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【発明の名称】 電波吸収材、電波吸収体および電波暗室
【発明者】 【氏名】田畑 隆司

【氏名】森下 史康

【氏名】大沢 茂

【要約】 【課題】耐熱性・難燃性に優れ、軽量かつ加工成形が容易な電波吸収材を提供する。

【解決手段】電波吸収性試験用サンプルとして、市販のEタイプガラス繊維クロスを酸処理して製造されたシリカガラス繊維クロスを硝酸ニッケル10%溶液を噴霧した後、クローズ型管状炉で、ベンゼンスルホン酸を窒素ガスをキャリアとしてフローして表面にカーボンが被覆されたガラス繊維クロスを製造した。このクロスの電波吸収性能を調べたところ、図2のような特性が得られた。また、750(±5)℃に加熱しても重量減少は1%以下であり、電子レンジ(定格出力:500W、発振周波数:2450MHz)に入れてスイッチを入れたところ、赤熱したが、その後の重量減少は1%以下であった。従って、耐熱性にも優れ、強力な電波を照射しても、発熱の程度が小さいことが立証された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面にカーボンが被覆されたガラス繊維をシート状、またはボード状に成形したことを特徴とする電波吸収材。
【請求項2】 請求項1に記載の電波吸収材において、難燃性塗料を塗布したことを特徴とする電波吸収材。
【請求項3】 請求項1または2に記載の電波吸収材において、前記ガラス繊維の表面にカーボンをウィスカー状に成長させることにより前記カーボンの被覆を形成したことを特徴とする電波吸収材。
【請求項4】 請求項1〜3に記載の電波吸収材を裁断し、貼り合わせることにより、角錐形、円錐形、または楔形に成形したことを特徴とする電波吸収体。
【請求項5】 請求項4の電波吸収体を用いた電波暗室。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電波吸収材、これから製造した電波吸収体、及びこれを用いた電波暗室に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電波暗室に用いられる電波吸収体として通常用いられているもののほとんどは、発泡ウレタンなどの多孔性スポンジ状有機物質を基材として、カーボングラファイト、フェライト等の電波吸収性物質を種々の分散媒に分散させたものを基材に含浸させ、乾燥後、難燃性塗料等を塗布したものである(これをタイプ(i)という)。
【0003】その他一部には、発砲スチレン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、発泡セメント等を基材としてカーボングラファイト、フェライト等の電波吸収性物質を混合後、成形したものがある(これをタイプ(ii)という)。多くの場合、タイプ(i)、(ii)共、電波吸収効率を考えて、吸収するべき電波の波長により、様々な大きさの四角錐に成形されている。
【0004】タイプ(i)の中でも最も多く使用されているのは発泡ウレタンのスポンジ状シートを基材として、カーボングラファイトを含浸させたものである。これが多く利用される理由としては、型枠等を用いずに、シートを切断して貼り合わせることにより、様々な大きさの四角錐に成形しやすいこと、軽いことがあげられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらタイプ(i)は、難燃処理後も難燃性が不完全で、消防法による建築基準を満たすことができず、特別許可を申請しているのが実状である。また、電波吸収材は、電波を熱に変化させることにより電波を吸収するものであるため、一定以上の強力な電波を照射すると、発熱量が大きくなり過ぎて基材であるウレタン等が熱分解してしまうという欠点がある。
【0006】一方、タイプ(ii)は、型枠が必要なため、同型のものを大量に製造する場合は良いが、吸収したい波長や電波暗室の大きさの違い等で種々の大きさや形状のものが必要な場合は、それらに対応した全ての型枠が必要となる。また、この方法では、発泡スチレン等の樹脂系以外に発泡セメント等の無機材料を基材として用いることにより、耐熱・難燃性にすることが可能であるが、成形した電波吸収体の重量が大きいという欠点を持つ。電波暗室用の吸収体は、一般に低周波になるに従って、大型化(1〜5m程度の高さの四角錐が頻繁に使用されている)しており、重量が大きいと施工が困難になる。
【0007】本発明はこうした課題に鑑みなされたものであり、難燃性に優れ、強力な電波を照射しても発熱せず、しかも軽量に構成できる電波吸収材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態及び発明の効果】係る課題を解決するためになされた本発明の請求項1に記載の電波吸収材は、表面にカーボンが被覆されたガラス繊維をシート状、またはボード状に成形したことを特徴とする。
【0009】このように構成された電波吸収材は、基材であるガラス繊維は全くの不燃性であり、その表面を被覆するカーボンも空気(酸素)に触れなければ2000℃以上の高温にも耐えるため、耐熱性・難燃性が高い。しかもこの電波吸収材はシート状またはボード状にされているため、所望の大きさ・形に裁断することにより、様々な形の電波吸収体に成形することができる(具体的には請求項4)。なお、非発熱性については後述する実験に示す。
【0010】ここで使用されるガラス繊維の組成はR2O−SiO2で表されるケイ酸アルカリ(Rはナトリウム、カリウム、またはその混合系)ガラスやR2O−B2O3 −SiO2 で表されるホウケイ酸アルカリガラス、汎用品として用いられているガラス繊維であるEタイプガラス繊維、窓ガラス等で一般的に用いられているAタイプガラスを繊維化したものを硫酸、塩酸等の酸や大量の水で脱アルカリしたもの、宮崎県工業試験場が開発したシラスを原料としたシラスポーラスガラス繊維等、脱アルカリ処理により多孔化できるガラス繊維なら何でも良い。
