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【発明の名称】 電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法
【発明者】 【氏名】古森 秀樹

【氏名】森本 眞人

【氏名】神田 和典

【要約】 【課題】強力な磁界源の存在する場合でも適用可能な、電磁波高度シールド室の実用的な電磁波共振抑制方法及び電磁波共振を抑制した電磁波高度シールド室を提供する。

【解決手段】少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有する電磁波高度シールド室に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを設ける、電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有する電磁波高度シールド室に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを設けることを特徴とする、電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法。
【請求項2】 フィルム又はボードを、箱型電磁波高度シールド室を形成する6壁面のうち少なくとも1壁面に設置する請求項1記載の方法。
【請求項3】 少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有するとともに固有の電磁波共振モードの周波数が10〜1000MHzの周波数帯域に属し、かつ、超伝導コイルを使用した精密測定機器が設置された電磁波高度シールド室に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを設けることを特徴とする、電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法。
【請求項4】 少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有するとともに固有の電磁波共振モードの周波数が10〜1000MHzの周波数帯域に属し、かつ、その内部又は壁面に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードが設けられていることを特徴とする共振抑制電磁波高度シールド室。
【請求項5】 フィルム又はボードは、箱型電磁波高度シールド室を形成する6壁面のうち少なくとも1壁面に設置されている請求項4記載の共振抑制電磁波高度シールド室。
【請求項6】 共振抑制電磁波高度シールド室は、超伝導コイルを使用した精密測定機器設置のための部屋である請求項4又は5記載の共振抑制電磁波高度シールド室。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法及び電磁波共振を抑制した電磁波高度シールド室に関する。
【0002】
【従来の技術】電磁波シールド室は、金属等の導体を用いた仕切りや壁により電磁波の通過を低減し、ノイズ源を囲ってその障害電磁波放射を抑制するために、又は、外部からの電磁波の進入を抑制し、内部機器への妨害を防止するために施工される。
【0003】例えば、SQUIDと呼ばれる脳磁場計測室等の微弱な磁場を測定する測定機器室においては、外部の変動磁場の影響を排除するために電磁波高度シールド施工されることが多い。またNMR測定室やMRI測定室においては強磁場を発生するので部屋全体を高度に磁気シールド施工することが要求される。
【0004】ことろで、シールドされた空間は、一般にその空間の幅、長さ及び高さで定まる固有の空洞共振周波数を持つ。もし、そのシールドされた部屋の固有共振周波数と等しい周波数の電磁波が部屋の内部で発生する場合、又は、外部から注入される場合、その周波数の電磁波はシールド室内において定在波となりうる。このような定在波は、シールド空間内で電磁界試験を行う場合にクワイエットゾーンと呼ばれる、一様電界の場所を確保できない現象の原因として従来知られている。
【0005】一方、電磁波に対してたとえ高度にシールドされた室内であったとしても、電磁波からみれば僅かな隙間、例えば、壁材の継ぎ目、ダクト、ドアの隙間等が必ず存在する。従って、従来、シールドルームの施工においては専ら電磁波からみた僅かな隙間をできるだけ無くすことに主眼が置かれ、壁材の継ぎ目、ダクト、ドアの隙間等に対する施工上の工夫がなされてきた。このような施工により、比較的低エネルギーの電磁波に対するシールド性能は所要性能が確保されてきた。
