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【発明の名称】 伝熱シート、半導体装置及び伝熱シートの製造方法
【発明者】 【氏名】奥富 功
【氏名】石渡 裕
【氏名】西村 隆宣
【氏名】山本 敦史
【氏名】草野 貴史
【氏名】田中 明
【氏名】荒木 浩二
【氏名】福吉 寛
【課題】放熱しやすく温度の上がりにくい半導体装置を提供する。

【解決手段】半導体チップを内蔵するモジュール型半導体素子とヒートシンクの間に伝熱シート12を挟む。この伝熱シート12は連続して接触する複数の粒子または繊維16と、これら粒子間または繊維16間に充填された高分子材料17とを有する。このことにより、半導体チップで発生する熱を伝熱シート12の粒子または繊維16を経由してヒートシンクに放熱できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 連続して接触する複数の粒子と、該粒子間に充填された高分子材料とを有することを特徴とする伝熱シート。
【請求項2】 単数あるいは複数の繊維と、該繊維間に充填された高分子材料とを有することを特徴とする伝熱シート。
【請求項3】 前記繊維の一部分と一部分が接触することを特徴とする請求項2記載の伝熱シート。
【請求項4】 前記粒子又は前記繊維が、銅、アルミニウム、銀、タングステン、炭化珪素、窒化珪素または銅、アルミニウム、銀若しくはタングステンを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項5】 前記高分子材料が、シリコンゴム、シリコンゲルまたは共役系結合を有する導電性ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項6】 前記粒子の体積率が18%以上であることを特徴とする請求項1、4、5のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項7】 前記繊維の体積率が13%以上であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項8】 前記粒子の粒度分布が2つ以上の極大値を有することを特徴とする請求項1、請求項4乃至6のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項9】 前記粒子の平均粒子径が150μm以下であることを特徴とする請求項1、請求項4乃至6と請求項8のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項10】 前記繊維の平均繊維径が120μm以下であることを特徴とする請求項2乃至5と請求項7のいずれか1記載の伝熱シート。
【請求項11】 半導体チップを内蔵するモジュール型半導体素子と、該モジュール型半導体素子に螺着するヒートシンクと、前記モジュール型半導体素子と前記ヒートシンクに密着する前記請求項1乃至10記載の伝熱シートとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項12】 粒子または繊維をシート状に成形する工程と、シート状に成形した前記粒子または繊維を焼結する工程と、焼結した前記粒子または繊維に高分子材料を含浸する工程と、含浸した前記高分子材料を硬化させる工程と、前記焼結した粒子または繊維を圧壊する工程とを含むことを特徴とする伝熱シートの製造方法。
【請求項13】 繊維をシート状に成形する工程と、成形した前記繊維に高分子材料を含浸する工程と、含浸した前記高分子材料を硬化させる工程とを含むことを特徴とする伝熱シートの製造方法。
【請求項14】 前記焼結する工程において、焼結する温度が前記粒子または繊維の融点の40%以上、80%以下であることを特徴とする請求項12記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項15】 前記焼結する工程において、真空中、水素雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする請求項12または請求項14記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項16】 前記含浸する工程において、減圧雰囲気中で含浸することを特徴とする請求項12から15のいずれか1記載の伝熱シートの製造方法。
