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【発明の名称】 拡散モデルのパラメータ抽出方法
【発明者】 【氏名】坂本 浩則
【課題】半導体の製造プロセスの計算機シミュレーションでの拡散モデルのパラメータの抽出方法において、適切なパラメータを迅速に抽出することを可能にする。

【解決手段】抽出対象となる多数種類のパラメータを物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと複数のグループ(基本パラメータを分類する第1のグループG1と、不純物−点欠陥ペア反応関係のパラメータを分類する第2のグループG2と、過渡的増速拡散関係のパラメータを分類する第3のグループG3と、不純物クラスタ関係のパラメータを分類する第4のグループG4)に分類し、各グループ内において分類されたパラメータの抽出順序を決定し、前記抽出順序に基づいて各グループからパラメータを抽出する。決定された前記抽出順序に基づいて抽出したパラメータのうち、抽出順序が後のパラメータの抽出が困難なときには、その直前に抽出したパラメータを次の順序のパラメータに変更する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 拡散モデルのパラメータの抽出方法であって、抽出対象となる多数種類のパラメータを物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと複数のグループに分類し、各グループ内において分類されたパラメータの抽出順序を決定し、前記抽出順序に基づいて各グループからパラメータを抽出することを特徴とする拡散モデルのパラメータ抽出方法。
【請求項2】 前記複数のグループは、基本パラメータを分類する第1のグループと、不純物−点欠陥ペア反応関係のパラメータを分類する第2のグループと、過渡的増速拡散関係のパラメータを分類する第3のグループと、不純物クラスタ関係のパラメータを分類する第4のグループである請求項1に記載の拡散モデデルのパラメータ抽出方法。
【請求項3】 前記複数のグループのそれぞれにおいて、決定された前記抽出順序に基づいて抽出したパラメータのうち、抽出順序が後のパラメータの抽出が困難なときには、その直前に抽出したパラメータを次の順序のパラメータに変更する請求項2に記載の拡散モデルのパラメータ抽出方法。
【請求項4】 拡散モデルのパラメータの抽出方法であって、抽出対象となる複数種類のパラメータのそれぞれについてのプロセス条件とパラメータの感度の相関を示すマトリクスを作成し、前記作成されたマトリクスを用いて、パラメータの抽出順序と各々のパラメータの抽出に用いるプロセス条件を決定することを特徴とする拡散モデルのパラメータ抽出方法。
【請求項5】 拡散モデルのパラメータの抽出方法であって、抽出対象となる多数種類のパラメータを物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと複数のグループに分類し、各グループ内において分類されたパラメータの抽出順序を決定し、かつ前記多数種類のパラメータのそれぞれについてのプロセス条件とパラメータの感度の相関を示すマトリクスを作成し、前記決定した抽出順序にしたがって抽出されるパラメータについて、前記作成されたマトリクスを用いて各パラメータの抽出に用いるプロセス条件を決定し、その決定したプロセス条件を満たすように、順次次のパラメータを抽出することを特徴とする拡散モデルのパラメータ抽出方法。
【請求項6】 抽出順序が後のパラメータのプロセス条件を選択することが不可能な場合には、その直前に抽出したパラメータを次の順序のパラメータに変更する請求項5に記載の拡散モデルのパラメータ抽出方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプロセスシュミレータにおける拡散モデルのパラメータの抽出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プロセスシミュレータとは、イオン注入プロセス、拡散プロセス等の半導体の製造プロセスを計算機を用いて計算し、デバイス内部の不純物プロファイル等の物理量や形状を予測するものである。このプロセスシミュレータにて拡散プロセスを計算するために用いられる拡散シミュレーションにおいて、拡散モデルのパラメータの値を高精度に抽出することはプロセスシミュレータの精度を向上する上で非常に重要である。パラメータの値は、主に深さ方向の不純物プロファイルの実測値を再現する様にして抽出される。