【0006】しかしながら、シールド性能が完全であることは事実上あり得ない。そのため、もし、共振周波数と等しい周波数をもつ電磁波のエネルギーがシールド空間に蓄積したならば、電磁波からみた僅かな隙間から外部に漏洩する現象が生じうる。従って、シールド空間における空洞共振は、シールド性能の低下を招くと同時に、微小信号を扱うような精密測定機器の測定精度低下や測定不能等の事態を引き起こすおそれがある。この現象は、しかしながら、シールド空間の共振周波数に等しいか又は近傍の周波数領域を使用する測定等の場合に始めて現実に認識されるものであるため、従来は、シールド施工において問題とされることはなかった。
【0007】空洞共振を抑えるためには、例えば、ウレタン等の発泡性樹脂にカーボン等の導電性材料を含浸した、ピラミッド状の電波吸収体を使用することが考えられる。しかし、ピラミッドの高さは半波長程度必要であることから、数メートルから数十センチ程度必要となり、実用的ではない。また、電磁波吸収材としてフェライト焼結体が用いられることがあった。しかし、現状では、フェライト焼結体は電子機器内部や電子部品として使用可能であるにすぎず、特殊には電波暗室用のフェライト焼結体吸収体もあるが、大きく、かつ、重く、建材に使用することはできない。
【0008】特に、近年普及しつつあるMRI測定室、NMR測定室等の電磁界シールド空間においては、強力な磁気を発生する超伝導磁気コイルが存在するため、フェライト焼結体等の透磁率が非常に大きい(一般に、比透磁率1000以上)電磁波吸収体を空洞共振抑制の目的で使用したならば、超伝導コイルが発生する強力な磁界によって、超伝導コイルに強引に引き寄せられ、測定システムの破損等の事故が発生する可能性がある。また、一旦超伝導磁気コイルに引き寄せられた物体は超伝導磁気コイルが稼働している限り引き離すことは極めて困難である。このような事態に至らないようにするためには、フェライト焼結体等を使用に供することはできない。このように、空洞共振によるシールド性能の低下に対しては、シールド室の施工において有効に対処する対策はなかった。
【0009】従って、電磁波高度シールド室のシールド性能を低下させる電磁波共振を抑制することができる実用的に有利な方法、特に、超伝導磁気コイル等を設置した高度シールド室内でも適用可能な方法が切望されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の現状に鑑みて、強力な磁界源の存在する場合でも適用可能な、電磁波高度シールド室の実用的な電磁波共振抑制方法及び電磁波共振を抑制した電磁波高度シールド室を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有する電磁波高度シールド室に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを設けることからなる電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法である。
【0012】本発明はまた、少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有するとともに固有の電磁波共振モードの周波数が10〜1000MHzの周波数帯域に属し、かつ、超伝導コイルを使用した精密測定機器が設置された電磁波高度シールド室中に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを設ける電磁波高度シールド室の電磁波共振抑制方法でもある。
【0013】本発明は更に、少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有するとともに固有の電磁波共振モードの周波数が10〜1000MHzの周波数帯域に属し、かつ、その内部又は壁面に、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードが設けられている無共振電磁波高度シールド室でもある。以下に本発明を詳述する。なお、以下の説明は、本発明の実施の形態を例示するものであるが、当業者なら、本発明の目的に沿って自明の変更を加えることが可能であり、従って、本発明をなんら限定するものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に使用される、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードにおいて、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料としては、上記帯域で磁性損失を有するものであれば特に限定されず、例えば、金属酸化物磁性体、金属磁性体等を挙げることができる。上記磁性粒子の形状としては特に限定されるものではなく、例えば、不定形粒子、偏平状粒子、鱗片状粒子等であってよく、短径及び長径をもつアスペクト材料であってもよい。また、フェライトコアやフェライトビーズコアのような成型された磁性材料を用いてもよい。