【請求項17】 前記圧壊する工程において、圧縮中のシートの厚さの最小値が圧縮前の70%以下、30%以上であることを特徴とする請求項12、請求項14から16のいずれか1記載の伝熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大電流化が進むパワーICなどの半導体装置に係り、特に半導体装置の放熱用の高熱伝導シートとその高熱伝導シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体チップは数mAから数Aの微少電流の制御に用いられていたが、近年では数10Aから100A近くの電流の制御が可能となっている。そして、1つの絶縁性樹脂ケースの中に複数個の半導体チップを内蔵したモジュール型半導体素子では、数100Aから1000Aの電流制御が可能である。これらは圧延プラントや化学プラントにおける大型モータの駆動用電源や車両等に幅広く使用されている。ただ、半導体チップの大電流化は半導体チップからの発熱量の増大を招き、半導体チップから発生する熱をいかに除去し冷却するかが、モジュール型半導体素子の大電流化において大きな問題となっている。半導体チップの耐熱温度は高くても150℃程度であり、冷却が不十分であるために半導体チップが自体の温度の上昇により破損してしまうことがある。
【0003】図11は従来の半導体装置の断面図である。複数の半導体チップが、絶縁性樹脂ケース10と金属ベース6で密閉され、モジュール型半導体素子11を構成している。金属ベース6は水冷または風冷のヒートシンク13にボルト14により固定されており、半導体チップで発生した熱を金属ベース6を介してヒートシンク13に逃がす構造になっている。金属ベース6とヒートシンク13との間には熱伝導率に優れた伝熱性グリス15を塗布して接触熱抵抗を低減させる。この伝熱性グリス15は有機系グリスの中に銅や銀等の金属微粒子を混入した物で、金属ベース6とヒートシンク13との隙間に充填され接触熱抵抗を低減させる。しかし、銅の熱伝導率(約400W/m・K)や銀の熱伝導率(約420W/m・K)に比べてこの伝熱性グリスの熱伝導率は1〜5W/m・Kと低く、かつ、金属ベース6とヒートシンク13の間に均一に充填することが困難である。
【0004】このような対策として特開平7−307351号では上記伝熱性グリスの中に発砲成分を添加することが提案されている。金属ベースとヒートシンク間の充填性はかなり改善するが熱伝導率は逆に低下する傾向にあり、モジュール型半導体素子の冷却効率の向上には必ずしも有効ではない。またこのグリスは塗布後の硬化収縮等により隙間が生じやすく好ましくない。
【0005】また、特開平9−249861号では熱可塑性樹脂の中に伝熱成分としてセラミックスや金属の粒子を添加した接着剤が提案されている。しかし、接着時には金属ベースとヒートシンクは確かに密着しているが、熱可塑性樹脂が凝固した後では熱可塑性樹脂の凝固収縮により金属ベースと接着剤またはヒートシンクと接着剤との間に隙間ができる可能性が高い。また、隙間がほとんど無い状態でも接着剤の熱伝導率は1〜3W/m・K程度で、モジュール型半導体素子の冷却向上には必ずしも有効ではない。
【0006】さらに、特開平9−213385号では金属マトリックスの中に伝熱性非金属繊維を熱の温度勾配方向(モジュール型半導体素子では金属ベース/ヒートシンク方向)に配列した伝熱シートが提案されている。本材料は確かに優れた熱伝導率を示すが変形能に劣り、ボルト締結時でも金属ベースとヒートシンクとの隙間を完全に充填することができず、金属ベースと接着剤またはヒートシンクと接着剤との間に大きな隙間ができる。また、伝熱性非金属繊維の切断面は凹凸が激しく金属ベースやヒートシンクと良好な面接触状態が得られず、素材自体は優れた熱伝導率を有するが、金属ベースやヒートシンクとの接触の観点ではモジュール型半導体素子の冷却効率の向上には必ずしも有効ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上、従来の技術では、放熱が不十分であるために半導体装置が装置自体の発熱による温度上昇により破壊してしまう問題がある。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは放熱しやすく温度の上がりにくい半導体装置を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、半導体装置を低温化するための高熱伝導シートを提供することにある。
