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【発明の名称】 作業車両の対地作業機昇降制御装置
【発明者】 【氏名】兵頭 修

【氏名】石田 智之

【要約】 【課題】オートリフトによる対地作業機上昇時に地表面の荒れをなくして、整地性を向上する。

【解決手段】前輪切れ角センサ39の検出値に基づいて、コントローラ50からリフトシリンダ24用の電磁制御弁の上昇ソレノイドへ制御信号を出力し、機体の旋回動作に連動して作業機が自動上昇するオートリフト制御に於いて、作業機昇降スイッチ32の操作による作業機上昇速度よりも、オートリフトによる作業機上昇速度を遅くする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 機体の旋回操作に基づいて対地作業機を非作業位置へ上昇させる第1作業機上昇操作手段と、該第1作業機上昇操作手段とは別のスイッチ操作による任意操作に基づいて前記対地作業機を非作業位置へ上昇させる第2作業機上昇操作手段とを備えた作業車両に於いて、前記第2作業機上昇操作手段による対地作業機の上昇速度よりも、第1作業機上昇操作手段による対地作業機の上昇速度を遅く設定したことを特徴とする作業車両の対地作業機昇降制御装置。
【請求項2】 前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を遅くする作動範囲を、対地作業機が地表付近と想定される高さの範囲に限定した請求項1記載の作業車両の対地作業機昇降制御装置。
【請求項3】 機体の車速を検出する手段を設け、該機体の車速に基づいて前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を変更する請求項1または2記載の作業車両の対地作業機昇降制御装置。
【請求項4】 機体の旋回操作速度を検出する手段を設け、該機体の旋回操作速度に基づいて前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を変更する請求項1または2記載の作業車両の対地作業機昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は作業車両の対地作業機昇降制御装置に関するものであり、特に、機体の旋回操作に基づいて対地作業機を非作業位置へ上昇させる際の作業機上昇速度の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トラクタをはじめとする作業車両の後部にロータリ等の対地作業機を連結して耕耘作業を行う場合、圃場の端部で機体が旋回するときに対地作業機を引き摺らないように、該対地作業機を所定高さの非作業位置まで上昇させる必要がある。従来、ステアリングハンドルの操作量を検出するセンサを備え、該センサの検出により機体の旋回操作を判定し、該機体の旋回動作に基づいて対地作業機を非作業位置へ上昇させる第1作業機上昇手段であるオートリフト制御装置を備えた作業車両が知られている。
【0003】また、前記第1作業機上昇装置手段とは別のスイッチである作業機昇降スイッチを設け、オペレータの任意操作によって前記対地作業機を非作業位置へ上昇させる第2作業機上昇操作手段を備え、機体の旋回時に拘わらず随時対地作業機を昇降できるようにしてある。従来は、前記オートリフトによる作業機上昇速度及び作業機昇降スイッチによる作業機上昇速度は所定の速度に設定されており、変更することはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】オートリフト制御装置を備えた作業車両が圃場の端部で旋回するときは、ステアリングハンドルの操作に連動して対地作業機が自動上昇するが、旋回時に作業機上昇速度が速いと、土を跳ね上げたり、急激な段差が生じて地表面を荒らす等の不具合があった。
