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【発明の名称】 トラクタ
【発明者】 【氏名】中條 健一

【氏名】川原 好博

【要約】 【課題】構成の簡素化を図りながら下限設定機構を装備できるようにする。

【解決手段】機体の後部に、リフトアーム8を備えるとともにリフトアーム8の作動で昇降揺動する3点リンク機構9を連結し、機体の中腹部に、モーア11を昇降可能に吊り下げ支持するリンク機構12を装備し、リンク機構12とリフトアーム8とを連動連結する連係機構14を備えたトラクタにおいて、リフトアーム8に対して下方から接当する接当部材17の位置変更操作でモーア11の下限位置を設定する下限設定機構Aを設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 機体の後部に、リフトアームを備えるとともに該リフトアームの作動で昇降揺動する3点リンク機構を連結し、前記機体の中腹部に、モーアを昇降可能に吊り下げ支持するリンク機構を装備し、該リンク機構と前記リフトアームとを連動連結する連係機構を備えたトラクタであって、前記リフトアームに対して下方から接当する接当部材の位置変更操作で前記モーアの下限位置を設定する下限設定機構を設けてあるトラクタ。
【請求項2】 前記下限設定機構を、前記リフトアームの最下限位置よりも下方の位置まで前記接当部材の位置変更操作を行えるように構成してある請求項1記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機体の後部に、リフトアームを備えるとともに該リフトアームの作動で昇降揺動する3点リンク機構を連結し、前記機体の中腹部に、モーアを昇降可能に吊り下げ支持するリンク機構を装備し、該リンク機構と前記リフトアームとを連動連結する連係機構を備えたトラクタに関する。
【0002】
【従来の技術】上記のようなトラクタは、例えば、特開平6−253641号公報や特開平7−213131号公報などで開示されているように、3点リンク機構に連結してあるロータリ耕耘装置などの作業装置を取り外すとともに、リンク機構にモーアを連結することで草刈り作業にも利用できるように、又、その草刈り作業では、連係機構を介したリフトアームの作動でモーアの昇降操作を容易に行えるように構成したものであるが、モーアを浮上させた状態で草刈り作業を行う場合において、例えば他物との衝突を避けるために一旦モーアを上昇させると、元の高さ位置にモーアを復帰させることがかなり難しく、刈り高さが不揃いになる不都合を招くようになっていた。
【0003】そこで従来では、図6に示すように、機体フレーム13に縦軸心周りに回転操作可能に支持されるとともに下面に上下方向の段差を有する複数の接当部25Aを備えた下降規制具25と、リンク機構12におけるモーア11の下降に伴って上昇するリンク部分12Aに所定位置の接当部25Aに対して接当可能となるように装着されたピン26とから、下降規制具25の操作でピン26に接当させる接当部25Aを選択することでモーア11の下限位置を設定できるように構成された下限設定機構Bを装備することによって、モーア11を浮上させた状態での草刈り作業において、例えば他物との衝突を避けるために一旦モーア11を上昇させた場合であっても、モーア11を元の高さ位置に容易に復帰させられるようにすることが考えられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術によると、下限設定機構を装備するためには、既存の機体フレームに下降規制具を取り付けるための連結孔を新たに穿設するとともに、リンク機構における所定のリンク部分にピンを装着する必要があり、又、下降規制具を操縦部から操作できるようにするためには、既存の搭乗ステップにも、下降規制具操作用の開口を形成するなどの改良を新たに施す必要があることから、構成の簡素化を図る上において改善の余地があった。