【0010】本発明のさらに他の目的は、その高熱伝導シートの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】図11に示した半導体装置において、金属ベース6とヒートシンク13との間は冶金的な接合ではなく、単にボルト14により機械的に接触しているために熱抵抗が大きくなっていると考えられる。そこで、発明者らはモジュール型半導体素子11とヒートシンク13の接触面内の接触熱抵抗分布とボルト締結圧力との関係を調べた。その結果、ボルト締結部の近傍のみには高い面圧が作用し接触熱抵抗が小さくなるが、ボルト締結部から離れるとほとんど面圧が作用せず熱抵抗が非常に大きくなることがわかった。さらに、ボルト締結圧力を上げるとモジュール型半導体の金属ベース6に反りが発生し、その結果、金属ベース6の中央部が浮き上がり面圧がほとんど0になることが判明した。このような対策として金属ベース6の裏面を凸型の加工し、発熱体である半導体チップ直下の金属ベース6部分をヒートシンク13に接触させる方法が考えられるが、ボルト14締結時に金属ベース6に反りが発生するためモジュール半導体素子に曲げ応力が作用し割れに至る可能性が高く好ましくない。そこで、モジュール型半導体素子11の冷却効率を向上させ、金属ベース6とヒートシンク13との間の接触熱抵抗を低減させるためには、両者の隙間を塞ぐような変形能に優れ熱伝導率の高い伝熱シートが不可欠であると考えるに至った。
【0012】発明者らは変形能に優れたマトリックスとしてシリコン(Si)ゴムを用い、その中に添加する伝熱成分として銅粒子と銅繊維を用いた伝熱シートを作製し、その熱伝導率と銅粒子と銅繊維の体積率との関係を測定した。その結果を図12に示す。丸が銅繊維であり、四角が銅粒子である。点線は銅の体積率と銅の熱伝導率の積であり、上限値を示すと考えられる。測定結果より銅粒子を添加した伝熱シートは体積率に関わらず小さい熱伝導率を示した。一方、銅繊維を添加した伝熱シートは、体積率によらずほぼ上限値を示した。銅粒子と銅繊維とでは同じ体積率でも、伝熱シートの熱伝導率は著しく異なることがわかった。
【0013】図13は銅粒子と銅繊維で伝熱シート熱伝導率が異なる理由を説明するための図である。
【0014】図13(a)は金属ベース6とヒートシンク13との間に伝熱シートとして銅16とシリコンゴム17とが並列に配置されてる。この場合、大半の熱は銅16を伝導する。シリコンゴム17は熱の伝導経路を狭めていると見なせる。銅16とシリコンゴム17の体積の比率を1:1とすると銅16の体積率は50%で、この伝熱シートの熱伝導率は伝熱シートがすべて銅とした場合の熱伝導率(いわゆる銅の熱伝導率)の50%になる。この考え方で図12の図中の点線で示した上限値を求めている。図13(b)は(a)とくらべ銅16の体積率が大きくなった場合である。体積率が大きくなった分だけ熱の伝導経路が広くなり、伝熱シートの熱伝導率は銅の熱伝導率に近づく。図12の銅繊維を使用した伝熱シートの実験結果は、熱の伝導が図13(a)と(b)のように行われていることを示している。すなわち金属ベース6からヒートシンク13への熱の伝導経路が銅繊維によって形成されていると考えられる。
【0015】図13(c)は金属ベース6とヒートシンク13との間に伝熱シートとして銅16とシリコンゴム17とが直列に配置されている。この場合、ヒートシンク13への熱の伝導経路のすべてがシリコンゴム17によって塞がれているので、熱は伝導せず、伝熱シートの熱伝導率はシリコンゴム17の熱伝導率程度に小さくなる。図13(d)は(c)と比べ銅16の体積率が大きくなった場合である。体積率が大きくなっても熱の伝導経路が塞がれていることには変わりがない。伝熱シートの熱伝導率は(c)と同様に小さい。図12の銅粒子の実験結果は、熱の伝導が図13(c)と(d)のように行われていることを示している。すなわち金属ベース6からヒートシンク13への熱の伝導経路がシリコンゴムによって塞がれていると考えられる。具体的には銅粒子が互いに接触しておらず、シリコンゴム中に分散していると考えられる。
【0016】このように、熱伝導率が低いシリコンゴムのような高分子材料に金属等の伝熱成分を添加して伝熱シートの熱伝導率を向上させるためには、添加した伝熱成分が金属ベース側からヒートシンク側まで連続して分布していることがきわめて重要である。
【0017】そこで、請求項1に係る発明の特徴は、連続して接触する複数の粒子と、これら粒子間に充填された高分子材料とを有する伝熱シートであることである。又、請求項2に係る発明は、単数あるいは複数の繊維と、これら繊維間に充填された高分子材料とを有することを特徴とする。更に、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の伝熱シートにおいて繊維の一部分と一部分が接触していることを特徴とする。
【0018】これらの特徴によれば、伝熱成分である粒子または繊維が伝熱シートの表から裏まで連続して存在するので、伝熱シートの熱伝導率を伝熱成分の熱伝導率と伝熱成分の体積率の積程度まで向上させることができる。また、粒子同士と繊維同士は固着しておらず接触しているだけなので伝熱シートとしては高分子材料並の変形能を有することができる。特に繊維はもともと曲げ方向に変形能を有し、伝熱シートの厚さ以上の長さを有するので、繊維同士が接していなくても上記の効果が得られる。また、伝熱シート中の繊維が曲げ方向の応力等で切断されても切断面同士は接触すると考えられる。このように繊維は粒子以上に扱いやすく優れた性質を持っている。