【0005】そこで、オートリフトによる対地作業機上昇時に地表面の荒れをなくして、整地性を向上するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、機体の旋回操作に基づいて対地作業機を非作業位置へ上昇させる第1作業機上昇操作手段と、該第1作業機上昇操作手段とは別のスイッチ操作による任意操作に基づいて前記対地作業機を非作業位置へ上昇させる第2作業機上昇操作手段とを備えた作業車両に於いて、前記第2作業機上昇操作手段による対地作業機の上昇速度よりも、第1作業機上昇操作手段による対地作業機の上昇速度を遅く設定した作業車両の対地作業機昇降制御装置、及び、前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を遅くする作動範囲を、対地作業機が地表付近と想定される高さの範囲に限定した作業車両の対地作業機昇降制御装置、及び、機体の車速を検出する手段を設け、該機体の車速に基づいて前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を変更する作業車両の対地作業機昇降制御装置、並びに、機体の旋回操作速度を検出する手段を設け、該機体の旋回操作速度に基づいて前記第1作業機上昇操作手段による作業機上昇速度を変更する作業車両の対地作業機昇降制御装置を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図面に従って詳述する。図1は作業車両の一例としてトラクタ10の側面を示し、図2は該トラクタ10に於けるオートリフト制御系のブロック図である。該トラクタ10の機体の後部には、リンク機構11を介して対地作業機であるロータリ作業機12が連結されている。運転席13の近傍には作業機の昇降位置設定手段であるポジションレバー14、作業機の耕深量設定手段である耕深調整ダイヤル15、機体の旋回時に作業機を所定高さの非作業位置まで自動上昇させるオートリフト制御スイッチ16、オートリフト制御中に作業機の上昇速度を減速させる減速上昇範囲設定ダイヤル17等が設けられている。また、ミッションケース18の左右両側に後輪19,19が装着されている。
【0008】前記リンク機構11はトップリンク20と左右のロワリンク21,21とからなり、左右のリフトアーム22,22の先端とロワリンク21,21をリフトロッド23,23にて連結し、リフトシリンダ24の駆動にてリフトアーム22を回動することにより、リフトロッド23,23を介してロワリンク21,21が上下動する。斯くして、ロワリンク21,21の先端部を回動中心に前記ロータリ作業機12が昇降する。
【0009】リフトアーム22の回動基部には、作業機の昇降位置を検出する手段としてリフトアーム角センサ25が設けられ、このリフトアーム角センサ25にてリフトアーム22の回動角を検出し、コントローラ50にてロータリ作業機12の昇降高さを演算する。また、ロータリ作業機12のメインカバー26の後端部にリヤカバー27を上下回動自在に取り付け、リヤカバーセンサ28により前記リヤカバー27の回動角を検出して、コントローラ50にてロータリ作業機12の耕深量を演算する。尚、29は機体の走行速度を検出する車速センサである。
【0010】ここで、運転席13の前方には機体の操舵操作部であるステアリングハンドル30が設けられ、該ステアリングハンドル30の近傍位置に前後進切換えレバー31及び作業機昇降スイッチ32を設けてあり、該前後進切換えレバー31を操作することにより、後輪19へ伝達する駆動力を逆転させて、機体の進行方向を選択できるようにしてある。また、作業機昇降スイッチ32を操作することによって前記リフトシリンダ24が駆動され、ロータリ作業機12が耕深作業位置から非作業位置まで連続的に上昇し、或いは非作業位置から耕深作業位置まで連続的に下降するように形成されている。尚、非作業位置の高さは、運転席13の近傍に設けた上げ位置設定ダイヤル33にて設定する。
【0011】更に、運転席13の前下方部に変速レバー35を設置するとともに、左右独立して踏み込み可能な左右ブレーキペダル36,36が設けられている。前記、ステアリングハンドル30の回転操作は操舵装置37へ伝達され、操舵量に応じて前輪38,38が回向する。前輪38の操舵量は前輪切れ角センサ39によって検出される。
【0012】而して、前記オートリフト制御スイッチ16と、非作業位置を決める上げ位置設定ダイヤル33と、機体の旋回操作を検出する前輪切れ角センサ39と、これら各設定信号及び検出信号に基づいて演算処理を行うとともにアクチュエータへ指令信号を出力するコントローラ50と、対地作業機を非作業位置へ上昇させるリフトシリンダ24と、このリフトシリンダ24を制御する電磁制御弁並びに上昇ソレノイド及び下降ソレノイド等から第1作業機上昇操作手段が構成される。
【0013】また、第1作業機上昇操作手段とは別のスイッチ操作による任意操作に基づいて前記対地作業機を非作業位置へ上昇させる第2作業機上昇操作手段は、前記作業機昇降スイッチ32と、上げ位置設定ダイヤル33と、コントローラ50と、リフトシリンダ24と、このリフトシリンダ24を制御する電磁制御弁並びに上昇ソレノイド及び下降ソレノイド等から構成される。