従来では、再現すべき実測データとの誤差に対して最小二乗法を用いて、パラメータ値を一括して抽出する方法をとっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため、この従来技術には次のような問題点があった。その問題点とは、第1にパラメータ抽出に工数がかかることである。その理由は、多くの実測データを用いて全パラメータを同時に抽出するからである。また、このように全パラメートを同時に抽出しているため、別の実測データに対してパラメータを抽出する場合、再び全パラメータを再抽出する必要があり、抽出工数がさらに増大されてしまう。第2に広範囲のプロセス条件に対応したパラメータ値を抽出できないことがあることである。その理由は、パラメータ抽出に用いた実測データのプロセス条件に偏りがある場合、抽出されたパラメータ値の適用範囲に偏りができるからである。第3に限定されたプロセス条件に対するパラメータ値の最適化が困難であることである。その理由は、プロセス条件に対するパラメータの感度が判っておらず、最適化すべきパラメータが明確にならないからである。第4に物理的にありえないパラメータ値になる場合があるなど、適用範囲の広いパラメータが得られないことである。その理由は、拡散モデルは物理現象を完全にシミュレートできないために、前記したように最小二乗法で自動的に抽出するとパラメータ値にしわ寄せがきてしまうからである。
【0004】本発明の目的は、このような従来のパラメータ抽出法において生じている問題を解消し、適切なパラメータを迅速に抽出することを可能にしたパラメータ抽出方法を提供することものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のパラメータ抽出方法の第1の発明は、抽出対象となる多数種類のパラメータを物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと複数のグループに分類し、各グループ内において分類されたパラメータの抽出順序を決定し、前記抽出順序に基づいて各グループからパラメータを抽出することを特徴とする。ここで、前記複数のグループとしては、基本パラメータを分類する第1のグループと、不純物−点欠陥ペア反応関係のパラメータを分類する第2のグループと、過渡的増速拡散関係のパラメータを分類する第3のグループと、不純物クラスタ関係のパラメータを分類する第4のグループとすることが好ましい。また、前記複数のグループのそれぞれにおいて、決定された前記抽出順序に基づいて抽出したパラメータのうち、抽出順序が後のパラメータの抽出が困難なときには、その直前に抽出したパラメータを次の順序のパラメータに変更する処理を行うことが好ましい。
【0006】本発明のパラメータ抽出方法の第2の発明は、拡散モデルのパラメータの抽出方法であって、抽出対象となる複数種類のパラメータのそれぞれについてのプロセス条件とパラメータの感度の相関を示すマトリクスを作成し、前記作成されたマトリクスを用いて、パラメータの抽出順序と各々のパラメータの抽出に用いるプロセス条件を決定することを特徴とする。この第2の発明には、前記第1の発明を組み合わせて、抽出対象となる多数種類のパラメータを物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと複数のグループに分類し、各グループ内において分類されたパラメータの抽出順序を決定し、かつ前記多数種類のパラメータのそれぞれについてのプロセス条件とパラメータの感度の相関を示すマトリクスを作成し、前記決定した抽出順序にしたがって抽出されるパラメータについて、前記作成されたマトリクスを用いて各パラメータの抽出に用いるプロセス条件を決定し、その決定したプロセス条件を満たすように、順次次のパラメータを抽出する構成としてもよい。この構成において、抽出順序が後のパラメータのプロセス条件を選択することが不可能な場合には、その直前に抽出したパラメータを次の順序のパラメータに変更する処理を行うことが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。ここでは半導体の製造プロセスの計算機シミュレーションに関し、特に拡散シミュレーションで使用する拡散モデルのパラメータの抽出方法を説明する。図1は本発明におけるパラメータの抽出方法の基本方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態において抽出対象となるパラメータのリストを図2に示す。同図において、X,Yには、ボロン(B)、リン(P)、砒素(As)の不純物、及び格子間シリコン(I)と空孔格子間シリコン(V)が適用される。