【0019】又、請求項4に係る発明は、粒子又は繊維が、銅、アルミニウム、銀、タングステン、炭化珪素、窒化珪素または銅、アルミニウム、銀若しくはタングステンを主成分とする合金であることを特徴とする。粒子又は繊維は当然のことながら熱伝導率に優れた材料が好ましい。また、ボルトの締結により金属ベースとヒートシンク間の隙間の形状に変形するためにはヤング率が小さい材料が適している。このような観点から図14には熱伝導率の大きい金属についてその熱伝導率とヤング率を並べて示す。また、粒子や繊維が市販されている、熱伝導率が大きいセラミックス材料である炭化珪素(SiC)と窒化珪素(Si34)も合わせて示す。これより熱伝導率が大きい金属としては銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)があるが、特に銀と銅とアルミニウムが大きい。ヤング率ではアルミニウムが最も小さいが、銀と銅も充分小さい。このように粒子または繊維としては銀、銅又はアルミニウムが適していると考えられる。また、これらを主成分とする合金が適しているのはもちろんである。一方、タングステンは熱伝導率は比較的大きいもののヤング率が大きいので変形性に劣るものの粒子または繊維としては充分使用できる。また、炭化珪素と窒化珪素はセラミックス材料の中では熱伝導率に優れた材料であり、銀と銅とアルミニウムに比べれば小さく、ヤング率も大きいが絶縁物であるので伝熱シートを絶縁物にできるので有用な材料である。なお、銀と銅とアルミニウムは、繊維加工時の冷間加工によりヤング率が大きくなるので、事前に焼き鈍し熱処理により軟化させておくことが効果的である。
【0020】また、請求項5に係る発明は、高分子材料が、シリコンゴム、シリコンゲルまたは共役系結合を有する導電性ポリマーであることを特徴とする。これらはボルトの締結によって金属ベースとヒートシンクとの隙間に馴染み充填され、半導体装置使用時にも硬化収縮を起きにくくすることができる。
【0021】更に、請求項6に係る発明は、粒子の体積率は18%以上で、好ましくは31%以上であることを特徴とする。又、請求項7に係る発明は、繊維の体積率は13%以上で、好ましくは21%以上であることを特徴とする。これらの体積率とすることで、伝熱シートの表から裏に縦断する連続した粒子または繊維のネットワーク構造をとりやすくする。
【0022】請求項8に係る発明は、粒子の粒度分布は2つ以上の極大値を有することを特徴とする。このことにより連続した粒子による熱の伝導可能な経路の数を増やすことが出来る。
【0023】又、請求項9に係る発明は、粒子の平均粒子径は150μm以下で、好ましくは120μm以下であることを特徴とする。更に、請求項10に係る発明は、繊維の平均繊維径が120μm以下で、好ましくは110μm以下であることを特徴とする。従って、これらの特徴により伝熱シートの厚さ方向の変形能を高分子材料の変形能と比較して大きく低下させずにすむことができる。ただし、これらの値は伝熱シートの厚さによって変動すると考えられる値である。これらは作製の容易さから伝熱シートの厚さを1mmに作製し、半導体装置には厚さ500μmに圧縮して設置した場合である。伝熱シートの厚さが厚くなれば、同じ平均粒径または平均繊維径でも変形による厚さの変化量は大きくなりうるので上記の値も大きくなると考えられる。また、粒子においては上記の範囲にあれば熱の伝導する経路の数を大きく減らすこともない。
【0024】請求項11に係る発明は、半導体チップを内蔵するモジュール型半導体素子と、このモジュール型半導体素子に螺着するヒートシンクと、モジュール型半導体素子とヒートシンクに密着する本発明の第1の特徴の伝熱シートとを有する半導体装置であることを特徴とする。このことによりモジュール型半導体素子で発生した熱を伝熱シートを経由してヒートシンクに放出できるので、モジュール型半導体素子内の半導体チップの温度を耐熱温度より低く抑えることができる。