【0011】紡糸方法は、一般に工業化されている方法ならどの方法も選択できる。請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の電波吸収材において、難燃性塗料を塗布したことを特徴とする。こうすると、電波吸収材の難燃性が更に高まる。
【0012】請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の電波吸収材において、前記ガラス繊維の表面にカーボンをウィスカー状に成長させることにより前記カーボンの被覆を形成したことを特徴とする。カーボンウィスカーは、他の樹脂と比較して燃焼しにくく、仮に燃焼しても有毒ガスを発生しにくいという利点があるため、強力な電波を照射した際に発生する熱に対する安定性が高く、強力な電波の吸収材として特に優れている。
【0013】なお、このような電波吸収材を製造するには次のようにすると良い。ガラス繊維または、ガラス繊維をシート状やボード状に成形したものを硫酸、塩酸、硝酸等の酸や、大量の水で脱アルカリ処理して得られた多孔質高ケイ酸ガラス繊維を鉄、ニッケル、マンガン、コバルト(有機物を炭化分解する際の触媒として作用する金属類)等のイオンを含む溶液で処理して、これらを多孔部分に担持した後、加熱雰囲気下でベンゼン若しくはベンゼンを含む物質等の有機ガスを通気することにより、ガラス繊維表面に有機ガスの炭化分解によるカーボンウィスカーを成長させる。
【0014】また、通気するガスはベンゼン等の芳香族等、加熱雰囲気下で鉄やニッケル等の触媒により、炭化分解できるものであれば、種類を問わないが、ベンゼン又はベンゼンと水素の混合ガス、ベンゼンスルホン酸等を用いることで効率よくカーボンウィスカーを成長させることができる。
【0015】請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3に記載の電波吸収材を裁断し、貼り合わせることにより、角錐形、円錐形、または楔形に成形したことを特徴とする電波吸収体をその要旨とする。なお、貼り合わせる際には、予め角錐(或は円錐形、楔形)に形成された基材に、裁断したシート状の電波吸収材を貼りつけても良いし、ボード状の電波吸収材を互いに貼り合わせて組み合わせ、電波吸収材のみから角錐(或は円錐形、楔形)を構成しても良い。
【0016】こうすれば、前述のタイプ(ii)において必要な型枠が不要であるため、製造が簡単であり、しかも電波吸収材自体が繊維の集合体であるため、軽量である。前述のように、ボード状の電波吸収材から構成すれば、中空となるため、電波吸収体自体の重量も軽量化できる。従って、この電波吸収体を用いて請求項5のごとく電波暗室を構成しても、その施工が楽となる。
【0017】
【実施例】電波吸収性試験用サンプルとして、市販のEタイプガラス繊維クロスを酸処理して製造されたシリカガラス繊維クロスを硝酸ニッケル10%溶液を噴霧した後、クローズ型管状炉で、ベンゼンスルホン酸を窒素ガスをキャリアとしてフローして表面にカーボンが被覆されたガラス繊維クロスを製造した。
[実験1]このガラス繊維クロスの誘電率を測定した結果、図1のような挙動を示し、一般的な誘電体電波吸収体の誘電率に近似した特性を示していることから電波吸収体材料として優れた効果があることがわかった。
[実験2]実施例の電波吸収材料で65mmの厚さの平板を構成し、これを金属板の前面に配置して反射係数を求めた。その結果が図2である(横軸が電波の周波数、縦軸が吸収性能)。周波数の増加とともに吸収性能が増加して(反射係数が低下して)900MHzで16dBを越える吸収性能が得らた。
[実験3]実施例のガラス繊維クロスを炉内温度を750(±5)℃調整した市販の電気炉中(発熱体はニクロム線)に入れて、1時間経過後、重量を測定したが、重量の減少は1%以下であった。従って、耐熱性にも優れていることが立証された。
[実験4]実施例のガラス繊維クロスを電子レンジ(定格出力:500W、発振周波数:2450MHz)に入れてスイッチを入れたところ、赤熱したが、その後の重量減少は1%以下であった。従って、強力な電波を照射しても、発熱の程度が小さいことが立証された。
[比較例1]ウレタン基材にカーボングラファイトを吸着させた電波吸収材40×50×50(mm)(難燃塗料を塗布後、通風の良い室内に1か月以上放置したもの)を45℃の乾燥器中で5日間乾燥後、良く乾燥させたシリカゲル乾燥剤を入れたデシケータ中に24時間放置養生した試料を、実験例3で用いたのと同じ条件で電気炉中に入れたところ、直ちに発火した。炉内から取り出すと炎は消えるが、悪臭の煙がしばらく続き、試料はボロボロになった。
[比較例2]ウレタン基材にカーボングラファイトを含浸させた電波吸収材(電波暗室用の汎用品で、難燃塗料が塗布されている市販品)を、実験4で用いた電子レンジに入れてスイッチを入れたところ、約1秒後に煙を出し始め、3秒後には発火した。これに伴い、いやな臭いが部屋中に立ちこめた。因みにカーボングラファイトを含浸させていないスポンジ状ウレタンについて同様の実験をしたところ、5分間経過後も何の変化も無かった。これは、このスポンジ状ウレタンが電波を吸収していないためであり、実施例のガラス繊維クロスが電波を吸収しているにも拘わらず、発火しないことが分かる。
【出願人】 【識別番号】391003598
【氏名又は名称】富士化学株式会社
【識別番号】593194410
【氏名又は名称】イー・アンド・シー・エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成11年4月16日(1999.4.16)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉 (外1名)
【公開番号】 特開2000−299590(P2000−299590A)
【公開日】 平成12年10月24日(2000.10.24)
【出願番号】 特願平11−109484