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【発明の名称】 電磁波シールド構築物
【発明者】 【氏名】山根 俊博

【氏名】山川 裕司

【氏名】沼田 茂生

【氏名】宮島 徹

【氏名】千葉 元

【氏名】松本 英一郎

【要約】 【課題】所望の電磁波シールド性能値を低位な性能の電磁波シールド層を併置して総合的に達成することで、コストの低減と工期の短縮とを図ることができる電磁波シールド構築物の提供を目的にしている。

【解決手段】本発明による電磁波シールド構築物は、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成しており、完全浮き構造から成る音響施設を備えている場合には、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、完全浮き構造の固定側構造体と浮き側構造体とにそれぞれ所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を個別に形成して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所望の電磁波シールド性能値を形成した電磁波シールド構築物において、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴とする電磁波シールド構築物。
【請求項2】 電磁波シールド構築物が完全浮き構造から成る音響施設を備え、完全浮き構造の固定側構造体と浮き側構造体とにそれぞれ所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を個別に形成して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド構築物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波シールド構築物に関し、特に、所望の電磁波シールド性能値を低位な性能の電磁波シールド層を併置して総合的に形成することを特徴とする電磁波シールド構築物に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の建築物は、情報化時代に対応してOA機器やパソコン等の高度な情報機器とこれを用いた情報システムの導入に十分に応えることが要求され、以下に記述する理由のために建物自体を電磁波シールドする傾向にある。即ち、情報化時代の建築物に求められる要求性能は、第1に外来からの不要輻射電波から建築物内部の機器を保護する「情報機器の誤動作防止」であり、第2に建築物内のコンピュータシステムや無線LANから外部に低レベルの電波として漏洩する情報の遮断を図る「情報セキュリテイの確保」であって、第3に隣接した建築物同士で無線LAN等を使用した場合の通信キャリアの相互干渉によるチャンネル不足を解消するために「無線周波数の高度利用」を達成することであった。
【0003】これらの電磁波シールド建築物は、前記した第1の各課題に対しては30MHz〜1GHzにおいて30dB〜40dBの電磁波シールドを施すことで対処し第2の課題にたいしては、重要会議室のような場合には60dBのような高度の電磁波シールドを要求されることもあるそして、マルチメディアの利用の進展やオフィス内において事業所PHSや無線LAN等の無線システムの利用が普及してくると、特定周波数帯域の輻輳状態が懸念されている第3の課題に対しては30MHz〜3GHzにおいて20dB程度以上の通信セルの確率が要求されることになる以上のように、建築物内のOA機器や無線システムの健全確実な作動を確保し機密漏洩を防止するためには建築物全体を所定の性能で完全に電磁波シールドしてしまうことが最善であり、建築物の躯体及び窓や出入口等の開口部に対しては電磁波シールド材を用いて施工し、建築物全体を電磁波シールド構造にすることが行なわれてきた。
【0004】従来の電磁波シールド工事は一般に、躯体工事の後に、内装工事に先立って電磁波シールド工事として建物全体ないしは特定のフロアを金属等の導電体材で完全に取り囲む工事を施工している。電磁波シールド性能が30dB程度の工事では、扉やガラス窓に電磁波シールド専用の部材を使用する必要がある。電磁波シールド専用の部材は、特注品であるためにコスト的に高いものになっている。さらに、30dBの性能を確保するための工事は、金属メッシュや導電性の不織布を用いて施工しているが、電磁波に対する漏洩対策が難しく、特に床と壁、天井と壁等の取り合い部の電磁波シールド処理は試行錯誤的になることが多く、結果的に工程の遅延が発生して工期上の問題があった。
【0005】又、電磁波シールド性能が60dB以上の高性能を要するシールドルーム等の工事では、極小さな隙間からの電磁波の漏洩によって所定の性能が得られなくなるところから、上記した一般的な建築部材での電磁波シールド工事は困難であり、電磁波シールド材として鉄板等を用いてパネル化したシールド部材を別途に作成し、天井、床、壁等の各部位に合わせた形態で施工を行っている。従って、60dB以上の高性能シールドルームは、コスト、施工性等の対応結果として比較的小さな空間を構築せざるを得なくなったり、通常のオフイス空間としても設計計画上の自由度や意匠性に乏しい建築物にならざるを得なくなっていた。