【0025】また、請求項12に係る発明は、粒子または繊維をシート状に成形する工程と、シート状に成形した粒子または繊維を焼結する工程と、焼結した粒子または繊維に高分子材料を含浸する工程と、含浸した高分子材料を硬化させる工程と、焼結した粒子または繊維を圧壊する工程とを含むことを特徴とする。従って、粒子を使用する伝熱シートにあっては粒子間の接触を可能にし、繊維を使用する伝熱シートにあっては繊維の一部分と一部分の接触を可能にする。接触面は、焼結により溶着した粒子同士または繊維の一部分同士が圧壊によって再分離した際に生じる面であるので、この接触面同士の間に既に硬化した高分子材料が入り込むことはない。すなわち高分子材料を経由することのない粒子または繊維のみの熱の伝達経路を形成することができる。また、圧壊によっては高分子材料のマトリックスは破壊されないので、伝熱シートが分断されることは無い。又、請求項13に係る発明は、繊維を使用する伝熱シートの製造方法は、繊維をシート状に成形する工程と、成形した繊維に高分子材料を含浸する工程と、含浸した高分子材料を硬化させる工程とを含むことを特徴とする。従って、繊維においては繊維内を経由することによって接触面をも経由すること無く熱を伝達できるので、少ない工程で請求項12に係る発明と同様の効果を奏する。
【0026】更に、請求項14に係る発明は、焼結する工程において、焼結する温度が粒子または繊維の融点の40%以上、80%以下であることを特徴とする。従って、焼結温度が低すぎると金属粒子又は金属繊維が結合せず、逆に高すぎると焼結が進み焼結体の強度が大きくなりすぎたり、金属粒子によって閉ざされた気孔の発生を防止することができる。
【0027】又、更に、請求項15に係る発明は、焼結する工程において、真空中、水素雰囲気中または不活性ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする。従って、焼結の際の雰囲気中での金属粒子又は金属繊維の焼結を阻害せず、金属繊維においては繊維を脆くすることはない。
【0028】さらに、請求項16に係る発明は、含浸する工程において、減圧雰囲気中で含浸することを特徴とする。従って、未含浸部が無いようにすることで、高分子材料が含浸しない領域を発生させることなく、破壊の起点を生成しない。
【0029】最後に、請求項17に係る発明は、圧壊する工程において、圧縮中のシートの厚さの最小値が圧縮前の70%以下、30%以上であることを特徴とする。従って、加圧変形させる圧力を適切にすることができるので、圧力が低すぎるとネットワーク構造が破壊できず伝熱シートの変形能が低下したり、高すぎるとネットワーク構造が完全に破壊され伝熱シートの熱伝導率が低下したりすることがない。
【0030】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みとの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率の異なる部分が含まれるのはもちろんである。
【0031】図1は本発明の実施の形態に係る伝熱シートの断面図である。本発明の実施の形態に係る伝熱シートは、連続して接触する複数の粒子16と、粒子間に充填された高分子材料17とを有している。また、連続して接触する複数の粒子16は、単数あるいは複数の繊維であってもよく、この繊維は、繊維の一部分と一部分が接触していてもよい。粒子又は繊維16は、銅、アルミニウム、銀、タングステン、これらを主成分とする合金、炭化珪素または窒化珪素でつくられている。
【0032】図2は本発明の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。本発明の実施の形態に係る半導体装置は、半導体チップ1を内蔵するモジュール型半導体素子11と、このモジュール型半導体素子11に螺着するヒートシンク13と、モジュール型半導体素子11とヒートシンク13に密着する本発明に係る伝熱シート12とを有している。
【0033】モジュール型半導体素子11の構成を以下に述べる。半導体チップ1は絶縁基板4にハンダ層5により接合している。絶縁基板4は酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等の絶縁性セラミックス2の表裏面に銅やアルミニウム等の金属箔3を接合したものである。この絶縁基板4は銅やアルミニウム等の金属ベース6にハンダ層7により接合されている。半導体チップ1は相互にあるいは外部端子等にワイヤ・ボンディング8により結線されている。これらの部品は絶縁性ゲル9により封止され、絶縁性樹脂ケース10により密閉されている。
【0034】モジュール型半導体素子11の金属ベース6は水冷または風冷のヒートシンク13にボルト14により固定されており、半導体チップ1で発生した熱を絶縁基板4と金属ベース6を介してヒートシンク13に逃がす構造になっている。絶縁基板4や金属ベース6に用いられる材料は熱伝導率が高い材料が好ましく、一般には絶縁基板4の絶縁性セラミックス2としては酸化アルミニウムよりも熱伝導率の高い窒化アルミニウムが用いられ、金属ベース6としては銅が用いられている。一方、半導体チップ1を封止している絶縁性ゲル9と絶縁性樹脂ケース10は金属に比べて熱伝導率が著しく小さいため半導体チップ上方へは熱は逃げにくい。半導体チップ1、絶縁基板4、金属ベース6は各々ハンダ層5、7により冶金的に接合されているため、これらの部品間の接触熱抵抗はそれほど大きくない。金属ベース6、伝熱シート12とヒートシンク13との間は冶金的な接合ではなく、単にボルト14により機械的に接触している。機械的な接触における接触熱抵抗は互いに接触する部材の熱伝導率だけでなく、硬さ、表面粗さと接触面圧にも起因する。この理由からも金属ベース材料とヒートシンク材料には銅やアルミニウムが用いられる。