【0005】本発明の目的は、構成の簡素化を図りながら下限設定機構を装備できるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】〔構成〕上記目的を解決するため、本発明のうちの請求項1記載の発明では、機体の後部に、リフトアームを備えるとともに該リフトアームの作動で昇降揺動する3点リンク機構を連結し、前記機体の中腹部に、モーアを昇降可能に吊り下げ支持するリンク機構を装備し、該リンク機構と前記リフトアームとを連動連結する連係機構を備えたトラクタにおいて、前記リフトアームに対して下方から接当する接当部材の位置変更操作で前記モーアの下限位置を設定する下限設定機構を設けた。
【0007】〔作用〕上記請求項1記載の発明によると、モーアを浮上させた状態で草刈り作業を行う場合には、下限設定機構によりモーアの下限位置を設定しておくことによって、例えば他物との衝突を避けるために一旦モーアを上昇させた場合であっても、モーアを元の高さ位置に容易に復帰させることができるようになり、もって、草を所望の刈り高さに容易に刈り揃えることができるようになる。
【0008】又、この下限設定機構は、リフトアームに対して下方から接当する接当部材の位置変更操作でモーアの下限位置を設定するものであることから、前述の従来技術で例示したものにおいては必要となっていた、リンク機構の所定のリンク部分に装着されるピン、を不要にすることができ、しかも、本来よりリフトアームが運転座席から手の届く位置に配設されていることから、搭乗ステップに操作用の開口を形成するなどの新たな改良を施さなくても、運転座席からリフトアームの方向に手を伸ばすことで、接当部材の位置変更操作によるモーアの下限位置の設定を簡単に行えるようになる。
【0009】その上、草刈り作業を行う場合には使用しない3点リンク機構のトップリンクブラケットが、本来より左右のリフトアーム間に配備されていることから、草刈り作業を行う場合には、このトップリンクブラケットと下限設定機構とを付け替えるようにすれば、機体フレームなどに下降規制具を取り付けるための連結孔を新たに穿設する必要がなく、更に、トップリンクブラケットに下限設定機構を装備するようにすれば、作業に応じてトップリンクブラケットと下限設定機構とを付け替える手間をも無くすことができるようになる。又、機体フレームなどに下降規制具取り付け用の連結孔を新たに穿設する必要がないことから、リンク機構や下限設定機構を装備しない標準仕様のトラクタとの機体フレームなどの兼用化を図れるようになる。
【0010】〔効果〕従って、モーアを所望の作業高さ位置に容易に復帰させられるようにするための下限設定機構を、構成の簡素化や標準仕様のトラクタとの部品の兼用化を図りながら装備することができる上に、モーアによる草刈り作業と、3点リンク機構に連結した作業装置による作業とに作業形態を切り換える際に要する手間の削減を図ることも可能になった。
【0011】〔構成〕本発明のうちの請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明において、前記下限設定機構を、前記リフトアームの最下限位置よりも下方の位置まで前記接当部材の位置変更操作を行えるように構成した。
【0012】〔作用〕上記請求項2記載の発明によると、トップリンクブラケットに下限設定機構を装備するものにおいて、3点リンク機構に連結した作業装置で対地作業を行う場合には、リフトアームに接当する下限設定機構の接当部材を取り外さなくても、リフトアームを最下限位置まで下降させることができて、3点リンク機構に連結した作業装置による対地作業を良好に行えるようになる。
【0013】〔効果〕従って、モーアによる草刈り作業と、3点リンク機構に連結した作業装置による作業とに作業形態を切り換えるごとに接当部材を着脱させる場合に比較して、その作業形態の切り換えに要する手間の削減をより効果的に図れるとともに、接当部材を使用しない3点リンク機構に連結した作業装置による作業などの際に接当部材が紛失する不都合の発生を回避できるようになった。
【0014】
【発明の実施の形態】図1及び図2には農用トラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、機体の前部に搭載されたエンジン1、エンジン1の後部に連結された主クラッチ2、機体の後部に配備されたミッションケース3、左右一対の前輪4と後輪5、前輪4に連係されたステアリングホイール6、及び、ミッションケース3の上方に配設された運転座席7、などによって構成されている。
