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【発明の名称】 電子ビーム源
【発明者】 【氏名】浜 垣 学

【氏名】多 田 重 和

【要約】 【課題】プラズマ発生用多孔陽極に熱損傷を生じさせることなくプラズマ発生用多孔陽極に流れる放電電流を大電流化することができる電子ビーム源を提供する。

【解決手段】プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間には第2スイッチング素子SW2を介して放電電源12が接続され、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマを発生させることができる。また、補助陽極2には第1スイッチング素子SW1を介して放電電源12が接続され、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間でプラズマ(種火)を保持することができる。第2スイッチング素子SW2のON/OFFに連動して第1スイッチング素子SW1をOFF/ONすることにより、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間またはプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間のそれぞれでプラズマを交互に保持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】プラズマ発生用陰極と、前記プラズマ発生用陰極との間でプラズマを発生させるとともに発生したプラズマ中の電子を透過させるための複数の貫通孔を有するプラズマ発生用多孔陽極と、前記プラズマ発生用多孔陽極との間で前記各貫通孔を介して引き出された電子を加速するとともに加速された電子を透過させるための複数の貫通孔を有する電子加速用多孔電極と、前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間に印加される電圧の大きさを切り替えるための電圧切替素子を有する電気回路と、前記電気回路を制御して前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間で発生するプラズマの状態を間欠的に変化させる電気回路制御装置とを備えたことを特徴とする電子ビーム源。
【請求項2】前記電気回路の前記電圧切替素子はスイッチング素子であることを特徴とする請求項1記載の電子ビーム源。
【請求項3】前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間に配置されるとともにプラズマを透過させるための貫通孔を有する補助陽極をさらに備え、前記電気回路は前記プラズマ発生用陰極と前記補助陽極との間に印加される電圧を切り替えるための補助電圧切替素子をさらに有し、前記電気回路制御装置は前記電気回路を制御して前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間または前記プラズマ発生用陰極と前記補助陽極との間のそれぞれでプラズマを交互に保持することを特徴とする請求項1記載の電子ビーム源。
【請求項4】前記電気回路の前記補助電圧切替素子はスイッチング素子であることを特徴とする請求項3記載の電子ビーム源。
【請求項5】前記補助陽極はプラズマを透過させるための第1貫通孔を有する第1補助陽極部と、前記第1補助陽極部に隣り合うよう配置されるとともにプラズマを透過させるための第2貫通孔を有する第2補助陽極部とからなり、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とはその開口面積が互いに異なることを特徴とする請求項3記載の電子ビーム源。
【請求項6】前記第1貫通孔は前記プラズマ発生用多孔陽極側から前記プラズマ発生用陰極側へのガスの流入を防止することができる程度の開口面積を有し、前記第2貫通孔は前記プラズマ発生用陰極と前記第2補助陽極部との間でプラズマを安定に保持することができるよう前記第1貫通孔の開口面積に比べて十分大きな開口面積を有することを特徴とする請求項5記載の電子ビーム源。
【請求項7】前記プラズマ発生用多孔陽極はその表面に酸化防止用のめっきが施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の電子ビーム源。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子ビーム源に係り、とりわけ半導体等のドライエッチングや成膜、プラズマ洗浄等の各種のプラズマ処理に用いられるプラズマ発生用電子ビーム源に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体等のドライエッチングや成膜、プラズマ洗浄等の各種のプラズマ処理に用いられるプラズマ発生用電子ビーム源としては、例えば特開平6−302291号公報に記載された電子ビーム源が知られている。