【0035】図3は本発明の実施の形態に係る半導体装置の断面の部分拡大図である。金属ベース6とヒートシンク13に伝熱シート12が密着している。金属ベース6に蓄積された熱は伝熱シート内の粒子または繊維を伝導してヒートシンク13に放出される。伝熱シート12が厚さ方向に多少圧縮されても粒子間または繊維間の接触は維持されるので、金属ベース6とヒートシンク13の形状に沿わせて変形することが可能である。
【0036】図4は本発明の実施の形態に係る伝熱シートの製造方法のフローチャート図である。本発明の実施の形態に係る伝熱シートの製造方法は、粒子または繊維をシート状に成形する工程(ステップS1)と、シート状に成形した粒子または繊維を焼結する工程(ステップS2)と、焼結した粒子または繊維に高分子材料を含浸する工程(ステップS3)と、含浸した高分子材料を硬化させる工程(ステップS4)と、焼結した粒子または繊維を圧壊する工程(ステップS5)とからなっている。なお、繊維を使用する場合にあっては、繊維をシート状に成形する工程(ステップS1)と、成形した繊維に高分子材料を含浸する工程(ステップS3)と、含浸した高分子材料を硬化させる工程(ステップS5)とに変更することが可能である。以下、工程毎に説明する。
【0037】(イ)ステップS1において粒子又は繊維をシート状に成形する。粒子を用いる場合は使用する粒子の粒径とシート成型時の加圧により粒子の体積率を調整する。特に繊維を使用する場合は、高い熱伝導率を得るために繊維を一方向に配列させた方が良いが変形性に劣るため、むしろ、綿状にランダムに配向させ、絡み合った繊維を加圧により成形する。図5(a)は粒子がシート状に成形された伝熱シートの断面図である。粒子同士はシート形状の型の中で圧接している。
【0038】(ロ)次に、ステップS2において成形されたシート状の粒子又は繊維を焼結するすることにより粒子又は繊維の焼結体を作製する。焼結温度によっても金属粒子の体積率を調整できる。焼結温度は、使用する粒子又は繊維の融点の40%以上、80%以下である。また、真空中、水素中又は不活性ガス雰囲気中で行う。図5(b)は粒子の焼結体の断面図である。粒子同士は溶着しており、伝熱成分が連結したネットワーク構造が得られる。
【0039】(ハ)ステップS3において焼結体の粒子間又は繊維間に液体状の高分子材料を図5(c)のように含浸させる。減圧雰囲気中で脱泡させることが重要である。
【0040】(ニ)ステップS4において液体状の高分子材料を図5(d)のように硬化させる。このことにより高分子材料のマトリックスと粒子または繊維の複合材料である伝熱シートが得られる。しかし、この状態では粒子または繊維の焼結体の機械的強度が高いために変形能に劣る。
【0041】(ホ)ステップS5においてこの伝熱シートを厚み方向に加圧することにより強制的に変形させる。この加圧変形により粒子または繊維の焼結体を図1のように破壊する。これにより伝熱シートが完成する。
【0042】(実施例1)図2に示す半導体装置を用いて、半導体チップ1に定格の130%の電流を流し半導体チップ1の温度を評価する。通電時の半導体チップ1の温度を正確に測定することは困難なため、ヒートシンク13の温度を測定し伝熱計算により半導体チップ1の温度を算出する。なお、実施例2以降すべてに、実施例1と同様の図2の半導体装置を用い、同様の方法により半導体チップ1の温度を算出している。
【0043】図6は伝熱シート中の銅粒子又は銅繊維の体積率と半導体チップの温度の関係を示す図である。図中の丸印は銅粒子を使用し高分子材料にシリコンゴムを使用した伝熱シートを用いた場合である。四角印は銅繊維を使用し高分子材料にシリコンゴムを使用した伝熱シートを用いた場合である。また、右上がり斜線で示した半導体チップ温度140から200℃の領域の帯は従来からある伝熱性グリスを用いた場合の温度範囲である。
【0044】銅粒子の場合は、体積率が10%以下では伝熱シートの熱伝導率は低く、半導体チップは過度に加熱され損傷する。20%以上の体積率では体積率の増加に伴い半導体チップの温度は低下し、伝熱シートの熱伝導率が大きくなることがわかる。体積率18%で半導体チップ温度を耐熱温度である150℃以下に低下させることができる。そして、体積率60%では100℃に抑えることができる。体積率が20%前後で急激に半導体のチップ温度が低下する原因は、体積率が20%前後に増加することではじめて金属ベース6からヒートシンク13までの3次元的に連続したネットワーク構造が造られるからである。