【0015】上記金属酸化物磁性体としては特に限定されず、例えば、Fe23 にMnO、ZnO、NiO、MgO、CuO、Li2 O等を組み合わせたフェライト;NiO−MnO−ZnO−Fe23 、MnO−ZnO−Fe23 、NiO−ZnO−Fe23 等のスピネル型フェライト;ガーネット型フェライト;スピネル型(立方晶)のγ−Fe23 、γ−Fe44 等を挙げることができる。これらのうち、本発明においては、Li、Mg、Mn、Co、Ni、Cu、Sn、Sr、Ba等を含有するFe酸化物を使用することが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】上記金属磁性体としては特に限定されず、例えば、Fe、Co、Ni等の磁性金属単体、又はこれらに、酸化処理等の、安定な態様にするための表面処理を施した表面処理金属磁性体;珪素鋼、センダスト、スーパーマロイ、パーマロイ、アモルファス金属等の磁性金属合金;Si、B、Al、Co、Ni、Cr、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo及びAgからなる群より選択される少なくとも1種を含むFe磁性合金等を挙げることができる。これらのうち、本発明においては、Si、B、Al、Co、Ni、Cr、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo及びAgからなる群より選択される少なくとも1種を含むFe磁性合金;Fe、Co若しくはNiの磁性金属単体、又はこれらに、酸化処理等の、安定な態様にするための表面処理を施した表面処理金属磁性体、が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】本発明においては、これらのうち、得られる電磁波吸収材の重量を軽減し、電波吸収能を高めるために、金属酸化物磁性体を使用することが好ましく、例えば、Fe23 にMnO、ZnO、NiO、MgO、CuO、Li2 O等を組み合わせたスピネル型フェライト磁性体粉末、Cr及びNiを含むFe磁性合金、Ni−Zn系フェライト粒子、Mn−Mg−Zn系フェライト磁性体粉末、Mn−Zn系フェライト磁性体粉末等を好適に使用することができる。
【0018】本発明においては、添加する上記磁性体粉末中に存在する磁性粒子の粒子径は特に限定されず、例えば、平均粒径10μm程度の小粒子径のものであってもよく、また、例えば、100μm以上の磁性粒子を20〜100重量%含有するものであってもよい。上記磁性体粒子の粒子径の上限は特に設けない。上記フィルム又はボードの厚み以内であれば使用可能である。
【0019】上記磁性体粉末は、例えば、上記金属酸化物磁性体、上記金属磁性体等の磁性体のブロックを、スタンプミル機等を用いて粉砕し、乾式篩い分け法、気流分級、湿式篩い分け法、機械的湿式分級等により分級することによって得ることができる。上述のようにして得られる粉末は、通常、粒径分布がある。粒子径が100μm以上の磁性体粒子を20〜100重量%含有することを確かめるには、例えば、目開きが100μmメッシュ以上の篩を用いて粒子を篩えばよい。また、粒子径が100μm以上の磁性体粒子を、粒子径が100μm以下の微小粒子と所定割合で混合してもよい。
【0020】本発明に使用される上記無機バインダーとしては特に限定されず、例えば、石膏(硫酸カルシウム)、石灰、珪酸カルシウム、マグネシアセメント、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ローマンセメント、耐酸性セメント、耐火セメント、水ガラスセメント等の水硬化性無機バインダー等であってよい。強度や耐水性を必要とする場合にはポルトランドセメントやアルミナセメントを使用すればよい。また、軽量化、設置の際の作業性、電磁波吸収能を重視する場合には石膏が好ましい。
【0021】本発明に使用される上記有機バインダーとしては、フィルム形成性のバインダー樹脂等を広く使用可能であり、例えば、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビルニ共重合体(EVA)、ポリアクリル樹脂、フッ素含有共重合体、ポリアミド、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、合成ゴム、発泡ポリスチロール等の有機高分子樹脂等を挙げることができる。また、適宜、難燃化剤とともに用いてもよい。