【0003】前記特開平6−302291号公報に記載された電子ビーム源は、プラズマ発生用陰極と、プラズマ発生用陰極との間でプラズマを発生させるとともに発生したプラズマ中の電子を透過させるための複数の貫通孔を有するプラズマ発生用多孔陽極と、プラズマ発生用多孔陽極との間でプラズマ発生用多孔陽極の各貫通孔を介して引き出された電子を加速するとともに加速された電子を透過させるための複数の貫通孔を有する電子加速用多孔電極とを備えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の電子ビーム源では、電子が透過するプラズマ発生用多孔陽極の厚さを所定の大きさ(約0.5〜1mm程度)以下に抑える必要があるので、プラズマ発生用多孔陽極内に冷却機構を組み込むことができず、またプラズマ発生用多孔陽極の熱伝導特性が悪くなり、このためプラズマ発生用多孔陽極の中心部分を十分に冷却することができない。従って、プラズマ発生用多孔陽極に流れる放電電流を所定の大きさ(約5A程度)以上にした場合にはプラズマ発生用多孔陽極に過大な熱負荷が加えられ、プラズマ発生用多孔陽極に熱損傷が生じやすいという問題がある。
【0005】本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、プラズマ発生用多孔陽極に熱損傷を生じさせることなくプラズマ発生用多孔陽極に流れる放電電流を大電流化することができる電子ビーム源を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴は、プラズマ発生用陰極と、前記プラズマ発生用陰極との間でプラズマを発生させるとともに発生したプラズマ中の電子を透過させるための複数の貫通孔を有するプラズマ発生用多孔陽極と、前記プラズマ発生用多孔陽極との間で前記各貫通孔を介して引き出された電子を加速するとともに加速された電子を透過させるための複数の貫通孔を有する電子加速用多孔電極と、前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間に印加される電圧の大きさを切り替えるための電圧切替素子を有する電気回路と、前記電気回路を制御して前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間で発生するプラズマの状態を間欠的に変化させる電気回路制御装置とを備えたことを特徴とする電子ビーム源である。
【0007】本発明の第2の特徴は、上述した本発明の第1の特徴において、前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間に配置されるとともにプラズマを透過させるための貫通孔を有する補助陽極をさらに備え、前記電気回路は前記プラズマ発生用陰極と前記補助陽極との間に印加される電圧を切り替えるための補助電圧切替素子をさらに有し、前記電気回路制御装置は前記電気回路を制御して前記プラズマ発生用陰極と前記プラズマ発生用多孔陽極との間または前記プラズマ発生用陰極と前記補助陽極との間のそれぞれでプラズマを交互に保持することを特徴とする電子ビーム源である。
【0008】本発明の第3の特徴は、上述した本発明の第2の特徴において、前記補助陽極はプラズマを透過させるための第1貫通孔を有する第1補助陽極部と、前記第1補助陽極部に隣り合うよう配置されるとともにプラズマを透過させるための第2貫通孔を有する第2補助陽極部とからなり、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とはその開口面積が互いに異なることを特徴とする電子ビーム源である。なお、本発明の第3の特徴においては、前記第1貫通孔は前記プラズマ発生用多孔陽極側から前記プラズマ発生用陰極側へのガスの流入を防止することができる程度の開口面積を有し、前記第2貫通孔は前記プラズマ発生用陰極と前記第2補助陽極部との間でプラズマを安定に保持することができるよう前記第1貫通孔の開口面積に比べて十分大きな開口面積を有することが好ましい。
【0009】本発明の第1の特徴によれば、プラズマ発生用陰極とプラズマ発生用多孔陽極との間で発生するプラズマの状態を間欠的に変化させることにより、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用多孔陽極に放電電流が流れ続けないようにすることができるので、プラズマ発生用多孔陽極に加えられる熱負荷を低減することができ、このためプラズマ発生用多孔陽極に熱損傷を生じさせることなくプラズマ発生用多孔陽極に流れる放電電流を大電流化することができる。