【0045】銅繊維の場合は、銅粒子の場合と比べて同じ体積率であれば半導体チップ温度が低くなる傾向を示している。体積率が10%でも半導体チップが熱暴走することはなく、13%で半導体チップ温度を耐熱温度である150℃以下に、体積率40%で半導体チップ温度を100℃に抑えることができる。これは銅粒子に比べ銅繊維の方が3次元的に連続したネットワーク構造をとりやすいためである。
【0046】設計上の最高温度である120〜130℃に半導体チップ温度を抑えるためには、銅粒子の場合で体積率で少なくとも31〜38%に、銅繊維の場合で少なくとも21〜25%に伝熱シートを構成すればよいことがわかる。
【0047】(実施例2)金属ベースをボルトによりヒートシンクに固定する場合、金属ベースとヒートシンクとの隙間の形状に伝熱シートが変形することが重要である。そこで伝熱シートの変形能を変化させる目的で、高分子材料にシリコンゴムを使用し、粒子に使用する銅の粒径を変えて伝熱シートを製作する。なお、銅粒子は充填性、焼結性、変形性の観点から酸化被膜の無い球状粒子が好ましく、粒径が50μm以下の銅粒子はガスアトマイズ法により、粒径が50μm以上の銅粒子は回転電極法により製造し分級して使用する。伝熱シートの銅粒子の体積率は30%一定とする。伝熱シートの厚さは1mmとする。これは金属ベースとヒートシンクとの隙間は最大でも500μmであるためである。
【0048】図7は伝熱シート中の銅粒子の平均粒径と半導体チップ温度の関係を示す図である。図中の丸印は体積率30%すべてに平均粒径を変えた銅粒子を使用した伝熱シートを用いた場合である。四角印は粒径が1μm程度の電解銅粒子を体積率で10%使用し、残りの体積率20%は平均粒径を変えた銅粒子を使用した伝熱シートを用いた場合である。
【0049】体積率30%すべてに平均粒径を変えた銅粒子を使用した場合は、半導体チップの温度は伝熱シートに使用した銅粒子の粒径が大きくなるほど上昇することがわかる。これは、伝熱シートの厚さが薄いため銅粒子の粒径が大きくなるにつれてボルト締結時の変形能が低下し、金属ベースとヒートシンクとの密着性が低下するためである。一方、伝熱シートは熱抵抗を増大させないために出来るだけ薄い方が好ましい。したがって、使用できる銅粒子の粒径の大きさには最適値が存在し、半導体チップ温度を耐熱温度である150℃以下に抑えるためには125μm以下に、設計上の最高温度である120〜130℃に半導体チップ温度を抑えるためには、大きくとも80〜90μm以下にすればよいことがわかる。
【0050】粒径が1μm程度の電解銅粒子を体積率で10%使用し、残りの体積率20%は平均粒径を変えた銅粒子を使用した場合は、測定したすべての範囲の平均粒径において、体積率30%すべてに平均粒径を変えた銅粒子を使用した場合よりも半導体チップ温度が10数℃低下する。これは球状の銅粒子同士はほとんど点接触であり、粒径の極端に小さい1μm程度の電解銅粒子により粒子同士の接点の数が増加し、熱の伝導経路の数が増加するため、伝熱効率が高くなっていると推察される。これより逆に伝熱効率を高めるためには、粒度分布が2つ以上の極大値を有するような粒子を使用すれば良いと考えられる。半導体チップ温度を耐熱温度である150℃以下に抑えるためには150μm以下に、設計上の最高温度である120〜130℃に半導体チップ温度を抑えるためには、大きくとも120〜100μm以下にすればよいことがわかる。
【0051】(実施例3)図8は本発明の実施の形態に係る伝熱シート中の銅繊維の平均繊維径と半導体チップ温度の関係を示す図である。高分子材料にはシリコンゴムを使用し、銅繊維の体積率は30%一定とした。図7の銅粒子の場合と同様に、銅繊維の繊維径が太くなるにつれて半導体チップ温度が上昇する傾向を示している。これは繊維径が太くなるにつれて伝熱シートの変形能が低下するためと考えられる。また、図8と図7で同じ値の平均繊維径と平均粒径で半導体チップ温度を比較してみると、平均繊維径が100μm以下の半導体チップ温度は、粒径が1μm程度の電解銅粒子を体積率で10%使用し、残りの体積率20%は平均粒径を変えた銅粒子を使用した場合の半導体チップ温度とほぼ一致し100℃前後の低い値であった。銅繊維を使用した伝熱シートが粒径1μm程度の電解銅粒子を添加しなくとも半導体チップ温度を下げることができるのは、銅繊維の方が3次元的に連続したネットワーク構造をとりやすいためであると考えられる。特に、平均繊維径が20μmの場合は半導体チップ温度を88℃に低下でき銅粒子と比較しても最も温度を低下させることができた。そして、さらに平均繊維径を小さくすれば半導体チップ温度が低下する傾向がみられる。一方、繊維径が150μm以上では、半導体チップ温度は200℃近くまで上昇する。これは銅粒子に比べて銅繊維は繊維径が太くなることにより変形能が著しく低下するためと考えられる。