【0006】一方、情報通信の進展は、上記の性能要求をしていたオフイスビルの電磁波シールドの需要に留まらず他の建築物についても新たな性能を要求し始めている。即ち、スタジオに代表される音響施設は、ワイヤレスマイク等の音響システム、携帯電話、PHSを使用したインカム等の内線電話システム及び情報化時代に対応したOA機器、パソコン等の高度な情報機器のように電波を使用する設備機器が縦横に使用されている。音響施設は、本来目的とする音楽や音声を充分な品質で録音するために静寂な空間を担保する必要があるにも関わらず、最近は多くの人が所持している携帯電話やPHSが突然発信する音や携帯電話等による通話が業務の障害になってきている。このため、スタジオでは携帯電話の使用を規制しているが、外来者等に徹底されていないのが現状である。
【0007】従って、スタジオ等では一般に、本体構造に加えて遮音性能と電磁波シールドを達成する間仕切壁等で音響空間を構成しているが、音響的に静寂な空間を創る遮音構造を確立するために完全浮き構造による採用することが行われている。完全浮き構造は、図4に示すように、スタジオ20を防振吊りと防振支持から成る防振装置21で建物の構造体22から浮かせており、内部遮音層23への振動を遮断して固体伝搬音をスタジオ内部に伝えない2重構造になっている。スタジオ等での遮音工事は、完全浮き構造を採用しない場合を含めて、一般に他の工事とは別途に所定の工程で必要とする遮音構造を施工している。
【0008】一方、電磁波シールド構造は、電磁波シールドする対象物全体を1重のシールド層24で施工するものであるから、従来の電磁波シールド工事では完全浮き構造の工事とは別途に独立した工程の下に施工されることになり、完全浮き構造を採用したスタジオでは、結果的に建物の構造体22と耐火・遮音層25に跨って電磁波シールド層24を施工していた。
【0009】即ち、スタジオ20の天井や壁の構造は、図5に示すように構成されているもので、最初に電磁波シールド工事として耐火・遮音壁25の表面に電磁波シールド層24を貼設し、次いで吸音工事として電磁波シールド層の上にパネル取付横桟26に取り付けた吸音パネル27を設けて内部吸音層23を構成している。なお、完全浮き構造の場合には構造体21との間にグラスウール28を設けている。
【0010】以上のように従来の音響施設では、遮音構造と電磁波シールド構造とはそれぞれに適応した異なる材料を用いて別途に施工していたので、機能的には完全浮き構造を採用しても音響的にサウンドブリッジを生じて遮音性能の低下を引き起こす可能性があり、建築工事としては多くの部材を使用し工程の錯綜等も発生して工期の長期化とコストの上昇をもたらしていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点に鑑みてその改善を図ったものであり、所望の電磁波シールド性能値を低位な性能の電磁波シールド層を併置して総合的に達成することで、コストの低減と工期の短縮とを図ることができる電磁波シールド構築物の提供を目的にしている。
【0012】
【課題を解決するための手段】第1の発明による電磁波シールド構築物は、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としている。第2の発明による電磁波シールド構築物は、完全浮き構造から成る音響施設を備えており、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、完全浮き構造の固定側構造体と浮き側構造体とにそれぞれ所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を個別に形成して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明による電磁波シールドは、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としているものである。これによって、30dBレベルでは、従来のように単層の間仕切壁に金属メッシュや導電性不織布を隙間のないように綿密に貼設して電磁波シールド層を形成する必要をなくし、扉やガラス窓についても電磁波シールド専用の特注品の採用や扉やガラス窓と電磁波シールド層との導電接続も殊更入念に行う必要をなくして、コストや工期面で問題になっていた点を解決している。又、60dBレベルを達成するのに、単独で達成するためには、極小さな隙間についても問題になりパネル化工法が主になって、一般の建築工事の工程に組み込むことが困難になったり、必要空間を確保することや意匠性の面で問題になり、コスト上昇を招いていた点を、間仕切壁、開口部に加えて天井や床の多重化によって解消している。
【0014】図1は、本発明による電磁波シールドルームを模擬的に示す斜視図である。電磁波シールドルーム1は、デッキプレートで構成された床スラブと上部スラブとの間に2重の間仕切壁2、2'を設置して構成されている。間仕切壁の開口部には扉やガラス窓が設けられているが、扉3、3'、ガラス窓4、4'として2重に配置構成されている。
【0015】電磁波シールドの具体的な施工は、要求性能に合わせて従来から使用してきた部材を選択して対応しているもので、本発明に影響を与えるものでないから、以下の説明は電磁波シールド性能の違いで行うことにする。30dB程度の電磁波シールド性能を必要とする場合について述べると、図示の各間仕切壁2、2'には、それぞれに15〜20dB程度の電磁波シールド工事を施工している。15〜20dB程度の電磁波シールドでは、採用するシールド材も性能に対応した安価なものでを採用することができ、各種部材間の電磁波シールド工事においても接合する際の隙間等に細かい気を使わないで済むことから、工事が簡素化され労務の削減を図れる。又、扉には通常のスチール扉を使用しており、窓ガラスに関しても通常の建築部材である熱線反射ガラスを用いている。これによって扉や窓ガラスの購入価格が安価になるから、大幅なコスト削減を達成できる。