【0015】図1〜3に示すように、ミッションケース3の後部には、その上部に配備された左右一対のリフトアーム8の作動で昇降揺動する3点リンク機構9が連結されており、この3点リンク機構9に、対地作業装置の一例であるロータリ耕耘装置10などを連結することで耕耘作業などの対地作業を行えるようになっている(図3参照)。
【0016】3点リンク機構9は、ミッションケース3の上部中央にボルト連結された左右一対のトップリンクブラケット9A、左右のトップリンクブラケット9Aに第1横軸心P1周りに上下揺動可能にピン連結された単一のトップリンク9B、ミッションケース3の下部左右にそれぞれボルト連結されたロアーリンクブラケット9C、各ロアーリンクブラケット9Cに第2横軸心P2周りに上下揺動可能に支持されたロアーリンク9D、及び、左右のリフトアーム8とロアーリンク9Dとを連動連結する左右の連係ロッド9E、などによって構成されている。
【0017】尚、図示は省略するが、左右のリフトアーム8は、油圧ポンプから圧送される作動油をミッションケース3に内装された単動式の油圧シリンダに供給することで第3横軸心P3周りに上昇揺動し、連結される作業装置などの重量で油圧シリンダ内の作動油の排出させることで第3横軸心P3周りに下降揺動するようになっている。
【0018】図1及び図2に示すように、機体の中腹部である前輪4と後輪5との間には、モーア11を昇降可能に吊り下げ支持するリンク機構12が装備されており、このリンク機構12にモーア11を連結することで草刈り作業を行えるようになっている。リンク機構12は、機体フレーム13に第4横軸心P4周りに上下揺動可能に連結された左右一対の前部リンク12A、及び、機体フレーム13に第5横軸心P5周りに上下揺動可能に連結された左右一対の後部リンク12B、などによって構成されるとともに、左右の後部リンク12Bが、左右の連係機構14を介して3点リンク機構9の各ロアーリンク9Dに連係されている。
【0019】各連係機構14は、機体フレーム13に第6横軸心P6周りに揺動可能に支持されたクランクアーム14A、クランクアーム14Aの一端と後部リンク12Bとを連係する連係リンク14B、ロアーリンク9Dに対して上方から接当する状態でロアーリンクブラケット9Cに第2横軸心P2周りに揺動可能に支持された連係アーム14C、及び、クランクアーム14Aの他端と連係アーム14Cとを連係する連係ロッド14D、などによって、ロアーリンク9Dの昇降揺動に連動してリンク機構12を昇降揺動させるように構成されている。
【0020】つまり、モーア11を吊り下げ支持するリンク機構12を、左右の連係機構14及び3点リンク機構9を介して左右のリフトアーム8に連動連結しているのであり、もって、リフトアーム8の作動でモーア11の昇降操作を容易に行えるようになっている。
【0021】尚、図1に示す符号15は、ミッションケース3からの動力をモーア11に伝達する伝動軸であり、又、図3に示す符号16は、ミッションケース3からの動力をロータリ耕耘装置10などの対地作業装置に伝達する伝動軸である。
【0022】図1〜5に示すように、左側のトップリンクブラケット9Aには、左側のリフトアーム8に対して下方から接当する状態となるピン状の接当部材17が備えられている。詳述すると、接当部材17は、揺動アーム18の中間部に左右に向けて突出する状態に溶接されており、その左側の突出部17Aがリフトアーム8に接当するようになっている。揺動アーム18は、左側のトップリンクブラケット9Aから後上方に向けて延設した支持ブラケット19の基端下部に横向き支点P7周りに上下揺動可能に連結されるとともに、その遊端には、支持ブラケット19の延出端に、横向き支点P7を中心とする2列の円弧L1,L2上に所定ピッチで千鳥状に並ぶように穿設した複数の貫通孔19aに重合可能な2つの貫通孔18aが穿設されており、その横向き支点P7周りの上下揺動操作で、複数の貫通孔19aのうちの所望のものに2つの貫通孔18aのうちのいずれか一方を重合させた後、重合する貫通孔18a,19aに連結ピン20を挿通し、ベータピン21で連結ピン20の抜け止めを行うことで、接当部材17の位置決めを行えるようになっている。支持ブラケット19の中間部には、その下縁から上方に向けて横向き支点P7を中心とする円弧状の切り欠き19bが形成されており、揺動アーム18の揺動操作の際には、この切り欠き19bが接当部材17の右側の突出部17Bを案内するようになっている。接当部材17の右端には、揺動アーム18との間に支持ブラケット19を挟み込む状態となる座金22がボルト止めされており、これによって、接当部材17の左側の突出部17Aにリフトアーム8が接当した際に、接当部材17が左下がりに傾倒することを防止できるようになっている。