そして、図1のステップS1において、これらのパラメータを、物理的に基本的なものから、モデル依存性が強く物理的根拠が弱いものへと4つのグループに分類する。図3のブロック図を参照すると、第1のグループG1は基本パラメータであり、これにはパラメータのDX ,eX ,CX * ΔEX/Y が分類される。第2のグループG2は不純物−点欠陥ペア反応関係のパラメータであり、これにはパラメータのEXYbin ,fX が分類される。第3のグループG3は、過渡的増速拡散関係のパラメータであり、これにはパラメータのKX srf ,KX eq,KX sink,kX が分類される。第4のグループG4は、不純物クラスタ関係のパラメータである。このパラメータとしては、図2には示されていないが、Asクラスタの生成消滅定数(As cluster)、Bクラスタの生成消滅定数(B cluster) が分類される。
【0008】そして、図1のステップS2における前記第1のグループG1から第4のグループG4までのパラメータの抽出に際しては、各グループのそれぞれにおいてパラメータの抽出順序を決定し、かつこの抽出順序に従ってステップS3においてパラメータを抽出する。このパラメータを抽出したときに、抽出順序が後のパラメータ値が抽出できない場合には、先に抽出したパラメータの値を再調整する。このパラメータの抽出方法を次に説明する。
【0009】図4,図5はパラメータ抽出方法のフローチャートであり、先ず、図4のように、注入イオン、注入ドーズ量などのプロセス条件を変化させた実測データと、各プロセス条件に対して拡散モデルのパラメータ値を変動させた場合のシミュレーション結果とを比較することにより、プロセス条件とパラメータの感度のマトリクスを作成する(ステップS10)。このマトリクスは例えば図6(a)に示す通りであり、この点については後述する。次に、作成した前記マトリクスを用いて、各々のパラメータの抽出に用いるプロセス条件とパラメータの抽出順序を決定する(ステップ20)。
【0010】前記ステップS20におけるパラメータの抽出順序は、図5のように、先ず、1番目に抽出するパラメータとして、任意のパラメータ、例えば各グループ内で決定した抽出順序の最初の順序のパラメータを指定する(ステップS21)。次いで、このパラメータに対して感度の大きいプロセス条件の中で、着目しているパラメータ以外のパラメータに対して感度が小さいプロセス条件を選択する(ステップS22)。このプロセス条件が着目しているパラメータを抽出する時に使用するプロセス条件となる。なお、この時、プロセス条件が選択できない場合は、着目しているパラメータを1番目に抽出することが出来ないとし、別のパラメータ、例えば各グループ内で決定した抽出順序の次の順序のパラメータを1番目に抽出するパラメータとして変更し、ステップS21から再度同様な処理をやり直す。次に、2番目に抽出するパラメータとして、1番目に指定したパラメータ以外の任意のパラメータを指定する(ステップS23)。このパラメータについても1番目に指定したパラメータと同様にしてパラメータを抽出する時に使用するプロセス条件を選択し(ステップS24)、選択できない場合は別のパラメータを2番目に抽出するパラメータとして指定しステップS23から繰り返す。もし、全てのパラメータが2番目に抽出するパラメータとできない場合は、1番目のパラメータの指定を別のパラメータとしてステップS21から繰り返す。同様にして3番目以降のパラメータについてもプロセス条件を選択し、プロセス条件とパラメータの抽出順序を決定する。
【0011】図6(a)は前記ステップS10で作成されたマトリクスの一例である。ここでは、不純物B,P,Asのドーズ量が高、中、低のプロセス条件に対して、各パラメータKI sink,KI srf ,Bclucter ,Ascluster ,EAsI bin ,EAsV bin ,fAsI ,k(311) ,keq(311) が各プロセス条件に対してどのような感度を有しているかをマトリクスに作成したものである。同図において、◎,○,△,×の順に感度が高から低になっていることを示している。