【0022】上記無機バインダー又は上記有機バインダーと上記磁性損失を有する材料との配合量は、上記無機バインダー又は有機バインダーと上記磁性損失を有する材料との合計に対して、上記磁性損失を有する材料が10〜90重量%である。磁性損失を有する材料が90重量%を超えると、ボード又はフィルムの製造性が悪く、得られる製品の曲げ強度が低下して充分な物性を示さなくなるうえ、磁性材料の含有量が多くなって、重量が大きくなる。また、磁性損失を有する材料が10重量%未満であると、電磁波吸収能が充分ではなく、実用に適当でないので、上記範囲に限定される。また、上記磁性損失を有する材料との配合量は、使用するバインダーの種類に応じて適宜、上記範囲内で適切な値に設定することが好ましい。例えば、上記無機バインダーとして、石膏又は珪酸カルシウムを使用する場合には、無機バインダー55〜90重量部、磁性損失を有する材料45〜10重量部でよく、得られるボードを軽量化することができる。特に、上記無機バインダーが石膏である場合には、上記磁性損失を有する材料の配合量が少なくても、上記範囲内であれば充分な電磁波吸収能を得ることができる。
【0023】本発明に使用されるフィルム又はボードは、上述の材料を使用して、公知の手法により製造することができ、例えば、上記磁性損失を有する材料をバインダー樹脂に混ぜてフィルムに成型してもよく、又は、上記磁性損失を有する材料をアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の塗料用樹脂に混ぜ、塗布することにより形成した膜であってもよい;また、上記磁性損失を有する材料を焼石膏等の無機バインダーに、水、必要に応じて、繊維状導電体、発泡性フィラー、起泡剤、安定剤、分散剤、減水剤、骨材等を添加して、ミキサーで混合を充分に行ってスラリーとした後、石膏ボード用原紙の上に、上記スラリーを展開し、厚さを調整した後、更に、石膏ボード用原紙で挟んで加温し、上記スラリーを硬化、凝結乾燥させることによりボードに成型してもよい。
【0024】上記ボード又はフィルムの厚さは、通常、2〜50mm程度であるが、この範囲以外であることを妨げるものではない。一般には、2mm未満であると、電磁波吸収材としての物理的強度が弱く、50mmを超えると、重量が重くなる。また、建材として使用する場合に上記範囲外であると、取り付け作業性、納まり性が悪い。好ましくは、3〜25mmである。
【0025】本発明の方法の対象とする電磁波シールド室は、少なくとも15dB以上の電磁波シールド性能を有する電磁波シールド室である。本明細書中、このシールド性能を有するシールド室を高度シールド室という。電磁波シールド性能が15dB未満である場合には、空洞共振が必ずしも顕著ではなく、また、共振を防止してシールド性能の低下を防いだとしても、電磁波の遮断自体が充分に実現されておらず、高度のシールド性能を実現することができない。好ましくは20dB以上の電磁波シールド性能である。
【0026】また、このようなシールド室は、通常、その部屋の大きさによって定まる固有の共振周波数を有する。この共振モードは、次の式であられされる。
【0027】
【数1】

【0028】式中、α、β及びγは、空間の幅、長さ及び高さを表す。A、B及びCは、共振モード次数を表す。共振周波数は、空間定在波の場合、A、B及びCの三つの整数によって定まる多数の共振モードをもつ。一般的には共振モード次数が低次である程共振スペクトルは高いピークを示す。従って、最も強度の大きい基本振動モードの共振周波数を効果的に吸収することが共振の阻止に有効であるが、より高次の周波数も当然吸収の対象とすることができる。本発明においては、シールド室の固有の共振周波数は、少なくとも、最も強度の大きい共振周波数が10〜1000MHzの範囲であり、更に高次の共振モードも、この範囲内であることが好ましい。一般に、その内部に測定装置や機器等を設置するように施工される、例えば、MRI測定装置、NMR測定装置等を設置する部屋、電波暗室等のシールドルームの大きさからみて、シールド性能の低下に繋がるおそれのある共振周波数は、上記の範囲内であるといえる。例えば、縦380cm、横650cm、高さ320cmのシールド室は、63.9MHzの共振周波数をもつ。
【0029】シールド室内に発生するこのような共振周波数の定在波電磁波を効果的に吸収するためには、上述の、周波数帯域10〜1000MHzにおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードを、電磁界変動が大きくなる壁面に設置することが好ましい。共振周波数がわかるときは、共振モード次数がわかるので、電磁界変動が大きくなる壁面も予測可能である。もし、共振の予測がつかない場合には、少なくとも、フィルム又はボードを、箱型電磁波高度シールド室を形成する6壁面のうち少なくとも1壁面に設置する。1辺を互いに共有しあう2壁面に設置すると、なおよい。これは、図1に示すように、3つの基本振動モードTE110 、TE011 及びTE101 の磁界の様子をみればわかるように、1辺を互いに共有しあう2壁面に上記フィルム又はボードを設置すれば、いずれの基本振動モードにも対処することができるからである。また、共振電磁波のエネルギー源、共振電磁波の発生源が判明している場合には、その源に最も近隣する壁面に設置することが好ましい。一般に、このような共振源としては、コンピューターや各種機器に内蔵されているマイクロプロセッサー等でありうる。