【0010】本発明の第2の特徴によれば、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極と補助陽極との間でプラズマを保持するようにしているので、連続運転時における待機状態からプラズマ処理状態への移行をスムーズに行うことができ、このためプラズマ処理状態におけるプラズマの再現性を高めることができる。
【0011】本発明の第3の特徴によれば、開口面積の異なる貫通孔を有する少なくとも2つの補助陽極部から補助陽極を構成し、このうち開口面積の大きな貫通孔を有する補助陽極部とプラズマ発生用陰極との間でプラズマを保持するようにしているので、プラズマ処理状態におけるプラズマ発生用陰極およびプラズマ発生用多孔陽極間の電圧と、プラズマ処理状態が行われていない待機状態におけるプラズマ発生用陰極および補助陽極間の電圧とが大きく変動せず、このため連続運転時におけるプラズマ処理状態から待機状態への移行をスムーズに行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】第1の実施の形態以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1および図2は本発明による電子ビーム源の第1の実施の形態を示す図である。ここで、図1は電子ビーム源を備えた電子ビーム励起プラズマ発生装置の全体構成を示す概略図、図2は図1に示す電子ビーム源の作用を説明するためのシーケンス図である。
【0013】まず、図1により、電子ビーム源を備えた電子ビーム励起プラズマ発生装置の全体構成について説明する。
【0014】図1に示すように、電子ビーム励起プラズマ発生装置10は容器10aを備え、この容器10a内には試料7に向けて電子ビームを放出するための電子ビーム源として、プラズマ発生用陰極1と、プラズマを透過させるための貫通孔2aを有する補助陽極2と、プラズマ中の電子を透過させるための複数の貫通孔3aを有するプラズマ発生用多孔陽極3と、プラズマ発生用多孔陽極3の各貫通孔3aに対応して設けられプラズマ中の電子を透過させるための複数の貫通孔4aを有する電子加速用多孔電極4とが配置されている。
【0015】また、プラズマ発生用陰極1、補助陽極2、プラズマ発生用多孔陽極3および電子加速用多孔電極4には電気回路5が接続されている。電気回路5は3つの電源11,12,13と、3つのスイッチング素子SW1,SW2,SW3と、2つの抵抗14,15とを有し、このうちスイッチング素子SW1,SW2,SW3は電気回路制御装置6により制御されるようになっている。
【0016】ここで、プラズマ発生用陰極1には加熱電源11が接続され、通電によりプラズマ発生用陰極1が加熱されるようになっている。また、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間には第2スイッチング素子(電圧切替素子)SW2を介して放電電源12が接続され、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマを発生させるようになっている。さらに、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間に配置された補助陽極2には第1スイッチング素子(補助電圧切替素子)SW1および抵抗15を介して放電電源12が接続され、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間でプラズマ(種火)を保持することができるようになっている。さらにまた、プラズマ発生用多孔陽極3と電子加速用多孔電極4との間には第3スイッチング素子SW3を介して加速電源13が接続され、プラズマ発生用多孔陽極3と電子加速用多孔電極4との間でプラズマ発生用多孔陽極3の各貫通孔3aを介して引き出された電子を加速するようになっている。
【0017】なお、第2スイッチング素子SW2はプラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間に印加される電圧の大きさを切り替えるためのものであり、この第2スイッチング素子SW2をON/OFFすることにより、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマを発生/消滅させることができる。また、第1スイッチング素子SW1はプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間に印加される電圧の大きさを切り替えるためのものであり、第2スイッチング素子SW2のON/OFFに連動して第1スイッチング素子SW1をOFF/ONすることにより、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間またはプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間のそれぞれでプラズマを交互に保持することができる。