【0052】最後に、半導体チップ温度を耐熱温度である150℃以下に抑えるためには平均繊維径を120μm以下に、設計上の最高温度である120〜130℃に半導体チップ温度を抑えるためには、大きくとも110〜100μm以下にすればよいことがわかる。
【0053】(実施例4)図9は本発明の実施の形態に係る伝熱シート中の高分子材料と半導体チップ温度の関係を示す図である。高分子材料を種々変えて伝熱シートを作製ししている。繊維には平均繊維径が約40μmの銅繊維を使用し、銅繊維の体積率は30%一定の条件で実施した。シリコンゴムとシリコンゲルについては多くの種類の市販品について測定した。これよりシリコンゴムとシリコンゲルを使用した場合の半導体チップ温度は90〜100℃の間である。また、シリコンゴムに比べてシリコンゲルは変形能に優れるが、ボルト締結時に過度に閉めすぎるとシリコンゲルが破損する場合があった。有機系高分子材料中に共役結合を含んだような導電性ポリマーの場合は半導体チップ温度を75℃程度まで低減することが可能である。これは導電性ポリマーはシリコンゴムとシリコンゲルと比べ熱伝導性に優れているためである。一方、熱可塑性樹脂の場合は半導体チップ温度は200℃に達し、マトリックス材としては適さないことがわかる。これは、熱可塑性樹脂を使用した伝熱シートはボルトで締結してもほとんど変形せず、金属ベースとヒートシンクに密着しないためである。
【0054】(実施例5)図10は本発明の実施の形態に係る伝熱シートの製造方法の焼結体の圧壊における変形前の厚さに対する変形量の比と半導体チップ温度の関係を示す図である。繊維には銅繊維を使用し、銅繊維の体積率は30%一定の条件で実施した。高分子材料にはシリコンゴムを使用する。横軸は変形前の初期の厚さに対する加圧変形時の厚さの比である。これより半導体チップ温度を低下させるためには厚さの比を30%以上、70%以下にすれば良いことがわかる。
【0055】(その他の実施の形態)上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきでない。この開示から当業者には様々な代替しうる実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになろう。
【0056】既に述べた実施の形態の説明においては、半導体装置についてのみ述べたが、駆動部を有するモータ、エンジン、発電機や発光装置である表示装置、レーザなどに適用してもかまわない。特に駆動部を有する装置では、本発明に係る伝熱シートは駆動部で発生する振動を低減して伝える効果も有する。また、半導体装置の構成部品としてモジュール型半導体素子についてのみ述べたが、これに限られず、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)やワークステーション(WS)等のCPUや半導体レーザなどの発光素子などにも適用してもかまわない。
【0057】さらに本発明に係る伝熱シートは粒子または繊維に導電性のある材料を選べば、導電性を有し、絶縁性の材料を選べば、絶縁性を有すという特徴を持つ。よって半導体素子の基板をアースに接続したいときは導電性を有する伝熱シートを使うことができ、基板をアースから浮かせたいときは絶縁性を有する伝熱シートを使うことができる。
【0058】この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【0059】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、放熱しやすく温度の上がりにくい半導体装置を提供することができる。
【0060】本発明によれば、半導体装置を低温化するための高熱伝導シートを提供することができる。
【0061】本発明によれば、その高熱伝導シートの製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】595019599
【氏名又は名称】芝府エンジニアリング株式会社
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成10年11月18日(1998.11.18)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外7名)
【公開番号】 特開2000−150742(P2000−150742A)
【公開日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願番号】 特願平10−328379