【0030】本発明において、上述のフィルム又はボードをシールド室の内壁面に設置する場合に、設置面積は大きい方が好ましく、対象壁面の100%又は100%未満の面積に設置する。また、シールド室内に大面積の導体面を剥き出しにしないように設置することが好ましい。従って、例えば、フィルム又はボードを縞模様や市松模様状に配置するとよい。壁面に設置する以外に、例えば、電子機器の周辺に、これらを取り囲むように、又は、これらを収納するラック、棚、ボッスク等の内面やシールド室内什器等への設置もありうる。なお、壁面とは、本明細書中、壁のみならず、部屋を構成する床、天井等の面をも含むものとする。
【0031】本発明に使用する上述のフィルム又はボードは、10〜1000MHzにおいても磁気損失を発現する。従って、シールド室内の壁材として、一枚で、又は、二枚以上を重ねあわせて設置されることによって、磁界の透過吸収損失効果を利用することができる。また、このものは、比透磁率が通常50以下である。従って、特に、MRI測定室、NMR測定室等の強力な磁界を発生している環境においても、フェライト焼結体のように磁界発生部位に強引に引き寄せられることはなく、磁気シールドされた部屋に好適に使用することができる。
【0032】これらの場合、その使用の態様としては、典型的には、例えば、MRI測定装置が設置された磁気シールド室の内壁面の、隣接する2又は3の面に、特に、共振源に近接する面に、縞模様や市松模様状に、複数枚を重ね合わせて設置することができる。かくすることにより、シールド室の共振を抑制し、測定環境を向上させるとともに、外部への電磁界の漏洩を抑制し、又は、外部から侵入した共振周波数の電磁エネルギーを吸収し、シールド性能の低下を防ぐことが、シールド室の建設時であっても、又は、既設のシールド室の改修時であっても、容易かつ簡便に施工して実現することができる。
【0033】従って、本発明は、少なくとも15dB以上、好ましくは20dB以上の電磁波シールド性能を有するとともに固有の電磁波共振モードの周波数が10〜1000MHzの周波数帯域に属し、かつ、その内部又は壁面に、周波数帯域10〜1000MHzおいて磁性損失を有する材料を無機若しくは有機バインダー中に10〜90重量%含有してなるフィルム又はボードが設けられている共振抑制電磁波高度シールド室、特に、超伝導コイルを使用した精密測定機器設置のための部屋でもある。
【0034】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】実施例1平均粒子系が10μmのNi−Zn系フェライト粒子を、石膏中にそのフェライト粒子含量が25重量%となるように分散することでスラリーを得、次に、そのスラリーを二枚の紙の間に流し込み、加熱して、フェライト含有石膏ボード(幅90cm、高さ180cm、厚さ0.95cm)を得た。
【0036】磁気シールド室の共振周波数(63.9MHz)において、電磁シールド性能の低下が見られていたので、得られたフェライト含有石膏ボードを設置することにより共振している電磁波を吸収し、電磁波シールド性能の向上を検証した。
【0037】MRI装置が設置してある磁気シールド(電磁シールド)室(縦380cm、横650cm、高さ320cm)の側壁二面(小壁及び大壁)に上記のフェライト含有石膏ボードを設置し、シールド性能の測定をMIL−STD−285に準じた方法で行った。使用した測定機器は、受信機としてスペクトラムアナライザーHP8563E(商品名)(ヒューレットパッカード社製)、発信機としてシグナルジェネレーターHP8657A(商品名)(ヒューレットパッカード社製)、アンテナはバイコニカルアンテナ3104及び3108(商品名)(EMCO社製)を、それぞれ使用した。
【0038】フェライト含有石膏ボードを設置した場合、及び、未設置の場合について、63.9MHzにおける水平偏波のシールド性能を測定したところ、以下の結果を得た。
【0039】
扉部のシールド性能 窓部のシールド性能設置せず 64.2dB 47.2dB壁二面の50%に設置 52.5dB壁二面の70%に設置 58.6dB壁二面の100%に設置 80.2dB 67.5dB【0040】実施例2粒子の85重量%が250μm以上のMn−Mg−Zn系フェライト粒子(最大粒子径2.5mm)を、石膏中にそのフェライト粒子含有量が25重量%となるように分散することでスラリーを作製し、実施例1と同様にして、フェライト含有石膏ボード(幅100cm、高さ100cm、厚さ0.95cm)を得た。