【0014】図3に示すように、前記操舵装置37にはウォームギヤ機構40を内蔵してあり、ステアリングハンドル30の回転がウォームギヤ機構40を介してピットマンアーム41に伝達され、ドラッグリンク42が押し引きされて前輪38が回向する。このようなマニュアルステアリング機構に於いてステアリング操作を軽減するために、前記操舵装置37にはピットマンアーム41の反対側にステアリングアシスト用モータ43を装着してある。
【0015】而して、ステアリングハンドル30の回転操作を前輪切れ角センサ39が検出したとき、前記コントローラ50の指令信号によってステアリングアシスト用モータ43を駆動すれば、ウォームギヤ機構40の回転力が増加してステアリングハンドル30の回転操作が軽減される。従って、マニュアルステアリング機構に僅かな部品を追加するだけで、パワーステアリング機構に変更することができ、従来のスペースのまま安価な費用にて操舵力を低減することができる。
【0016】図4は、前記トラクタ10が耕耘作業中に、圃場の端部で機体を旋回させたときの仕上がり状態を示し、前述したオートリフト制御スイッチ16がオンであれば、■工程が終了して機体を旋回すべくステアリングハンドル30を回転操作すれば、前輪切れ角センサ39の検出によって機体が旋回動作に入ったことをコントローラ50が判別し、リフトシリンダ用電磁制御弁の上昇ソレノイドに指令信号を出力してリフトシリンダ24を伸張駆動する。従って、リフトアーム22が上方へ回動し、前記リンク機構11を介してロータリ作業機12が所定高さまで上昇する。このとき、作業機上昇速度が速いと、図4(b)及び(c)に示すように、■工程の終了時にリヤカバー27による土押さえが不足して、地面に凹部(長さB1:約40〜50cm)が生じ、仕上げ面の終端部が凹凸となって枕地が長くなる。
【0017】請求項1記載の発明では、これを防止するために、作業機を任意に昇降させる作業機昇降スイッチ32の操作による作業機上昇速度よりも、ステアリングハンドル30の操作に連動したオートリフト制御での作業機上昇速度を遅く設定してある。従って、ロータリ作業機12のリヤカバー27の垂れ下がりが緩慢となり、図4(d)に示すように、地面の土押さえが十分に行われて凹部(長さB2:B1よりも約10〜15cm短縮)が小さくなり、枕地が短くなって整地性が向上する。
【0018】そして、機体の旋回が終了してステアリングハンドル30を直進状態に戻せば、コントローラ50からリフトシリンダ用電磁制御弁の下降ソレノイドに指令信号を出力してリフトシリンダ24を収縮駆動する。従って、リフトアーム22が下方へ回動し、前記リンク機構11を介してロータリ作業機12が元の耕深位置まで下降する。
【0019】また、請求項2記載の発明では、前記減速上昇範囲設定ダイヤル17により、オートリフト制御での作業機上昇速度を遅くする作動範囲を限定し、該作動範囲外では前記作業機昇降スイッチ32の操作による通常の速い作業機上昇速度にする。例えば、図5に示すように、リフトアーム22の高さが、ロータリ作業機12が地面に接地して耕耘する作業位置L1から、ロータリ作業機12が地面から離間して浮上位置L2に至るまでの範囲αでは、作業機上昇速度を遅くして仕上げ面終端部の凹部を小さくし、ロータリ作業機12が地面から浮上した後、上昇位置L3に至るまでの範囲βでは作業機上昇速度を速くする。
【0020】従って、当該トラクタ10の作業深さやロータリ作業機12の沈下量に応じて、前記作業機上昇速度を遅くする作動範囲αをロータリ作業機12が地表面付近と想定される高さの範囲に設定することにより、仕上げ面終端部を荒らすことなく枕地を短くしつつ、オートリフト制御での作業機上昇時間が可及的に短縮されて作業効率を向上することができる。
【0021】一方、請求項3記載の発明では、前記作業機上昇速度を遅くする際に、機体の車速に応じて作業機上昇速度を変更する。図6の実線にて示すように、車速が低速である場合はロータリ作業機12の移動速度が緩慢であり、作業機浮上時の凹部が短いので、比較的早い時点で作業機上昇速度を速くしたとしても仕上げ面は荒れず、全体的な作業機上昇時間を短縮できる。これに対して、図6の鎖線にて示すように、車速が高速である場合はロータリ作業機12の移動速度が速く、作業機浮上時の凹部が長くなって仕上げ面が荒れやすくなるので、比較的遅い時点まで作業機上昇速度を低速に保持しておく。