【0016】電磁波シールドルーム1は、15〜20dB程度に電磁波シールドされた間仕切壁と開口部を2重に設置しているものであるから、総合した電磁波シールド性能は、所定の電磁波シールド性能である30dB以上の性能を確保できることになり、間仕切壁と開口部とを2重構造にしても、電磁波シールド工事を施工する間仕切壁の強度等の検討による材料の選択を中心にして、電磁波シールド材料、扉、窓ガラス等の部材コストの低減及び電磁波シールド工事の労務費の減少によって、従来工法による電磁波シールド30dBの施工費以下に設定できるものである。
【0017】次に、60dB程度の電磁波シールド性能を必要とする場合について述べると、図示の各間仕切壁2、2'には、それぞれに30dB程度の電磁波シールド工事を施工している。30dB程度の電磁波シールドでは、特殊なパネル化工法を採用せずに一般の建築工程内で施工を組み込めることになり、通常のオフイス空間と同等の自由度と意匠性を確保することが可能になる。電磁波シールドルーム1は、30dB程度に電磁波シールドされた間仕切壁と開口部を2重に設置しているものであるから、総合した電磁波シールド性能は、所定の電磁波シールド性能である60dB以上の性能を確保できることになり、間仕切壁と開口部とを2重構造にしても、30dBの場合と同様にコスト的にも対応できるものである。
【0018】図2は、本発明による完全浮き構造から成るスタジオの断面図である。スタジオ10の浮き側構造体11は、防振吊りと防振支持から成る防振装置12で固定側構造体13から浮かせており、内部遮音層14への振動を遮断している。浮き側構造体11の天井と壁面には、導電性と遮音効果を発揮する鉛材15を装備してあり、接合面は導電性のテープ等で互いに接合して内面を電気的に一体の状態にして15〜20dBの電磁波シールド状態を形成している。又、固定側構造体13の内面全域には、電磁波シールド材16を貼設して15〜20dBの電磁波シールド状態を形成してある。
【0019】スタジオ10の遮音性能は、浮き側構造体11の鉛材15を含む内部遮音層14と固定側構造体13の遮音性能との合算で機能している。又、電磁波シールド性能は、上記の浮き側構造体11と固定側構造体13の各電磁波シールド性能を合算した総合的な値として機能するものであるから、本実施の形態では所定の遮音効果と30dB以上の電磁波シールド性能を確保することが可能になっている。
【0020】図3は、完全浮き構造で構成するスタジオの遮音及び電磁波シールド状態を示す部分断面図である。浮き側構造体11の天井と壁面には、パネル取付用横桟17等に取り付けられた吸音パネル18が配置されている。天井と壁の内面に装備された鉛材15は遮音機能も備えているので鉛材と吸音パネル18とは一体になってスタジオとして要求される遮音性能と15〜20dBの電磁波シールド状態を形成している。一方、固定側構造体13の内面全域には、導電性の不織布や金属メッシュ等の簡易な電磁波シールド材16を貼設して、浮き側構造体と同様に遮音性能として加味される性能と15〜20dBの電磁波シールド状態を形成している。
【0021】以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明による電磁波シールド構築物は、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としているから、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものでなく、本発明の上記の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然である。
【0022】
【発明の効果】第1の発明による電磁波シールド構築物は、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を多重に併置して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としているので、高性能シールドルームとして所望の空間を構築し、通常のオフイス空間としても設計計画上の自由度や意匠性の豊かな建築物としてコストの低減と工期の短縮を図りながら達成できる効果を発揮している。
【0023】第2の発明による電磁波シールド構築物は、完全浮き構造から成る音響施設を備えており、所望の電磁波シールド性能値を形成するために、完全浮き構造の固定側構造体と浮き側構造体とにそれぞれ所望の電磁波シールド性能値より低位な性能の電磁波シールド層を個別に形成して、所望の電磁波シールド性能値を総合的に形成することを特徴としているので、音響的にサウンドブリッジを生じて遮音性能の低下を引き起こさず、建築工事としては少ない部材で工程の錯綜等も発生させることなくコストの低減と工期の短縮を図れる効果を発揮している。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【出願日】 平成10年11月18日(1998.11.18)
【代理人】 【識別番号】100097423
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 良徳 (外1名)
【公開番号】 特開2000−151172(P2000−151172A)
【公開日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願番号】 特願平10−328314