【0018】また、容器10aには供給口41a,41bおよび排出口41cが設けられ、プラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間の領域には供給口41aを介してアルゴンガス(Ar)が供給され、また電子加速用多孔電極4と試料7との間の領域には供給口41bを介してアルゴンガス(Ar)や酸素ガス(O2)、メタンガス(CH4)等が供給されるようになっている。なお、供給口41bを介して酸素ガス(O2)が供給されるような場合には、プラズマ発生用多孔陽極3に放電電流が流れていない待機状態においてプラズマ発生用多孔陽極3および電子加速用多孔電極4の表面が酸化して絶縁物が生じやすいので、このような場合には、プラズマ発生用多孔陽極3および電子加速用多孔電極4の表面にニッケルめっきまたは金めっき等の酸化防止用のめっきを施すようにするとよい。
【0019】さらに、容器10aのうち補助陽極2と試料7との間の領域の内周面には絶縁部材40が被覆され、放電電流の大半がプラズマ発生用多孔陽極3に流れるようになっている。また、容器10aとプラズマ発生用陰極1、補助陽極2、プラズマ発生用多孔陽極3および電子加速用多孔電極4との間にも絶縁部材40が挿入されている。
【0020】さらにまた、容器10aの壁面内および補助陽極2内にはプラズマにより加熱される箇所を水冷するための冷却機構(図示せず)が設けられている。
【0021】次に、このような構成からなる本発明の第1の実施の形態の作用について図1および図2により説明する。
【0022】まず、第1スイッチング素子SW1をON、第2スイッチング素子SW2をON、第3スイッチング素子SW3をOFFとした状態で、加熱電源(Vf)11、放電電源(Vd)12および加速電源(Va)13の全てをONとする(時点(A))。これにより、加熱電源11によりプラズマ発生用陰極1に電圧Vfが与えられ、プラズマ発生用陰極1が加熱される。また同時に、放電電源12によりプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間およびプラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間に電圧Vdが与えられ、放電電流によりプラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間で供給口41aから供給されたアルゴンガス(Ar)のプラズマが発生する。ただし、この時点では、第1スイッチング素子SW1をONとしているので、プラズマ発生用陰極1からの放電電流の大半が補助陽極2側に流れ、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマが安定に発生していない。
【0023】その後、第1スイッチング素子SW1をOFFとする(時点(B))。これにより、プラズマ発生用陰極1からの放電電流の大半がプラズマ発生用多孔陽極3側に流れ、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマが安定に発生するようになる。
【0024】次に、第3スイッチング素子SW3をONとする(時点(C))。これにより、加速電源13によりプラズマ発生用多孔陽極3と電子加速用多孔電極4との間に電圧Vaが与えられ、プラズマ発生用多孔陽極3と電子加速用多孔電極4との間でプラズマ発生用多孔陽極3の各貫通孔3aを介して引き出された電子が加速される。
【0025】なお、このようにして加速された電子は電子加速用多孔電極4の各貫通孔4aを介して引き出され、この加速された電子により電子加速用多孔電極4と試料7との間で供給口41bから供給されたアルゴンガス(Ar)や酸素ガス(O2)、メタンガス(CH4)のプラズマが発生し、試料7に対して所定のプラズマ処理が行われる(時点(C)〜(D))。具体的には例えば、半導体や機械部品、磁気記録用部品等の試料7を配置し、この試料7と電子加速用多孔電極4との間の領域に酸素ガス(O2)を供給してプラズマを発生させることにより、試料7の表面をプラズマ洗浄することができる。また、試料7と電子加速用多孔電極4との間の領域に炭素と水素とを含むガス(例えばメタンガス(CH4)やエチレンガス(C24)、トルエンガス(C78))を供給してプラズマを発生させることにより、試料7の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を生成することができる。