【0022】また、請求項4記載の発明では、前記作業機上昇速度を遅くする際に、ステアリングハンドル30の旋回操作速度に応じて作業機上昇速度を変更する。図7の実線にて示すように、旋回操作速度が遅い場合は作業機浮上時の凹部が短いので、比較的早い時点で作業機上昇速度を速くして全体的な作業機上昇時間を短縮する。これに対して、図7の鎖線にて示すように、旋回速度が速い場合は作業機浮上時の凹部が長くなるので、比較的遅い時点まで作業機上昇速度を低速に保持しておく。
【0023】ここで、オートリフト制御が作動する条件としては、オートリフト制御スイッチ16がオンであること、変速レバー35にて副変速装置が高速位置以外のポジションにあること、前後進切換えレバー31が後進位置ではないこと、下降操作後5秒以上経過していることなどが挙げられる。下降操作とは、ポジションレバー14を上昇位置以下に操作したとき、或いは、作業機昇降スイッチ32を下降操作したときである。
【0024】そして、オートリフト制御中に、例えば前後進切換えレバー31を後進位置に操作する等、上記作動条件を満たさない操作を行った場合は、前記ステアリングハンドル30を操作して前輪切れ角センサ39が直進付近を検出するまで、オートリフト制御を禁止する。斯くして、ステアリングハンドル30が回転操作された状態で、後進から前進に操作したときに、作業機が不慮上昇する危険を防止できる。尚、前後進切換えレバー31が前進位置に操作されている場合であっても、車速センサ29の検出がないとき即ち機体が停止中にはオートリフトを実行しない。
【0025】通常、セフティ制御が実行される作業車両では、エンジン始動時に変速レバーが中立位置以外にシフトされているときは、危険防止のために前後進用電磁弁に対する出力をオフにして、機体が発進しないようにしている。従って、走行系がセフティ状態であるときは、オートリフト制御を禁止して、オペレータがセフティ解除を行うまで、作業機を自動上昇させない。
【0026】また、図8のフローチャートに示すように、オートリフト制御中に(Step1)、デプス制御によって作業機下降出力があったときは(Step2)、前輪切れ角センサ39の検出信号の変化速度を算出し、その変化速度が一定値以上になった場合は(Step3)、機体の旋回操作が行われていると見做して作業機下降出力をオフにし(Step4)、作業機上昇準備状態にすることによってオートリフトが素早く実施できるようにする。前輪切れ角センサ39の検出信号の変化速度が一定値に満たない場合は、作業機下降出力を継続する(Step5)。
【0027】尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0028】
【発明の効果】本発明は上記一実施の形態に詳述したように、請求項1記載の発明はステアリングハンドルの操作に連動して作業機が自動上昇するオートリフト制御装置に於いて、作業機昇降スイッチの操作による作業機上昇速度よりも、オートリフト制御による作業機上昇速度を遅くしたことにより、機体の旋回開始時に作業機上昇に起因する仕上げ面の凹部が小さくなり、枕地が短くなって整地性が向上する。
【0029】請求項2記載の発明は前記作業機上昇速度を遅くする作動範囲を限定し、該作動範囲外では作業機上昇速度を早くするので、仕上げ面終端部を荒らすことなく枕地を短くしつつ、オートリフト制御での作業機上昇時間が可及的に短縮されて作業効率を向上することができる。
【0030】請求項3記載の発明は車速に応じて前記作業機上昇速度を変更するので、車速が低速の場合には比較的早い時点で作業機上昇速度を速くして、全体的な作業機上昇時間を短縮できる。
【0031】請求項4記載の発明はステアリングの操作速度に応じて前記作業機上昇速度を変更するので、旋回操作速度が遅い場合は比較的早い時点で作業機上昇速度を速くして、全体的な作業機上昇時間を短縮できる。
【0032】斯くして、オートリフト制御に於いて、作業機上昇時に地面に生じる凹部を小さくして整地性を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成11年11月12日(1999.11.12)
【代理人】 【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
【公開番号】 特開2001−136808(P2001−136808A)
【公開日】 平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願番号】 特願平11−322850