【0041】電磁波シールド室(縦1000cm、横1500cm、高さ300cm)の側壁に上記のフェライト含有石膏ボードを市松模様状に設置(対象壁面についての設置面積率50%)し、実施例1と同様にしてシールド性能を測定した。測定周波数は次の3周波数(電磁シールド室の空洞共振周波数)で行った。
空洞共振モード TE130 34MHz TE111 53MHz TE103 及びTE113 151MHz【0042】フェライト含有石膏ボードを設置した場合、及び、未設置の場合について水平偏波のシールド性能を測定したところ、以下の結果を得た。単位はdBである。
【0043】
34MHz 53MHz 151MHz設置せず 40.3 41.2 39.5 壁一面に設置(短辺面) 47.5 47.0 45.2 壁一面に設置(長辺面) 51.6 50.9 49.2 壁二面に設置(短辺面と長辺面)59.2 57.5 54.8 【0044】実施例3組成がCr、Niを含むFe合金で、粒子の55重量%が125μmである偏平粒子(目開き125μmの篩で篩にかける55重量%が通過せずに篩上に残ることを確認した)を、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)中に磁性粒子が15重量%含有するように混練し、このコンパウンドを幅30cm、長さ90cm、厚さ3mmのシート状に押し出し成型した。
【0045】この磁性粒子を含むシートを電磁シールド室(縦300cm、横450cm、高さ250cm)の内部の三面(一つの稜を共有する三面)に貼りつけた場合(対象壁面についての設置面積率100%)と、全く貼りけつない場合について、電磁シールド室内部で発信させた電磁波を電磁シールド室内部で受信し、その強度を測定することによって、電磁シールド室内の共振現象の有無を調べた。測定は、実施例1と同様にして行った。ただし、受信機、発信機はともに電磁シールド内に設置し、発信用アンテナは電磁シールド室の中央部(床面から1mの高さ)、受信用アンテナは電磁シールド室内を移動させ、各周波数(電磁シールド室が共振している周波数)での最大受信強度を記録した。測定は、トラッキングジェネェレーター付きスペクトラムアナライザーHP8595(商品名)(ヒューレットパッカード社製)、バイコニカルアンテナ3104(商品名)(EMCO社製)を使用して送受信を行った。
【0046】磁性粒子を含むシートを設置した場合、及び、未設置の場合について水平偏波のシールド性能を測定したところ、以下の結果を得た。表1中、単位はdBである。
【0047】
【表1】

【0048】実施例4Ni−Zn系フェライトからなるフェライト焼結コア(高さ10mm、外径10mm、内径4mmのドーナツ型)を、石膏中にそのフェライト粒子含有量が25重量%となるように分散することでスラリーを作製し、実施例1と同様にして、フェライト含有石膏ボード(幅100cm、高さ100cm、厚さ1.5cm)を得た。
【0049】電磁波シールド室(縦1000cm、横1500cm、高さ300cm)の側壁に上記のフェライト含有石膏ボードを市松模様状に設置(対象壁面についての設置面積率50%)し、実施例1と同様にしてシールド性能を測定した。測定周波数は次の3周波数(電磁シールド室の空洞共振周波数)で行った。
空洞共振モード TE130 34MHz TE111 53MHz TE103 及びTE113 151MHz【0050】フェライト含有石膏ボードを設置した場合、及び、未設置の場合について水平偏波のシールド性能を測定したところ、以下の結果を得た。単位はdBである。
【0051】
34MHz 53MHz 151MHz設置せず 40.3 41.2 39.5 壁一面に設置(短辺面) 48.1 46.7 47.7 壁一面に設置(長辺面) 55.3 59.2 54.5 壁二面に設置(短辺面と長辺面)66.2 70.5 65.1 【0052】
【発明の効果】本発明の方法は、上述の構成よりなるので、シールドルーム内、特に、強力な磁界発生源が存在する高度シールド室に施工して、10〜1000MHz帯域の共振電磁波を吸収し、かつ、その外部への漏洩を低減し、シールド性能の低下を防止することができる。このため、従来のシールド室の施工では困難であった固有共振周波数帯域におけるシールド性能の低下を容易かつ簡便に抑制可能である。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成11年5月28日(1999.5.28)
【代理人】 【識別番号】100086586
【弁理士】
【氏名又は名称】安富 康男 (外2名)
【公開番号】 特開2000−340982(P2000−340982A)
【公開日】 平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願番号】 特願平11−150244