【0026】その後、試料7に対するプラズマ処理が終了すると、第3スイッチング素子SW3をOFFとし(時点(D))、次のプラズマ処理が開始されるまでの間に試料7をロードロック等により交換する。なお、プラズマ洗浄や成膜等のプラズマ処理の時間(時点(C)〜(D))およびロードロック等による試料7の交換時間(時点(D)〜(A))はともに約10〜20秒である。
【0027】なお、第3スイッチング素子SW3のみをOFFとした状態では、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間でプラズマが保持されるので、プラズマ発生用多孔陽極3に放電電流が流れ続け、プラズマ発生用多孔陽極3に熱損傷が生じやすい状態となる。ここでは、第3スイッチング素子SW3をOFFとした後(時点(D))、第1スイッチング素子SW1をONとし(時点(E))、次いで第2スイッチング素子SW2をOFF(時点(F))とすることにより、次のプラズマ処理が開始されるまでの間(時点(F)〜(A))、プラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間でプラズマ(種火)を保持する。ここで、補助陽極2内には冷却機構(図示せず)が設置されているので、プラズマ処理が行われていない待機状態における補助陽極2の熱損傷等は最小限に抑えられる。なお、補助陽極2の貫通孔2aはプラズマ発生用多孔陽極3側からプラズマ発生用陰極1側へのガスの流入を防止することができる程度の開口面積(直径約3mm程度)を有しており、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極1との間でプラズマを保持するための陽極として作用するとともに、プラズマ処理状態においてプラズマ発生用陰極1を酸素ガス(O2)等から保護するための隔壁として作用する。
【0028】このように本発明の第1の実施の形態によれば、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間で発生するプラズマの状態を間欠的に変化させることにより、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用多孔陽極3に放電電流が流れ続けないようにすることができるので、プラズマ発生用多孔陽極3に加えられる熱負荷を低減することができ、このため供給口41bを介して酸素ガス(O2)が供給されるような場合でも、プラズマ発生用多孔陽極3に熱損傷を生じさせることなくプラズマ発生用多孔陽極3に流れる放電電流を大電流化することができる。また、プラズマ発生用多孔陽極3に加えられる熱負荷が小さいので、電極材料としてモリブデンやタンタル等の高融点金属を用いる必要がなく、このためプラズマ発生用多孔陽極3を銅や炭素等により安価に製作することができる。
【0029】また本発明の第1の実施の形態によれば、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間でプラズマ(種火)を保持するようにしているので、連続運転時における待機状態からプラズマ処理状態への移行をスムーズに行うことができ、このためプラズマ処理状態におけるプラズマの再現性を高めることができる。
【0030】なお、上述した第1の実施の形態においては、プラズマ発生用陰極1とプラズマ発生用多孔陽極3との間に印加される電圧、およびプラズマ発生用陰極1と補助陽極2との間に印加される電圧を切り替えるための電圧切替素子としてスイッチング素子を用いているが、これに限らず、電圧を連続的に変化させる可変抵抗等を用いるようにしてもよい。
【0031】第2の実施の形態次に、図3により、本発明による電子ビーム源の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態は、開口面積の異なる貫通孔を有する少なくとも2つの補助陽極部から補助陽極を構成した点を除いて、他は図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。本発明の第2の実施の形態において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】図3に示すように、電子ビーム源を備えた電子ビーム励起プラズマ発生装置10においては、プラズマを透過させるための第1貫通孔21aを有する第1補助陽極部21と、第1補助陽極部21に隣り合うよう配置されるとともにプラズマを透過させるための第2貫通孔22aを有する第2補助陽極部22とから補助陽極2を構成している。
【0033】ここで、第1補助陽極部21の第1貫通孔21aはプラズマ発生用多孔陽極3側からプラズマ発生用陰極1側へのガスの流入を防止することができる程度の開口面積(直径約3mm程度)を有している。また、第2補助陽極部22の第2貫通孔22aはプラズマ発生用陰極1と第2補助陽極部22との間でプラズマを安定に保持することができるよう第1貫通孔21aの開口面積に比べて十分大きな開口面積(直径約30mm程度)を有している。