【0012】したがって、今、図1に示した第1のグループの基本パラメータを抽出した後、第2のグループから第4のグループのパラメータを抽出する際に図4の抽出方法を適用し、ステップS10において図6(a)のマトリクスを作成し、かつ図5に示した抽出方法を適用する。なお、ここでは、第2のグループの各パラメータはAsクラスタの生成消滅定数と同時に抽出するものとし、抽出を後回しにする。そこで、先ず、1番目に抽出するパラメータとして、第3のグループのパラメータKI srf を指定し、図6(a)のマトリクスを参照して、前記パラメータKI srf に対して感度の大きいプロセス条件である、B低ドーズ量、P低・中ドーズ量の中で、着目しているパラメータKI srf 以外のパラメータに対して感度が小さいプロセス条件を選択する。ここでは、他のパラメータの◎が存在しないB低ドーズ量、P低ドーズ量を選択する。このプロセス条件が着目しているパラメータを抽出する時に使用するプロセス条件となる。なお、この時、プロセス条件が選択できない場合は、着目しているパラメータを1番目に抽出することが出来ないとし、別のパラメータを1番目に抽出するパラメータとして指定し、ここまでのステップS21からやり直す。
【0013】次に、抽出するパラメータとして、前記B低ドーズ量、P低ドーズ量に影響を与えないプロセス条件のパラメータを抽出する。ここでは、パラメータとしてk(311) ,keq(311) を抽出し、プロセス条件として、P中ドーズ量を選択する。ここで、次のパラメータのプロセス条件が選択できないときには、別のパラメータを抽出し、同様な処理を実行する。ここでは、前記パラメータが抽出できたので、さらに次のパラメータKI sinkを抽出し、かつそのプロセス条件として、P高ドーズ量を選択する。なお、以上述べた次、及び次々のパラメータの抽出に際し、次に抽出するパラメータのプロセス条件が選択できない場合には、最初に抽出したパラメータを変更することになり、ステップS21からやり直すことになる。最後に、Bクラスタの生成消滅定数,Asクラスタの生成消滅定数の各パラメータを抽出し、かつこのとき同時に保留していたパラメータEAsI bin AsV bin ,fAsI を抽出し、それぞれのプロセス条件として、B高ドーズ量、As高ドーズ量を選択する。この場合でも、プロセス条件が選択できない場合には、最初のステップから再度ステップ処理を実行することになる。
【0014】なお、以上のパラメータ抽出工程は、図3に矢印で示されている通りである。また、この抽出工程によって決定されたパラメータの抽出順序、及び抽出に用いるプロセス条件は図6(b)に示す通りとなる。なお、図6(b)に示す各パラメータとプロセス条件から得られる不純物プロファイル■〜■を図7■〜■に示す。
【0015】ここで、前記実施形態では、本発明の第1及び第2の発明を組み合わせた状態の実施形態として説明したが、これらの第1及び第2の発明にかかるパラメータの抽出方法は、それぞれ独立した方法として構築することが可能であることは言うまでもない。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように第1の発明のパラメータ抽出方法によれば、次に列挙する作用効果を得ることができる。第1にパラメータ抽出を短時間で行うことが可能である。その理由は、後の順序で決定するパラメータが、以前に決定したパラメータの精度に影響を及ぼさないような、パラメータ抽出順序に従っているために、パラメータ抽出を繰り返す必要が最小限に抑えられるからである。第2に適用範囲の広いパラメータの値を得ることが可能である。その理由は、物理的に基本的なパラメータを先に決定することで、モデル依存性の強いパラメータの値の影響を受けずに、物理的に基本的なパラメータの値を決定できるからである。第3に別の実測データに対してパラメータを抽出する場合、一部のパラメータの再抽出で十分であることである。その理由は、第2の効果により基本的なパラメータの値の適用範囲が広いためにモデル依存性の強いパラメータの値のみ再抽出すればよいからである。
【0017】また、第2の発明のパラメータ抽出方法、及び第1及び第2の発明のパラメータ抽出方法を組み合わせた発明によれば、前記第1の発明による効果に加えて、第4に広範囲のプロセス条件に対応可能なパラメータ値を得ることが可能なパラメータ抽出方法が得られる。その理由は、パラメータがシミュレーション結果に影響を及ぼすプロセス条件が判明しており十分な精度を得るため実測データを正確に限定できるからである。第5に限定されたプロセス条件に対するパラメータ値の最適化が容易なパラメータ抽出方法が得られる。その理由は、あるプロセス条件に対して最適化すべきパラメータが明確になっているからである。
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成10年8月31日(1998.8.31)
【代理人】 【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
【公開番号】 特開2000−77343(P2000−77343A)
【公開日】 平成12年3月14日(2000.3.14)
【出願番号】 特願平10−245485