlを潅水し、その後25℃に保った。このときの発芽率(小数点以下2桁目を四捨五入)の変化について、表2に示した。
【0027】
【表2】

【0028】表2により本発明に係るゲル被覆種子の発芽率が、玄米に比べ高いことが理解できる。なお、水性ゲル層を有しない玄米では播種後3日目からかびが発生していたが、本発明に係るゲル被覆種子ではかびの発生はなかった。
【0029】なお、表1における玄米の発芽率と表2における玄米の発芽率はかなり異なるが、かびの発生時期(視認による確認による)が早い場合には比較的発芽率が低くなるなど、玄米の場合の発芽率のばらつきは大きい。しかし、本発明の玄米ゲル被覆種子の場合には発芽率のばらつきが小さく、再現性も比較的良好で、上記のようなシャーレへの播種の場合、通常90%以上の発芽率が得られる。
【0030】なお、実施例2同様に形成した玄米ゲル被覆種子を25℃に設定した恒温槽内に48時間保管する催芽処理を行って発芽させ、発芽した芽や根が水性ゲル層にあって、水性ゲル層から突出する前に自動播種機を用いて圃場に播種を行った。このとき、自動播種機に移す際にバケツを用いて、自動播種機のホッパに移すなどの作業を行ったが、圃場での生育に影響はなく、人手で圃場に播種を行ったときと同じ出芽率レベルであった。
【0031】上記播種は、自動播種機における株間設定を10cmとして行ったものであり、播種後にその位置について計測を行ったところ播種された種子の間隔は10cm±1cmであり、本発明に係る玄米ゲル被覆種子では自動播種機によって精密点播できることが確認された。
【0032】
【発明の効果】本発明の玄米ゲル被覆種子は、発芽後の取り扱いでも芽や根を傷めるおそれがなく、種子消毒を不要としながら、いもち病、ごま葉枯れ病、ばか苗病などの病害の発生のおそれのない優れた種子である。
【出願人】 【識別番号】597041747
【氏名又は名称】アグリテクノ矢崎株式会社
【出願日】 平成11年9月3日(1999.9.3)
【代理人】 【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄 (外1名)
【公開番号】 特開2001−69812(P2001−69812A)
【公開日】 平成13年3月21日(2001.3.21)
【出願番号】 特願平11−249837