【0034】なお、第1補助陽極部21には抵抗15を介して放電電源12が接続され、また第2補助陽極部22には第1スイッチング素子(補助電圧切替素子)SW1および抵抗16を介して放電電源12が接続され、プラズマ処理が行われていない待機状態においてプラズマ発生用陰極1と第2補助陽極部22との間でプラズマ(種火)を保持するようになっている。
【0035】このように本発明の第2の実施の形態によれば、開口面積の異なる貫通孔21a,22aを有する少なくとも2つの補助陽極部21,22から補助陽極2を構成し、このうち開口面積の大きな第2貫通孔22aを有する第2補助陽極部22とプラズマ発生用陰極1との間でプラズマ(種火)を保持するようにしているので、プラズマ処理状態におけるプラズマ発生用陰極1およびプラズマ発生用多孔陽極3間の電圧と、プラズマ処理が行われていない待機状態におけるプラズマ発生用陰極1および補助陽極2(第2補助陽極部22)間の電圧とが大きく変動せず、このため連続運転時におけるプラズマ処理状態から待機状態への移行をスムーズに行うことができる。また、第1補助陽極部21の第1貫通孔21aの開口面積が図1に示す補助陽極2の貫通孔2aと同様に小さく保たれているので、第1補助陽極部21によりプラズマ発生用多孔陽極3側からプラズマ発生用陰極1側へのガスの流入を防止することができ、このためプラズマ発生用陰極1を酸素ガス(O2)等から効果的に保護することができる。
【0036】
【実施例】次に、図3に示す電子ビーム源を備えた電子ビーム励起プラズマ発生装置の具体的実施例について述べる。
【0037】(実施例1)まず、第1の実施例として、供給口41bを介して電子加速用多孔電極4と試料7との間の領域にアルゴンガス(Ar)を供給し、図2に示すシーケンスに従って第3スイッチング素子SW3のON時間を10秒、0FF時間を10秒として動作テストを行った。なお、加熱電源11の電圧Vfは8V、放電電源12の電圧Vdは60V、加速電源13の電圧Vaは100Vとし、抵抗14は2〜5Ω、抵抗15,16は200Ωとした。また、プラズマ発生用陰極1と補助陽極2(第1補助陽極部21)との間の領域の圧力は0.2Torr、補助陽極2(第2補助陽極部22)と試料7との間の領域の圧力は2×10-3Torrとした。さらに、プラズマ発生用多孔陽極3としては、直径が10cm、厚さが1mmの炭素からなる円板に直径約1〜2mmの貫通孔4aを1200個程度穿設したものを用いた。
【0038】この結果、このような動作テストを連続運転で1時間以上継続した場合でも、再現性よくアルゴンガス(Ar)のプラズマを発生させることができ、かつ放電電流が10Aでもプラズマ発生用多孔陽極3が赤熱しないことを確認した。
【0039】また、プラズマ処理状態におけるプラズマ発生用陰極1およびプラズマ発生用多孔陽極3間の電圧は45V、待機状態におけるプラズマ発生用陰極1および第2補助陽極部22間の電圧は44Vとなり、プラズマ処理状態から待機状態への移行をスムーズに行うことができた。
【0040】(実施例2)次に、第2の実施例として、供給口41bを介して電子加速用多孔電極4と試料7との間の領域に酸素ガス(O2)を供給し、図2に示すシーケンスに従って第3スイッチング素子のON時間を10秒、0FF時間を10秒として動作テストを行った。
【0041】この結果、このような動作テストを連続運転で5時間以上継続した場合でも、再現性よく酸素ガス(O2)のプラズマを発生させることができ、かつ放電電流が10Aでもプラズマ発生用多孔陽極3が赤熱しないことを確認した。
【0042】なお、プラズマ発生用多孔陽極3として、同様の形状でかつ材料を銅に代えた円板を用いて上述した第1および第2の実施例と同様の動作テストを行ったが、この場合でも上述した第1および第2の実施例と同様の良好な結果が得られた。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、プラズマ発生用多孔陽極に熱損傷を生じさせることなくプラズマ発生用多孔陽極に流れる放電電流を大電流化することができる。
【出願人】 【識別番号】000006792
【氏名又は名称】理化学研究所
【識別番号】593099311
【氏名又は名称】ニチメン電子工研株式会社
【出願日】 平成10年7月15日(1998.7.15)
【代理人】 【識別番号】100064285
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外3名)
【公開番号】 特開2000−30646(P2000−30646A)
【公開日】 平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願番号】 特願平10−200536