【0023】つまり、接当部材17、揺動アーム18、支持ブラケット19、連結ピン20、ベータピン21、及び座金22、などによって、接当部材17の位置変更操作でモーア11の下限位置を設定する下限設定機構Aが構成されており、これによって、モーア11を浮上させた状態で草刈り作業を行う場合には、下限設定機構Aによりモーア11の下限位置を設定しておくことによって、例えば他物との衝突を避けるために一旦モーア11を上昇させた場合であっても、リフトアーム8を接当部材17に接当させることで、モーア11を元の高さ位置に容易に復帰させることができるようになり、もって、草を所望の刈り高さに容易に刈り揃えることができるようになっている。
【0024】しかも、この下限設定機構Aが、運転座席7から手の届く位置に配設されている左側のトップリンクブラケット9Aに装備されていることから、運転座席7から左側のトップリンクブラケット9Aに向けて手を伸ばすことで、接当部材17の位置変更操作によるモーア11の下限位置の設定を簡単に行えるようになっている。又、下限設定機構Aが左側のトップリンクブラケット9Aに装備されていることによって、左側のトップリンクブラケット9Aを下限設定機構Aを装備しないものに付け替えるとともにリンク機構12を取り外すことなどで、機体の中腹部にモーア11を装着しない標準仕様のトラクタへの仕様変更を容易に行えるようになっている。
【0025】図3〜5に示すように、揺動アーム18及び支持ブラケット19には、接当部材17をリフトアーム8の最下限位置よりも下方に位置させた状態で、揺動アーム18を支持ブラケット19に連結ピン20で固定するための貫通孔18b,19cが穿設されている。つまり、下限設定機構Aは、接当部材17の位置変更操作をリフトアーム8の最下限位置よりも下方の位置まで行えるように構成されているのであり、これによって、3点リンク機構9に連結したロータリ耕耘装置10などの作業装置で対地作業を行う場合には、リフトアーム8に接当する下限設定機構Aの接当部材17を取り外さなくても、リフトアーム8を最下限位置まで下降させることができて、3点リンク機構9に連結した作業装置による対地作業を良好に行えるようになっている。
【0026】〔別実施形態〕以下、本発明の別実施形態を列記する。
■ 右側のトップリンクブラケット9Aに下限設定機構Aを装備するようにしてもよく、又、左右双方のトップリンクブラケット9Aに下限設定機構Aを装備するようにしてもよい。
■ 下限設定機構Aとしては、トップリンクブラケット9Aと付け替え可能に構成されたものであってもよい。
■ 下限設定機構Aとしては、接当部材17の取り外しによって、リフトアーム8の最下限位置への下降を許容するように構成されたものであってもよい。
■ 下限設定機構Aとしては、支持ブラケット19の延出端に、横向き支点P7を中心とする1列の円弧上に所定ピッチで複数の貫通孔19aが穿設され、かつ、揺動アーム18の遊端に、貫通孔19aに重合可能な単一の貫通孔18aが穿設されたものであってもよい。又、揺動アーム18の遊端に、貫通孔18aの代わりにバネによって貫通孔19aに向けて突出付勢されるピンを装備するものであってもよい。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年9月21日(1999.9.21)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−86802(P2001−86802A)
【公開日】 平成13年4月3日(2001.4.3)
【出願番号】 特願平11−267509