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【発明の名称】 高周波融着によるシール性を有する放射線作業用シート
【発明者】 【氏名】小川 竜一郎
【氏名】森下 喜嗣
【氏名】谷本 健一
【氏名】伊東 一昭
【氏名】相馬 光枝
【課題】放射性廃棄物低減の観点から焼却処理による減容化ができ、しかも高周波融着によるシール性や膜強度に優れた、ポリ塩化ビニルシートに代替しうる放射線作業用シートを提供する。

【解決手段】酢酸ビニル含有量が20〜28%、メルトインデックスが7.5g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体シート。ポリ塩化ビニルシートと同等の高周波融着性、引張強度、耐放射線性を具備し、焼却しても塩素ガスを発生しないから使用後に焼却処理ができ、放射性廃棄物の減容化を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酢酸ビニル含有量が20〜28%、メルトインデックスが7.5g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体シートからなることを特徴とする放射線作業用シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放射性廃棄物のバッグイン・バッグアウト用の梱包材や、放射線管理区域内のグリーンハウス部材として使用するための放射線作業用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】核燃料取扱施設では、α核種で汚染された空間の気密性を確保するため、梱包材の融着によるバッグイン・バッグアウトにより放射性廃棄物や廃棄フィルタ等の切り離しが行われている。また、デコミッショニングやセル除染等の定常外作業では、汚染拡大防止対策としてグリーンハウスが設置される。
【0003】これらのバッグイン・バッグアウト用の梱包材やグリーンハウス部材には、高周波融着によるシール性と膜強度に優れたポリ塩化ビニルシートが従来から採用されており、密封性を確保するためにシート開口部を高周波融着して使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】放射線作業に使用した後のポリ塩化ビニルシートは、焼却処理の際に腐食性の塩素ガスを発生し、焼却炉を損傷するために、不燃性廃棄物として圧縮処理されているのが現状である。しかしながら、放射性廃棄物の処理、処分の観点からは、焼却処理のできないポリ塩化ビニルシートは、放射性廃棄物を増加させる一因となっている。
【0005】そこで本発明は、放射性廃棄物低減の観点から焼却処理による減容化ができ、しかも高周波融着によるシール性や膜強度に優れた、ポリ塩化ビニルシートに代替しうる放射線作業用シートを提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明による放射線作業用シートは、酢酸ビニル含有量が20〜28%、メルトインデックスが7.5g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体シートからなることを特徴とするものである。
【0007】かようなエチレン酢酸ビニル共重合体シートは、塩素成分を含んでいないため、焼却しても塩素ガスを発生せず、その結果、焼却処理により減容化することができる。さらには、従来のポリ塩化ビニルシートと同等の高周波融着性および膜強度を具備しているため、ポリ塩化ビニルシートに代替しうる放射線作業用シートとして好ましく使用することができるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明による放射線作業用シートの素材としてエチレン酢酸ビニル共重合体を用いた理由は、塩素成分を含んでいないことの他に、有極基である酢酸ビニルがその成分となっている点にある。高周波融着性は誘電発熱量により左右されるが、この誘電発熱量はシートの誘電率と誘電正接に比例することから、それらが大きい有極基である酢酸ビニルに着目したものである。
【0009】エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量とシートの高周波融着性との関係を以下の方法により検討した。すなわち、酢酸ビニル含有量の異なる厚さ0.3mmのエチレン酢酸ビニル共重合体シート(260×200mm)を2枚部分的に重ね合わせ、重ね合わせた部分を高周波シーラー(高野電気工業(株)製「KTW300B」、出力3W、周波数40.68MHz)を用いて融着時間3秒で融着した。次いで、融着部両側のシート部分を手でもって両側に引張り融着部の剥がれ具合により融着性を調べた。結果を表1に示す。なお、融着性の評価は以下の通りである。
【0010】
×:融着部が融着せず。
△:引張りにより融着部が剥がれる(不完全融着)。
○:引張りによりシート部分が切断する(完全融着)。
【0011】
【表1】

【0012】表1からわかるように、酢酸ビニル含有量が20〜28%のエチレン酢酸ビニル共重合体シートは良好な高周波融着性を示す完全融着がなされ、完全融着を示すポリ塩化ビニルシートと同等の高周波融着性を示している。
【0013】放射線作業に用いるシートは、作業時の高負荷に耐える引張強度が必要となる。共重合体の強度は一般にその分子量とともに増大することから、共重合体の分子量を工学的に規定するメルトインデックスに着目し、シートの引張強度とメルトインデックスの関係を以下の方法により検討した。すなわち、メルトインデックスの異なる厚さ0.3mm、酢酸ビニル含有量28%のエチレン酢酸ビニル共重合体シートを使用し、引張強度の測定はJIS K 7127「プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法」に準じて行い、引張強度測定用サンプルはJIS K 7127に記載のダンベル2号型とした。試験装置はロードセル式引張試験機(モンサント社製、Tenso meter 10)を用い、引張速度200mm/min、試験環境温度22℃(常温)にて試験した。比較のために同じ厚さ(0.3mm)のポリ塩化ビニルシートの引張強度も測定した。結果を図1のグラフに示す。
【0014】図1のグラフからわかるように、エチレン酢酸ビニル共重合体シートはメルトインデックス7.5g/10min以下において、ポリ塩化ビニルシートの引張強度(276kg/cm2 )と同等またはそれ以上の引張強度を示す。
【0015】さらに、放射線作業に用いるシートの特性として、耐放射線性を具備していることが重要である。そこで本発明で使用するエチレン酢酸ビニル共重合体シートの耐放射線性をポリ塩化ビニルシートと比較した。厚さ0.3mm、酢酸ビニル含有量28%のエチレン酢酸ビニル共重合体シートと、厚さ0.3mmのポリ塩化ビニルシートにγ線照射(線源:60Co)を行い、線量率8772Gy/hで線量100kGy、300kGy、700kGyとなるように照射した後、前述した引張強度試験と同様にして、照射後のシートの引張強度を測定した。結果を表2に示す。
【0016】
【表2】

【0017】表2からわかるように、700Gyまでのγ線照射においては、本発明のシートはポリ塩化ビニルシートと同等以上の耐放射線性能を有している。
【0018】
【発明の効果】上述したところからわかるように本発明のエチレン酢酸ビニル共重合体シートは、高周波融着性、引張強度、耐放射線性において従来のポリ塩化ビニルシートと同等の性能を有しており、ポリ塩化ビニルシートに代替しうる放射線作業用シートとして好適に使用することができる。
【0019】特に本発明のシートは、焼却しても有害な腐食性の塩素ガスを発生しないため、使用後に焼却処理ができ、その結果、放射性廃棄物の減容化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【識別番号】000142791
【氏名又は名称】株式会社アトックス
【出願日】 平成10年7月21日(1998.7.21)
【代理人】 【識別番号】100067046
【弁理士】
【氏名又は名称】尾股 行雄
【公開番号】 特開2000−39497(P2000−39497A)
【公開日】 平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願番号】 特願平10−204905